01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Bakhtin, M. M. (1982). The Dialogic Imagination: Four Essays (M. Holquist, Ed.; C. Emerson & M. Holquist, Trans.). University of Texas Press.
章の要約
本書は約480ページで、University of Texas Press Slavic Series の一冊である。翻訳についての注記のあと、編者による長い序論があり、1934年から1941年にかけて書かれた四つの論考が続き、巻末にバフチンの用語集と索引が付く。論考は1975年にモスクワで刊行されたロシア語論集から選ばれ、編者は執筆順ではなく、難易度が上がる順に並べている。
序論(ホルクイストとエマソン)
編者は、これらの論考をバフチンの言語観の中に位置づけ、全体で使われる用語を紹介する。読む価値はあるが、多くの読者は論考を一つ読んでから戻るほうが得るものが大きい。
Epic and Novel(叙事詩と小説)
叙事詩との対比によって小説を定義する論考。叙事詩は絶対的な過去から、単一で権威ある言語で語る。一方、小説は現在に、ほかのジャンルに、そして世界について語る多様な仕方に開かれている。
From the Prehistory of Novelistic Discourse(小説的言説の前史より)
出版社は、この論考でバフチンが小説をジャンルというより、「小説性」(novelness)と呼ぶ力として扱うと指摘している。論考は初期のテクストにこの力の痕跡を探り、主な構成要素として多言語性(一つの文化の中で複数の言語が相互作用すること)とパロディを挙げる。
Forms of Time and of the Chronotope in the Novel(小説における時間と時空間の諸形式)
バフチンは古代ギリシアの恋愛物語(ロマンス)からラブレーに向かう物語の原型をたどり、それぞれが時間と空間を一体としてどう表現するかを分析する。この一体化を彼はクロノトポスと呼ぶ。バフチン独自の型破りな方法による文学史である。
Discourse in the Novel(小説における言説)
最後の論考は小説から言語そのものへ向かう。バフチンは言語を、方言や下位ジャンル、競合する社会的「言語」へと層化したものと見る。ここでは、ヘテログロッシア(雑多な言語性)、小説がこれらの声を編成する能力、言語における均質化へ向かう傾向と分散へ向かう傾向との対立が展開される。
用語集
バフチンの専門用語を説明する参考部分で、後半の論考を読むときに役立つ。
主要概念
四つの論考
- 小説性(novelness):特定の狭いジャンルの性質ではなく、さまざまな書き方を通じて働く力に、バフチンが与えた名称。
- 多言語性とパロディ:言語同士の相互作用と、真面目なジャンルの笑いを帯びた分身。どちらも小説の前史の源として挙げられる。
- クロノトポス(chronotope):物語における時間と空間の融合。物語の型を分析する手段として用いられる。
- ヘテログロッシア(heteroglossia):一つの言語の内部に、多くの社会的・イデオロギー的な声が共存すること。
- 対話的言語と独白的言語:ほかの声に応答する言語と、単一の権威を主張する言語。
批判的分析
長所
- **編集上の支え。**出版社は、翻訳の注記、バフチンの思想への長い序論、用語集を挙げている。これほど独特な語彙には、こうした付属資料が大いに助けになる。
- **考え抜かれた配列。**論考を難易度順に並べているため、「Epic and Novel」が入口になり、最も密度の高い言説論が最後に置かれる。
- **射程の広さ。**論考は叙事詩やギリシア・ロマンスからラブレー、さらに日常言語の層化にまで及ぶので、本書は小説の文学史的な読みにも言語学的な読みにも使える。
- **評価。**出版社が引く書評者は、本書を編集・翻訳ともに見事で、バフチンをめぐるさらなる議論の出発点になるもの(Comparative Literature)、また二十世紀の重要な理論家の仕事(Voice Literary Supplement)と評した。
短所
- **特異な用語。**出版社自身が、バフチンの「小説」の用法は非常に独特で、伝統的な範囲よりはるかに広い領域を主張していると述べており、編者も彼の語彙のために用語集を必要とした。読者は定義をゆっくり積み上げる覚悟が要る。
- **選集であること。**四つの論考はロシア語論集の六編から選ばれたもので、この時期にバフチンが書いた素材のすべてが収められているわけではない。
- **開かれた議論。**出版社が引く書評(Genre)は、本書を答えではなく可能性の技芸と評しており、明確な方法をもつ体系的な理論を求める読者には物足りないかもしれない。
- **前提となる読書。**論考は古代以来の幅広い作品に言及するため、小説史の予備知識が乏しい読者には補助が必要である。
コースにおける位置づけ
小説のコースの中で、本書は小説が何をするかをすでに知っている読者のための理論書である。フォースターの Aspects of the Novel とロッジの The Art of Fiction は、小説の構成要素と技法への穏やかな入門であり、マッケイの The Cambridge Introduction to the Novel は拡張された精読を含む短い概観である。ワットの The Rise of the Novel は十八世紀イングランドに焦点を当てた歴史的議論で、叙事詩やギリシア・ロマンスにまで遡るバフチンのはるかに長い視野と好対照をなす。
ルカーチの The Theory of the Novel は、リストにあるもう一つの上級テクストである。こちらも小説を叙事詩と対比させるが、形式を歴史哲学を通じて読むのに対し、バフチンは言語と社会的な声を通じて読む。「Epic and Novel」をルカーチの論考と並べて読むと、同じ問いに対する二つの答えが見えてくる。
本書の使い方
本書は、文学理論、比較文学、ロシア研究の大学院生や上級の学部生に向く。また、後の批評でヘテログロッシアやクロノトポスといった用語に出会い、その出典を読みたい読者にも向く。論考はどれも検証のための実例を必要とするので、先に小説を何冊か読んでおくこと。
実際的な進め方としては、まず「Epic and Novel」を読み、そのあとは掲載順に論考を読み、用語集を手元に置く。最初の二編を読んだあとで編者の序論に戻ると、バフチンの言語観の要約が理解しやすくなる。文体や語りの声に主な関心がある読者は「Discourse in the Novel」に早めに進んでもよく、筋、舞台、ジャンル史を扱う読者はクロノトポスの論考に集中できる。どこから入る場合も、各キーワードをよく知る小説に当てはめて試し、次に進む前に各論考を一段落で要約するとよい。
