01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Lancy, D. F. (2022). The Anthropology of Childhood: Cherubs, Chattel, Changelings (3rd ed.). Cambridge University Press.
章の要約
第3版には番号付きの章が10あり、ほかに序文、長い参考文献(全体で約584ページのうち419–545ページ)、主題索引、社会索引、著者索引がある。ケンブリッジ大学出版局は、本書を、子ども期と青年期に関する1世紀以上の人類学的研究を概観・整理したものと説明している。構成は発達の順で、乳児期から青年期、成人期初期へと進み、民族誌や日常のメディアから引いた逸話が添えられる。書名の三つの形象は、ケルビム(cherub、慈しまれる子ども)、動産(chattel、財産または労働力としての子ども)、取り替え子(changeling、望まれない子ども)である。
第1章:Where Do Children Come from?(子どもはどこから来るのか)
この分野の土台を築く。子ども研究は心理学が主導してきたが、人類学には長い伝統があり、心理学の主張の多くが文化に縛られていることを示してきた。ミードの青年期研究、マリノフスキーのフロイト批判、ピアジェの普遍的な発達段階説への異文化間からの挑戦、母子の愛着を第一とする見方への疑問がそれである。この章は、本書の二つの「価値のピラミッド」である長老制(gerontocracy)と幼権制(neontocracy)の概念を導入し、子ども研究の方法を紹介し、本書全体の構成を示す。
第2章:The Value of Children(子どもの価値)
義務は親から子へ一方向に流れるという通念を、他の社会の証拠と対比する。たとえば西アフリカのある人々では、相続が父から息子へ流れるのと同じように、息子から父へも流れうる。話題は、人格の付与の遅れ(delayed personhood)、動産としての子ども、子どもの移動、児童労働、「かけがえのない」子どもなどである。
第3章:To Make a Child(子どもをつくる)
より一般的な長老制のもとでの命の始まりを見る。そこでは「子ども」は年長者より下位の社会的地位である。話題は、家族内の対立、親による出産の捉え方、性別の選好、子どもの病気と治療、埋葬と喪、出生率で、ザンビアのトンガ人の例では、死産の子どもは儀礼なく葬られ、生き延びた子どもは価値の梯子を上っていく。
第4章:It Takes a Village(村が必要だ)
著者が1973年にリベリアの村で、首長の一夫多妻の世帯で行ったフィールドワークから始まる。次の章は、この章を依存というレンズから見た子ども期だと述べている。子どもの脳は大きく急速に成長するのに、長いあいだ自立できない。
第5章:Making Sense(意味を理解する)
依存の裏側として、子どもが周囲を理解し、そこになじもうと努める過程を扱う。キーワードには、乳児の認知、観察と参加による学習、道具の発見、ごっこ遊び、仲間からの学び、礼儀の訓練、ジェンダーの社会化、文化伝達が挙がっている。出版社は、世代を超えた文化伝達を、この版で新しい内容として挙げている。
第6章:Of Marbles and Morals(ビー玉と道徳)
遊びについて。子どもがおもちゃや遊び仲間に没頭することは、世話をする側に余裕を与える。章はさらに、監督のない遊び、おもちゃ作り、遊び仲間の集団、道徳性の発達、社会的技能、文化や大人が遊びをどう形づくるかといった、ほかの利点に及ぶ。
第7章:The Chore Curriculum(家事のカリキュラム)
1960年代後半の「六つの文化」調査から始め、労働を、長老制と幼権制の見方が最も隔たる問題として扱う。キーワードには、お使い、家事の習得、採集、農耕、牧畜、工芸、徒弟制がある。新しい内容として、子どもの手伝いと邪魔者、子どもが工芸を学ぶ様子が加わっている。
第8章:Living in Limbo(宙ぶらりんの生活)
中年期の子ども期(この版で新しい話題であり、比較的新しい研究領域でもある)と青年期を扱う。思春期、成人儀礼、戦士、性と結婚、社会変化の影響である。
第9章:Taming the Autonomous Learner(自律的な学習者を手なずける)
子どもが環境のなかで自分から学ぶことと学校教育とを対比し、ペルー・アマゾンのマツェス(Matses)の子どもたちの研究を手がかりに、村の学校の起源、教師としての親、学校教育が心に及ぼす影響を論じる。
第10章:Elastic Childhood(伸縮する子ども期)
グローバルな力が各社会の適応に負荷をかけ、子どもに及ぼす影響を見る。短縮された子ども期、稼ぎ手としての子ども、ストリートチルドレン、児童労働である。ケルビム、動産、取り替え子という区別が現在にも続いていることが示される。
主要概念
第1–4章
- 長老制と幼権制:子どもを価値の最下層に置く社会と、頂点に置く社会という二つの社会編成。
- WEIRD社会:西洋的で、教育水準が高く、工業化され、豊かで、民主的な環境の略称。主流の発達心理学は、そこでの子ども期のパターンをしばしば普遍的なものとみなしてきた。
- 人格付与の遅れ:乳児をまだ一人前の人とはみなさないこと。
第5–7章
- 観察と参加による学習:子どもが正式な授業なしに技能や作法を身につけること。
- 文化伝達:世代間での文化の受け渡しで、この版で新しい。
- 家事のカリキュラム:子どもがお使いや仕事の連なりを通じて大人の労働を学ぶこと。
第8–10章
- 中年期の子ども期:子ども期と青年期のあいだの時期。
- 自律的な学習者:環境から学ぶ子どもで、教室での教育と対比される。
- 稼ぎ手としての子ども:労働によって世帯を支える子どもの立場。
批判的分析
長所
- 証拠の幅広さ。 本書は1世紀分の民族誌的・歴史的報告に基づく。この版では350件以上の文献と58の要約表が加わり、参考文献は全体の5分の1を超える。
- 使いやすい発達順の構成。 章はライフコースに沿って並ぶので、遊び、労働、学習、青年期についての章を単独で読むことができる。
- 全体を貫く糸。 長老制と幼権制の対比は、第1章から価値、労働、現代世界を扱う章まで続き、この概観に視点を与えている。
- 専門外の読者にも読みやすい。 出版社は、人類学の背景がない読者にも理論を明快に紹介すると述べ、図版が豊富であるとも説明している。Sarah Blaffer HrdyやHeidi Kellerらの推薦文は、豊かな証拠の源だと評している。
短所
- 非常に大部。 約584ページは1学期の授業で扱える範囲を超え、引用の密度は1年次の読者を圧倒しかねない。
- 強い主張がある。 子ども中心の西洋の家族は特殊だという本書の中心的主張が全体を貫いている。読者は、二つのピラミッドの対比を、各社会についての事実ではなく枠組みとして扱うべきである。
- 証拠の年代が一様でない。 一部の章は、1960年代後半の「六つの文化」調査や、著者自身の1973年のリベリアでのフィールドワークなど、古い研究に依拠している。そのため、記述が現在の状況を反映していない場合がある。この版の350件の新しい文献は、それを補うためのものである。
コースにおける位置づけ
親族、宗教、儀礼の書目のなかで、Lancyの本は子ども期を中心に据えた唯一の本である。家族、子どもの価値、子どもの移動を扱う章によって親族研究とつながり、葬送の慣行と成人儀礼の扱いによって儀礼研究とつながる。Janet CarstenのAfter Kinshipは、親族を「関係性」(relatedness)として捉え直す理論的な再検討で、家族を扱う章と並べて読むことができる。
Victor TurnerのThe Ritual Process(通過儀礼とリミナリティ)は、第8章の成人儀礼と青年期の議論とよく対応し、Rebecca Steinらの教科書も儀礼の章で通過儀礼を扱っている。Lancyの本は、理論よりも比較の証拠を目当てに読む本である。人類学の予備知識なしで読めるが、文化人類学の一般的な入門書を先に読むと得るものが多い。
本書の使い方
人類学、子ども学、教育学、発達心理学の学部生や、工業化社会以外で子どもがどう育てられるかを比較の観点から知りたい人に向く。文化人類学の入門科目を履修していると役立つが、必須ではない。
実際的な進め方は次のとおり。
- 中心: 第1章と第2章。枠組みと中心的な対比が示される。
- テーマ別: 学習は第5章、遊びは第6章、労働は第7章、青年期は第8章、学校教育は第9章。それぞれ単独で読める。
- 心理学の学生: 第1章と第5章。発達についての普遍的な主張に疑問を投げかける。
- 政策・開発系の授業: 第10章。児童労働、ストリートチルドレン、グローバルな変化を扱う。
- 学期末レポートのために: 要約表と豊富な参考文献を使って民族誌の資料を探す。
