01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Wren, D. A., & Bedeian, A. G. (2023). The Evolution of Management Thought (9th ed.). Wiley.
章の要約
本書は4部22章とエピローグからなり、約464ページである。著者が掲げる目標は、現代の経営思想の根源をたどること、すなわち仕事、人間、組織の本質についての考え方が歴史の中でどう変わってきたかを示すことである。方法は、分析的(貢献者の経歴と信念を検討する)、総合的(傾向、社会運動、環境の力を一つの枠組みに織り込む)、学際的(経済学、歴史学、政治学、心理学、社会学を用いる)と説明されている。第1章は、経済・社会・政治・技術という文化の四つの側面から各時代を枠づける。各章は要約で終わり、第I部から第IV部は、それぞれ回顧または総括で終わる。
第I部:初期の経営思想(第1〜6章)
第1章:A Prologue to the Past(過去への序章)。 本書の目標、文化的枠組み、経営と組織の定義。第2章:Management Before Industrialization(工業化以前の経営)。 初期文明(中東、極東・南アジア、エジプト、ヘブライ人、ギリシャ、ローマ、教会、封建制)における経営と、プロテスタント倫理、自由の倫理、市場の倫理を生んだ文化的再生。第3章:The Industrial Revolution in Great Britain(イギリスの産業革命)。 蒸気機関、第四の生産要素としての経営、初期の工場の課題(労働、経営人材、計画・組織化・統制)、そして労働条件、児童労働と女性労働、「大いなる豊かさ」を含む文化的帰結。第4章:Management Pioneers in Early Factories(初期工場の経営の先駆者)。 ロバート・オーウェン、チャールズ・バベッジ、アンドリュー・ユア、シャルル・デュパン。第5章:The Industrial Revolution in the United States(アメリカの産業革命)。 アメリカ式製造システム、交通・通信の革命、鉄道、ダニエル・マッカラムとヘンリー・プア、新たに生じたガバナンスの問題。第6章:Industrial Growth and Systematic Management(産業の成長と系統的管理)。 巨大企業、カーネギー、系統的管理と労働問題、そして企業と社会・労働・政府との関係。
第II部:科学的管理の時代(第7〜12章)
第7章:The Advent of Scientific Management(科学的管理の登場)。 フレデリック・テイラーの初期、ミッドベール、課業管理、東部運賃事件、議会調査、「精神革命」。第8章:Spreading the Gospel of Efficiency(能率の福音を広める)。 バース、ガント、ギルブレス夫妻(リリアン・ギルブレスを含む)、ハリントン・エマーソン、モリス・クック。第9章:The Human Factor: Preparing the Way(人間的要因:道を整える)。 人事管理、産業心理学、初期の産業社会学、労働組合運動。第10章:The Emergence of the Management Process and Organization Theory(管理過程と組織論の登場)。 アンリ・ファヨールの管理の原則と要素、マックス・ウェーバーの官僚制論。第11章:Scientific Management in Theory and Practice(理論と実践における科学的管理)。 経営教育、国際的な科学的管理運動、実践の研究(ホクシー、トンプソンとネルソン)、初期の組織論と経営政策。第12章:Scientific Management in Retrospect(科学的管理の回顧)。 進歩主義を含む、経済・技術・社会・政治の環境の中でこの時代を見直す。
第III部:社会的人間の時代(第13〜18章)
第13章:The Hawthorne Studies(ホーソン研究)。 照明実験、継電器組立実験、面接プログラム、バンク配線観察室実験と、それらが社会システムとしての組織、リーダーシップ、動機づけについて示唆したこと。第14章:The Search for Organizational Integration(組織の統合を求めて)。 メアリー・パーカー・フォレットとチェスター・バーナード。第15章:People and Organizations(人と組織)。 働く人のミクロな見方(集団、動機づけ、職務充実、参加、リーダーシップ)とマクロな見方(社会技術システム)。第16章:Organizations and People(組織と人)。 組織構造と設計、ジェームズ・ムーニー、トップ・マネジメントの視点、取引費用経済学を含む所有と支配。第17章:Human Relations in Theory and Practice(理論と実践における人間関係)。 人間関係論の応用と拡張、そしてホーソンの前提、方法、データ解釈の再検討。第18章:The Social-Person Era in Retrospect(社会的人間の時代の回顧)。 大恐慌から繁栄へ、社会的価値観の変化、ニューディール。
第IV部:前へ進む:最近の時代(第19〜22章)
第19章:Management Theory and Practice(経営理論と実践)。 一般管理、ピーター・ドラッカー、経営教育と「経営理論のジャングル」、管理者の仕事の研究、新制度派経済学、資源ベースおよび知識ベースの理論、エージェンシー、経営政策から戦略的経営への移行。第20章:Organizational Behavior and Organization Theory(組織行動論と組織論)。 X理論・Y理論、職務設計、動機づけ、リーダーシップのアプローチ、そしてアストン研究からコンティンジェンシー理論、個体群生態学、制度理論に至る組織論。第21章:Science and Systems in an Information Age(情報時代の科学とシステム)。 オペレーションズ・リサーチ、品質と QC サークル、トヨタ生産方式とリーン生産、一般システム論とサイバネティクス、情報と通信。第22章:Obligations and Opportunities(責務と機会)。 グローバル化、ビジネス倫理、企業の社会的責任、ステークホルダー、社会的起業を含む企業と社会。エピローグで本書は閉じられる。
主要概念
第I部
- 文化の諸側面:経営の考え方が生まれる経済的・社会的・政治的・技術的条件。
- 生産要素としての経営:産業革命のあいだに、経営が独立した資源として認識されたこと。
- 系統的管理:テイラー以前に行われた、大企業を組織化しようとする試み。
第II部
- 科学的管理:テイラーの課業管理と、そのインセンティブおよび「精神革命」。
- 管理過程と官僚制:ファヨールの原則と要素、ウェーバーの理想的官僚制。
第III・IV部
- 社会的人間と人間関係論:ホーソン以後、関心が集団とインフォーマルな組織に移ったこと。
- 組織論の系譜:コンティンジェンシー理論、個体群生態学、制度理論、戦略的選択。
- 現代の論点:戦略的経営、品質とリーン生産、システム思考、倫理と社会的責任。
批判的分析
長所
- すべての考えに文脈がある。 主要な人物は、その時代の経済的・社会的・政治的・技術的条件の中に位置づけられ、第II部と第III部はそれぞれ、これらの環境を振り返る章で終わる。
- 学際的な読み方。 著者は経済学、歴史学、政治学、心理学、社会学を明示的に用いており、歴史に理論の一覧以上の説明力を与えている。
- 時間的な幅広さ。 初期文明からグローバル化、倫理、デジタル時代までを扱う。出版社によれば、新版ではイタリア・ルネサンス、イギリスの産業革命、南北戦争後のアメリカ、テイラーの背景、ホーソン研究についての記述が加わった。
- 定番の話の見直し。 ホーソンの理論と実践、ホクシー報告、トンプソンとネルソンの研究を扱う章は、教科書の要約を繰り返さず、証拠と解釈を検討する。
短所
- 大部で詳細。 450ページを超え、伝記的な節が多く、多くの経営学入門の授業が必要とする以上の歴史が含まれる。
- 初期への比重が大きい。 第I〜III部(22章中18章)はニューディール前後で終わり、より最近の時代は4章で扱われるので、現在の理論は概観の水準にとどまる。
- イギリスとアメリカが中心。 第2章で初期文明を概観したあとは、イギリス、アメリカ、フランスを軸に叙述が進み、国際的な科学的管理や管理者の仕事の世界的研究は後から加わる。
コースにおける位置づけ
経営学原理の読書リストの中で、思想史を扱う一冊である。Principles of Management(OpenStax)、Robbins と Coulter の Management、Daft の Management は、計画・組織化・指導・統制を軸にした入門教科書で、これらにとって経営史は多くの話題の一つであるのに対し、Wren と Bedeian は一冊をそれに充てる。Organization Theory: Modern, Symbolic, and Postmodern Perspectives は組織の三つの見方を比較する上級向けの教科書で、本書の第16章と第20章にある組織論の流れの続きとして読める。
入門の授業のあとで Wren と Bedeian を読むと、授業の標準的な話題がどこから来たのかがわかる。
本書の使い方
学部上級から大学院の授業向けである。前提は経営学の入門科目だけで、歴史学や経済学の背景は必要ない。
- 中核: 第1章(枠組み)、第7〜10章(科学的管理と管理過程)、第13・14章(ホーソンと組織の統合)、第19・20章(現在の理論とのつながり)。
- 背景の章: 工業化の背景を扱う第2〜6章と、各時代の環境を振り返る第12・18章。
- 短いルート: 第II部と第III部を読み、第I部は流し読みにする。
まず各章の要約を読み、次に学んでいる人物や学派の節を読み、回顧の章をすでに知っている教科書の説明と比べてみるとよい。
