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法学

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圧力下の契約:強迫の理論

Stephen A. Smith

英語原題: Contracting Under Pressure: A Theory of Duress

英法において、圧力がなぜ、どこまで契約を無効にするのかを論じる、1997年のケンブリッジ・ロー・ジャーナル掲載論文。契約における自由という中核的価値と経済的強迫の承認を踏まえ、強迫の判例の根底にある原理とその適切な範囲を問う。

難易度レベル
上級
学術レベル
大学院
契約法強迫経済的強迫不当な影響契約の有効性契約理論

01 / 研究論文

研究論文

引用

Smith, S. A. (1997). Contracting under pressure: A theory of duress. The Cambridge Law Journal, 56(2), 343–373. Cambridge University Press. https://doi.org/10.1017/S0008197300081368

章の要約

本稿は書籍ではなく約30ページの学術論文であり、たどるべき章はない。The Cambridge Law Journal の1997年7月号に掲載され、契約法理論の学術文献に属する。以下の各節は、論文の要旨が示す、論文が取り組む問いに沿っている。

問題:圧力の下でなされた合意

論文は、ある状況では、合意が圧力の下でなされたという事実だけで、本来は有効な契約が無効になりうる、という観察から出発する。英国の教科書は、これらの規則を「強迫(duress)」の項目で、またそれほどではないが「不当威圧(undue influence)」や「非良心性(unconscionability)」の項目で扱う。著者は、この規則の存在自体は争いのないことだとする。銃を突きつけられて結んだ契約が履行を強制されるべきだと主張する者はほとんどおらず、法もそのような合意は強制できないと明確にしている。

不明確な点:原則と範囲

論文が取り上げる問いは、こうした判断の根底にどのような原則があるのか、そしてそれらの原則の適切な範囲、すなわち射程はどこまでか、という点である。これが題名にある「強迫の理論」の意味であり、論文は事例を列挙することよりも、なぜ圧力が時に契約を無効にするのか、またその説明がどこまで及ぶのかを説明することに関心がある。

なぜこの問いは理論にとって重要か

要旨は二つの理由を挙げる。第一は理論上の理由である。正統的な理解では、契約法は自由を中核的な価値として掲げる。したがって契約法の十分な説明は、個人の自由が最も直接に問題となる部分を説明しなければならない。強迫はまさにその部分である。

なぜこの問いは実務にとって重要か

第二の理由は実務上のものである。過去25年ほどの間に、英国の裁判所は、強迫の抗弁が人身や財物への脅迫以外の場面でも援用しうること、すなわち「経済的強迫(economic duress)」を認めてきた。これに、既存の義務を履行するとの約束は有効な約因にならないという規則がほぼ廃止されたことが加わり、裁判所は強迫の範囲をどこまで広げるべきかを日常的に検討しなければならなくなっている。

主要概念

要旨で挙げられている概念

  • 強迫(duress):圧力の下でなされた合意が無効とされうる法理。
  • 経済的強迫(economic duress):人身や財物への脅迫以外の圧力も抗弁の根拠になりうるという、英国の裁判所の承認。
  • 不当威圧と非良心性:教科書が、契約を無効にする他の種類の圧力を扱う項目。
  • 契約の中核的価値としての自由:強迫に関するあらゆる説明が説明できなければならない、正統的な前提。
  • 既存義務の準則:既存の義務を履行するとの約束は有効な約因にならないという準則。近時のほぼ廃止により、強迫の実務上の重みが増している。

批判的分析

長所

  • 明快な問題設定。 要旨は的確な空白を指摘する。圧力が契約を無効にしうるという規則は確立しているが、その根底の原則と範囲は定まっていない。これにより論文の狙いが明確になる。
  • 理論と実務の結びつき。 著者は、契約における自由という理論的な問いを、具体的な法理の展開、すなわち経済的強迫の承認と約因の準則の弱体化に結びつけており、議論が実際的な意味を持つ。
  • 簡潔な分量。 31ページの論文は一度に読み通せ、書籍規模の契約理論よりもゼミに組み込みやすい。

短所

  • 時期。 論文は1997年に発表され、当時の英国法を論じている。その後の経済的強迫や約因の準則に関する判決は扱われていないので、現行の判例とあわせて読む必要がある。
  • 専門的な文体。 英国契約法に通じていることを前提とする学術論文であり、契約法を初めて学ぶ学生は、教科書を傍らに置かないと難しく感じる。
  • 一人の著者による説明。 提示されるのは一つの強迫理論であり、確立したものと見なす前に他の説明と比較すべきである。

コースにおける位置づけ

契約法のコースでは、本稿は一つの法理についての補足的な読み物であり、中心となる教科書ではない。一般の教科書がその背景を与える。Poole の Textbook on Contract Law は、英国契約法の通常の流れの中で契約の瑕疵事由を扱う。Chen-Wishart の Contract Law は、法理の分析と規則の背後にある価値や政策判断の議論を組み合わせており、本稿の関心に最も近い。Contract Law Directions は平易な文章の入門書であり、Burrows の A Casebook on Contract は判例そのものを集めている。Anson の Law of Contract は、判例を網羅的に確認するための詳細な体系書である。

適切な順序は、まず教科書で強迫と経済的強迫の法理を学び、そこに引かれた判例を読み、そのうえで本稿を読んで、理論家がそれらの判例をどう説明しようとするかを見ることである。

本書の使い方

本稿は、契約の瑕疵事由まで進み、理論的な説明を求める契約法の受講生や、強迫、経済的強迫、契約の基礎についてレポートを書く人に向いている。

実践的な進め方:

  • 先に準備する。 教科書の強迫と経済的強迫の章を読み、主要な判例を記録する。
  • 問いを持って読む。 要旨の二つの問い、すなわちどの原則が無効を説明するのか、それはどこまで及ぶべきか、を念頭に置く。
  • 理論を試す。 論文の説明を経済的圧力の事例に当てはめ、適合するかを判断する。
  • 現在性を確かめる。 論文は1997年のものなので、結論は最近の判例や教科書の最新版に照らして確認する。
  • 説明を比べる。 教科書の議論や別の理論的論述と並べ、説明がどこで分かれるかを見る。