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How the World Became Rich: The Historical Origins of Economic Growth(世界はいかにして豊かになったか:経済成長の歴史的起源) cover

経済学

経済学

How the World Became Rich: The Historical Origins of Economic Growth(世界はいかにして豊かになったか:経済成長の歴史的起源)

Mark Koyama; Jared Rubin

英語原題: How the World Became Rich: The Historical Origins of Economic Growth

持続的な経済成長がなぜ始まり、なぜ不均等に広がったのかについて、二人の経済史家が学生と一般読者に向けて書いた読みやすい概説書である。一つの原因を主張するのではなく、地理、制度、文化、人口、植民地主義など文献にある主要な説明を、歴史的証拠に照らして比較検討する。

前提知識: 経済学や歴史学の予備知識は必要ない。

難易度レベル
初級
学術レベル
学部
economic historyeconomic growthindustrial revolutioninstitutions入門

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Koyama, M., & Rubin, J. (2022). How the World Became Rich: The Historical Origins of Economic Growth. Polity.

章の要約

本書は短く、全11章に序文と参考文献が付き、ペーパーバックで約260ページである。内容は二つに分かれる。第2〜6章では長期的な繁栄を説明する仮説の系統を一章に一つずつ取り上げ、証拠がそれをどこまで支持するかを問う。第7〜11章では歴史そのものをたどり、北西ヨーロッパの台頭から世界各地への成長の広がりまでを扱う。章題の多くが疑問形になっていることは本書の方法を示している。単一のテーゼを擁護するのではなく、議論を比較衡量するのである。

第1章:世界はなぜ、いつ、どのようにして豊かになったのか

冒頭の章は、出版社の紹介文が本書の中心に据える謎を提示する。今日の人々の大半は祖先よりはるかに豊かであり、その富のほぼすべては過去二世紀のうちに得られた。持続的成長がいつ、どこで始まり、なぜ不均等に広がったのかという、本書の残りが答える問いをここで設定する。

第2章:地理のくじに当たった社会があったのか

説明を検討する章の最初で、気候・立地・天然資源の賦存がどの社会が成長しえたかを左右したとする地理的説明を検討する。

第3章:すべては制度だけで説明できるのか

政治的・経済的制度を扱う一章で、アセモグルとロビンソンと最も強く結びつけられる説明である。章題がすでに本書の立場を示している。制度は重要だが、それが話のすべてなのかを著者たちは検証する。EH.Netに掲載されたジョエル・モキイアの書評は、本書が制度と文化の双方を一章ずつ使って論じ、それぞれについて近年の有力な研究をうまく要約していると述べている。

第4章:文化が一部を豊かにし、他を貧しくしたのか

文化による説明、すなわち信念・価値観・規範が、ある社会が豊かになった理由の説明に役立つかどうかを扱う。モキイアは、文化と制度が互いをどう形づくるのかというより深い問いは未解決のままだと指摘しており、この章はまだ若い研究分野の概観として読むのがよい。

第5章:子どもが少なければ?

人口に関する章である。モキイアの書評は、1750年ごろ以前の世界がなぜ貧しいままだったかについて本書が示すコンセンサスを紹介しており、成長を阻んだ三つのブレーキの第一はマルサス的なものだった。つまり、生じた生産性の向上の成果を人口増加が吸収してしまったのである。したがって人口の変化は、ブレーキが外れた過程の一部をなす。

第6章:植民地化と搾取だけの問題だったのか

植民地主義・奴隷制・奴隷貿易を扱う章で、モキイアは著者たちが比較的はっきりした立場をとる唯一の箇所だとしている。書評によれば、著者たちは植民地主義と奴隷貿易が近代世界の形成に大きな役割を果たしたと結論づけつつも、それが世界を豊かにしたという証拠はまちまちだとする。そしてイノベーションを支える制度、支配者への制約、比較的包摂的な社会がなければ、搾取だけでは近代的成長は生まれなかったと強調している。

第7章:なぜ北西ヨーロッパが最初に豊かになったのか

歴史を扱う後半は、停滞から最初に抜け出した地域がなぜ北西ヨーロッパだったのかという問いから始まる。ここで第2〜6章の説明が具体的な事例に当てはめられる。

第8章:イギリスの産業革命

なぜ産業革命が18世紀のイギリスで始まったのかという、出版社が掲げる問いに取り組む章である。本書が取り上げる論争点として、モキイアは高賃金が技術進歩を促したのか妨げたのか、職人ギルドの役割、戦争の影響を挙げている。

第9章:近代経済の興隆

一度限りの産業上の突破口が、どのようにして持続的成長になったのか。モキイアは、前近代の三つのブレーキ(人口圧力、略奪的・収奪的な支配者、有用な知識を蓄積し共有する制度の欠如)が徐々に解消していく過程を、本書が詳しく説明している点を評価している。

第10章:工業化とそれがつくり出した世界

工業化の広がりを扱う。なぜヨーロッパの一部の国、アメリカ、日本が19世紀に追いついたのか、なぜ他の大半の国は20世紀後半や21世紀まで待たねばならなかったのか、そしてこの順序が残した国家間の不平等である。

第11章:世界は豊かである

結論の章で、モキイアは、成長は不均等で貧困はなお残るものの、2022年の世界は豊かだという著者たちの判断としてまとめている。出版社の紹介文は政策上の教訓を示す。成功した経済のすべてが共有しているように見える前提条件はあるが、万能の処方箋はない。社会の歴史・制度・文化が、その社会がどのように発展しうるかを方向づけるからである。

主要概念

第1〜6章:長期的成長の説明

  • 近代的経済成長:一人当たり所得の持続的で複利的な成長。本書はこれをおおむね過去二世紀のものとする。
  • 地理的説明:天然資源の賦存や立地が、どの社会が繁栄しえたかを決めたとする説明。
  • 制度:社会の政治的・経済的ルール。唯一の原因としてではなく、複数の説明の一つとして検討される。
  • 文化:発展の分岐の原因となりうる、共有された信念や規範。
  • マルサス的制約:人口増加が生産性の向上を飲み込み、生活水準を低く抑えた前近代のパターン。
  • 植民地主義・搾取テーゼ:西洋は植民地化され奴隷化された人々の犠牲の上に豊かになったという主張。本書はこれを証拠と照らし合わせて検討する。

第7〜11章:近代の豊かさへの道

  • 産業革命:18世紀イギリスにおける持続的な技術変化の始まり。
  • キャッチアップ成長:他のヨーロッパ諸国・アメリカ・日本のより遅い工業化と、世界の大部分のさらにずっと遅い成長。
  • 分岐:成長の不均等な広がりが生み出した、早期工業化国と後発国の格差。

批判的分析

長所

  • 公平な概観。 モキイアのEH.Net書評は、各論争について均衡のとれた公正な概観がなされていると述べ、本書の抑制された語り口を、グレゴリー・クラークの A Farewell to Alms やディアドラ・マクロスキーの Bourgeois Dignity の強く主張する立場と対比している。学生にとっては、各章が論争の一方の側ではなく論争全体の地図になるということである。
  • 教育向けの構成。 一章に一つの説明、続いて歴史の叙述という構成は、週単位の授業に向いている。モキイアは教員が学生に読ませることを勧め、経済学専攻の学生向けのグローバル経済史の授業によく適していると評価している。出版社は、Economic History Review が本書をタイムリーで、よくまとまり、簡潔だと評したことも引用している。
  • 研究の最前線に即している。 二人の著者はいずれもこの分野に貢献してきた経済史家であり、書評は長く最新の参考文献を強調している。そのためレポート執筆の入口として役立つ。
  • 短い。 約260ページなので、他の文献と並行して一学期で通読できる。

短所

  • 判定を避けがち。 同じ均衡には代償がある。モキイアは著者たちがめったに強い立場をとらないと指摘しており、一つの論証されたテーゼを求める読者は他の本でそれを見つけることになる。
  • 未解決の問いは未解決のまま。 モキイアによれば、なぜ社会ごとに異なる制度が生まれるのか、制度はどう変化するのか、文化はそれらをどう形づくるのかは、本書の最後でも解決されていない。
  • 教科書ではなく概観。 本書は連続したエッセイの形で書かれた研究の要約であり、この分量では各論争の扱いは必然的に短い。文献を再現するのではなく、文献へと読者を導く本である。
  • 第6章は論争の渦中にある。 植民地主義と奴隷制に関する結論は本書で最もはっきりしたものだが、書評自体がそれを資本主義史の研究者たちとの現在進行中の論争の中に位置づけている。学生は反対側の議論も読むべきである。

コースにおける位置づけ

この経済史のコースの文献の中で、本書は自然な出発点である。ある国々がなぜ豊かなのかについての主要な説明を手短に示す地図だからである。アセモグルとロビンソンの Why Nations Fail は、制度が繁栄を説明するという主張を豊富な事例とともに一貫して展開する。コヤマとルービンはその見方に第3章を充て、地理・文化・人口・植民地主義と照らし合わせて検証する。先に本書を読んでおけば、Why Nations Fail をより広い論争の中の有力な一つの立場として読むことができる。

より詳しい通史としては、ニールとキャメロンの A Concise Economic History of the World が最初期の農耕社会から現在までを概観し、ヨルク・バーテン編の A History of the Global Economy が1500年以降の数量的研究を地域ごとに要約している。どちらも、第7〜11章が圧縮している歴史を補う、より長い教科書である。ダグラス・ノースの Institutions, Institutional Change and Economic Performance とアセモグルとロビンソンの Economic Origins of Dictatorship and Democracy は理論的な著作であり、本書が概観する制度をめぐる論争に慣れてから読むとよい。

本書の使い方

本書は学生と一般読者に向けて書かれており、経済学や歴史学の予備知識は必要ない。ただし、一人当たり所得や生産性といった基本的な考え方に慣れていると読みやすい。

  • まず第1章を読み、次に第2〜6章をひとまとまりとして読む。 各章について、説明の内容、それを支持する最も強い証拠、主な反論をメモしておく。五つの説明を一枚の表にまとめると復習に役立つ。
  • 第7〜11章は検証として読む。 歴史上の各局面が前半のどの説明を支持するかを問う。北西ヨーロッパとイギリスを扱う第7章と第8章が後半の中心である。
  • コースの他の本と組み合わせる。 第3章を Why Nations Fail と、第6章を著者たちの見解への批判と並べて読み、比較する。
  • 参考文献を活用する。 レポートでは、本書の要約に頼るのではなく、テーマに最も近い章の参考文献をたどる。

独習なら全体を2〜3週間で読める。授業では、より詳しい教科書と並行して週に1〜2章ずつ読むのがよい。