01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Asad, T. (Ed.). (1973). Anthropology and the Colonial Encounter. Ithaca Press.
章の要約
これは一人の著者によるモノグラフではなく、編著の論文集である。タラル・アサドの序論の後に2つの部があり、4本の「総論的研究」と7本の「事例研究」が並び、続いてフィリップ・マーフリートによる文献ノートと索引が置かれている。出版社の紹介は、各論文が、人類学の思想と実践がイギリスの植民地主義によってどう影響を受けたかを、さまざまな視点とさまざまなレベルから分析し記録するものであり、それぞれが1973年当時「始まったばかり」の議論への独創的な貢献であると述べている。以下の要約は目次の論文題に従い、題名と紹介文から分かる範囲にとどめている。
序論(タラル・アサド)
編者による序論は本書の幕を開け、各寄稿が展開する議論を導入する。
第1部:総論的研究
ピーター・フォースター「社会人類学に対するニューレフトの批判の検討」(A Review of the New Left Critique of Social Anthropology)。 最初の総論は、ニューレフトの立場からなされた社会人類学批判を概観する。
ウェンディ・ジェームズ「不本意な帝国主義者としての人類学者」(The Anthropologist as Reluctant Imperialist)。 題名は、人類学者を意に反して帝国の事業に引き込まれた人物として示している。
ステファン・フォイヒトヴァング「学問分野とそのスポンサー」(The Discipline and Its Sponsors)。 人類学を支えた機関や後援者と、学問分野の発展との関係に関わる論考。
タラル・アサド「非ヨーロッパ的支配についての2つのヨーロッパ的イメージ」(Two European Images of Non-European Rule)。 編者自身の論文で、ヨーロッパ人が非ヨーロッパの人々の統治を思い描く2つの仕方を対比する。
第2部:事例研究
ヘレン・ラックナー「植民地行政と社会人類学:東部ナイジェリア1920–1940年」(Colonial Administration and Social Anthropology: Eastern Nigeria 1920–1940)。 ある地域・時期における植民地行政と人類学の関係の研究。
ジェームズ・ファリス「パクス・ブリタニカとスーダン:S・F・ナーデル」(Pax Britannica and the Sudan: S. F. Nadel)。 人類学者S・F・ナーデルの仕事を、スーダンにおけるイギリス支配との関係で論じる論考。
リチャード・ブラウン「人類学と植民地支配:ゴッドフリー・ウィルソンと北ローデシアのローズ・リヴィングストン研究所」(Anthropology and Colonial Rule: Godfrey Wilson and the Rhodes-Livingstone Institute, Northern Rhodesia)。 ゴッドフリー・ウィルソンの経歴と彼が勤めた研究所を、北ローデシアの植民地支配を背景に論じる論考。
ジョン・クラマー「植民地主義とフィジーにおける伝統の認識」(Colonialism and the Perception of Tradition in Fiji)。 植民地支配がフィジーの「伝統」の理解をどう形づくったかを論じる論考。
ロジャー・オーウェン「帝国政策と社会変化の理論:インドのサー・アルフレッド・ライアル」(Imperial Policy and Theories of Social Change: Sir Alfred Lyall in India)。 植民地行政官サー・アルフレッド・ライアルを取り上げ、帝国政策と社会変化の観念のつながりを検討する研究。
ロイ・ウィリス「植民地主義に対する先住民の批判:タンザニアのフィパ」(An Indigenous Critique of Colonialism: The Fipa of Tanzania)。 アフリカの社会の内部で生まれた植民地主義批判に目を向ける論考。
アブデル・ガッファール・M・アハメド「人類学と植民地主義についての第三世界からのいくつかの所見:スーダン」(Some Remarks from the Third World on Anthropology and Colonialism: The Sudan)。 スーダンの立場からこの主題を見る視点。
文献ノート
フィリップ・マーフリート「論争についての文献ノート」(Bibliographical Notes on the Debate)。 結びの論考で、この論争に関する文献へ読者を導く。
主要概念
序論と第1部
- 人類学と植民地主義:本書を組織する関係、すなわちイギリス植民地主義が人類学の思想と実践に及ぼした影響。
- ニューレフトの批判:フォースターが概観する、社会人類学への急進的な批判。
- スポンサーシップ:フォイヒトヴァングの題が示す、人類学を支えた機関や後援者と学問分野との関係。
- 支配についてのヨーロッパ的イメージ:アサドの論文題が示す、ヨーロッパ人が非ヨーロッパ人への支配を思い描いた異なる仕方。
第2部
- 植民地行政:特定地域での行政官と人類学者の関係。
- 伝統の認識:フィジーの論文における、植民地主義が何を伝統とみなすかをどう形づくったか。
- 先住民の批判:研究対象とされた人々自身による植民地主義批判(フィパの論文)。
- 第三世界の視点:学問分野が研究してきた社会から、その学問分野を見る視点(スーダンの最後の論文)。
批判的分析
長所
- 明確で焦点の絞られた主題。 紹介文と目次は、英国植民地主義が人類学に及ぼした影響という一つの問いを、複数の著者がさまざまなレベルで扱っていることを示す。
- 総論と事例のバランス。 4本の総論と7本の事例により、学問分野全体の議論と、東部ナイジェリア、スーダン、北ローデシア、フィジー、インド、タンザニアという具体的な状況の間を行き来できる。
- 異なる立脚点。 目次には先住民の視点からの論考(フィパ)と、明示的に第三世界から書かれた論考(スーダン)があり、事例研究は個々の人類学者、機関、行政官を扱う。
- 読書案内。 マーフリートによる論争についての文献ノートは、周辺の文献へ読者を導く。
短所
- 1973年の論文集。 本書はその時代のものであり、のちのポストコロニアル理論、再帰性、脱植民地化に関する研究より前に書かれているため、読者が補う必要がある。
- イギリスとアフリカの事例が中心。 紹介文はイギリスの植民地主義に言及しており、事例研究は主にアフリカからで、フィジーとインドがその他の舞台である。他の植民地体制は、紹介文が示す主題ではない。
- 専門的な論文。 題名から判断して、いくつかの論文は個々の人物と機関(ナーデル、ゴッドフリー・ウィルソン、ライアル、ローズ・リヴィングストン研究所)を論じており、読者には人類学史の予備知識が必要である。
- 議論は形成途上。 紹介文自体がこの議論を「始まったばかり」と呼んでおり、本書は定説というより出発点として読むほうがよい。
コースにおける位置づけ
この「グローバル化と開発の人類学」のコースで、アサドの論文集は歴史的な土台である。人類学自体が植民地的な権力関係の中でどう生まれたかを問うもので、この問いはのちの開発とグローバル化の研究の背景にある。エリクセンの『Globalization: The Key Concepts』は概念ごとに構成された短い入門で、初めてこの主題に触れるのに適している。クルーとアクセルビーの『Anthropology and Development』は、人類学が国際開発の理解にどう役立つかを示す入門教科書であり、ガードナーとルイスの『Anthropology and Development: Challenges for the Twenty-First Century』は同じ関係を扱う批判的な教科書である。
エスコバルの『Encountering Development』は第二次世界大戦後に開発の観念がどう構築されたかを検討しており、アサドの後に自然に続く。アサドは人類学が植民地支配とどう絡み合っていたかを、エスコバルは開発がどのように知と介入の対象になったかを検討する。多くの学生にとっては、教科書を先に、次にアサド、その次にエスコバルという順がよい。
本書の使い方
社会人類学の基本的な歴史を知っていて、それがどのように問い直されてきたかを見たい学部上級生や大学院生に向く。教科書ではなく、論文は専門的で、植民地史の予備知識がある程度必要である。
実践的な読み方:
- 最初に: アサドの序論と4本の総論。議論とその思想的背景が示される。
- 次に事例研究を選ぶ: 自分の地域や関心に関わるもの。ラックナー(東部ナイジェリア)、ファリス(スーダンとナーデル)、ブラウン(北ローデシア)、クラマー(フィジー)、オーウェン(インド)、ウィリス(フィパ)。
- 最後に: 第三世界の視点のためにアハメドの論文、さらなる読書のためにマーフリートの文献ノート。
読みながら、各論文について、事例、植民地支配と人類学がどう結びついていたかについての主張、それを支持または疑問視しうる証拠を記録するとよい。人類学の脱植民地化や開発に関するより新しい研究と併読することを勧める。
