01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Fiske, S. T. (2025). Social Cognition: From Brains to Culture (5th ed.). SAGE Publications.
章の要約
第5版は全13章で、序章に続く4つの部からなる。出版社の紹介は主題を率直に述べている。社会の世界は複雑で心には限りがあるので、人は近道を使う。その多くは十分うまく機能するが、人種や社会階層のカテゴリーなど、深く不公正なものもある。本書はこれらの近道がどう働き、なぜ存在し、どう変化しているかを説明する。この版では古くなった内容を削り、AIと機械学習についての内容を加え、正確性に関する新しい章が設けられた。出版社は、本書が自己啓発書でも「善行のすすめ」でもなく、よい話を語り、社会的認知が何に役立つかを示す教科書だと強調している。
第1章:序論
冒頭の章は、この分野と本書が扱う内容を示す。
第I部:社会的認知の基本概念(第2〜4章)
第2章:社会的認知における二重のモードは、社会の世界について考える二重のモードを紹介する。第3章:注意と符号化は、人が社会的情報にどう気づき取り込むかを、第4章:記憶における表象は、その情報がどう表象され貯蔵されるかを扱う。
第II部:個人としての自己と他者を理解する(第5〜7章)
第5章:社会的認知における自己は、人が自分自身についてどう考えるかを扱う。第6章:特性の帰属は、他者の行動からその人がどういう人かを推論することを扱う。第7章:確率のヒューリスティックな判断は、可能性を判断するときの近道を扱い、判断・意思決定研究と最も直接につながる章である。
第III部:社会を理解する:論点と集団(第8〜10章)
第8章:態度:認知構造とプロセスは、態度を認知構造およびプロセスとして考察する。第9章:ステレオタイプ:認知とバイアスと第10章:偏見:認知的バイアスと感情的バイアスの相互作用は、人が集団をどう知覚するか、そして偏見における思考と感情の相互作用に目を向ける。出版社の紹介は、人種や社会階層のカテゴリーを含め、深く不公正な近道があると述べている。
第IV部:認知を超えて:感情と行動(第11〜13章)
第11章:感情と社会的認知は、説明に感情を加える。第12章:行動と認知は、思考と人の行動を結びつける。第13章:正確性と合理性は新設の章で、社会的な思考がどれだけ正確で合理的かを論じる。
主要概念
- 二重のモード:社会的認知の二つのモードで、第2章の主題。
- 注意、符号化、記憶における表象:第3・4章のプロセス。
- 自己と特性の帰属:人が自分と他者をどう説明するか(第5・6章)。
- 確率のヒューリスティックな判断:第7章が扱う可能性判断の近道。
- 認知構造とプロセスとしての態度:第8章。
- ステレオタイプと偏見:第9・10章。認知とバイアスを感情と結びつける。
- 正確性と合理性:第13章の問い。
批判的分析
長所
- 心の近道に焦点を当てている。 出版社は、限られた心が近道を使うというひとつの考えを軸に本書を編成し、基本的な注意と記憶から態度、ステレオタイプ、行動までをたどる。13章に明確な糸が通っている。
- 説明の水準をつなぐ。 副題「脳から文化へ」は、頭の中の過程を社会的・文化的文脈に結びつけようとする意図を示し、第IV部は説明を認知から感情と行動へ広げる。
- 内容の更新。 第5版は古くなった内容を削り、AIと機械学習を加え、新設の正確性と合理性の章で締めくくって、それまでの内容を評価するよう読者を促す。
- 著者と語り口。 出版社の著者紹介は、スーザン・フィスクをプリンストン大学の名誉教授であるユージン・ヒギンズ心理学教授・公共政策教授としており、科学を述べるだけでなくよい話も語る本だと紹介している。
短所
- 専門的な教科書。 目次は社会的認知の過程を中心に編成されているので、社会心理学が初めての読者は、まず入門教科書を読むのがよい。
- 章題の範囲。 AIと機械学習は紹介文にあるが、どの章題にも現れないので、それらを長く扱う授業は他の資料を要する。
コースにおける位置づけ
社会心理学の書目の中で、本書は認知の側面を扱う上級のテキストである。アロンソンの Social Psychology とギロヴィッチ、ケルトナー、チェン、ニスベットの Social Psychology は分野全体を扱う学部向け教科書、クリスプの Social Psychology: A Very Short Introduction は短い概説、チャルディーニの Influence は説得についての一般読者向けの本である。フィンケルとバウマイスターの Advanced Social Psychology: The State of the Science は、研究者が主要領域をそれぞれレビューする大学院向けの論集である。
学部向けの教科書のいずれかを読んだ後でフィスクを読むとよい。本書は全体が社会的認知にあてられており、帰属、態度、ステレオタイプ、偏見を扱う第II・III部は、一般的な教科書の対応する主題の自然な次の段階になる。第7章は、このコースを判断・意思決定の資料につなぐ。
本書の使い方
中級の社会心理学と認知心理学の入門を履修した上級学部生や大学院生に向く。ステレオタイプと偏見を理解したい政治学、組織論、政策の分野の読者にも適している。
読み方の例は次のとおり。
- **中核:**基本概念の第1〜4章、続いて自己、帰属、ステレオタイプ、偏見の第5、6、9、10章。
- **その後:**より広い全体像のために第8章(態度)と第11〜12章(感情と行動)。
- **第13章で締めくくる。**新設の正確性と合理性の章で、それまでの内容を評価する。
- **任意:**判断・意思決定の授業も取っているなら第7章。
- 出版社が追加したと述べるAIと機械学習の内容を探し、人間と機械の近道がどう論じられているかを比べる。
