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Being Ethnographic: A Guide to the Theory and Practice of Ethnography(エスノグラフィックであること:エスノグラフィーの理論と実践への手引き) cover

人類学

人類学

Being Ethnographic: A Guide to the Theory and Practice of Ethnography(エスノグラフィックであること:エスノグラフィーの理論と実践への手引き)

Raymond Madden

英語原題: Being Ethnographic: A Guide to the Theory and Practice of Ethnography

オーストラリアの人類学者レイモンド・マッデンによる読みやすいエスノグラフィーの手引きで、フィールドワークを技法の集まりであるだけでなく、世界の中での一つのあり方としてとらえる。マッデンはエスノグラフィーの実践の背後にある考え方を説明し、研究者自身の立場への再帰性を重視しながら、自らのフィールドワークやほかの研究の事例で論点を示す。

前提知識: 不要。初めてのエスノグラフィー研究に取り組む、またはその準備をする学生向けに書かれている。

難易度レベル
初級
学術レベル
学部
ethnographyfieldworkparticipant observationqualitative methodsreflexivity

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Madden, R. (2022). Being Ethnographic: A Guide to the Theory and Practice of Ethnography (3rd ed.). SAGE Publications.

章の要約

第3版は約232ページで、4部10章から成る。最初の3部はエスノグラフィー研究の流れ(概念、フィールドワーク、執筆)に沿って進み、第4部はこの方法を新しい場へと広げる。出版社は本書を、現実の場でフィールドワークを行うための入門的なガイドブックと位置づけ、方法論的な再帰性、すなわち調査者自身の関心・偏り・イデオロギーが研究をどう形づくるかを一貫して強調している。初版の書評(Jodie Taylor、Journal of Sociology、2011年)は、著者が冒頭で自らを読者に紹介し、オーストラリアのアボリジニ・コミュニティで非先住民の調査者として行った研究を含む自身のフィールドワークを全体を通じて引いていること、そして各章末に問い、討論のテーマ、推薦文献が置かれていることを指摘している。

第I部 Key Concepts and Theoretical Frames(主要概念と理論的枠組み):'Definitions', Methods and Applications(「定義」、方法と応用);Ethnographic Fields: Home and Away(エスノグラフィーのフィールド:ホームとアウェイ)

第I部は、エスノグラフィーとは何か、何のために用いられるのかについて、柔軟な作業上の定義を示す。初版についてTaylorは、エミック(内部者)とエティック(外部者)の理解の釣り合いの取り方、倫理、人類学的エスノグラフィーと社会学的エスノグラフィーの違いに関する助言を特に評価している。「ホームとアウェイ」のフィールドを扱う第2の章は、フィールドという場をどう構想するかを論じる。Taylorによれば、フィールドの地理的・社会的・感情的な多層性についての指針が、著者自身のフィールドワークを例に示されている。

第II部 Doing Ethnography(エスノグラフィーを行う):Talking to People: Negotiations, Conversations and Interviews(人々と話す:交渉、会話、インタビュー);Being with People: Participation(人々とともにいる:参与);Looking at People: Observations and Images(人々を見る:観察と画像)

中盤の第II部は、フィールドワークの中心となる三つの活動を、「話す」「ともにいる」「見る」の各章で扱う。最初の章はアクセスの交渉から会話とインタビューまでを含み、2番目の章は参与とフィールドでの人間関係を、3番目の章は観察と「エスノグラファーのまなざし」を、視覚的方法も含めて扱う。Taylorは、インタビューと観察についての助言を率直で実践的だと評し、視覚エスノグラフィーの可能性と限界の両方を論じた部分、そして権力関係と調査者の社会的位置への注意を高く評価した。出版社は第3版で間主観性に関する新しい記述が加わったとしている。

第III部 Inscription(記録すること):Description: Writing 'Down' Fieldnotes(記述:フィールドノートを「書き留める」);Analysis to Interpretation: Writing 'Out' Data(分析から解釈へ:データを「書き出す」);Interpretation to Story: Writing 'Up' Ethnography(解釈から物語へ:エスノグラフィーを「書き上げる」)

第III部は書くことを三段階に分ける。フィールドでの記録、データの分析と解釈、そして完成した記述の構成である。Taylorによれば、初版ではフィールドノートの章がノートを取ることや映像・音声記録の目的を検討し、分析の章は著者の博士研究をもとにデータを「蒸留」する際の難しさを示し、最後の章はエスノグラフィーの物語を組み立てる過程を4つの段階に分けて説明していた。第3版では、デジタルの記録ツールに関する情報と、質的データ分析ソフトウェアの実践的な手引きが加わっている。

第IV部 Expanding Ethnography(エスノグラフィーを広げる):Online Ethnography (with Dr Andrew Whalley)(オンライン・エスノグラフィー、Andrew Whalley博士との共著);Conclusion: Ethnographic Horizons(結論:エスノグラフィーの地平)

最後の第IV部は、従来の対面型フィールドワークの外へと進む。Andrew Whalleyとの共著であるオンライン・エスノグラフィーの章が、この版で新たに加わったサイバーエスノグラフィーとソーシャルメディアの扱いを担う。結論の章はこの方法の今後の地平を展望する。出版社は動物を対象とするエスノグラフィーについての記述が拡充されたとしており、Taylorは初版において、この主題を間主観性の限界が方法を試す場面の主要な例として挙げていた。出版社が引用する推薦文は、パンデミック後のフィールドワークにも触れている。

主要概念

第I部:主要概念と理論的枠組み

  • あり方としてのエスノグラフィー:書名に示された本書の枠組みで、エスノグラフィーは技法の集まりであると同時に、調査者の構えでもあるという考え方。
  • エミックとエティック:行動に対する内部者の視点と外部者の視点。冒頭の章は初学者にその釣り合いを取るよう求める。
  • フィールド、ホームとアウェイ:遠く離れた場所であれ身近な場所であれ、フィールドは調査者が構成するものだという見方。

第II部:エスノグラフィーを行う

  • アクセスと交渉:会話やインタビューに先立つ、人々と話すことの最初の段階。
  • 参与:時間をかけて人々とともにいることを、エスノグラフィー的知識の基盤とする考え方。
  • 観察と画像:方法としての「見ること」と、その視覚的な拡張および限界。
  • 方法論的再帰性:調査者の位置や偏りが、何を観察し何を書くかをどう形づくるかに注意を払うこと。

第III部:記録すること

  • 「書き留める」「書き出す」「書き上げる」:フィールドノート、分析、最終テクストという本書の三段階モデル。
  • 質的分析ソフトウェア:第3版で加わった、データを整理しコード化するためのデジタルツール。

第IV部:エスノグラフィーを広げる

  • オンライン・エスノグラフィー:デジタル空間やソーシャルメディアでのフィールドワークを、それ自体ひとつのフィールドとして扱うこと。
  • 間主観性:調査者と参加者のあいだの共有された理解と、その限界。動物との関係も含む。

批判的分析

長所

  • 研究全体を見通せる明快な道筋。 4つの部は、定義からフィールドワーク、執筆へとエスノグラフィー研究をたどり、さらに新しい場へと進む。Taylorは初版を明確に定義され論理的に構成された本と評しており、書くことを「書き留める・書き出す・書き上げる」の3章で扱う構成は、方法論の本ではしばしば手薄になりがちな段階に使いやすいモデルを与えている。
  • 理論と実践の結合。 副題とTaylorの書評はともに、本書がエスノグラフィーを「行う」方法とそれについて「考える」方法を結びつけていることを示している。助言は抽象的な規則ではなく、著者自身のフィールドでの経験に根ざしている。
  • 再帰性と倫理を一貫して重視。 出版社は調査者の関心・偏り・イデオロギーを第3版の中心に据えており、書評は権力関係と立場性、倫理、フィールドワークの感情的・身体的な側面についての実践的な指針を評価している。
  • 短く、更新されている。 約232ページなので一学期で通読できる。第3版ではオンライン・エスノグラフィー、デジタル記録ツールと分析ソフトウェア、動物に関する記述の拡充が加わり、村落型の単一のフィールドワーク像に限定されていない。

短所

  • 書評が指摘した欠落。 Taylorは初版について、自伝的方法とオートエスノグラフィー、フェミニスト・エスノグラフィーの扱いが薄く、エスノグラフィーの文体や語りの声についての議論も、どの場面でどれを使うべきかの指針としては不十分だとした。これらは初版への指摘だが、第3版の目次にもこれらの主題を扱う章は見当たらない。
  • 技法のマニュアルではない。 本書は分量の控えめな入門ガイドである。サンプリング、構造化されたデータ収集、量的分析の詳しい手順や、フィールドノートの書き方についての踏み込んだ助けを必要とする読者は、より包括的な方法論のテキストが必要になる。
  • 個人的色彩が強い。 著者自身のフィールドワークに依拠することは読みやすさの面では長所だが、事例の多くが一人の研究者のプロジェクトに由来することにもなる。より幅広い実践を知るために、刊行されたエスノグラフィーもあわせて読むとよい。

コースにおける位置づけ

エスノグラフィー方法論のリストの中で、Maddenは最初に読む短い一冊である。研究を始める前に、エスノグラフィーとは何か、それが調査者に何を求めるのかを説明する。David Fettermanの Ethnography: Step-by-Step はその実践的な対になる本で、応用研究・評価研究の経験から書かれた段階ごとの手引きである。手順を求める学生にはFettermanのほうが指示的であり、Maddenは再帰性やフィールドの性質により多くの紙幅を割く。コースの冒頭で両方を読めば、理由と手順をあわせて得られる。

Martyn HammersleyとPaul Atkinsonの Ethnography: Principles in Practice は、より体系的な次の一歩で、研究デザインから執筆までを再帰的な過程としてのエスノグラフィーとして包括的に論じる。Robert Emerson、Rachel Fretz、Linda Shawの Writing Ethnographic Fieldnotes はMaddenの第III部が導入する内容を掘り下げ、H. Russell BernardとAmber Wutichの Research Methods in Anthropology は質的・量的アプローチを網羅する総合的な方法論教科書である。James CliffordとGeorge Marcus編の論文集 Writing Culture は、エスノグラフィーの記述がどのように書かれ権威づけられるかというMaddenの関心の批判的背景をなし、Maddenの「書き上げる」の章の後に読むとよい。

本書の使い方

本書は、初めてのエスノグラフィー研究やフィールドワーク科目に備える学部生、そしてエスノグラフィーへの手引きを必要とする他分野の大学院生に向いている。方法論の予備知識は前提としていない。

  • フィールドワークの前に: 第I部と第II部を順に読む。冒頭の章はエスノグラフィーがどのような知識を生み出すか、フィールドをどう定めるかを確立し、「人々」を扱う3つの章が実践的助言の中心である。
  • フィールドワーク中に: フィールドノートの章を手元に置き、人間関係やアクセスが難しくなったときには参与と観察の章に立ち返る。
  • フィールドワークの後に: 分析と書き上げの章をあわせて読む。ソフトウェアを使う場合は、第3版の実践的な手引きがここで役立つ。
  • 研究に応じて選択: デジタルやソーシャルメディアでのフィールドワークにはオンライン・エスノグラフィーの章を、動物を対象とする研究やこの方法の行く末を広く見渡したい場合には結論の章を読む。

初版以来の特徴である章末の問いと討論テーマは、ゼミの話題として、あるいは再帰的な研究日誌として使うとよい。自分の研究についてそれらに答えることは、本書が求める再帰性を実践する直接的な方法である。推薦文献をたどって刊行されたエスノグラフィーへと進み、観察に大きく依拠する研究では、執筆の章をフィールドノートについてのより詳しい解説と組み合わせるとよい。