01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Jackson, J. D. (1998). Classical Electrodynamics (3rd ed.). Wiley.
章の要約
第3版は832ページで、序論と概観、16の章、単位と次元に関する付録からなる。各章の末尾には参考文献・推奨文献の一覧と問題がある。出版社の説明によれば、最初の10章ではSI単位系を用い、後半の章ではガウス単位系が残されている。
序論と概観
冒頭の短い節では、真空中と巨視的媒質中のマクスウェル方程式、逆二乗則と光子の質量、線形重ね合わせ、界面での境界条件、そして電磁気学で用いられる理想化についての所見が概観される。
第1章:静電気学入門
クーロンの法則、電場、ガウスの法則とスカラーポテンシャルに始まり、ポアソン方程式とラプラス方程式、グリーンの定理、ディリクレ境界条件とノイマン境界条件、グリーン関数へと進む。最後に静電エネルギー、変分的アプローチ、二次元問題の緩和法を扱う。この章自身の冒頭で、多くの読者にとって内容の大半は復習にあたると述べられており、本書が基礎から出発する構成ではないことがわかる。
第2–3章:静電気学の境界値問題 I・II
ポテンシャルを求める問題に2章が充てられている。第2章は鏡像法に始まり、球のグリーン関数、直交関数、直交座標での変数分離、有限要素解析の入門を扱う。第3章は球座標と円筒座標に移り、ルジャンドル多項式、ルジャンドル陪関数と球面調和関数、加法定理、ベッセル関数、およびこれらの基底によるグリーン関数の展開を扱う。
第4章:多重極、巨視的媒質の静電気学、誘電体
多重極展開と外部電場中の電荷分布のエネルギーから、誘電体へと進む。ここでは初等的な取り扱い、誘電体を含む境界値問題、分子分極率、分極のモデル、誘電体中の静電エネルギーが扱われる。
第5章:静磁気学、ファラデーの法則、準静的場
ビオ・サバールの法則、アンペールの法則、ベクトルポテンシャルが最初に置かれ、続いて局在電流分布の力、トルク、エネルギーと、境界条件を含む巨視的方程式が扱われる。その後、磁気遮蔽、二次元磁場の数値的方法、ファラデーの法則、場のエネルギー、インダクタンス、渦電流を扱う。出版社によれば、ファラデーの法則と準静的場は今回の版で静磁気学と同じこの章に移された。
第6章:マクスウェル方程式、巨視的電磁気学、保存則
マクスウェルの変位電流と完全な方程式に続いて、ポテンシャル、ゲージ変換(ローレンツゲージとクーロンゲージ)、波動方程式のグリーン関数と遅延解が扱われる。さらに巨視的電磁気学とポインティングの定理を導き、回転、空間反転、時間反転のもとでの場と源の振る舞いを論じる。後半の節では磁気単極子、ディラックの量子化条件、分極ポテンシャルが取り上げられる。
第7章:平面電磁波と波の伝搬
非導電性媒質中の平面波、偏光とストークスパラメータ、反射と屈折、誘電体・導体・プラズマの周波数分散を扱う。続く節では、電離層と磁気圏での伝搬、磁気流体波、群速度、パルスの広がり、クラマース・クローニッヒの関係が扱われる。
第8章:導波管、共振空洞、光ファイバー
導体表面とその内部の場、矩形およびより一般の円筒形断面の導波管、エネルギーの流れと減衰、共振空洞とそのQ値、シューマン共鳴を扱う。出版社によれば、光ファイバーと誘電体導波路に関する2つの節が今回の版で新たに加えられた。
第9–10章:放射系、多重極場と放射;散乱と回折
第9章は局在した源からの放射をまとめて扱い、振動双極子や中心給電の線状アンテナから、角運動量と角度分布を含む厳密な多重極展開までを論じる。第10章はこの手法を、長波長での散乱(空の青さに関するレイリーの説明を含む)、球による散乱、スカラー回折理論とベクトル回折理論、バビネの原理、光学定理に応用する。
第11–12章:特殊相対性理論;相対論的粒子と電磁場の力学
第11章はアインシュタインの公準から出発して、ローレンツ変換、4元速度、トーマス歳差運動、電気力学の共変性までを展開する。第12章は荷電粒子のラグランジアンとハミルトニアン、静的な場の中の運動、断熱不変量、ダーウィン・ラグランジアン、エネルギー運動量テンソルと保存則を扱う。
第13–16章:衝突とエネルギー損失;運動する電荷による放射;制動放射;放射減衰
これらの章では、荷電粒子のエネルギー損失と散乱およびチェレンコフ放射と遷移放射(第13章)、リエナール・ヴィーヘルトポテンシャル、ラーモアの公式、シンクロトロン放射、アンジュレーターとウィグラー、トムソン散乱(第14章)、制動放射と仮想量子法(第15章)、放射反作用と荷電粒子の古典的モデル(第16章)が扱われる。
主要概念
第1–4章:静電気学と誘電体
- グリーン関数:点源に対する解で、与えられた境界条件のもとでポテンシャルを組み立てるために用いられる。
- 境界値問題の方法:鏡像法、変数分離、直交関数による展開。
- 多重極展開:局在した電荷分布を主要なモーメントで表すこと。
第5–8章:静磁気学、マクスウェル方程式、波と導波場
- ゲージ変換:ポテンシャルに残る自由度で、ローレンツゲージとクーロンゲージが標準的な選択である。
- ポインティングの定理:場と電荷を合わせたエネルギーと運動量の保存。
- 分散と因果律:媒質の周波数依存性とクラマース・クローニッヒの関係。
- 導波モード:導波管や空洞の中で伝搬できる場のパターン。
第9–16章:放射、相対性理論、荷電粒子
- 多重極放射:局在した源からの放射を多重極の次数で整理したもの。
- ローレンツ共変性:電気力学をすべての慣性系で成り立つ形で書くこと。
- リエナール・ヴィーヘルトポテンシャル:任意の運動をする点電荷がつくる場。
- 放射反作用:放出された放射が放出する電荷自身に及ぼす影響。
批判的分析
長所
- 扱う範囲の広さ。 16の章で、静電気学から放射、相対性理論、放射反作用までが扱われ、冒頭のマクスウェル方程式の概観が全体を貫く見方を早い段階で示している。
- 解法の体系的な扱い。 ポテンシャルと境界値問題に3つの章を割き、鏡像法、グリーン関数、3つの座標系での変数分離、有限要素法の入門を備えているため、例の羅列ではなく道具立てが身につく。
- 放射と相対論の内容。 第9–16章は、多重極放射、散乱、回折、相対性理論、運動する電荷による放射、放射反作用を一か所にまとめており、シンクロトロン放射の節ではウィグラーとアンジュレーターが光源として取り上げられている。
- 各章に参考文献と問題。 各章の末尾に推奨文献と問題が付いており、出版社はこの版で110を超える問題が新しく加わったとしている。
短所
- 入門書ではない。 第1章自身が、内容の多くは大半の読者にとって復習だと述べており、出版社も本書を大学院課程向けの教科書と説明している。学部レベルの電磁気学とベクトル解析を学んでいない読者には、先に別の本が必要である。
- 2種類の単位系。 第1–10章はSI単位系、後半の章はガウス単位系であるため、読者は単位系を行き来する必要がある。単位と次元に関する付録にはSIとガウス単位の換算が含まれている。
- 数値的方法は簡潔。 数値的手法は、第2章の有限要素解析や第5章の磁場の数値的方法のような短い節で扱われるにとどまり、全体を通じた柱にはなっていない。
- 1つの講義には長すぎる。 832ページ、16章であり、通常の講義ではいくつかの章を選ぶことになる。第13、15、16章はより限られた話題を扱っている。
コースにおける位置づけ
このコースの図書一覧のなかで、ジャクソンは大学院レベルの扱いにあたる。FleischのA Student's Guide to Maxwell's EquationsとOpenStaxのUniversity Physicsの電磁気学の巻はやさしい最初の入門であり、Purcell と Morin の Electricity and Magnetism は微積分を用いる最初の本格的な電磁気学の講義向けである。Griffiths の Introduction to Electrodynamics は学部上級向けの包括的な教科書で、ジャクソンの前に読む自然な一冊である。Bittencourt の Fundamentals of Plasma Physics は、荷電粒子の運動、運動論、プラズマ中の波へ電磁気学を応用する専門的な続編であり、ジャクソンの第7章と第12章はその背景として関係が深い。
本書の使い方
学部の電磁気学を一通り学び、偏微分方程式、特殊関数、ベクトル解析を含む数理手法の講義を終えたあとに取り組むのがよい。第1章は目安として使える。復習として読めるなら、本書のレベルに合っている。
2学期にわたる講義での実践的な進め方は次のとおりである。
- 前期の中核: 第1–8章。第2–3章は境界値問題を解く練習として、第5–7章はマクスウェル理論の中心として扱う。
- 後期の中核: 第9–11章と第14章。放射、散乱、相対性理論、運動する電荷による放射を扱う。
- 任意または選択的: 第4章の分子モデル、第7章のプラズマと電離層に関する節、第12、13、15、16章、有限要素法と数値的方法の節。
各章に合わせて問題を解くこと。章末の参考文献は、さらに読み進めるための手がかりになる。章をまたいで式を比べる前に、その章がどちらの単位系を使っているかを確認しておくこと。
