01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Mayer, B. (2018). The International Law on Climate Change. Cambridge University Press.
章の要約
背景と主張
ケンブリッジ大学出版局は、本書を気候変動に関する国際法を概観する教科書と紹介している。重要な国際協定が、国際法の一般規範の遵守をどのように促そうとしてきたかを説明し、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の下およびその他の場での交渉で合意された、緩和、ジオエンジニアリング、適応、損失と損害、国際支援に関する規則を述べる。気候法、環境法、国際法を学ぶ学部生と大学院生を対象とし、各章について資料のリストや最新情報を定期的に更新するウェブサイトが付属している。
本書は16章、本文約275ページである。構成は、行動の根拠とUNFCCC体制の歴史(第2〜4章)から、一般規範と差異化の原則(第5〜6章)、緩和・適応・損失と損害・支援という実体的な領域(第7〜12章)を経て、遵守、裁判、非国家主体(第13〜15章)に至る。最終章は、気候変動が国際法そのものに何をもたらすかを問う。
第1章:序論
科学的・法的な背景、すなわち温室効果、人為的な排出とその帰結、国際気候法の範囲と構造を述べる。
第2章:気候変動に対する国際行動の根拠
国家が気候変動に共同で対処する理由を、科学、経済学、正義の諸観念(是正的、分配的、世代間、環境的)に基づいて示し、行動の障害と国際協力の必要性を検討する。
第3章:UNFCCC体制:リオからパリへ
1992年の条約から京都議定書を経てパリ協定に至る体制を、その過程で確立された制度、約束、原則とともにたどる。
第4章:他の体制における関連する展開
オゾン層の保護、国際輸送、生物多様性など、気候変動に関わる他の国際体制を扱う。
第5章:一般国際法の関連規範
気候変動に適用される一般規範を検討する。無害原則、持続可能な開発、予防、汚染者負担原則、国家責任、人権法などである。
第6章:差異化
国家を異なって扱う根拠、たとえば歴史的排出量や能力と、UNFCCC体制で差異化がどう実施されてきたかを検討する。
第7章:気候変動の緩和に関する国際行動
集団的な目標、国別の約束、緩和措置を、UNFCCC以外の条約体制の下での行動を含めて概観する。
第8章:柔軟性メカニズム
共同実施、クリーン開発メカニズム、炭素取引を扱い、これらのメカニズムの有効性を考察する。
第9章:ジオエンジニアリング
太陽放射管理や二酸化炭素除去といった技術と、その規制をめぐる法的・倫理的問題を論じる。
第10章:気候変動の適応に関する国際行動
UNFCCCその他の体制の下での適応と、脆弱な国々への支援を扱う。
第11章:損失と損害
緩和と適応では避けられない被害、UNFCCCにおける損失と損害の取り組み、国際法の下で賠償を確保する難しさを検討する。
第12章:国際支援
UNFCCCの下での資金、技術、能力構築を、緑の気候基金とREDD+を含めて扱う。
第13章:野心と遵守
気候協定の構造と、遵守がどう促されるか、すなわち透明性、レビュー、行動と約束との乖離を検討する。
第14章:裁判
国際裁判所における訴訟の見通しと、国内レベルで増えつつある気候訴訟を論じる。
第15章:非国家主体
NGO、企業、市民社会が、交渉、自主的な約束、基準設定で果たす役割を扱う。
第16章:気候変動の時代における国際法
最終章は、気候変動が国際法にとって何を意味するかを考察する。一般原則や国家責任の理解への影響も含まれる。
主要概念
第1〜6章
- UNFCCC体制:国際的な気候協力を構成する枠組条約とその議定書・協定。
- 正義の根拠:行動の理由としての是正的、分配的、世代間、環境的な正義。
- 差異化:責任と能力に結びついた、国家ごとに異なる義務。
第7〜12章
- 緩和と適応:気候変動への法的対応の二つの主要な柱。
- 柔軟性メカニズム:共同実施、クリーン開発メカニズム、排出量取引などの市場的手段。
- ジオエンジニアリング:気候システムへの意図的な大規模介入と、それが提起する法的問題。
- 損失と損害:緩和や適応では避けられない被害。
第13〜16章
- 野心と遵守:国家が約束することと実際に行うこととの関係。
- 気候裁判:気候に関する請求の場としての国際・国内の裁判所。
- 非国家主体:気候ガバナンスにおけるNGO、企業、市民社会。
批判的分析
長所
- 教科書として設計されている。 出版社は、本書を学生向けの概観書として紹介し、章ごとの更新を載せたウェブサイトを付属させている。16の章は約11〜24ページと短く、一つの主題を一度に読める。
- 広く整理された範囲。 柔軟性メカニズム、ジオエンジニアリング、損失と損害、非国家主体など、簡単にしか扱われないことの多い領域が章として立てられている。
- 気候法を一般国際法と結びつける。 他の体制と一般規範に関する独立した章が、気候条約がより広い法秩序とどう関係するかを示し、国際公法を学ぶ学生に適している。
- 最新情報を追う支援。 付属ウェブサイトが各章の更新資料を提供している。
短所
- 時期。 本文は2018年刊行であるため、パリ協定の初期の実施以降の展開、その後の交渉や裁判所の判断については、他の資料が必要である。
- 概観の深さ。 章が短いため、一つの体制の条約本文や交渉の経緯の詳細は、一次資料や専門書から得る必要がある。
- 予備知識があると助かる。 国際公法を学んでいない読者は、国家責任や条約解釈などの概念を調べる必要がある。
コースにおける位置づけ
環境法の書のうち、ベルらの『Environmental Law』とホルダーらの『Environmental Protection, Law and Policy』は、国内法とEUの環境法に集中している。ラザラスの『The Making of Environmental Law』は米国の環境法の歴史である。サンズらの『Principles of International Environmental Law』は国際環境法の全分野を扱う包括的な体系書で、気候変動はそのなかの一つの主題である。
マイヤーの本は気候についての専門書である。国際環境法の入門のあとに、またはサンズの気候に関する章と並べて読むとよい。気候変動法に特化した授業や論文の自然な選択である。
本書の使い方
気候法、環境法、国際法を学ぶ、学部または大学院の学生のために書かれている。
実践的な進め方は次のとおり。
- 中核:根拠、体制、一般規範のための第2、3、5、6章。三つの主要な実体領域のための第7、10、12章。
- 主題別の読み方:柔軟性メカニズムとジオエンジニアリングの第8、9章、損失と損害の第11章は、授業の必要に応じて取り上げられる。
- 応用:遵守と訴訟の第13、14章、気候変動が国際法に及ぼす影響についての考察である第16章。
- 本書と並行して:付属ウェブサイトと、UNFCCC、京都議定書、パリ協定の現行の文書を使い、各章を最新の決定と照らし合わせる。
