01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Crowley, T., & Bowern, C. (2010). An Introduction to Historical Linguistics (4th ed.). Oxford University Press.
章の要約
本書は15章からなり、そのあとにデータセット(327〜344ページ)、注、言語参考文献、参考文献、索引が続く。目次のページ番号によれば、本文はデータセットの前までで約325ページである。出版社の説明は、本書を通時言語学の概念と技法への入門と位置づけ、この分野の主要な領域をすべて明快かつ簡潔に扱い、幅広い言語から例を挙げ、とくにオーストラリアと太平洋の言語に力を入れているとしている。章は大きく四つのまとまりに分かれる。音変化、再建と分類の方法、文法と意味の変化、そして変化の社会的な側面である。
第1〜4章:Introduction;Types of Sound Change;Expressing Sound Changes;Phonetic and Phonemic Change
第1章(約20ページ)はこの分野の導入である。第2章(約32ページ)は冒頭のまとまりで最も長く、音変化の種類を分類する。第3章(約10ページ)は音変化の表し方を扱い、第4章(約13ページ)は音声的変化と音素的変化を扱う。
第5〜9章:The Comparative Method (1): Procedures;Determining Relatedness;Internal Reconstruction;Computational and Statistical Methods;The Comparative Method (2): History and Challenges
方法を扱う章は本書の中核である。第5章(約30ページ)は比較方法の手順を述べ、第6章(約13ページ)は言語間の系統関係をどう判定するかという問題に移る。第7章(約15ページ)は内的再建を扱う。第8章(約26ページ)は計算的・統計的方法を紹介し、出版社は言語分類への統計的方法をこの版の新しい内容として挙げている。第9章(約22ページ)は、その歴史と課題とともに、比較方法に再び戻る。
第10〜12章:Morphological Change;Semantic and Lexical Change;Syntactic Change
第10章(約15ページ)は形態変化を扱い、出版社は文法化をこの版の新しい節の一つに挙げている。第11章(約18ページ)は意味と語彙の変化を扱い、第12章(約29ページ)は三つの中で最も長く、統語変化にあてられている。
第13〜15章:Observing Language Change;Language Contact;Cultural Reconstruction
第13章(約18ページ)は言語変化の観察についてである。第14章(約35ページ)は本書で最も長い章で、言語接触を扱い、第15章(約28ページ)は文化の再建を扱う。
データセットと巻末資料
データセット(約18ページ)は練習のための言語データを提供する。出版社は、多くの新しい練習問題といくつかの新しいデータセットを第4版の変更点として挙げており、そのあとに注、言語参考文献、参考文献が続く。
主要概念
第1〜4章
- 音変化:その種類、表し方、音声的・音素的な側面。
第5〜9章
- 比較方法:関連する言語を比較して、より古い言語を再建すること(第5章と第9章)。
- 系統関係:言語が共通の祖先をもつことを示すために必要な証拠(第6章)。
- 内的再建:一つの言語の内部のパターンから古い形を推定すること(第7章)。
- 計算的・統計的分類:第8章の方法。
第10〜15章
- 形態・意味・語彙・統語の変化と、文法化。
- 言語接触:変化の源としての接触(第14章)。ピジンとクレオールも本文に繰り返し現れる用語である。
- 文化の再建:第15章の主題で、題名が示すとおりである。
批判的分析
長所
- 一冊の幅広い範囲。 目次は、音変化、再建、分類、文法と意味の変化、変化の観察、接触に及んでおり、授業は本書の順序に沿って進められる。
- 練習のためのデータ。 約18ページの独立したデータセットの節があり、出版社は今版で多くの新しい練習問題とデータセットが加わったと述べている。
- オーストラリアと太平洋の例。 出版社が強調するこれらの地域への力点は、本文に繰り返し現れる Dyirbal、Fijian、Samoan、Tok Pisin、Bislama、Proto-Polynesian といった言語名に表れている。
- 伝統的な方法と新しい方法。 比較方法の章と並んで、計算的・統計的方法の独立した章がある。
短所
- 刊行年。 この版は2010年のもので、それ以降の計算系統学の進展は扱われていない。
- 変化の理論は手薄。 目次には方法と変化の各領域に別々の章があるが、なぜ変化が起こるかについての理論を扱う章はない。これを求める学生は、より理論的な本が必要になる。
- 章の大きさにばらつきがある。 表記を扱う第3章と、第4章、第6章は10〜13ページしかないので、隣接するより長い章とあわせて読むのがよい。
- 音声学の入門がない。 出版社は学部の言語学専攻の学生のニーズを念頭に置いたとしているが、目次には音声学の入門がないため、音変化の章を読むには音声学の基礎知識があるとよい。
コースにおける位置づけ
本サイトの歴史言語学の本の中で、Crowley と Bowern は方法を中心にしたコンパクトな教科書である。Trask と Millar の Trask's Historical Linguistics は、変化の種類と再建の方法を説明し、人が住むすべての大陸の例を挙げる、もう一つの入門教科書であり、Aitchison の Language Change: Progress or Decay? は、言語学の予備知識を必要とせず、言語がなぜどのように変わるかを読みやすく説明する。
より深いレベルでは、Campbell の Historical Linguistics: An Introduction が、同様の話題をより詳細な方法論とともに扱い、確かな音声学の知識を前提とする。Ringe と Eska の Historical Linguistics: Toward a Twenty-First Century Reintegration は、現代の理論言語学の道具立てで言語変化を扱う。Hock と Joseph の Language History, Language Change, and Language Relationship は、歴史・比較言語学へのもう一つの入門書で、インド・ヨーロッパ語族やほかの語族のデータを用いる。
本書の使い方
本書は学部の言語学専攻の学生を対象としている。音声学・音韻論の知識、できれば言語学入門の授業を受けていると、第2〜5章が読みやすくなる。
実践的な進め方は次のとおり。
- 中核: 第1〜9章を順に読む。比較方法(第5章と第9章)は第2〜4章の音変化の語彙に依存し、第6章は系統関係の判定を扱う。
- 次に: 文法と意味の変化を扱う第10〜12章を、章の並びの順に読む。
- 関心に応じて: 計算的分類に関心があれば第8章、接触と社会言語学的視点には第13〜14章、先史との関係には第15章を読む。
- 練習: 各方法の章と並行して、問題とデータセットに取り組む。
