01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Ahlfors, L. V. (2021). Complex Analysis: An Introduction to the Theory of Analytic Functions of One Complex Variable (3rd ed.). American Mathematical Society (AMS Chelsea Publishing, vol. 385).
章の要約
AMSチェルシー叢書のこの巻は、第3版(初版の刊行は1978年)の復刻版で、331ページ、八つの章と序文、索引からなる。出版社は、一変数解析関数の理論への、初等的な水準での厳密な入門書であり、大学院1年生と上級学部生を対象とすると説明している。叙述は幾何学的な方法に傾いており、等角写像、リーマンの写像定理、ディリクレ問題、モノドロミー定理、コーシーの積分定理が成り立つ領域の種類についての内容が豊富である。また、べき級数、周回積分、無限積も扱い、特殊関数の扱いは簡潔だがかなり完全である。アルフォルスは第3版の序文で、基礎に対する幾何学的アプローチを今も強く信じており、そのため導入的な章は以前の版とほとんど変わらないと書いている。
第1章:複素数
冒頭の章は、六章からなる初版と同じく、複素数にあてられている。
第2章:複素関数
第2章は複素変数の関数に進む。S. L. グリーンは、第2版から指数関数と三角関数がべき級数によって定義されていると指摘した。
第3章:写像としての解析関数
この章は解析関数を、領域の写像として幾何学的に扱う。W. M. ブースビーの初期の書評は、幾何学的アプローチが強調され、べき級数は本の中ほどまで導入されないと述べている。
第4章:複素積分
複素積分の章は、コーシーの積分定理とその帰結を展開する。出版社は、コーシーの定理が成り立つ領域の種類への注意を強調しており、初版のある評者は、位相的な技法の体系的な使用と、必要な知識の簡潔な導入を称賛した。
第5章:級数展開と積展開
第5章は、級数展開と無限積を扱う。出版社はこれらを本書の解析的な部分として挙げ、特殊関数の簡潔な扱いもそこに含まれる。
第6章:等角写像;ディリクレ問題
幾何学的な核心を担う章である。等角写像、リーマンの写像定理、ディリクレ問題(与えられた境界値をもつ調和関数の存在)を扱う。初版のディリクレ問題の章はペロンの方法を含んでおり、グリーンは、リーマンの写像定理がシュワルツ–クリストッフェル変換の節と合わせられていると述べる。
第7章:楕円関数
楕円関数は第2版で章として加えられた。ピエール・ルロンが『Mathematical Reviews』で述べるところでは、この章では保型関数を用いてピカールの定理が与えられる。
第8章:大域的解析関数
最後の章は大域的な解析関数を扱い、出版社は、モノドロミー定理を本書の大域的理論の主題の一つとして挙げている。
主要概念
第1–5章:基礎
- 写像としての解析関数:第3章。本書の幾何学的な重点を反映している。
- コーシーの積分定理:第4章。およびそれが成り立つ領域の問題。
- べき級数、周回積分、無限積:第4–5章。
第6–8章:幾何学的関数論と大域的理論
- 等角写像とリーマンの写像定理:第6章。
- ディリクレ問題:第6章。与えられた境界値をもつ調和関数の存在。
- 楕円関数:第7章。
- モノドロミー定理と大域的解析関数:第8章。
批判的分析
長所
- 幾何学的な傾き。 出版社は本書を幾何学的アプローチに傾いていると述べ、アルフォルスも序文で同じ信念を表明している。ピアース・ケッチャムは『American Mathematical Monthly』で初版を評し、位相的技法の体系的な使用と、必要な位相的概念の簡潔な導入を称賛し、古典的な関数論の風味が保たれているとした。
- 簡潔さと明快さ。 AMSは叙述を簡潔で明快、かつ徹底したものと評し、最後の改訂から30年以上たった今も古びていないと述べる。ハリー・ホッホシュタットは『SIAM Review』(1980年)で、約320ページに1年間の大学院課程で教えられる以上の内容があるとし、徹底的で広範、かつ高度な入門書と評した。
- 演習と範囲。 S. M. シャーは『American Mathematical Monthly』で第2版を、厳密で読みやすく、ヒント付きのものを含む挑戦的な演習が多数あり、大学院1年生の2学期にわたる課程に適した教科書だと評した。
- 標準的な課程を超える主題。 ブースビーは、ペロンの方法を含むディリクレ問題の章を、この種の本には通常ない内容として挙げた。ルロンの第2版の書評は、劣調和関数、リーマン面、楕円関数に言及している。
短所
- やさしくない。 ホッホシュタットは、これはやさしい本ではなく、教員の助けなしに内容を習得できる大学院生は例外的だと書いた。ブロードベントは初期の書評で、一様な文体が時として重要な結果を覆い隠すと述べた。
- 読書案内。 初版についての同じ初期の書評は、さらなる読書の提案がないことを残念がった。
- 一つの課程に収まらない。 ホッホシュタットは、本書には1年間の大学院課程で教えられる以上のものがあると述べる。したがってどの授業でも取捨選択が必要で、独習者も何を省くかを決めなければならない。
- 復刻版。 2021年のこの巻は第3版の復刻なので、内容は1970年代後半のものである。
コースにおける位置づけ
複素解析の書目のなかで、本書は簡潔で幾何学的な大学院向け教科書である。もっとやさしく始めたい場合は、Beck、Marchesi、Pixton、Sabalka の『A First Course in Complex Analysis』(無料で自由に利用でき、1学期の学部課程向け)と、Brown と Churchill の『Complex Variables and Applications』が、応用を視野に入れて理論を組み立てる。Stewart と Tall の教科書は学部生向けに厳密な理論を展開しつつ幾何学的な考え方を見失わず、Tristan Needham の『Visual Complex Analysis』は同じ結果の背後にある図形と物理的な直観を示すので、アルフォルスの幾何学的な章とよく合う。Stein と Shakarchi の巻はもう一つの厳密な大学院レベルの選択肢で、フーリエ解析や整数論との結びつきをより強調している。
本書の使い方
実解析の確かな素養と点集合位相の知識をもつ大学院1年生や、力のある上級学部生に向く。本文自体は複素数から始まる。
- 中核: 第1–6章が標準的な大学院課程になり、第6章が幾何学的な主要到達点である。
- 任意または第2学期: 第7章(楕円関数)と第8章(大域的解析関数)は、2学期目や独立した研究に向く。
- 読み方: 鉛筆を持って読み、演習を本文の一部として扱い、より計算的な本を併用する。直観や技法の不足は Needham や Brown と Churchill の本で補える。
