01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Hock, H. H., & Joseph, B. D. (2019). Language History, Language Change, and Language Relationship: An Introduction to Historical and Comparative Linguistics (3rd ed.). De Gruyter Mouton.
章の要約
本書は約575ページの大部な一般向け入門書である。18章からなり、第1章のあとに音声学の付録があり、章ごとの注と推薦文献(486〜512ページ)、参考文献、言語索引、一般索引が続く。出版社は、専門家でない読者を対象とし、なじみのある言語とより珍しい言語の例を豊富に示し、インドの言語のデータをかなり多く含むと説明している。章は四つのまとまりとして読める。変化とインド・ヨーロッパ語の基礎(第1〜3章)、音・形・統語・意味における変化の仕組み(第4〜7章)、語と変化の社会的環境(第8〜15章)、そして比較方法とそのより広い展開(第16〜18章)である。
第1〜3章:Introduction;The discovery of Indo-European;Writing: Its history and its decipherment
第1章は言語が変わり続けるという事実から始め、言語変化の種類と言語の系統関係という考えを概観し、「注意の言葉、あるいは『話者万歳』」を添え、表記と用語についての注で終わる。付録(約10ページ)は音声学、音声記号、その他の記号を扱う。第2章は言語の系統関係、印欧祖語、そしてインド・ヨーロッパ語族の諸言語の概観を紹介する。第3章は約47ページで、文字の歴史、古代文字の解読、文字記録の音声的解釈、世界のその他の地域の文字を扱う。
第4〜7章:Sound change;Analogy and change in word structure;Syntactic change;Semantic change
第4章はグリムの法則からヴェルナーの法則を経て、規則性の仮説と新文法学派へ進み、さらに音変化の種類、「なぜ音変化か」という問い、規則性への再訪を扱う。第5章は、体系的な類推と散発的な類推、その音韻論との関係、過剰修正、形態変化を扱う。第6章は、どの変化が統語的と言えるかを問い、統語と類推を比較し、英語と関連言語の語順変化をたどる。第7章は、意味の本質的なあいまいさ(多義性、意味の重なり、比喩)、同義語と同音異義語、音と意味の関係、そして意味変化の要因と結果を扱う。
第8〜9章:Lexical borrowing;Lexical change and etymology
第8章は借用の実質、自国語化、「過剰外来語化」、借用の動機とその影響を扱う。第9章は語の研究で、造語、語の起源の事例研究としての固有名、隠語・業界用語・俗語における造語を扱う。
第10〜15章:Language, dialect, and standard;Dialect geography and dialectology;Language spread, link languages, and bilingualism;Convergence;Pidgins, creoles, and related forms of language;Language death
このまとまりは、変化を社会的・地理的な環境の中に位置づける。第10章と第11章は、言語と方言、社会方言、標準語、ダイグロシアから、方言の相互作用のパターン、等語線、方言のならしへと進む。第12章と第13章は、リンク言語、干渉、コードスイッチング、基層、コイネー、そしてクパワール、バルカン、南アジア、ヨーロッパを例にした収束を取り上げる。第14章は、外国人向け話し方、ピジン、交易用ジャーゴン、クレオール、脱クレオール化を扱う。第15章は約6ページの短い章で、言語の死を扱う。
第16〜18章:Comparative method;Proto-World?;Linguistic palaeontology
第16章は、言語の系統関係がどのように立証されるかを述べる。偶然の類似、擬音語、接触による類似を除外し、次に体系的な対応、共有された特異性、再建、再建の限界を扱い、インド・ヨーロッパ語族以外の語族についての節もある。第17章は遠距離の系統関係、語彙の大量比較、言語の起源を問う。第18章は、宗教、社会、物質文化、経済、馬と車輪、印欧祖語の故地(Urheimat)、遺伝学・ゲノム学と「人種」、そしてイデオロギーと比較言語学の関係を扱う。
主要概念
- 音変化の規則性:グリムの法則、ヴェルナーの法則、新文法学派の仮説(第4章)。
- 類推:体系的・散発的な類推と過剰修正が語構造の変化の源となること(第5章)。
- 意味変化と語彙借用:意味のずれとその原因(第7章)、語の借用と自国語化(第8章)。
- 方言地理学と等語線:地域的変異の地図化(第11章)。
- 収束とピジン・クレオールの形成:言語接触が共有された特徴や新しい言語を生み出すこと(第13〜14章)。
- 比較方法と再建:体系的な対応から再建へ(第16章)。
- 言語古生物学:再建された言語を先史の研究に用いること(第18章)。
批判的分析
長所
- 初学者向けの書き方。 出版社は、レベルと説明が言語学の予備知識がほとんど、あるいはまったくない関心のある初学者に適していると述べており、第1章には音声学と記号の付録がある。
- 並外れて広い範囲。 音、類推、統語、意味という通常の話題のほかに、文字体系、借用、語源、方言学、収束、ピジンとクレオール、言語の死、遠距離の系統関係、言語古生物学の章がある。
- 言語の範囲。 出版社はインドの言語のデータをかなり多く含むことを強調しており、これにより例がヨーロッパ中心の通常のものを超えて広がる。本書には言語索引もある。
- 版の改良。 ほとんどの章が改訂され、難しい箇所が削除または書き直され、音変化の規則性についての節を含む新しい節が加わった。章ごとの注と参考文献も更新された。
- さらなる読書。 約27ページの章ごとの注と推薦文献が付いている。
短所
- 方法が後ろに来る。 比較方法は398ページの第16章にあり、多くの話題のあとに置かれている。再建を中心とする授業では、本の順序を組み替えることになるだろう。
- 分量。 約575ページは一学期の入門としては長く、授業では章を選ぶ必要がある。
- 目次には練習素材があまり見えない。 目次には章ごとの注と推薦文献があるが、練習問題やデータセットが独立した節としては挙がっておらず、問題練習はほかから補う必要があるかもしれない。
- 印欧語への比重。 第2章と第18章は印欧語についてのもので、印欧語以外の語族は第16章の一つの節にとどまる。
コースにおける位置づけ
本書は、歴史言語学の幅広い一般向け入門書である。Crowley と Bowern の An Introduction to Historical Linguistics は、方法を重視し、独立したデータセットの節を持つ、よりコンパクトな本であり、Trask と Millar の Trask's Historical Linguistics は、各話題に練習問題が付いたもう一つの入門教科書である。Aitchison の Language Change: Progress or Decay? は、予備知識を必要としない短く読みやすい本である。
より深く学ぶには、Campbell の Historical Linguistics: An Introduction が、音変化、文法変化、分類、比較方法、再建を方法論の深さで扱い、Ringe と Eska の Historical Linguistics: Toward a Twenty-First Century Reintegration は、現代の理論言語学の道具立てで変化を扱う。Hock と Joseph は、言語、方言、接触の物語を知るための最初の一冊として適しており、そのあとで方法を扱う教科書に進むとよい。
本書の使い方
本書は初学者向けなので、言語学入門の授業を受けていると役に立つが、必須ではない。音声記号に慣れていない読者は、第1章の付録から始めるとよい。
実践的な進め方は次のとおり。
- 中核: 言語変化、印欧語、比較方法の要点を扱う第1、2、4、5、16章。
- 次に: 統語変化と意味変化の第6〜7章と、借用と語を扱う第8〜9章。
- 社会と接触の話題: 第10〜14章は方言、接触、新しい言語のまとまりをなし、歴史言語学と社会言語学を結びつける授業に向く。
- 選択: 文字を扱う第3章、言語の死の第15章、遠距離の系統関係と先史の第17〜18章。
- 練習: 章ごとの注と推薦文献を後続の読書に使い、再建の練習には方法を扱う教科書の問題を加える。
