01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Grant, R. M. (2024). Contemporary Strategy Analysis (12th ed.). Wiley.
章の要約
本書は4部14章からなり、その後に14の事例と用語集が続く。出版社は、価値創造と価値獲得の基本に立脚した、学部上級、MBA、経営幹部向け講義の教科書と説明している。各章は導入と目標で始まり、要約と自習用の問いで終わる。
第I部:序論
第1章:The Concept of Strategy(戦略の概念)。 戦略とは何か、企業はなぜ戦略を必要とするのかを定め、企業の目標と資源を産業環境に結びつける、戦略分析の基本的な枠組みを示す。各節は、成功における戦略の役割、企業の戦略の見つけ方と記述の仕方(企業の戦略声明の例を含む)、設計された戦略と創発的な戦略の違い、非営利組織の戦略的経営を扱う。
第II部:戦略分析の道具
第2章:Goals, Values, and Performance(目標、価値、業績)。 戦略を価値の追求として扱う。利益、キャッシュフロー、企業価値、業績分析の実践に続き、利益を超えるもの、すなわち価値観、持続可能性、社会的責任、リアルオプションを論じる。
第3章:Industry Analysis: The Fundamentals(産業分析:基礎)。 環境分析から産業分析へ進む。産業の魅力度、産業の収益性の予測、分析を戦略立案に使うこと、産業の境界の引き方、競争優位の外部的な源泉としての主要成功要因を扱う。
第4章:Industry Analysis: Dynamics of Industry and Competition(産業分析:産業と競争のダイナミクス)。 産業分析の限界を検討し、5つの力を超えて補完財、エコシステム、ビジネスモデルへと進み、さらにゲーム理論と競合分析による競争的な相互作用を論じる。
第5章:Analyzing Resources and Capabilities(資源とケイパビリティの分析)。 戦略策定における資源とケイパビリティの役割、その識別と評価の仕方、戦略上の含意の導き方を述べる。
第6章:Organization Structure and Management Systems: The Fundamentals of Strategy Implementation(組織構造とマネジメント・システム:戦略実行の基礎)。 戦略策定と実行を結びつけ、専門化、協働、調整、組織能力の育成、組織設計を扱う。
第III部:事業戦略と競争優位の追求
第7章:The Sources and Dimensions of Competitive Advantage(競争優位の源泉と次元)。 競争優位がどう築かれ維持されるかを扱い、続いてコスト優位と差別化優位、そして両方を追求できるかを論じる。
第8章:Industry Evolution and Strategic Change(産業の進化と戦略的変革)。 産業のライフサイクル、組織の適応と戦略的変革という課題、戦略的変革の管理を取り上げる。
第9章:Technology-Based Industries and the Management of Innovation(技術基盤型産業とイノベーションの管理)。 技術集約型産業での競争優位、イノベーションを活用する戦略、標準・プラットフォーム・ネットワーク外部性、技術戦略の実行を扱う。
第IV部:全社戦略
第10章:Vertical Integration and the Scope of the Firm(垂直統合と企業の範囲)。 取引費用を用いて企業の範囲を論じ、垂直統合の便益と費用、垂直的関係の設計を扱う。
第11章:Global Strategy and the Multinational Corporation(グローバル戦略と多国籍企業)。 国際競争と産業分析、国際的な文脈での競争優位、生産拠点の立地、海外市場への参入、グローバルな統合と各国ごとの差別化、多国籍企業の組織化を検討する。
第12章:Diversification Strategy(多角化戦略)。 多角化の動機、それによる競争優位、業績との関係、関連性の意味を検討する。
第13章:Implementing Corporate Strategy: Managing the Multibusiness Firm(全社戦略の実行:複数事業企業の管理)。 本社経営陣の役割、事業ポートフォリオの管理、事業間の連携と個々の事業の管理、変革、コーポレート・ガバナンスを扱う。章の後に付録「External Growth Strategies: Mergers, Acquisitions, Alliances」(外部成長戦略:合併・買収・提携)がある。
第14章:Current Trends in Strategic Management(戦略的経営の最近の動向)。 技術変化、政治的・社会的・環境的課題、戦略的意思決定の新しい科学、リーダーシップの資質を扱う、短い結びの章。
事例
14の事例が各章に対応しており、SpaceX、Kering と LVMH、米国の合法大麻産業、リチウムイオン電池産業、Netflix と Disney、BP、Starbucks、Eastman Kodak、Nvidia、Zara、City Football Group、Alphabet、Amazon、Haier などが含まれる。
主要概念
第I・II部:分析の道具
- 適合としての戦略:企業の目標・資源と環境との整合。
- 企業価値とリアルオプション:年間の利益を超えて戦略の成果を判断する方法。
- 5つの力とその先:産業分析。エコシステム、補完財、ビジネスモデルへ拡張される。
- 資源とケイパビリティ:競争優位の内的な基盤。
第III部:事業戦略
- コスト優位と差別化優位:競争優位を得る二つの道筋。
- 産業ライフサイクル:産業が進化する段階と、各段階が戦略に求めるもの。
- ネットワーク外部性とプラットフォーム:技術基盤の競争の経済学。
第IV部:全社戦略
- 垂直統合:バリューチェーンのどこまでを所有するかの選択。取引費用で枠づけられる。
- 多角化と関連性:企業がなぜ他の事業に広がるのか、いつそれが報われるのか。
- コーポレート・ガバナンス:複数事業企業がどう指揮され統制されるか。
批判的分析
長所
- 明快な構成。 道具(目標、産業、資源、組織構造)から事業戦略、全社戦略へと進み、後の部は前の部を使う。出版社は説明の明快さと実用性を強調している。
- 事例が組み込まれている。 14の事例が「Matching Cases to Chapters」の案内で各章に対応しており、概念をすぐに応用できる。
- 現在の環境に合わせた更新。 第12版では、深い不確実性と理論化、ビジネス・エコシステム、ネットワーク外部性とプラットフォーム、戦略的意思決定における人工知能、ESG の問題が加わった。
- デジタルの学習支援。 電子テキストには動画、各学習目標の復習動画、自動採点のクイズが含まれる。
短所
- 結びの章が短い。 第14章は四つのテーマ(技術変化、政治的・社会的・環境的課題、戦略的意思決定、リーダーシップ)に約7ページしか割いておらず、これらの最近の話題は紹介にとどまる。
- 深さより広さ。 一冊の14章で目標、産業分析、資源、組織構造、事業戦略、全社戦略を扱うため、各道具は教科書の分量で示される。道具の背後にある経済学を知りたい読者は、より専門的な本が必要になる。
- 事例が頁数のかなりを占める。 約512ページのうち、事例は319ページから用語集までを占め、本文は頁数が示すより短い。
コースにおける位置づけ
Grant は戦略の授業の中核となる分析的な教科書で、短い概念的な読み物と、より専門的な経済学の著作との中間に位置する。Good Strategy Bad Strategy と Understanding Michael Porter は一般の読者向けの短く読みやすい本で、後者はポーターの5つの力とバリューチェーンの案内である。ポーターの Competitive Strategy は産業と競合の分析の基礎的な文献で、本書の第3・4章の主題である。Exploring Strategy は範囲が近く、ヨーロッパ的な視点をもつ教科書で、戦略的ポジション、選択、行動に沿って構成され、最も近い代替である。
Besanko、Dranove、Shanley、Schaefer の Economics of Strategy は、ミクロ経済学とゲーム理論により、企業の境界、競争、ポジショニングをより深く論じる。分野全体を知るにはまず Grant を読み、産業分析、競争優位、垂直統合の背後にある経済学的推論をさらに見たいなら、その後で Besanko を読むとよい。
本書の使い方
MBA、学部上級の授業、経営幹部のために書かれている。経営学または戦略の入門科目、基礎的なミクロ経済学と財務会計の知識があると役に立つ。
- 中核: 第1〜3章と第5章(分析の論理)、第7章(競争優位の中心的な考え方)、第10章と第12章(全社戦略)。
- 必要に応じて: 第4章(ゲーム理論とエコシステム)、第6章(実行)、第8・9章(動的な産業と技術主導の産業)、第11章(国際戦略)、第13章とその付録(複数事業企業と買収)。
- 事例とともに: 各章を、書中の案内で対応づけられた事例と組み合わせ、分析(産業、資源、戦略)を自分で行う。各章末の自習用の問いで理解を確認する。
