01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Straus, S. E., Doust, J., Watt, J. A., Rochwerg, B., & Richardson, W. S. (2026). Evidence-Based Medicine: How to Practice and Teach EBM (6th ed.). Elsevier.
章の要約
第6版は10の短い単元から成る。出版社の目次には見出しだけが並び、章番号はない。出版社は「短く実用的な形式」と表現し、臨床への直接的な応用を重視し、ワークブックのような構成で、オンラインのツールが付くとしている。単元の順序は、根拠に基づく実践の手順に沿っている。問いを立て、探し、吟味し、適用し、評価し、最後に教える。
Introduction(導入)
本書の最初の単元。出版社は本書を、プライマリケアと専門診療、入院と外来のさまざまな臨床の場で、根拠に基づく医療(EBM)をリアルタイムで実践し、教えるための手引きと説明している。
Asking answerable clinical questions(答えられる臨床上の問いを立てる)
第一の段階。臨床上の問題を、研究のエビデンスで答えられる問いに言い換える。出版社は「答えられる臨床上の問いの立て方」を、本書の主要な領域の最初に挙げている。
Acquiring the evidence: How to find current best evidence and have current best evidence find us(エビデンスを得る:現在の最良のエビデンスを見つけ、また最良のエビデンスに見つけてもらう方法)
検索の段階。題名は2つの道筋を示している。問いが生じたときに最良の最新エビデンスを探すこと、そして関連する新しいエビデンスが臨床医のもとに届くようにしておくことである。出版社は、臨床でエビデンスを見つけ、整理し、活用するための新しい情報源に触れている。
Appraising the evidence(エビデンスを吟味する)
批判的吟味の総論にあたる単元で、出版社はこれをエビデンスの妥当性と重要性を判断することと説明している。後に続く、問いの種類ごとの4つの単元の前に置かれている。
Therapy(治療)
治療に関するエビデンスを扱う単元。
Diagnosis and screening(診断とスクリーニング)
診断検査とスクリーニングに関するエビデンスを扱う単元。
Prognosis(予後)
病状の予想される経過に関するエビデンスを扱う単元。
Harm(害)
有害な作用に関するエビデンスを扱う単元。
Evaluation(評価)
問いの種類別の4つの単元の後、教育の単元の前に置かれた単元。公開されている目次には題名しかない。出版社はオンラインツールの一覧に自己評価を挙げている。
Teaching EBM(EBMを教える)
最後の単元はEBMの教え方を扱う。出版社によれば、第6版ではハイブリッド型の教育環境に合わせた教育手法を更新し、AIツールの活用も取り入れている。
主要概念
導入からエビデンスの吟味まで:EBMの手順
- 答えられる臨床上の問い:研究のエビデンスで答えられるように言い換えた臨床上の問題。
- エビデンスの検索:問いに対する現在の最良のエビデンスを見つけ、新しいエビデンスに遅れずについていくこと。
- 批判的吟味:研究を使う前に、その妥当性と重要性を判断すること。
- エビデンスを患者の価値観・希望と統合する:知見を個々の患者に適用すること。出版社が明示している段階である。
問いの種類:治療、診断とスクリーニング、予後、害
- 治療:ある治療が効くかどうかに関するエビデンス。
- 診断とスクリーニング:疾患を見つけるための検査に関するエビデンス。
- 予後:病状がどう進むかに関するエビデンス。
- 害:有害な作用に関するエビデンス。
EBMを教える
- 教育処方:出版社が学習者と教員向けに挙げているオンラインツールの1つ。
- 臨床上の問いの記録:診療の中で生じた問いを記録するためのツール。
批判的分析
長所
- 臨床上の問いで組み立てた流れ。 目次は臨床医が実際にたどる手順に沿っており、4種類の問い(治療、診断とスクリーニング、予後、害)にそれぞれ独立した単元があるので、手元の論文の種類に応じてそこへ進める。
- 実用的なツール群。 出版社は、批判的吟味のワークシート、ポケットカード、EBM計算機、教育処方、臨床上の問いの記録、自己評価を挙げており、教科書としては珍しく実践的な性格を持つ。
- 学習者にも教える側にも向く。 最後の単元と書名(「EBMの実践と教え方」)は、臨床医だけでなく教育者にも向けられている。出版社は、時間に追われる学部・卒後の医学学習者、教員、あらゆる臨床分野の実務家を対象とするとしている。
- 新しい版である。 Elsevierによれば、すべての章で健康の公平性に焦点が当てられ、AIを含む新技術、システマティックレビューとネットワークメタアナリシス、研究手法についての実践的な助言が加わっている。
- コンパクト。 10単元の構成と「短く実用的な形式」は、臨床の合間にEBMを学ぶ学生に向く。
短所
- 意図的に短く作られている。 出版社は短く実用的な形式を強調しており、目次も10単元である。研究デザインや統計手法を体系的に知りたい読者には、方法論の教科書が別に必要になる。
- システマティックレビューの専用単元がない。 システマティックレビューとネットワークメタアナリシスは、出版社が実践的なヒントを加えたとする話題に挙がっているが、目次にそれらを扱う単元はない。問いの種類別の単元は臨床上の問いの種類で構成されている。
- ツールの一部はオンライン。 ワークシート、ポケットカード、計算機などはオンラインの補助資料とされており、利用できない読者は本文だけで学ぶことになる。
コースにおける位置づけ
「研究論文」のコースでは、本書は、診療でエビデンスをどう使うかを教科書の分量で体系的に扱った本にあたる。How to Read a Paper は、臨床論文の探し方、読み方、批判的吟味を扱う短くて読みやすい入門書で、研究に不慣れな読者の出発点に向く。Testing Treatments は平易な文章で例を多く用い、治療の公正な検証がなぜ必要かを説明しており、同じ考え方の背景として読める。Strausらの本は、そこに問いから評価までの全過程と、教育の専用単元を加える。
コースの残りの項目は個々の公表済みの研究で、練習用の素材である。吟味の手順に慣れたら、実際の論文を吟味する練習に使える。
本書の使い方
本書は、病院の医師、一般医、疫学・医療統計・公衆衛生を学ぶ学生、そしてEBMを自ら実践し他者に教える必要のある医学の学習者に向けて書かれている。多少の臨床経験と、研究デザインや簡単な統計の基本的な理解があると役に立つ。
実践的な読み方:
- 中核の順序: 導入、答えられる臨床上の問いを立てる、エビデンスを得る、エビデンスを吟味する、の順に読む。
- 問いの種類別の単元: その種類の論文に出会ったときに、治療、診断とスクリーニング、予後、害の該当する単元へ進む。4つを事前にすべて読む必要はない。
- オンラインツールを使う: ワークシート、ポケットカード、EBM計算機は、実際の論文を吟味する際に使うよう作られている。臨床上の問いの記録は、問いを立てて答えを探す習慣づくりに役立つ。
- 教員と指導にあたる研修者: 評価と、EBMを教えるの単元を読み、学習者と教育処方を使う。
