01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Sider, T. (2010). Logic for Philosophy. Oxford University Press.
章の要約
本書は全10章に、解答とヒント(付録A)、参考文献、索引が付き、本文と索引で約360ページある。演習問題は章末ではなく各章の途中に置かれている。序文でサイダーは、星1つの問題には付録Aに解答があり、星2つの問題はより難しくヒントが付くこと、メタ論理に関わる問題は難度が高く、初級向けの授業では飛ばしてよいことを述べている。目標は現代哲学のための「論理リテラシー」であり、モデル理論を中心に、証明論を補い、初歩的な論理の哲学を加える。
第1章:What is Logic?(論理とは何か)
読者が記号論理の入門講義を済ませていることを前提に、残りの章が何のためにあるかを説明する章。論理的帰結を形式によって真理を保存することと捉え、なぜ形式言語を通じて論理を研究するのか、それがなぜメタ論理を可能にするのかを説き、形式体系の内部での証明と、その体系についてのメタ論理的証明とを区別する。以降の節では、論理的帰結の本性、論理定項、古典論理の拡張・逸脱・変種が扱われ、さらに本書全体で必要な集合論を紹介する長い節(1.8、約15ページ)がある。
第2章:Propositional Logic(命題論理)
命題論理の中心となる技術的な章。文法、意味論的アプローチ、真理表式の意味論、妥当性と非妥当性、シークエント証明と公理的証明を扱う。続いて本格的なメタ論理に入り、帰納法による健全性、演繹定理を証明し、極大無矛盾集合を通じて完全性を証明する。
第3章:Beyond Standard Propositional Logic(標準的命題論理を超えて)
古典体系に対する代替と追加。代替的な結合子(シェファーの棒、不十分な結合子の集合)、ポーランド記法、非古典的な命題論理を扱う。3値論理はウカシェヴィチの体系、クリーネの表、プリーストの逆理の論理、超付値主義を通じて論じられ、章は直観主義命題論理の証明論で終わる。
第4章:Predicate Logic(述語論理)
標準的な述語論理の文法と意味論、妥当性・非妥当性を確立する方法、公理的証明、そして述語論理のメタ論理についての短い節(約2ページ)。序文は、述語論理の健全性と完全性を本書があえて証明しないことを明言している。
第5章:Beyond Standard Predicate Logic(標準的述語論理を超えて)
哲学者が実際に出会う拡張。等号、関数記号、確定記述(関数記号や記述の除去を含む)、一般化された一項・二項量化子、二階論理、複合述語、そして意味論と証明論をもつ自由論理。
第6章:Propositional Modal Logic(命題様相論理)
約60ページに及ぶ最長の章。様相命題論理の文法と記号化、妥当性証明と反例モデルを含むクリプキ・モデルの意味論、公理系K、D、T、B、S4、S5を示す。章末は健全性の証明と、標準モデルによる完全性の証明である。
第7章:Beyond Standard MPL(標準的命題様相論理を超えて)
様相の枠組みの応用と変種。義務論理、認識論理、命題時制論理(時間の形而上学の議論と、前後関係への形式的制約を含む)、そして第3章の証明論を補う直観主義命題論理の意味論。
第8章:Counterfactuals(反事実条件文)
まず自然言語の反事実条件文の論理的ふるまいを調べる(偶然的でありうること、強化律や対偶が成り立たないこと、文脈に依存すること)。次にルイス/スタルネイカー流のアプローチ、スタルネイカーの体系SCと、その妥当性証明・反例モデル、ルイスによる批判と彼自身の体系、選言的前件の問題を扱う。
第9章:Quantified Modal Logic(量化様相論理)
述語論理と様相論理を結びつける章。de re と de dicto の区別、量化様相論理の単純な意味論、反例モデルと妥当性証明、その意味論をめぐる哲学的問題(同一性の必然性と存在の必然性)、可変領域、公理化を扱う。
第10章:Two-dimensional modal logic(二次元様相論理)
現実性演算子とその意味論(10.1)、二次元意味論で扱うもう一つの演算子(10.2)、「固定的に」(10.3)を導入し、必然性とア・プリオリ性についての節で終わる。
主要概念
第1〜3章:基礎と命題論理
- 論理的帰結:形式によって真理を保存すること。形式体系はこの概念をモデル化するために作られる。
- メタ論理:形式体系についての事実を証明すること。たとえば健全性(証明できるものはすべて妥当)や完全性(妥当なものはすべて証明できる)。
- 非古典論理:真理値が3つ以上ある、あるいは証明規則が異なる体系。3値論理、逆理の論理、直観主義論理など。
第4〜5章:述語論理とその拡張
- 量化子の意味論:述語論理の文の解釈。これによって妥当性と非妥当性が決まる。
- 確定記述と自由論理:指示対象を欠くかもしれない項の2つの扱い方。
- 二階論理と一般化量化子:個体に対する「すべて」「ある」を超えた量化。
第6〜10章:様相論理と反事実条件文
- クリプキ・モデル:到達可能性関係をもつ世界の集まり。本書の様相部分全体を支える意味論の道具。
- 体系KからS5:到達可能性に課す条件によって区別される公理系。
- 標準モデル:様相体系の完全性証明の背後にある構成。
- de re と de dicto:様相的主張が特定の事物についてのものか、命題全体についてのものか。
- 可変領域:存在するものの集合が世界ごとに異なることを許すもので、偶然的存在に関わる。
- 現実性と二次元意味論:世界の対で真偽を評価し、「現実には」や必然性とア・プリオリ性の関係を表現する。
批判的分析
長所
- 範囲と理由が明確。 序文は本書を、集中的なメタ論理の講義に代わる1学期の選択肢として位置づけ、目次もその方針に沿っている。哲学者が使う拡張を幅広く扱い、メタ論理は、それが何であるかを示すのに必要な箇所にとどめている。
- 哲学文献に見合う幅。 反事実条件文、時制論理・義務論理、直観主義と矛盾許容の体系、自由論理、二階論理、二次元意味論に、それぞれ専用の節がある。
- 解答とヒント付きの演習。 星1つの問題の解答と星2つの問題のヒントが付録Aにあり、独習にも使える。
- 様相論理への十分な紙幅。 第6〜10章が本書の重心で、健全性・完全性の証明も含む。記号を見分けるだけでなく、文献中の様相論証を追えるようになる。
短所
- メタ論理はあえて部分的。 命題論理と命題様相論理の完全性は証明されるが、述語論理の完全性は証明されず、計算可能性やゲーデルの不完全性定理は本書の範囲外である。これらの結果が必要な読者は、専門のメタ論理の教科書を使うべきである。
- 入門講義を前提とする。 第1章は記号化、真理表、いくらかの証明論を既知として始まるので、最初の論理の授業には向かない。
- 記法に対して緩やか。 序文によれば、使用と言及の区別は支障のない箇所では大らかに扱われており、不正確と感じる読者もいる。
- 集合論の節が凝縮されている。 1.8は第1章で最も長い節で、集合論を知らない読者には密度が高い。
コースにおける位置づけ
論理のリストの中で、サイダーは第2課程の教科書にあたる。『Language, Proof and Logic』とオープンライセンスの『forall x: Calgary』は、自然演繹を用いる一階論理の入門書(後者は末尾で様相論理に簡単に触れる)であり、コピの『Introduction to Logic』は、非形式的推論や三段論法も扱う定評ある汎用教科書である。いずれもサイダーへの準備になる。
ブーロス、バージェス、ジェフリーの『Computability and Logic』は、序文がこの1学期の選択肢の通常の土台として挙げているメタ論理の教科書で、サイダーが省いた結果、すなわち述語論理の完全性、決定不能性、不完全性を証明する。哲学的な幅が必要な学生はサイダーを、論理の数学へ進む学生はブーロスらを選ぶか、順序を問わず両方を読むとよい。
本書の使い方
本書は、最初の論理の授業を終え、論文に出てくる様相論理・反事実条件文・非古典論理を読めるようになりたい、哲学専攻の学部上級生や大学院初年次の学生に向く。
1学期の実践的な進め方:
- 中核: 第1章(集合論になじみがあれば1.8は流し読み)、第2章(完全性の証明まで)、第4章、そして本書の様相・反事実の内容を含む第6、8、9章。
- 関心に応じて: 非古典論理なら第3章、記述・自由論理・二階論理なら第5章、義務・認識・時制論理なら第7章、二次元意味論なら第10章。
- メタ論理の部分: 2.7〜2.9と6.5〜6.6の健全性・完全性の証明が難所である。メタ論理を軽くしたい授業では、序文が認めているとおり、命題の主張だけを読んで証明を省いてよい。
演習は読み進めながら解き、星付きの問題は付録Aで確認し、星2つの問題はヒントを頼りに取り組む。著者のウェブサイトには、本書の見本、目次、正誤表がある。
