01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Davidson, D. (2001). Inquiries into Truth and Interpretation (2nd ed.). Oxford University Press.
章の要約
本書は18編の論文からなる論文集で、論文と短い付録で約280ページあり、第2版への序文と10ページの序論が前に置かれている。出版社によれば、この版は1984年版に、それまで論文集に未収録だった論文を1編加えている。論文は5つの主題群に分かれ、出版社の説明がそれを示している。意味論への制約(第1〜5論文)、引用・間接話法・法(第6〜8論文)、解釈とその証拠(第9〜12論文)、形而上学的帰結(第13〜16論文)、そして隠喩と規約という難しい事例(第17〜18論文)である。論文どうしは番号で互いに参照し合うので、順序が重要である。
第1論文:Theories of Meaning and Learnable Languages(意味の理論と学習可能な言語)
言語が学習可能であるためにはどんな性質をもたねばならないかを問い、言語習得の「積み木」像を退け、意味論的な原始項が有限である言語だけが有限の生き物に学習可能だと提案する。この基準により、引用を名前として扱う説明、信念帰属を構造のない実体で分析する説明、内包的実体を措定する説明が批判される。
第2論文:Truth and Meaning(真理と意味)
学習可能性の要求を意味の理論への制約に変える。有限個の原始項から、無限の言語のあらゆる文の意味がどのように得られるかを示さねばならない。デイヴィドソンは、タルスキ流の真理論がこの要求を満たし、文の意味を、含意関係の中での位置によって与えると論じ、指標詞や非外延的文脈などの反論も検討する。
第3論文:True to the Facts(事実に忠実に)
充足を通じて再帰的に定義される真理を、対応説へと発展させられるかを問う。デイヴィドソンは、冗長説も通常の対応説も失敗すると論じる。後者の失敗は、外延が同じ言い換えによってすべての事実が一つの「大いなる事実」に潰れてしまうからである。
第4〜5論文:Semantics for Natural Languages(自然言語の意味論);In Defence of Convention T(規約Tの擁護)
第4論文は、真理論が意味の理論への要求に検証可能な答えを与え、その際メタ言語は対象言語を最小限しか超えないものとし、非外延的な構文を検討する。第5論文はタルスキの規約Tと一階の量化を擁護し、様相的・可能世界的・代入的なアプローチは相対化された真理概念に頼っていると論じる。
第6論文:Quotation(引用)
真理条件的な方法を引用に適用し、引用は有限の手段で分析されねばならず、引用された語は単に言及されるのでなく使用されていると論じる。
第7論文:On Saying That(「〜と言う」について)
「ガリレオはpと言った」のような帰属の論理形式を問う。デイヴィドソンは「並置」(parataxis)を展開する。この帰属は、指示的な「that」で結ばれた二つの文に分かれ、二つの発話が「同じことを言う」場合にその結びつきが成り立つ。
第8論文:Moods and Performances(法と遂行)
真理論が法と力を扱えるかを問う。法を個別化するさまざまな方法を検討したのち、デイヴィドソンは制約を立て、並置的分析を法の説明に拡張する。
第9論文:Radical Interpretation(根本的解釈)
解釈されていない発話を解釈された発話として記述し直すには、どんな知識で足りるかを問う。話し手の態度についての事実を前提せずに解釈が進められる証拠を示し、クワインの根本的翻訳と対比し、真理論的な説明を提示する。
第10論文:Belief and the Basis of Meaning(信念と意味の基礎)
第9論文の続き。意味と態度は同時に割り当てなければならず、そのために寛容の原理が必要となる。解釈者は話し手の信念の大半は真だと仮定し、一致を最大化する。本論文は、どれだけの不確定性が残るかを論じる。
第11論文:Thought and Talk(思考と発話)
思考は発話から独立に説明できるかを問う。信念は互いの内容を決める網をなし、他者を解釈でき、また解釈されうる生き物だけが思考をもちうる。
第12論文:Reply to Foster(フォスターへの返答)
ジョン・フォスターによる、真理論の公理は法則的でなければならない、また理論の証拠からは解釈理論としての使用が明らかにならないかもしれない、という批判に応じ、並置の方法を用いて答える。
第13論文:On the Very Idea of a Conceptual Scheme(概念枠組みという考えそのものについて)
概念相対主義の理解可能性を攻撃する。図式と内容の二元論、つまり「経験論の第三のドグマ」は退けられ、根本的に異なる概念枠組みがありうるという考えは、解釈が要求するものに照らして維持できないと論じられる。
第14論文:The Method of Truth in Metaphysics(形而上学における真理の方法)
成功した意思疎通は、共有された、おおむね真なる世界観を示すと論じ、したがって誤りは局所的である。真理は、世界についておおむね正しい言語に相対的であり、真理論はその言語が必要とする存在論を明らかにしうる。
第15〜16論文:Reality Without Reference(指示なき実在);The Inscrutability of Reference(指示の不可測性)
第15論文は、指示を解明しなければ真理論は意味論の仕事をなしえないと述べたフィールドとハーマンに答え、デイヴィドソンは指示が中心的な意味論的概念ではないと論じる。第16論文はクワインの存在論的相対性と指示の不確定性を扱い、指示の因果説に反対する。
第17論文:What Metaphors Mean(隠喩は何を意味するか)
隠喩には、字義的意味を超えた特別な隠喩的意味はなく、その効果は聞き手に何かに気づかせることにあると論じる。これが、隠喩が言い換えを拒む理由を説明する。
第18論文:Communication and Convention(意思疎通と規約)
ダメット、チョムスキー、ルイスによる規約主義的な言語観を検討し、規約は言語の前提条件ではないと結論する。
付録
短い付録(281〜286ページ)は、第10論文に対するルイスとクワインの応答に答え、解釈の原理、心的なものの還元可能性、どれだけの不確定性が残るかを扱う。
主要概念
第1〜5論文:真理条件的意味論
- 学習可能性の制約:言語が学習可能であるためには、意味論的な原始項が有限でなければならない。
- 意味の理論としての真理論:各文に真理条件を与えるタルスキ流の真理論で、経験的な理論として扱われる。
- 規約T:真理の定義に対するタルスキの妥当性条件。
第6〜8論文:論理形式
- 並置:「〜と言う」を二つの文として分析し、一方が他方を指示的に指す。
- 論理形式:含意関係を保存する真理論によって明らかになる構造。
第9〜12論文:解釈
- 根本的解釈:話し手の意味や態度を事前に知らずに、その話し手を解釈すること。
- 寛容の原理:話し手の信念はおおむね真で整合的だと仮定すること。
第13〜18論文:形而上学と意味論の限界
- 図式と内容の二元論:概念枠組みが解釈されていない経験的内容を組織するという像で、デイヴィドソンはこれを退ける。
- 指示の不確定性:指示の割り当ては決定不足だというクワインの主張で、本書では真理論の内部から扱われる。
批判的分析
長所
- 主題的な構造。 5つの群は、意味の理論への制約から、その拡張、解釈における証拠、形而上学的帰結を経て、最後に隠喩と規約へと進むので、本書は論文の寄せ集めにとどまらず、つながりのある一つの議論として読める。
- 挑戦を受ける計画。 第12論文はフォスターに、第15論文はフィールドとハーマンに、付録はルイスとクワインに答えており、この計画のどこが争われているかが分かる。
- 短く自己完結的な論文。 各論文は10〜20ページ程度で、個別に課題として指定できる。
- 相互参照。 論文は互いに番号で参照し合うので、有限の学習可能性や寛容といった糸を、論文集全体を通じてたどれる。
短所
- 体系的な叙述ではない。 論文は別々に書かれたため、重複する内容があり、論証が論文集の別の箇所に依拠することもある。
- 姉妹編を前提とする。 第6〜10論文の論理形式の研究は、デイヴィドソンの姉妹編『Essays on Actions and Events』に続いており、それは本書には含まれない。
- 前提知識の要求が高い。 タルスキの真理定義、フレーゲの意義と指示、翻訳と存在論についてのクワインが既知とされる。
- 技術的な箇所がある。 第5〜8論文と第15〜16論文は、充足や論理形式といった形式的概念に依拠する。
コースにおける位置づけ
言語哲学の入門書を読み終えた読者向けの原典集である。モリスの『An Introduction to the Philosophy of Language』は古典的テクストを軸に各章を組み立て、マッギンの『Philosophy of Language: The Classics Explained』はそのうち10編を段階を追って解説し、ライカンの『Philosophy of Language: A Contemporary Introduction』は指示・意味の理論・語用論・比喩的言語を軸に分野を整理し、ミラーの『Philosophy of Language』はフレーゲ以来の分析的伝統を詳しく再構成する。ミラーとライカンは、フレーゲやタルスキの背景への良い準備になる。
マルティニッチとソウザ編のアンソロジー『The Philosophy of Language』は、主題別に原典論文を集めており、クワイン、ダメット、ルイスなど、デイヴィドソンが応答する著者に、デイヴィドソンの前か同時に触れるのに適している。
本書の使い方
フレーゲ、ラッセル、タルスキ、そしてクワインの翻訳論を知っている大学院生や学部上級生向けである。
実践的な読書計画:
- 中核: 第1、2論文(学習可能性の制約と真理論的提案)、続いて第9、10論文(根本的解釈と寛容)、第11論文、第13論文。
- 中核の応用: 対応説、引用、間接話法、法を扱う第3〜8論文、形而上学的帰結を扱う第14論文、独立に読める隠喩論の第17論文。
- 応答と返答: 第12、15、16論文と付録は、それぞれが答える論文を読んだあとで。
- 任意: 規約を論じる第18論文は、主要な議論が明確になってから。
各応答が答える論文を先に読み、相互参照をたどり、論理形式が問題になる箇所では『Essays on Actions and Events』を参照する。