01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Young, R. J. C. (2020). Postcolonialism: A Very Short Introduction (2nd ed.). Oxford University Press.
章の要約
第2版は、オックスフォードの「Very Short Introductions」シリーズの小型本で、本文は約174ページ(前付を除く)、そのあとに参考文献、推薦文献、索引が続く。オックスフォードの書誌ページは、新版が人種、奴隷制、脱植民地性(decoloniality)、そしてジェンダーとセクシュアリティのポストコロニアルな政治に関する最新の内容を含むと述べている。目次には「montage」と題された冒頭部分と十一の章が載っているが、公開されているのは題名とページ位置だけなので、以下の記述は題名の範囲にとどめる。出版社の一覧では章に番号が振られており、第1章は「Subaltern knowledges」、第8章はジェンダー、クィア化、フェミニズム、第9章はグローバル化で、残りの章はページ位置の順に並ぶ。
序論:モンタージュ
「montage」と題された約12ページの冒頭部分で、番号付きの章に先立ち、主題別の章に入る前に主題を紹介する。題名以上の内容は公開されていない。
第1章:サバルタンの知(Subaltern knowledges)
最初の主題別の章は、サバルタンに結びつく知を取り上げる。題名から判断すると、支配的な語りの外にあった視点から出発している。
第2章:植民地主義、脱植民地化、脱植民地性(Colonialisms, decolonization, decoloniality)
三つの関連する用語を並べて掲げる。植民地支配、その終結、そしてその継続する影響に対する脱植民地的批判の語彙が示される章である。
第3章:奴隷制、人種、カースト(Slavery, race, caste)
三つの階層化の体系である奴隷制、人種、カーストを一つの章にまとめる。出版社が、新版で人種と奴隷制が更新されたと述べていることと合致する。
第4章:下からと上からの歴史と権力(History and power from below and above)
歴史と権力にかかわる。題名は、権力者の立場からと被支配者の立場からの両方で語られる叙述を示している。
第5章:遊牧民、国民国家、国境(Nomads, nation-states, borders)
移動と定住、すなわち遊牧民、国民国家、領土を分ける国境を取り上げる。
第6章:ハイブリディティ(Hybridity)
混淆と文化的融合の概念であるハイブリディティの章。ポストコロニアル理論で認められた用語である。
第7章:ヴェールの両義性(The ambivalence of the veil)
ヴェールを軸にした章。題名は、ヴェールを複数の意味をもつものとして扱う叙述を示唆する。
第8章:ポストコロニアルな文脈におけるジェンダー、クィア化、フェミニズム(Gender, queering, and feminism in a postcolonial context)
ポストコロニアルな状況におけるジェンダーとセクシュアリティに向かう。出版社が新版で更新した領域である。
第9章:ポストコロニアルな視点からのグローバル化(Globalization from a postcolonial perspective)
ポストコロニアルな思考を通して見たグローバル化を扱う。
第10〜11章:エコロジーと先住性、翻訳(Ecology and indigeneity; Translation)
終わりの章は、エコロジーと先住性、そして翻訳を取り上げる。題名から、環境と先住民の問題、そして言語や文化のあいだで意味を移すことの問題を扱うと考えられる。
主要概念
序論と第1〜4章
- サバルタンの知:支配的な秩序の外にある集団が保持する知(第1章)。
- 脱植民地化と脱植民地性:植民地支配の終結と、その継続する構造への批判(第2章)。
- 奴隷制、人種、カースト:まとめて扱われる社会的階層の形態(第3章)。
- 下からと上からの歴史:歴史と権力が語られる立場(第4章)。
第5〜9章
- 国民国家と国境:遊牧と並べて見た領土的組織(第5章)。
- ハイブリディティ:文化的混淆(第6章)。
- ヴェール:分析の主題としての両義性(第7章)。
- クィア化とフェミニズム:ポストコロニアルな文脈におけるジェンダーと性の政治(第8章)。
- グローバル化:ポストコロニアルな立場から見たもの(第9章)。
第10〜11章
- エコロジーと先住性:環境と先住民の問題。
- 翻訳:言語や文化を越えて意味を移すこと。
批判的分析
長所
- 短く主題別の構成。 十一の章はそれぞれおよそ10〜20ページで、単一の歴史的順序ではなく主題ごとに入ったり拾い読みしたりしやすい。
- 更新された版。 出版社は、第2版が人種、奴隷制、脱植民地性、ジェンダーとセクシュアリティに関する内容を加え、分野の広がりを反映していると述べている。
- 幅広い主題。 目次は、知と歴史から国境、ハイブリディティ、ヴェール、ジェンダー、グローバル化、エコロジー、翻訳に及び、200ページに満たない分量でこの分野の広い地図を与える。
- 著者。 著者のRobert J. C. Youngは文学・文化理論家で、本書は、主題に初めて触れる読者向けの短い入門として企画されたシリーズに属する。
短所
- 短さ。 この長さでは各主題の地図を示すことしかできず、サバルタン研究や脱植民地性など一つの主題について持続的な議論を求める読者は、より長い著作が必要になる。
- 見える詳細が少ない。 公開されているのは章題だけである。各章が事例研究や特定の著者・地域に依拠しているかどうかは、出版社のページからは確認できない。
コースにおける位置づけ
ポストコロニアル・脱植民地のコースの中で、本書は最も広く最も短い入門である。Frantz Fanonの Black Skin, White Masks は、白人が支配する社会における黒人への植民地主義の心理的影響を論じた一次文献で、第2〜3章と並べて読める。Gurminder K. BhambraとJohn Holmwoodの Colonialism and Modern Social Theory は、社会理論の古典を植民地主義と帝国の観点から読み直す本で、社会学的な次の一歩となる。Bhambraの Rethinking Modernity は、植民地の歴史が近代性をどう形づくるかという議論を発展させる。
Linda Tuhiwai Smithの Decolonizing Methodologies は研究と先住民を扱い、脱植民地化された研究のあり方を提案しており、本書の終わりのエコロジーと先住性の章とつながる。Folúkẹ́ Adébísíの Decolonisation and Legal Knowledge とFaye V. Harrison編の Decolonizing Anthropology は、脱植民地的思考を法学と人類学に適用しており、この概観のあとに特定の学問分野を考えている読者に向く。
本書の使い方
ポストコロニアル理論や脱植民地理論についての予備知識は想定されていない。1年次の学部生、他分野の読者、この分野の概観を求める一般の読者に向く。
実践的な進め方は次のとおり。
- 序論と第2章から始める。 二つで、ほかの箇所で使われる植民地主義、脱植民地化、脱植民地性の語彙が整う。
- 主題別に読む。 各章は単独で読めるほど独立している。奴隷制、人種、歴史、国境は第3〜5章、ハイブリディティ、ヴェール、ジェンダーは第6〜8章、グローバル化、エコロジー、翻訳は第9〜11章。
- 推薦文献を使う。 巻末には参考文献と推薦文献があり、一次文献やこのコースのより長い著作への道筋となる。
- 版を確認する。 第2版(2020年)が旧版に代わるものであり、出版社は更新された主題(人種、奴隷制、脱植民地性、ジェンダーとセクシュアリティ)を新版の内容として挙げている。
