01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Case, S., Johnson, P., Manlow, D., Smith, R., & Williams, K. (2021). The Oxford Textbook on Criminology (2nd ed.). Oxford University Press.
章の要約
第2版は約1,150ページの大部な入門教科書で、33章が5部に分けられ、「探る」「説明する」「対応する」という三つの動詞を軸に構成されている。その前後を、犯罪学の学び始めについての短い第1部と、研究とキャリアについての最終部が挟む。出版社は学生中心の設計を強調している。「あなたはどう考えるか(What do you think?)」と問いかけるボックス、「論争と議論(Controversy and debate)」、各分野の「新たなフロンティア(New frontiers)」、そして研究者、学生、警察官、法律家、活動家、被害者、元犯罪者、雇用主との「対話(Conversations)」が繰り返し登場する。初版と比べ、グローバル犯罪学、社会的害悪、グリーン犯罪学の章が加わり、被害者学、ヘイトクライム、人種の扱いが拡充され、冒頭と末尾の部は簡潔にされた。
第1部:犯罪学への旅立ち(第1章)
第1章「犯罪学を学ぶ」 は、この学問が何であり、どのように学びに取り組めばよいかについての導入の章である。出版社によれば、この版では初学者に実践的な手引きを与えるよう簡潔にされた。
第2部:犯罪を探る(第2〜14章)
最も長いこの部は、犯罪とは何か、私たちはそれをどのように知るのかを問う。第2〜3章「『犯罪』とは何か」「『正義』とは何か」 は、本書全体が依拠する、争いのある定義を示す。第4〜6章「犯罪学はどのように知識を生み出すか」「犯罪統計」「犯罪とメディア」 は、研究から公式統計、メディアの表象まで、犯罪についての知識の源を検討する。第7〜11章 は特定の集団や視点を取り上げる。「被害者学」「ヘイトクライム」「少年の非行と少年司法」「人種・エスニシティと刑事司法制度」「ジェンダーとフェミニスト犯罪学」である。第12〜14章 は新設または新たに拡充された領域で、「グリーン犯罪学」と、グローバル犯罪学についての2章「比較犯罪学」「トランスナショナル犯罪学」からなる。出版社は、グローバルな主題として組織犯罪、薬物取引、密入国あっせん、サイバー犯罪、テロリズム、そして「南の犯罪学(southern criminology)」を求める声を挙げている。
第3部:犯罪を説明する(第15〜22章)
理論をおおむね年代順にたどる。「自由意思、古典派、合理的選択」(第15章)、「生物学的・心理学的実証主義」 と 「社会学的実証主義」(第16〜17章)、「批判的犯罪学」(第18章)、新設の 「社会的害悪」(第19章)、「右派リアリズムと左派リアリズム」(第20章)、「統合的犯罪理論」(第21章)である。第22章「犯罪の原因を探る」 は、これらの理論がいずれも答えようとしている問いに立ち返って部を締めくくる。
第4部:犯罪に対応する(第23〜31章)
刑事司法の部は原理から実践へと進む。「刑事司法の原理」「刑事司法の機関」「刑事司法の政策と実務」(第23〜25章)、「犯罪予防」 と 「犯罪統制」(第26〜27章)、そして刑罰による対応についての4章、「刑罰」「犯罪者の更生」「刑罰に代わるもの」「刑罰への批判的視点」(第28〜31章)である。
第5部:犯罪学における研究とキャリア(第32〜33章)
「犯罪学的研究の実施」 は学生を自分自身の研究プロジェクトへと導き、「就職力とキャリア」 は学位を刑事司法制度を含む仕事と結びつける。
主要概念
第1〜2部:犯罪を探る
- 争われるカテゴリーとしての犯罪:何が犯罪とされるかは法、権力、社会的反応に依存する。第2章で提起される問いである。
- 知識の生産:研究、公式統計、メディアは、犯罪について私たちが知ることの、性格も信頼性も異なる源である。
- 被害者学とヘイトクライム:被害者の研究と、集団への敵意を動機とする犯罪の研究。
- グリーン犯罪学とグローバル犯罪学:環境への害悪と、国家をまたぐ犯罪と司法。
第3部:犯罪を説明する
- 古典派と合理的選択:自由で理性的な行為者の選択としての犯罪。
- 実証主義:犯罪行為の生物学的、心理学的、社会的な原因の探究。
- 批判的犯罪学と社会的害悪:犯罪の公式の定義を問い直し、法が犯罪化していない害悪にまで視野を広げる視点。
- リアリズムと統合理論:犯罪を実際的な問題として扱う右派・左派のリアリズムと、複数の説明を組み合わせる試み。
第4〜5部:犯罪に対応する
- 刑事司法の原理と機関:社会が犯罪に対応する際の価値と組織。
- 予防と統制:犯罪を未然に減らすことと、取締りを通じて管理することの対比。
- 刑罰、更生、代替策:刑罰による対応の競合する目的と、それらへの批判。
批判的分析
長所
- 学生のための設計。 読者を受け身の学習者ではなく、成長途上の犯罪学者として扱う。省察を促す「What do you think?」のボックス、論争、刑事司法制度の内外の幅広い人々へのインタビューがその例である。出版社が引用する犯罪学の講師たち(たとえばアングリア・ラスキン大学、エディンバラ大学、レスター大学)の推薦文は、この学生中心の姿勢を特に評価している。
- 最新の話題を含む幅広さ。 第2版はグリーン犯罪学、グローバル犯罪学、社会的害悪の独立した章を加え、各分野に新たな動向を紹介する「New frontiers」のボックスがあるので、学生は古典的理論と並んで最近の議論にも触れられる。
- 学位課程全体の伴走者。 第1部と第5部は、学び始め、研究の実施、キャリアの計画を扱っており、1年次から卒業論文まで学生に寄り添うことができる。
- 明快な三部構成の論理。 探る・説明する・対応するという流れにより、33章の全体を見通しやすく、授業科目にも対応づけやすい。
短所
- 非常に長い。 約1,150ページあり、一つの授業科目に必要な分量をはるかに超えるので、取捨選択が不可欠である。
- イギリスの枠組み。 本書はイギリスのオックスフォード大学出版局がイギリスの犯罪学の学位課程向けに出しており、推薦者もイギリスの大学の教員である。そのため刑事司法の機関、政策、統計の章はイギリスに最も直接当てはまると考えられ、他国の学生はそれらの章について自国の資料を補う必要がある。
- 入門レベルの深さ。 理論は概説の章で扱われるので、一つの理論や機関についてレポートを書く学生には、原典や研究レベルの論集が必要になる。
- 推薦文は書評ではない。 入手できる評価は出版社が選んだ推薦文であり、独立して公表された書評ではない。
コースにおける位置づけ
本書は、このコースの犯罪学の文献リストにおける主たる学部教科書である。ティム・ニューバーンの『Criminology』も包括的なイギリスの入門書で、本書の代わりに、あるいは理論と刑事司法についての二つ目の説明として併用できる。ジュリアン・ロバーツの『Criminal Justice: A Very Short Introduction』は司法手続きを手早く概観する本で、第4部に入る前の最初の週に向いている。
上級の文献は特定の部の上に積み上げられる。『The Oxford Handbook of Criminology』(リーブリングほか編)は専門家による研究レベルの論考を集めており、第2〜4部のどの主題についても自然な次の一歩となる。イーストンらの『Sentencing and Punishment』は第28〜31章の刑罰の問題をはるかに深く掘り下げ、リチャード・イングリッシュの『Terrorism: How to Respond』は第14章のトランスナショナルな主題の一つを発展させる。
本書の使い方
本書は、法学や社会科学との複合学位の学生も含め、犯罪学を学ぶ学部1〜2年生に適している。犯罪学の予備知識は前提とされない。
- 1年次: 第1章、続いて基礎として第2〜6章、授業科目に合わせて第7〜14章から選んだ章、理論として第15〜18章と第20章、刑事司法として第23〜25章。
- 2年次: 残りの理論(第19章、第21〜22章)、犯罪予防と統制(第26〜27章)、刑罰の章(第28〜31章)、そしてグローバル犯罪学とグリーン犯罪学の章。
- 最終学年: 卒業論文や就職活動を計画する際に第32〜33章。
- 学び方: 先を読む前に「What do you think?」の問いに答え、「Controversy and debate」のボックスをゼミの準備に使う。オンライン教材には、自己テスト用の多肢選択問題と章末問題の解答メモが加えられている。
- 併せて行うこと: レポートのためには各章の手がかりをたどって『Oxford Handbook』や原典の研究へと進み、学んでいる法域の最新の事件や統計を記録しておく。
