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Introduction to Psycholinguistics: Understanding Language Science(心理言語学入門:言語科学を理解する) cover

言語学

言語学

Introduction to Psycholinguistics: Understanding Language Science(心理言語学入門:言語科学を理解する)

Matthew J. Traxler

英語原題: Introduction to Psycholinguistics: Understanding Language Science

人が言語をどのように産出し、理解し、獲得するのか、また言語システムが損なわれたときに何が起こるのかを説明する、研究に基づく心理言語学入門。マシュー・トラクスラーは各領域の主要な実験結果と競合する理論モデルを示し、行動実験、眼球運動計測、神経科学の証拠が説明の優劣を判断するためにどう使われるかを示す。

前提知識: 言語学か心理学の入門授業を受けていると役立つが、高度な統計学や神経科学は必要ない。

難易度レベル
中級
学術レベル
学部
psycholinguisticslanguage processinglanguage developmentbilingualismlanguage disorders教科書

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Traxler, M. J. (2023). Introduction to Psycholinguistics: Understanding Language Science (2nd ed.). Wiley-Blackwell.

章の要約

第2版は2部16章で、通し番号のあるページは約650ページである(出版社は前付けと後付けを含め704ページとしている)。第I部「言語の産出・理解・習得における主要概念」は12章、第II部「言語障害」は4章からなる。各章は「まとめと結論」と、復習問題の「Test Yourself」で終わる。出版社は本書を、心理学、言語学、哲学、コンピュータ科学、神経学、神経生理学の知見を取り入れた学際的なもので、主要な理論の根拠となる実験的証拠を説明するものと紹介している。

第1章:言語科学への導入(An Introduction to Language Science)

この章は、ダン・エヴェレットによるピダハン語の研究から始まり、それを通じてこの分野の大きな問い、すなわち言語を知っているとはどういうことか、言語はどう働くのか、どこから来たのかを提示する。言語を他のコミュニケーション体系から区別する特徴(意味性、恣意性、離散性、転位性、生成性、二重分節性など)、文法、類人猿のコミュニケーションの研究、言語の起源についての連続説と不連続説、そして言語と思考の関係を、ウォーフの言語決定論から言語相対性の復活まで扱う。最後に、言語処理システムの最初の記述が置かれる。

第2–3章:発話の産出と理解/語の処理(Speech Production and Comprehension; Word Processing)

第2章は、言い誤り、舌先現象、絵の命名研究、活性化拡散モデルを通して発話の産出を扱い、続いて調音と、調音結合、運動理論、マガーク効果、ミラーニューロン、一般的聴覚アプローチを含む発話知覚を扱う。第3章は語に移り、語形の心的表示、語彙意味論(連想主義的な説明と身体性の説明を含む)、3世代のモデルによる語彙アクセス、語彙の曖昧性の解消、語彙表示の神経基盤を取り上げる。

第4–6章:文の処理/談話の処理/指示(Sentence Processing; Discourse Processing; Reference)

第4章は構文解析を扱う。二段階モデルと制約ベースのモデル、項構造仮説、construal やgood-enough parsing などの代替理論、長距離依存を取り上げる。第5章は談話を扱い、構築・統合理論、構造構築の枠組み、事象指標モデル、状況モデル、推論、談話理解の神経基盤を取り上げる。第6章は指示と共参照、束縛理論、記憶焦点モデルや中心化理論などの照応の心理言語学的理論を扱う。

第7–8章:非字義的言語の処理/対話(Nonliteral Language Processing; Dialogue)

第7章は、標準的な語用論的見方、メタファーとそれに関する競合する説明、メトニミー、イディオム、身体性、非字義的解釈の神経基盤を考察する。第8章は、グライスの格率、対話の相互行為性、共通基盤、聞き手に合わせた設計、聞き手の視点取得の効果を扱う。

第9–10章:乳児期と幼児期の言語発達/読み(Language Development in Infancy and Early Childhood; Reading)

第9章は、胎児期の学習と乳児の音素の知覚から、分節化の問題と統計的学習を経て、語の意味と形態・統語の習得までを追う。第10章は読みを扱い、眼球運動の制御、E-Z Reader などのモデル、書記体系、読みの学習、視覚的単語認識モデル、失読症を取り上げる。

第11–12章:バイリンガルの言語処理/手話(Bilingual Language Processing; Sign Language)

第11章は、2つの言語の同時活性化、産出における競合、BIA+ などの言語制御モデル、バイリンガリズムと実行制御、第二言語学習の個人差、バイリンガリズムの神経基盤を考察する。第12章は、手話言語の特徴、語彙アクセスと習得、手話の神経基盤、ろう者の認知への影響、人工内耳を述べる。

第13章:失語症(Aphasia)

障害を扱う最初の章で、脳が損傷を受けたとき言語に何が起こるか、古典的な WLG(ウェルニッケ・リヒトハイム・ゲシュヴィント)モデルとその問題、ブローカ失語とウェルニッケ失語における統語解析についての仮説、そして治療と回復を扱う。

第14–16章:発達性言語障害/言語と自閉症/言語機能障害と統合失調症(Developmental Language Disorder; Language and Autism; Language Dysfunction and Schizophrenia)

第14章は、発達性言語障害の特定と説明、治療の選択肢を扱う。第15章は、自閉症の言語を、診断と言語プロフィールから、提案された神経的・認知的説明、さまざまな治療を支持または否定する証拠まで扱う。第16章は統合失調症における言語の障害を扱い、提案された神経の異常、意味記憶と作業記憶の失敗、心の理論、幻聴と妄想を取り上げる。出版社は、自閉症と統合失調症の章、および障害の部が、この版で新しいと述べている。

主要概念

第1–3章:言語科学、発話、語

  • 言語の設計特徴:恣意性、転位性、生成性など、言語を他のコミュニケーション体系から分ける性質。
  • 言語相対性:ウォーフと結びつけられる、話す言語が思考を形づくるという考え。
  • 活性化拡散とレンマ理論:発話のために語がどう取り出されるかのモデル。
  • 語彙アクセス:語を認識する過程。第1世代から第3世代のモデルで扱われる。

第4–8章:文、談話、相互行為

  • 制約ベースの構文解析:多くの情報源が最初から文の解釈に影響するという見方で、二段階モデルと対比される。
  • 状況モデル:談話が述べる出来事の心的表示。
  • 照応と束縛理論:代名詞やその他の表現が指示対象とどう結びつけられるか。
  • 共通基盤と聞き手設計:会話における共有知識と視点取得。

第9–12章:発達、読み、バイリンガリズム、手話

  • 統計的学習と分節化:乳児が発話中のパターンを使って語の境界を見つけること。
  • 二重経路モデルと単一経路モデル:語の読みについての競合する説明。
  • バイリンガルの言語制御:話者が活性化した2つの言語をどう管理するか。
  • 手話の側性化:手話言語の神経基盤。

第13–16章:言語障害

  • 失語症:脳損傷後の言語障害で、統語障害についての競合する説明がある。
  • 発達性言語障害:子どもの持続的な言語障害で、いくつかの説明がある。
  • 心の理論と弱い中枢性統合:自閉症の認知的説明。
  • 統合失調症における言語の障害:意味記憶、作業記憶、自己モニタリングの乱れ。

批判的分析

長所

  • 証拠を中心に据えている。 出版社は、理論の背後にある実験的証拠の詳しい記述を強調している。目次を見ると、ほとんどの章で競合するモデルが並べて示されている。第1世代から第3世代の語彙アクセスのモデル、二段階モデルと制約ベースの構文解析、二重経路と単一経路の読みのモデルなどである。
  • 範囲が広い。 本書は、発話、語、文、談話、非字義的言語、対話、習得、読み、バイリンガリズム、手話を扱い、さらに障害の4章が続く。
  • 一貫した学習の仕組み。 各章にまとめと「Test Yourself」の問題があり、第1章にはさらに「Think About It」の問いがある。出版社は、学習目標、思考演習、クイズやスライドのある補助サイトも挙げている。
  • 第2版での更新。 出版社は、言語習得、言語の認知神経科学、バイリンガリズム、手話についての新しい内容と、2つのまったく新しい章を含む障害の新しい部を挙げている。

短所

  • 長さと密度。 本書は約650ページ16章あり、1学期ではその中から選ぶ必要がある。いくつかの章(たとえば発話知覚、語彙アクセス、構文解析)はモデルごとの比較で構成されており、この領域に不慣れな学生には負担が大きいかもしれない。
  • 習得は圧縮されている。 子どもの言語発達は乳児期と幼児期を中心とする1章(第9章)しかなく、習得に重点を置くコースでは専用の本が必要になる。
  • 障害の章は幅広い。 自閉症の章は診断、原因、治療にわたって幅広く扱い、効果のない、あるいは有害な治療の節も含む。これは言語処理を超えており、一般的な心理言語学のコースが必要とする以上かもしれない。

コースにおける位置づけ

Traxler の本は、通常の言語処理と、第II部で言語障害を扱う、研究に基づく一般的な教科書である。Paul Warren の Introducing Psycholinguistics は、この分野に初めて触れる学生向けの短い入門で、まとめ、演習、推薦文献の提案が付いており、取りつきやすい最初の1冊になる。Julie Sedivy の Language in Mind は、言語処理、習得、言語と認知の関係を包括的に論じており、近い領域を扱っている。Trevor Harley の The Psychology of Language: From Data to Theory は、あらゆるレベルで実験結果を競合するモデルと突き合わせる研究主導の叙述で、発達、バイリンガリズム、言語障害を成人の処理と並べて扱い、心理言語学か認知心理学の先行する授業を前提とする。

習得については、William O'Grady の How Children Learn Language が簡潔で専門用語の少ない叙述であり、Eve Clark の First Language Acquisition は用法基盤の見方をとる大学院向けの教科書である。どちらも Traxler の1章だけの習得の扱いを補う。

本書の使い方

本書は、心理言語学、言語処理、コミュニケーション障害の上級の学部生と、心理学、言語学、認知科学、神経科学、言語教育、計算言語学の学生のためのものである。言語学か心理学の入門の授業を受けていると役立つが、高度な統計や神経科学は必要ない。

進め方の例を挙げる。第1章で全体を把握し、成人の言語処理の中核として第2章から第6章を順に読む。語、文、談話の処理が積み上がっていくからである。第7章から第12章はコースに応じて選ぶ。語用論なら非字義的言語と対話、習得なら第9章、読みなら第10章、バイリンガリズムと手話なら第11章と第12章である。第II部はコミュニケーション障害のコースでは1つのまとまりとして、あるいは第I部の理論を例示するために1章ずつ読むことができる。失語症の章は、構文解析を扱う第4章とよく合う。

「Test Yourself」の問題で記憶を確かめ、思考演習は議論に使い、補助サイトでクイズをする。本書は競合するモデルを論じるので、各モデルの主張とそれを支持・否定する証拠を簡単な表にまとめておくとよい。