01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
O'Neill, K. (2017). The Environment and International Relations (2nd ed.). Cambridge University Press.
章の要約
本書はケンブリッジ大学出版局の「Themes in International Relations」シリーズの一冊である。巻頭の説明によれば、このシリーズは上級の学部生と大学院生向けの簡潔で読みやすい概説で、各巻に章ごとの読書案内と討論課題が付く予定とされる。第2版は約300ページ、全9章で、参考文献は約35ページある。出版社は、本書が国際関係論の理論と道具を用い、複数の学問分野を取り込んだ歴史的・分析的な枠組みによって地球環境問題を分析し、今版は2015年12月のパリ協定まで更新されていると述べている。新しく加わったのは市場メカニズムを扱う第8章である。
第1章:序論:環境と国際関係
冒頭の章(27ページ)が本書の枠組みを示す。序文はその背後にある立場を示している。地球環境政治には、環境を守りたいという規範的な願いと、政治の動態をありのままに説明するという分析上の必要との間の緊張があり、本書は、まず既存のガバナンスの仕組みを理解しなければならないという考えに立っている。
第2章:地球環境問題
問題そのものの概観。題名は、問題が、それに対応する行為主体や制度よりも先に扱われることを示している。
第3章:地球環境政治の行為主体
環境政治の参加者。後続のガバナンスの章で分析される各主体を紹介する。
第4章:国家主導の地球環境ガバナンス
国家が主導するガバナンス、典型的には条約や政府間機関。約34ページで、本書で最も長い章である。
第5章:地球環境ガバナンスの影響と有効性
有効性の問題。地球環境ガバナンスがどんな影響をもたらし、どこまで機能するか。これは、進歩は現在あるガバナンスの仕組みの理解にかかっているという序文の指摘に続くものである。
第6章:地球経済ガバナンスと環境
題名が示すとおり、地球規模の経済ガバナンスと環境の関係を扱う。目次には節が挙がっていないため、正確な扱う範囲は本書で確かめるのがよい。
第7章:非国家による地球環境ガバナンス
国家が主導しないガバナンス。章題が第4章の国家主導のガバナンスと区別しているので、この二つの章は対にして読むのがよい。
第8章:市場メカニズムの地球政治
第2版で加わった章。出版社は、この章が地球環境ガバナンスの新しい様式としての市場メカニズムの登場とその政治を検討するものだと説明している。
第9章:結論:21世紀の環境と国際関係
終章で、本書の議論をまとめ、21世紀を展望する。
主要概念
第1〜3章:枠組み、問題、行為主体
- 規範と分析の緊張:この分野の研究者は環境を守りたいと望みつつ、現実の政治の動きを説明しなければならない、という序文の指摘。
- 地球環境問題:後のガバナンスの章が応える主題。
- 行為主体:環境政治の参加者で、第3章で紹介される。
第4〜7章:ガバナンスの形態とその効果
- 国家主導のガバナンス:国家と政府間機関が推進するガバナンス。
- 非国家のガバナンス:国家が主導しないガバナンス。
- 有効性と影響:第5章の主題。
- 経済ガバナンス:地球規模の経済ルールと環境の結びつき。
第8〜9章:市場と将来
- 市場メカニズム:新しいガバナンスの様式で、新設の第8章で扱われる。
- 21世紀の展望:結論の方向。
批判的分析
長所
- 主題のわりにコンパクト。 参考文献を含め約300ページ、9章で、問題、行為主体、国家主導と非国家のガバナンス、市場を一冊に収めており、他の文献も読む授業で使いやすい。
- 分野の見通しが明快。 章は問題から行為主体、ガバナンスの形態、有効性へと進むので、どの問題にも当てはめられる論理的な問いの順序が得られる。
- 非国家のガバナンスと市場もガバナンスとして扱う。 第7章と新設の第8章は、本書が政府間条約の外にも目を向けていることを示し、条約ごとの記述よりも広い視野を求める読者に役立つ。
- シリーズの設計。 シリーズの説明は、各巻に章ごとの読書案内と討論課題が付くとしており、ゼミでの利用に役立つ。
短所
- 個別事例の詳細は目次からは見えない。 オゾン層や生物多様性といった個別の条約や問題の章は目次にない。詳しいレジームの事例研究を求める読者は、条約中心のより長い教科書を当たる必要がある。
- 2015年で区切られている。 版は2015年12月のパリ協定まで更新されたもので、それ以降の動きは他の資料が必要である。
- 想定読者が入門の授業より高度かもしれない。 巻頭のシリーズ説明は読者として上級の学部生と大学院生を挙げており、1年生向けの入門より高い出発点である。国際関係論が初めての読者は考慮する価値がある。
- 独立した書評は見つからなかった。 上の評価は出版社の説明、目次、序文に基づく。
コースにおける位置づけ
環境政治の書目にある二つの入門教科書のうち、こちらが短い方である。Chasek、Downie、Allan の Global Environmental Politics はより大部で、個々の条約レジームの発展を軸に組まれており、捕鯨、オゾン、気候、生物多様性、化学物質、プラスチックについて事例ごとの詳細を知りたいときに向く。O'Neill の本はより分析的で枠組み主導の選択肢で、それより先に、または並行して読める。Neil Carter の The Politics of the Environment は緑の政治思想、活動、国内政策を加えており、O'Neill があまり触れていない部分である。
Elinor Ostrom の Governing the Commons、Robyn Eckersley の Environmentalism and Political Theory、Matthew Paterson の In Search of Climate Politics はより専門的な著作で、それぞれ共同体が共有資源をどう統治するかの研究、環境政治理論の著作、気候変動の政治についての学術書である。O'Neill のような概説書の後に読むのがよい。
本書の使い方
本書は、地球環境ガバナンスを考える枠組みを求める、政治学・国際関係論・環境研究の学生に向く。序文が呼びかけているのは、深刻な環境の傾向のなかで育ち、現在の制度を理解して初めてそれを変えられる学生である。
実際的な進め方は次のとおり。
- 順に読む。 章は問題、行為主体、ガバナンス、有効性と積み上がっていく。第1〜3章は残りの前提となる。
- 中核。 第4、5、7章を合わせると、国家主導と非国家のガバナンスの主要な対比と、それぞれの成果がわかる。
- 授業に応じて選ぶ。 経済ガバナンスの第6章は貿易や政治経済学に重点を置く授業に、市場メカニズムの第8章は気候政策の授業に合う。
- シリーズの設計を使う。 各章にシリーズが謳う読書案内と討論課題が付いているなら、ゼミの準備に使い、第9章はレポートの出発点にする。
- 事例を扱う本と組み合わせる。 目次が条約別ではなくテーマ別なので、第4、5章と並行して、より長い教科書(たとえば Chasek、Downie、Allan のレジームの章)から詳しい事例を一つ読む。
