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労働法(ケンブリッジ) cover

法学

法学

労働法(ケンブリッジ)

Hugh Collins; Keith Ewing; Aileen McColgan

英語原題: Labour Law (Cambridge)

Law in Context シリーズに属する英国労働法の学部生向け教科書で、5部20章からなる。労働法の法源とグローバル化、雇用契約、賃金・労働時間・平等に関する制定法の規制、争議行為を含む集団的権利、解雇を扱う。

難易度レベル
中級
学術レベル
学部
雇用法団体交渉労働組合雇用契約職場の権利労使関係

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Collins, H., Ewing, K. D., & McColgan, A. (2012). Labour Law. Cambridge University Press. Law in Context series.

章の要約

本書は全20章、5編から成り、索引まで含めて約920ページある。序文によれば、各章はおおよそ通年の講義に対応し、どの章もほぼ独立して読める。また多くの章には、ニュースに取材した短い事例が置かれ、授業での議論の材料になる。執筆分担は、Collins が第1章、第3〜7章、第10・11章、第18〜20章、Ewing が第2章、第8章、第12〜17章、McColgan が第9章(平等)である。

第I編:序論

**第1章「Nature and Sources of Labour Law(労働法の性質と法源)」。**労働法は何のためにあるのかを問い、世界人権宣言第23条から出発する。すなわち、仕事への公正なアクセス、安全で尊厳ある労働条件、十分な報酬、雇用の保障、労働組合を結成する自由である。そのうえで法源と、この分野を研究するさまざまな方法を扱う。

**第2章「Globalisation and Labour Law(グローバル化と労働法)」。**複数の国をまたいで作られる学校用ブレザーの話から始め、資本・物・労働が国境を越えて動くときに労働をどう規制するかという問題を提起する。

第II編:雇用契約

**第3章「Terms of the Contract of Employment(雇用契約の条件)」。**有償労働の法的枠組みが、請負契約(contract for services)に対する雇用契約(contract of service)へと移ってきた歴史から始め、雇用条件の法源と内容へ進む。

**第4章「Authority and Co-operation(権威と協力)」。**雇用関係を、経営上の権威と黙示的な服従の構造、すなわちKahn-Freundの言う「従属」の状態として捉え、法が協力義務を通じてそれをどう修正するかを検討する。

**第5章「Flexibility and Precarious Work(柔軟性と不安定就労)」。**通常の契約法の硬直性から出発し、使用者が求める柔軟性の種類と、不安定で非典型的な就労に対する法の扱いを論じる。

**第6章「The Personal Scope of Labour Law(労働法の人的適用範囲)」。**誰が保護されるのかを扱う。立法が雇用関係と商取引関係をどう区別するか、労働者と自営業者の境界がどこに引かれるかを論じる。

第III編:雇用関係の制定法による規制

**第7章「Wages(賃金)」。**賃金と労務の交換、および義務の相互性から出発し、報酬の規制へ進む。

**第8章「Working Time(労働時間)」。**従来の産業別の労働時間立法と労働協約の伝統を背景に、労働時間指令と1998年労働時間規則を説明する。

**第9章「Equality(平等)」。**2010年平等法と、それが置き換えた一連の差別禁止法を扱う。

**第10章「Work/Life Balance(ワーク・ライフ・バランス)」。**有償労働と家族の世話との衝突に対する法の対応を扱う。

**第11章「Civil Liberties at Work(職場における市民的自由)」。**1998年人権法の職場への適用を検討し、プライバシー(第8条)、宗教(第9条)、内部告発を含む表現の自由(第10条)を扱う。

第IV編:集団的労働権

**第12・13章「Freedom of Association and the Right to Organise(結社の自由と組織する権利)」「Freedom of Association and Trade Union Autonomy(結社の自由と労働組合の自治)」。**前者は労働組合に加入し活動に参加する権利と、国家や使用者による制裁からの保護を扱う。後者は組合が自らの事務を運営する自由を扱い、ILO第87号条約第3条に依拠する。

**第14章「The Right to Bargain Collectively(団体交渉権)」。**団体交渉の法的な仕組みと、そこでの国家の役割を考察する。

**第15章「The Right to Be Informed and Consulted(情報提供と協議を受ける権利)」。**欧州法を通じて導入された情報提供・協議の権利を扱い、整理解雇の際の協議から欧州労使協議会までを含む。

**第16・17章「Collective Action and the Right to Strike(集団行動とストライキ権)」「Liability for Collective Action(集団行動の責任)」。**前者はストライキなどの争議行為に対する法の対応を示す。後者は、差止命令など使用者が取りうる救済と、組合や組織者の責任に移る。

第V編:雇用の終了

**第18章「Wrongful Dismissal(不当解雇)」。**解雇に関する規則を、使用者の懲戒権に対する法的統制として位置づけ、コモン・ロー上の請求を扱う。

**第19章「Unfair Dismissal(不公正解雇)」。**1971年から存在する制定法上の請求を扱う。判断は雇用審判所が行い、救済は復職または補償である。

**第20章「Economic Dismissal(経済的解雇)」。**事業の再編、譲渡、倒産に際して被用者がどう保護されるかを扱い、整理解雇を含む。

主要概念

第1〜6章:基礎と契約

  • 労働法の目的:公正な賃金、安全な条件、雇用の保障、結社の自由といった目標に照らして、この法分野を評価する。
  • 雇用契約と請負契約:雇用と独立した労務提供を分ける区別で、制定法上の権利はこれに左右される。
  • 従属:Kahn-Freundに由来する、雇用契約は命令と服従の関係を覆い隠しているという考え方。
  • 人的適用範囲:誰が保護される被用者または労働者に当たるかを決める規則。

第7〜11章:制定法による規制

  • 義務の相互性:労務提供の約束と賃金支払いの約束の交換が契約の核心であるという考え方。
  • 1998年労働時間規則:労働時間指令をイギリス本島で実施した規則。
  • 2010年平等法:従来の差別禁止立法を統合した単一の法律。
  • 職場における条約上の権利:1998年人権法を用いて、プライバシー、信条、表現を保護すること。

第12〜17章:集団的労働法

  • 労働組合の自治:組合が自らの事務を運営し、国家による監督が限定されるという原則。
  • 団体交渉:賃金、労働時間、手続を定める労働協約の交渉。
  • 情報提供と協議:主にEU法に由来する、使用者が労働者代表に情報を提供し協議する義務。
  • 争議行為:ストライキの法的枠組みと、使用者が取りうる救済。

第18〜20章:雇用の終了

  • 不公正解雇:解雇の理由と方法を審査する制定法上の請求。
  • 経済的解雇:整理解雇、事業譲渡、倒産に関する規則。

批判的分析

長所

  • **分野全体を一つの設計で扱う。**個別的労働法(契約、制定法、解雇)と集団的労働法(組織、交渉、協議、争議行為)にほぼ同じ分量が割かれており、通年の講義に向く。序文は各章をほぼ独立したものと位置づけており、短い講義では一部の章だけを選べる。
  • **「文脈の中の法」の批判的伝統。**序文によれば、本書は法の叙述にとどまらず、さまざまな視点や学問分野からの法への批判を示す。各章の冒頭では、歴史、国際文書、ニュースの事例(ブリティッシュ・エアウェイズの客室乗務員紛争など)を用いて法の背景を示す。
  • **評価。**出版社は、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのNicola Countourisが研究に裏づけられた教育用の手引きと評したことと、ブラッドフォード大学のJessica Guthが包括的で教員にも学生にも使いやすいとしたことを紹介している。

短所

  • **分量と密度。**900ページを超え、本格的な参照用教科書である。雇用上の権利の大枠だけが必要な学生には、もっと短い教科書のほうが使いやすい。
  • **版の年による古さ。**2012年刊で、その後の立法改革やイギリスのEU離脱より前のものである。したがってEU指令に基づく部分(労働時間、協議、事業譲渡)は現行法で確認する必要がある。
  • **イギリス法に限られる。**扱う制定法や判例はグレートブリテンのもので、欧州・国際文書は背景にとどまる。そのため比較法やイギリス以外の研究には向かない。

コースにおける位置づけ

このコースの図書リストの中で、Collins、Ewing、McColgan の本は、労働法の一講座全体に対応する大型の教科書である。法律の予備知識がない学生は、法源と制度を最初から説明し、規則を職場の実務と結びつける Taylor と Emir の Employment Law: An Introduction から入ってもよい。Deakin と Morris の Labour Law は最も近い比較対象で、同じく個別的・集団的労働法を包括的に扱い、労働法の法源と制度、およびこの分野の歴史に関する節を備えている。Smith と Wood の Employment Law は、制定法と判例を詳しく述べたもので、入門講座の修了を前提とする。

さらに二冊は教科書の役割を超える。Anne Davies の Perspectives on Labour Law は、歴史、経済、人権の視点からこの分野に近づく。Freedland と Kountouris の The Legal Construction of Personal Work Relations は研究書で、本書の第3章・第6章が触れる就労上の地位をめぐる議論を発展させる。本書か同等の講義のあとで読むのがよい。

本書の使い方

本書は学部の法学生や、労働法・雇用法の科目を履修する人に向く。労働法の予備知識は前提とされないが、契約法とイギリスの裁判所制度を理解していると助けになる。

1学期の講義に向けた読み方の例:

  • **中心:**第3・6・7・9・12・14・16・19章。契約、雇用上の地位、賃金、平等、組合の権利、交渉、争議行為、不公正解雇を扱う。
  • **枠組み:**第1・2章はこの分野の目的とグローバルな背景を示す。最初に読んでもよく、細部に慣れてから読み返してもよい。
  • **選択:**第4・5・8・10・11・13・15・17・18・20章はシラバスに応じて選ぶ。第16章と第17章、第12章と第13章はそれぞれ組にして読み、第18〜20章は解雇に関する一連の流れをなす。

各章の冒頭と結びを使って議論の筋道を確認し、巻頭の判例表・制定法表に挙がっている法令と判決は原典で読むとよい。本書は2012年のものなので、制定法を扱う章は、現行の立法と最近の判例と照らして読むこと。