01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Taylor, S., & Emir, A. (2025). Employment Law: An Introduction (6th ed.). Sage.
章の要約
第6版は全31章、およそ660〜690ページからなる。Sageから出る最初の版であり、第1版から第5版(第5版は2019年)まではOxford University Pressから刊行されていた。Sageは新版を刊行20周年記念版と位置づけている。出版社の改訂案内によれば、最新の判例と2025年雇用権利法(Employment Rights Act 2025)を反映して全面改訂され、保護特性、無意識のバイアス、AIと差別的アルゴリズム、各種休暇、柔軟な働き方、データ保護・プライバシーとモニタリング、ブレグジット後の枠組みについての記述が加わった。著者のStephen Taylorはエクセター大学ビジネススクールのHRM准教授、Astra Emirはバリスターでシティ大学の客員講師である。
第1部 第1〜3章:雇用法の成立、雇用法の法源と機関、雇用上の権利を阻む壁
冒頭の部では、雇用法がどこから生まれたのか、どの法源と機関が雇用法を作り適用するのか、そして法が形式上認める権利と労働者との間に何が立ちはだかるのかを説明する。法律の訓練を受けていない読者でも本書を使えるのは、この部があるからである。
第2部 第4〜6章:不公正解雇—理由と救済、不公正解雇—合理性、剰員整理解雇
雇用関係の扱いは解雇から始まる。不公正解雇を2章に分け、使用者が依拠できる解雇理由と救済手段、そして解雇が合理的であったかの判断基準を扱い、3章目で剰員整理解雇(リダンダンシー)を扱う。
第2部 第7〜9章:契約上の雇用権利、黙示条項、不当解雇とみなし解雇
第2部の残りは契約そのものに目を向ける。契約条項から生じる権利、契約に読み込まれる黙示条項、そして契約に基づく二つの解雇形態である不当解雇(wrongful dismissal)とみなし解雇(constructive dismissal)である。
第3部 第10〜11章:差別禁止法への導入、2010年平等法の主要概念
差別禁止法は本書で最大の部である。分野への導入と2010年平等法の中核概念の章から始まり、続く各保護特性の章でそれらの概念が適用される。
第3部 第12〜19章:年齢・障害・人種・宗教・性別による差別、性に関連する特性、同一賃金、非典型労働者に対する差別
年齢、障害、人種、宗教、性別にそれぞれ1章をあてる。第17章は性別適合、婚姻上の地位、妊娠、性的指向をまとめて扱い、第18章は同一賃金、第19章は非典型労働者の保護を扱う。
第4部 第20〜23章:ファミリー・フレンドリー法制と柔軟な働き方、賃金と給付、プライバシーと守秘、TUPE
雇用政策と実務の部では、使用者が日常の管理で向き合う法定制度をまとめる。ファミリー・フレンドリーな権利と柔軟な働き方(後者はこの版で章題に加わった)、賃金と給付、プライバシーと守秘、事業譲渡に関する規則(TUPE)である。
第5部 第24〜26章:安全衛生—刑事法、安全衛生—民事法、労働時間
安全衛生は刑事責任と民事責任に分けて扱われ、その後に労働時間の章が続く。
第6部 第27〜29章:結社の自由、協議と交渉、争議行為
集団的労働法として、労働組合への加入と結社の自由、情報提供・協議と団体交渉、争議行為の法を扱う。
第30〜31章:雇用審判所の手続、事件の準備と提示
本書は、雇用審判所の仕組みと事件の準備・提示の方法を扱う実践的な2章で終わる。第5版ではこの2章が独立した部「Employment Law in Action」をなし、Oxford University Pressはこれを本書の特色と紹介していた。Sageの目次では、独立した部の見出しなしに第6部の後に置かれている。
主要概念
基礎と雇用契約(第1〜9章)
- 法源と機関:雇用法が作られ執行される立法、判例、審判所などの機関。
- 雇用上の権利を阻む壁:法が認める権利と、実際にそれを主張できる労働者との間の隔たり。
- 不公正解雇:使用者の解雇理由と解雇の合理性が争点となる制定法上の請求。
- 黙示条項:当事者が書面にしていなくても雇用契約に読み込まれる義務。
- 不当解雇とみなし解雇:契約違反となる解雇と、使用者の契約違反を理由とする労働者の辞職。
差別禁止法(第10〜19章)
- 2010年平等法:この部で扱うすべての保護特性の枠組みとなる主要概念を定めた法律。
- 保護特性:年齢、障害、人種、宗教、性別、および一つずつ扱われる性に関連する特性。
- 同一賃金:男女間の賃金格差を扱う独自の制度。
- 非典型労働者:標準的なフルタイム雇用の外にいる人々と、法が与える保護。
政策、安全衛生、集団的労働法(第20〜31章)
- ファミリー・フレンドリーな権利と柔軟な働き方:法定休暇と、異なる働き方を申請する権利。
- TUPE:事業やサービスが新しい使用者に移転する際に従業員を保護する規則。
- 労働時間:労働時間の法定上限と、休息・休暇の権利。
- 団体交渉と争議行為:労働組合、協議、適法なストライキに関する法的枠組み。
- 雇用審判所の手続:請求がどのように申し立てられ、準備され、審理されるか。
批判的分析
長所
- 法律家でない読者のために書かれている。 Oxford University Pressは第5版を、人事・ビジネス系の学生を念頭に置き、CIPDの課程にも適した本で、会話的で文脈を重視した文体により、平易な言葉と例を用いて法を説明すると紹介していた。Sageも第6版を、複雑なテーマを学生にわかりやすく解きほぐす明快で親しみやすい入門書と説明している。出版社が引用するサリー大学のStephen Daleのコメントは、この文体が人事・ビジネス・経営系の学生の基本原則の理解と応用を支えると述べている。
- 実践的な仕掛け。 第5版の紹介文によれば、本文の随所に規則の適用を考えさせる現実的な問題を示すアクティビティが置かれ、重要判例や学術上の論争を扱う「Exhibit」欄がある。
- 実務に即した範囲。 契約と差別にとどまらず、TUPE、プライバシー、労働時間、刑事・民事両面の安全衛生など、人事実務の要となる事項にそれぞれ1章をあて、最後に審判所手続と事件の提示に関する2章を置いている。
- 最新の法。 第6版は2025年雇用権利法とブレグジット後の動向を反映して改訂され、アルゴリズムによる差別や職場のモニタリングといったテーマが加わった。
短所
- 想定読者は法学部ではなくビジネス系。 想定読者はHRM、ビジネス、CIPDの学生である。雇用法の科目を履修する法学部生にとっては明快な最初の解説になるが、判例分析や制定法の細部を深めるには法学部向けの教科書が必要になる。
- 変化し続ける対象。 出版社自身の案内が、2025年雇用権利法を執筆時点で「まもなく」施行される法律と記している。そのため本文の一部は施行途上の法を説明していることになり、その後の動きは最新の公式ガイダンスで確認する必要がある。
- 英国法のみ。 出版社は本書を英国雇用法の入門書と位置づけている。他の法域や比較労働法を学ぶ読者には別の文献が必要である。
コースにおける位置づけ
このリストの労働法の本のなかで、本書は法律の素養のない学生にとって最も実践的な出発点である。Anne Davies の Perspectives on Labour Law は、歴史・経済・人権の視点から主題を読み解く短い入門書で、規則を示す本書と、規則をめぐる議論を示すDaviesの本はよく補い合う。Hugh Collinsらによるケンブリッジ版の Labour Law とSimon Deakinらによるハート版の Labour Law は、規則を歴史的・批判的な文脈に置く法学部向けの教科書であり、法の発展、規制の戦略、集団的権利により多くの紙幅を割いている。法学部生にとって自然な次の一歩である。
Smith & Wood's Employment Law は個別的・集団的雇用法の制定法と判例を詳しく説明する本で、本書の扱いでは足りない論点を調べる参照書として使うのがよい。FreedlandとKountourisの The Legal Construction of Personal Work Relations は、雇用契約がこの分野の枠組みとして適切かを問い直す研究書で、上級の学習向けであり、本書の第7〜9章と第19章を読んだ後に読むと最も理解しやすい。
本書の使い方
本書は、初めて雇用法に触れるHRM、経営、CIPDの学生と、法学部向けの教科書に取り組む前にわかりやすい概観を得たい法学部生に向いている。法律の知識は前提とされず、第1部が法源と機関の基礎を補う。
実践的な読書計画:
- 第1部(第1〜3章)から始める。 時間がなくても飛ばさないこと。権利を阻む壁を扱う第3章は、形式上の権利と現実の結果がなぜ食い違うのかを説明しており、この主題は全編を通じて繰り返し現れる。
- 多くの科目での中核: 解雇と契約を扱う第4〜9章、続いて平等法の主要概念を扱う第10〜11章。個別の差別の章(第12〜19章)は講義で扱うものを読むが、いずれにせよ第11章を先に読む。
- 人事実務のために: 第20〜26章は日常の管理で最もよく出会う制度を扱う。必要に応じて選ぶとよい。組織再編ならTUPE(第23章)、モニタリングとデータならプライバシー(第22章)、現場の職務なら安全衛生と労働時間(第24〜26章)。
- 集団的労働法: 第27〜29章は、労働組合と争議行為を扱う科目では必須で、個別的権利に焦点を当てる科目では任意である。
- 最後に第30〜31章を読み、 請求が審判所でどのように進むかを確認する。審判所の審理の傍聴や模擬裁判と組み合わせると効果的である。
本文中のアクティビティは要約に飛ばさず、出てきたその場で取り組むこと。規則を判断力に変えるための本書の主な仕掛けである。2025年雇用権利法の後、雇用法は急速に変化しているため、課題や実務で頼る前に、各テーマを現行法とGOV.UKやAcasの公式ガイダンスで確認すること。本書を採用する教員は、出版社のコンパニオンサイトから指導用ガイドと多肢選択問題を入手できる。
