01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Boyce, W. E., DiPrima, R. C., & Meade, D. B. (2021). Elementary Differential Equations and Boundary Value Problems (12th ed.). Wiley.
章の要約
第12版は11章、約640ページからなる。第1〜9章が常微分方程式を、第10〜11章が偏微分方程式と境界値問題を扱い、巻末に問題の解答がある。この改訂は Douglas Meade が担当しており、原著者の二人はすでに亡くなっている。出版社によれば、この版では章末問題のすべてにコンセプトチェックの問いが加わり、各節にワークシートが用意された。序文によれば、全体の構成は前の版から変わっていない。Wiley は各章が自己完結しており、教員が選択、順序、深さを調整できると説明している。
第1章:序論
落下する物体と、フクロウに捕食される野ネズミの個体群という二つのモデルを通じて、方向場と平衡解を導入する。続いていくつかの簡単な方程式を解き、微分方程式を型と階数で分類する。ニュートン、ライプニッツ、ベルヌーイ一族から近年の計算面での進歩までをたどる三つの短い歴史の節があり、グラフ描画や数値計算にソフトウェアをどう使うかも論じる。
第2章:1階微分方程式
積分因子による線形方程式、変数分離形、1階方程式によるモデル化、線形方程式と非線形方程式の違い、自励方程式と個体群動態、完全微分方程式、オイラー法、存在と一意性の定理、1階差分方程式。
第3章:2階線形微分方程式
定数係数の斉次方程式、ロンスキアン、特性方程式の複素根と重根、階数低下法、未定係数法、定数変化法。章はばね・電気回路の振動と強制周期振動で終わる。
第4章:高階線形微分方程式
n階線形方程式の一般理論と、第3章から拡張された定数係数・未定係数・定数変化の各方法。
第5章:2階線形方程式の級数解
べき級数の復習の後、通常点の近くでの級数解を求め、オイラー方程式を経て確定特異点の近くでの級数解に進む。章はベッセルの方程式で終わる。
第6章:ラプラス変換
変換の定義、初期値問題への応用、階段関数と不連続な外力、インパルス関数、たたみ込み積分。
第7章:1階線形方程式系
行列、連立一次方程式、固有値と固有ベクトルの復習から始まる。続いて線形系の基本理論と定数係数の斉次系を展開し、複素固有値と重複固有値、基本行列、非斉次系を扱う。
第8章:数値解法
オイラー法(接線法)とその改良、ルンゲ=クッタ法、多段法、方程式系の数値解法、そして誤差と安定性についてのさらなる議論。
第9章:非線形微分方程式と安定性
線形系の相平面、自励系と安定性、局所線形系。続いて競争種と捕食者‐被食者方程式への応用がある。章はリアプノフの第二の方法、周期解とリミットサイクルを扱い、ローレンツ方程式におけるカオスとストレンジアトラクタで締めくくられる。
第10章:偏微分方程式とフーリエ級数
2点境界値問題からフーリエ級数、フーリエ級数の収束定理、偶関数と奇関数へ進む。続いて変数分離法を、棒の熱伝導とその他の熱伝導問題、弦の振動の波動方程式、ラプラス方程式に適用する。章の後に二つの付録がある。
第11章:境界値問題とシュトゥルム=リウヴィル理論
2点境界値問題の再考、シュトゥルム=リウヴィル問題(正則、非斉次、特異)、変数分離法のさらなる例としてのベッセル級数展開、そして直交関数による級数と平均収束。
主要概念
第1〜2章:基礎と1階方程式
- 方向場:方程式を解かずに解のふるまいを示す、短い接線の線分の図。
- 積分因子:1階線形方程式を完全な導関数の形に変える乗数。
- 自励方程式と平衡:時間に陽に依存しない方程式。その平衡解を通じて解析される。
- 存在と一意性の定理:初期値問題がちょうど一つの解をもつための条件。
第3〜5章:高階の線形方程式
- 特性方程式:その根が定数係数線形方程式の解を与える代数方程式。
- ロンスキアン:解が一次独立かどうかを判定する行列式。
- 未定係数法と定数変化法:非斉次方程式に対する二つの方法。
- 確定特異点:ベッセルの方程式のように、級数解に修正した形が必要となる点。
第6〜8章:変換、方程式系、数値解法
- ラプラス変換:不連続な外力やインパルス的な外力を含む初期値問題を代数の問題に変える。
- 方程式系の固有値法:定数係数線形系の解を固有値と固有ベクトルから求める。
- ルンゲ=クッタ法と多段法:オイラー法より精度の高い数値スキーム。
第9〜11章:安定性、偏微分方程式、境界値問題
- 相平面と局所線形化:非線形系の平衡点を、その線形近似を通じて分類する。
- リアプノフの第二の方法:エネルギーに似た関数を用いて安定性を証明する。
- フーリエ級数と変数分離法:熱方程式、波動方程式、ラプラス方程式を解く道筋。
- シュトゥルム=リウヴィル問題:固有関数が直交系をなす固有値問題。
批判的分析
長所
- 応用志向でありながら理論的に堅実。 出版社は本書の視点を応用数学者のものと説明している。堅実だが抽象的ではない初等理論の解説と、解法・解析・近似の方法とを組み合わせている。存在と一意性、ロンスキアン、リアプノフの方法、シュトゥルム=リウヴィル理論が解法の技術と並んでいる。
- 結論を求める問題。 序文は、解そのものが目的ではないことを強調する。多くの問題は、長期的なふるまいやパラメータによる変化など、解についての結論を引き出すよう求める。教員は授業の目標に応じて、こうした問題をいくつ課すかを選べる。
- テクノロジーの柔軟な使い方。 序文と出版社によれば、本書は計算機をまったく使わない授業から集中的に使う授業まで対応できる。「スケッチ」を求める問題は手で行うことを想定しており、第1章では無料で使えるグラフ描画ツールの使い方を論じている。
- モデル化を通した幅広い内容。 個体群動態、振動、競争種、捕食者‐被食者モデル、ローレンツ方程式、熱と波の問題がすべて目次にある。第1章の歴史の節と人物紹介の脚注が、主題を歴史の中に位置づける。
短所
- 長く網羅的。 約640ページ、11章という分量は、1学期の授業で扱える範囲を超えている。学生には何を飛ばすかの計画が必要である。
- 線形代数の扱いは遅く短い。 行列、固有値、固有ベクトルは第7章の中で復習される。出版社は行列にある程度慣れていると役立つと述べており、線形代数をまったく知らない学生にはこの章は密度が高い。
- 一部の学習支援は本の外にある。 選ばれた問題の解答は別冊の Student Solutions Manual にある。GeoGebra の対話的な図や、追加で課せる問題の多くは WileyPLUS のオンラインコースに属している。
- 前の版からの変更は小さい。 序文は改訂を小規模なものと述べており、以前の版との違いは主に問題と提示のしかたにある。
コースにおける位置づけ
Boyce、DiPrima、Meade の本は、このリストにおける標準的で包括的な最初の授業用教科書である。最も近い代替は Jiří Lebl の無料の Notes on Diffy Qs である。著者はそれを Boyce と DiPrima の「そのまま差し替えられる代替」と説明し、各節を Boyce の節に対応させているので、二冊を並べて使える。Lebl は無料で工学系の学生向けであり、Boyce はより多くの例と問題、そして特異点の近くでの級数解、リアプノフの方法、シュトゥルム=リウヴィル理論といった話題を提供する。
本書の後には、Hirsch、Smale、Devaney の Differential Equations, Dynamical Systems, and an Introduction to Chaos が、Boyce の第9章が導入する定性的・力学系的な見方を展開する。Arrowsmith らの Dynamical Systems: Differential Equations, Maps, and Chaotic Behaviour は写像とカオスにさらに踏み込む。Brock と Malliaris の Differential Equations, Stability, and Chaos in Dynamic Economics は、同じ安定性の考え方を経済モデルに応用する。
本書の使い方
本書は、最初の微分方程式の授業を受ける数学・理学・工学の学部生のために書かれている。前提として示されているのは、通常の2〜3学期の微積分の授業で得られる実用的な微積分の知識である。方程式系の章では、行列にある程度慣れていると役立つ。
- 1学期の常微分方程式の授業: 第1〜3章が中心で、2.7〜2.9節と振動の節は時間に応じて選ぶ。第6章(ラプラス変換)と第7章(方程式系)を加え、第9章の最初の節(相平面と安定性)で締めくくる。
- 選択的な内容、または2番目の授業向けの内容: 第4章は第3章を直接拡張する。級数解の第5章と数値解法の第8章は必要に応じて取り上げればよい。第10章と第11章は、フーリエ級数と境界値問題の授業のための自然なまとまりをなす。
- 能動的に取り組む: 方向場と相図はまず手で描き、それからソフトウェアで確かめる。章末問題の前にコンセプトチェックを使い、解の求め方だけでなく解が何を意味するかを問う問題に取り組む。
- 独学: 問題の解答は巻末にある。Lebl の無料のノートは、節ごとに別の説明を与えてくれる。
