01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Moebs, W., Ling, S. J., & Sanny, J. (2016). University Physics Volume 2. OpenStax. Free official edition: https://openstax.org/details/books/university-physics-volume-2
章の要約
第1章:温度と熱
第1部「熱力学」は、温度と熱平衡(熱力学第零法則)、温度計と温度目盛り、熱膨張から始まる。続いて、熱、比熱と熱量測定、潜熱を伴う相変化、そして伝熱の三つの機構――伝導、対流、放射――を扱う。
第2章:気体分子運動論
理想気体の法則(および実在気体のためのファンデルワールスの状態方程式)から出発し、圧力と温度を分子の運動と二乗平均速度で説明する分子モデルを組み立てる。エネルギー等分配から熱容量を導き、分子の速さのマクスウェル=ボルツマン分布を導入する。
第3章:熱力学第一法則
熱力学系、膨張する気体がする仕事、熱と内部エネルギーを定義し、第一法則を述べる。等温・定圧・定積・断熱過程と、理想気体の定積・定圧熱容量を解析する。
第4章:熱力学第二法則
可逆過程と不可逆過程から、熱機関、冷凍機とヒートポンプ、第二法則のケルビンの表現とクラウジウスの表現、最も効率のよいサイクルとしてのカルノーサイクルへと進む。続いてエントロピーを巨視的に導入し、最後の節では微視的(統計的)なスケールで導入する。
第5章:電荷と電場
第2部「電気と磁気」は、電荷、導体と絶縁体、誘導による帯電、クーロンの法則から始まる。電場を定義し、連続的な電荷分布の電場を積分で求め、電気力線と電気双極子を導入する。
第6章:ガウスの法則
開いた面と閉じた面を貫く電束からガウスの法則が導かれ、それを使って球対称・円筒対称・平面対称な電荷分布の電場を求める。章の最後では静電平衡にある導体の性質を扱う。
第7章:電位
電気的位置エネルギーと電位を定義し、点電荷と連続分布について電位を計算し、電位を微分して電場を求め直す。等電位面、導体、静電気の応用(ヴァン・デ・グラフ起電機や電子写真など)で章を閉じる。章の冒頭は落雷のエネルギーである。
第8章:静電容量
代表的な形状のコンデンサーと静電容量、直列と並列の接続、電場に蓄えられるエネルギー、そして誘電分極の分子モデルを含む誘電体の効果を扱う。
第9章:電流と抵抗
電流と電流密度を定義し、ドリフト速度に基づく金属の電気伝導のモデルを示し、続いて抵抗率とその温度依存性、オームの法則、電気エネルギーと電力、超伝導体を扱う。MRI 装置の電磁石が導入の動機づけとなっている。
第10章:直流回路
起電力と内部抵抗、抵抗の直列と並列、キルヒホッフの法則、電流計と電圧計、RC 回路の充電と放電、家庭の配線と電気の安全がこの章を構成する。
第11章:磁気力と磁場
磁気の歴史的な導入のあと、運動する電荷にはたらく磁気力、磁場中の荷電粒子の運動、電流の流れる導線にはたらく力、電流ループにはたらくトルクと磁気双極子モーメント、ホール効果、質量分析器やサイクロトロンなどの応用を扱う。
第12章:磁場の源
電流がつくる磁場を、ビオ=サバールの法則(直線導線、電流ループ)とアンペールの法則(ソレノイドとトロイド)で求める。平行電流間の力を導き、物質中の磁性――常磁性、反磁性、強磁性――で章を終える。
第13章:電磁誘導
ファラデーの法則とレンツの法則、運動起電力、誘導電場、渦電流、発電機と逆起電力、そして電磁誘導の応用(カードリーダーから非接触充電まで)がこの章を構成し、時間変化する場を導入する。
第14章:インダクタンス
相互インダクタンスと自己インダクタンス、磁場に蓄えられるエネルギー、RL 回路、ばねにつながれた質点の電気版としての LC 回路の振動、RLC 直列回路を展開する。
第15章:交流回路
フェーザーを使って、交流回路における抵抗、コンデンサー、インダクタ、RLC 直列回路のインピーダンス、平均電力と力率、共振、送電における変圧器の役割を解析する。
第16章:電磁波
本巻は、変位電流を含むマクスウェル方程式と、それが電磁波を予言することで締めくくられる。平面波、それが運ぶエネルギーと強度、運動量と放射圧(彗星の尾で例示)、電磁スペクトルを説明する。
主要概念
第1章:温度と熱
- 熱力学第零法則:第三の系とそれぞれ熱平衡にある二つの系は互いに熱平衡にあり、これにより温度が測定可能になる。
- 比熱と潜熱:単位質量の温度を変えるのに必要なエネルギーと、温度一定のまま相を変えるのに必要なエネルギー。
第2章:気体分子運動論
- 理想気体の法則:pV = nRT で、微視的には分子の壁への衝突で説明される。
- エネルギー等分配則:2次の自由度一つあたり平均 ½kT のエネルギーが割り当てられ、熱容量が予測される。
第3章:熱力学第一法則
- 第一法則:内部エネルギーの変化は、加えられた熱から系がした仕事を引いたものに等しい。
- 断熱過程:熱のやりとりがない過程で、理想気体では pV^γ が一定となる。
第4章:熱力学第二法則
- カルノー効率:二つの熱源の間で働くあらゆる熱機関の最大効率 1 − T_c/T_h。
- エントロピー:孤立系では総量が決して減少しない状態量で、微視的には到達可能な微視的状態の数として解釈される。
第5章:電荷と電場
- クーロンの法則:点電荷間の力は電荷の積に比例し、距離の2乗に反比例する。
- 電場:単位電荷あたりの力で、連続分布については積分で求める。
第6章:ガウスの法則
- 電束:電場の面積分。
- ガウスの法則:閉曲面を貫く電束は、内部の電荷を ε₀ で割ったものに等しい。
第7章:電位
- 電位:単位電荷あたりの位置エネルギーで、その差が電圧である。
- 電位から電場へ:電場は電位の勾配の符号を変えたものである。
第8章:静電容量
- 静電容量:単位電位差あたりに蓄えられる電荷で、形状と材料で決まる。
- 誘電体:分極によって静電容量を増やす絶縁性の材料。
第9章:電流と抵抗
- ドリフト速度:電流を構成する伝導電子のゆっくりした平均速度。
- オームの法則と抵抗率:オーム性の材料では電流は電圧に比例し、抵抗は抵抗率と形状で決まる。
第10章:直流回路
- キルヒホッフの法則:分岐点での電荷保存と、閉回路を一周するときのエネルギー保存。
- RC 時定数:コンデンサーの充放電の速さを決める積 RC。
第11章:磁気力と磁場
- 運動する電荷にはたらく磁気力:F = qv × B で、速度と磁場の両方に垂直である。
- ホール効果:磁場中で電流の流れる導体に生じる横向きの電圧で、電荷担体の識別に使われる。
第12章:磁場の源
- ビオ=サバールの法則:小さな電流要素がつくる磁場を与える法則。
- アンペールの法則:閉じた経路に沿った B の線積分は、囲まれた電流の μ₀ 倍に等しい。
第13章:電磁誘導
- ファラデーの法則:磁束の変化が起電力を誘導する。
- レンツの法則:誘導電流は、それを生じさせる磁束の変化を妨げる向きに流れる。
第14章:インダクタンス
- 自己インダクタンス:素子自身の電流の変化によってその素子に誘導される起電力。
- LC 振動:エネルギーがコンデンサーとインダクタの間を固有角振動数 1/√(LC) で行き来すること。
第15章:交流回路
- リアクタンスとインピーダンス:コンデンサーとインダクタの周波数に依存する電流の妨げと、それを RLC 回路で抵抗と組み合わせたもの。
- 共振:駆動周波数が回路の固有周波数に等しいときに電流が最大になること。
第16章:電磁波
- 変位電流:変化する電場が磁場を生むことを示す、マクスウェルが加えた項。
- 放射圧:電磁波が運動量を運ぶために及ぼす圧力。
批判的分析
長所
- 微積分ベースでありながら取り組みやすい。 連続的な電荷分布の電場、電位、ビオ=サバールの法則は、段階的な例題を通じて積分で求められ、各例題は「方針・解答・意義」の形式に従う。PDF を数えると約160の例題と120以上の「理解度チェック」の問いがある。
- 明快な部の構成。 熱力学(第1〜4章)と電気・磁気(第5〜16章)はそれぞれ完結した部であり、電磁気学は電荷と電場から電位、回路、磁気、電磁誘導を経てマクスウェル方程式へと論理的な順序で組み立てられている。
- 本文に組み込まれた応用。 各章の冒頭や節は、落雷、MRI の磁石、家庭の配線と安全、ハードディスク、カードリーダー、非接触充電、変圧器による送電、彗星への放射圧などを扱い、抽象的な法則を身近な技術に結びつけている。
- 充実した章末の支援。 各章のまとめには重要用語、重要な式、節ごとの要約があり、続いて概念的な問い、問題、追加問題、チャレンジ問題が並び、奇数番の答えが解答編にある。
短所
- ベクトル解析による電磁気学の定式化がない。 マクスウェル方程式は積分形で与えられ、発散と回転は使われないため、微分形、境界値問題、より本格的な電磁気学の教科書が扱うような意味でのポテンシャルは登場しない。
- 熱力学と同じ巻に収められている。 電磁気学の講義にとって最初の4章は関係がなく、電気と磁気の内容は幅広いものの深さは入門レベルである。
- 物質中の場の扱いが限られる。 誘電体と磁性体はそれぞれ1節(8.5節と12.7節)で扱われるだけで、D 場や H 場という意味での束縛電荷と束縛電流は扱われない。
- 解法ではなく答え。 解答編は奇数番の問題の最終的な答えを示すだけなので、独習する学生が解き方を確認するには別の資料が必要である。
コースにおける位置づけ
University Physics Volume 2 は微積分を用いる電磁気学の概説書である。Fleisch の A Student's Guide to Maxwell's Equations は、その説明によればマクスウェル方程式そのものの解説に焦点を当てている。OpenStax の本が省いている微分形を導入することで、本書の第6、12、13、16章を補う。Purcell と Morin の Electricity and Magnetism は、同じ話題をベクトル解析でより深く扱う自然な次の一冊である。
Griffiths の Introduction to Electrodynamics、Jackson の Classical Electrodynamics、Bittencourt の Fundamentals of Plasma Physics は学部上級生や大学院生向けの教科書である。Griffiths に挑む前に、本書の第5〜16章(またはそれに相当する最初の講義)を終え、ベクトル解析を身につけておくべきであり、Jackson と Bittencourt はさらにその後になる。本書はそれらの教科書の代わりとしてではなく、その前に使うのがよい。
本書の使い方
本書は、力学(第1巻またはそれに相当するもの)を終え、1変数の微積分を知っている、微積分ベースの物理学の2学期目の学生を対象としている。第6章以降では面積分と線積分にある程度慣れていると役に立つ。電磁気学の講義では第5〜16章を順に読むこと。第5〜7章(電場、ガウスの法則、電位)と第11〜13章(磁気力、磁場の源、電磁誘導)が中核であり、第8〜10章と第14〜15章は回路素子と回路を扱い、第16章がすべてをマクスウェル方程式にまとめる。第1〜4章は熱力学の単元のためのもので、電磁気学の講義では飛ばしてよい。
ガウスの法則、アンペールの法則、キルヒホッフの法則についての「問題解決の方針」の囲みをチェックリストとして使い、各例題のあとに「理解度チェック」に取り組み、次へ進む前に各節の問題を解くこと。講義が Griffiths や Purcell に進む場合は、第16章をマクスウェル方程式の微分形を示す資料と組み合わせるとよい。
版と出典
本ガイドは、OpenStax の公式ページ https://openstax.org/details/books/university-physics-volume-2 からダウンロードした University Physics Volume 2 の無料 PDF(初版刊行2016年、現行 PDF は © 2026 Rice University、CC BY-NC-SA 4.0 ライセンス。主執筆者は William Moebs、Samuel J. Ling、Jeff Sanny)に基づく。序文、目次全体、そして全16章について、冒頭の図と導入、すべての節の構成、章末の要約を参照し、例題の数や特定の話題の有無も確認している。
