01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Lis, P., & Rosser, M. (2025). Basic Mathematics for Economists (4th ed.). Routledge.
章の要約
第4版は全16章、本文約570ページからなる。目次には解答と、前付けの記号・用語一覧も挙げられている。ラウトレッジ社は本書を、数学の基礎的な素養しかない学生にも、より高度な数学を学んだが基本概念のわかりやすい説明を求める学生にも適した本と説明している。算術と代数の復習から始め、微積分、比較静学、動学分析、行列代数へと進み、各話題を経済学・金融・ビジネスの応用を通じて説明する。新版では現実の応用例が追加・更新され、貯蓄・年金制度と資産評価がより詳しく扱われている。以下に示すページ数から、分量の配分がわかる。
第1〜3章:序論/算術/代数入門
短い序論(約7ページ)に続き、基礎を一から組み立て直す二つの章、算術(約25ページ)と代数入門(約30ページ)が置かれる。学校数学が錆びついている読者のための章である。
第4〜5章:グラフと関数/連立一次方程式
経済的な関係を関数とグラフで表すこと、そして連立一次方程式を解くことを扱う、分量のある二つの章(約45ページと約40ページ)。後者は市場均衡など単純な経済モデルを支える道具である。
第6〜7章:線形計画法/二次方程式
線形計画法(約20ページ)は、微積分を使う前に一次の制約のもとでの最適化を導入する。二次方程式(約20ページ)は代数を非線形の関数へと広げる。
第8章:金融数学――級数、時間、投資
80ページを超える、本書で最も長い章。級数と貨幣の時間価値を投資判断のために扱う。出版社はこの版で貯蓄・年金制度と資産評価の技法をより詳しく分析した点を強調しており、章には資産評価と株式の評価に関する節が含まれる。
第9〜11章:微積分入門/制約なし最適化/偏微分
微積分の中核部分。微積分入門(約25ページ)、制約なし最適化(約20ページで、多変数の扱いより前に置かれる)、そして多変数関数の偏微分(約45ページ)である。
第12章:制約付き最適化
約30ページで、制約のもとでの最適化を扱う。消費者と生産者の選択問題の標準的な枠組みである。
第13章:微分と積分のさらなる話題
約40ページで微積分の道具を広げ、積分を導入する。
第14〜15章:動学と差分方程式/指数関数、連続的成長と微分方程式
説明文が約束する動学分析にあたる部分。離散的な期間ごとに変化する変数のための差分方程式(約40ページ)、続いて指数関数、連続的成長、微分方程式(約35ページ)を扱う。
第16章:行列代数
最後の章で、本書で2番目に長い(約60ページ)。行列の手法を導入する。
主要概念
弧弾力性、予算制約、くもの巣モデル、等量曲線、アニュイティ(年金)、最終利回りといった本書に繰り返し現れる用語から、本書が用いる経済・金融の応用の種類がうかがえる。
第1〜7章:代数の基礎
- 関数とグラフ:需要や費用のような経済的関係を関数として表し、グラフに描くこと。
- 連立一次方程式:複数の方程式をまとめて解くこと。たとえば均衡値を求めるのに使う。
- 線形計画法:一次の制約のもとで一次の目的関数を最大化または最小化すること。
第8章:金融数学
- 級数と貨幣の時間価値:利子、割引、積立、ローン、年金の計算。
- 資産評価:株式などの資産を、それが生み出す将来の支払いから評価すること。
第9〜13章:微積分と最適化
- 制約なし最適化:停留点を求め、二階条件を確かめること。
- 偏微分:多変数関数の変化率で、比較静学に用いられる。
- 制約付き最適化:予算などの制約のもとで最適化すること。
第14〜16章:動学と行列
- 差分方程式と微分方程式:離散モデルと連続モデルで、変数が時間とともにどう変化するかを記述するもの。
- 行列代数:線形の体系を簡潔に扱う方法。
批判的分析
長所
- 本当に最初から始める。 算術と代数の三つの章、合計約60ページが主要な内容の前に置かれており、学校で高度な数学を学ばなかった学生に向いている。
- 全編にわたる応用。 出版社は、すべての話題が経済学・金融・ビジネスの応用の文脈で説明されていると強調しており、弾力性、等量曲線、利潤最大化、価格差別、くもの巣モデルといった繰り返し現れる用語が、経済学への焦点を裏づけている。
- 充実した金融数学。 第8章は群を抜いて長く、第4版では貯蓄、年金、資産評価が拡充されている。金融やビジネスのプログラムの学生は、経済学専用の多くの数学書より多くの内容をここで得られる。
- 独習の支援。 解答と、学生向け・教員向けのデジタル補助教材がある。ラウトレッジ社が引用する評者、グロリア・L・ベルナル(ハベリアナ大学)は、中級ミクロ経済学の授業の数学の主な支えとして本書を使っている。
短所
- 意図的に入門的。 出版社は本書を、数学とその経済学での使い方を理解するのに必要な基本を網羅するものとして示している。より理論的な経済学に進む学生は、後に微積分、最適化、線形代数をより形式的に学ぶ必要がある。
- 行列代数が最後に来る。 線形代数は最終章まで持ち越されるため、行列を早い段階で使いたい授業や、多市場モデルに行列を用いる授業では、読む順番を組み替える必要がある。
- 入門書としては長い。 約600ページと分量が多く、1学期の授業では通常その一部しか使わない。
コースにおける位置づけ
このコースの文献リストの中で、リスとロッサーの本書は経済学のための数学の教科書として最も初歩的であり、代数を立て直す必要がある学生にとって自然な最初の一冊である。シドセーター、ハモンド、ストローム、カルバハルの Essential Mathematics for Economic Analysis は同様の範囲をより数学的な正確さで扱っており、学校の代数にすでに慣れている学生にとっては次の一歩、あるいは代わりの一冊になる。イアン・ジャックの Mathematics for Economics and Business も、ビジネスと経済学の学生のために書かれた教科書である。
チャンとウェインライトの Fundamental Methods of Mathematical Economics は、経済モデルに適用される均衡分析、行列代数、最適化、動学をさらに深く扱っており、本書の後に続く授業に適している。ブロックとマリアリスの Differential Equations, Stability, and Chaos in Dynamic Economics は動学に特化した大学院レベルの専門書で、本書の第14〜15章の範囲をはるかに超える。
本書の使い方
本書は、経済学・金融・ビジネスを学ぶ1年生、特に学校で高度な数学を学ばなかった学生と、基本のわかりやすい説明を求めるより力のある学生を対象としている。始めるには基本的な算術があれば十分である。
- まず自己診断: 代数が弱い学生は第2〜3章を丁寧に学ぶ。そうでない学生はざっと目を通して第4章から始めてよい。
- 最初の授業の中核: 第4〜5章、第7章、第9〜12章。関数、方程式、制約の有無にかかわらない最適化を扱う。
- 金融・ビジネスの学生: 第8章を早めに加える。長いが、その話題の中で完結している。
- 2学期目以降の話題: 第13〜16章(積分、動学、行列)。線形計画法がシラバスにあれば第6章も加える。
演習問題に取り組み、用意されている解答で確認するとよい。スプレッドシートは本書で繰り返し使われる道具なので、第8章と並行して、ローンの返済や年金の積立のような金融計算をスプレッドシートで再現してみる価値がある。
