01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Chen-Wishart, M. (2026). Contract Law (8th ed.). Oxford University Press.
章の要約
本書は約650ページである。公表されている目次は、序論、契約の成立、契約関係の相対性(privity)、契約を無効にする要因、契約の内容、違反と違反に対する救済、信義誠実の七つのまとまりに分かれている。出版社の説明によれば、各分野はまず、そこに関わる利益・価値・関心事の概観から始まり、そのうえで法理とその複雑な点や論争点が扱われる。公に示されているのはまとまりの題名とページ範囲だけなので、以下の要約もその水準にとどめ、出版社が示す新版の章別の情報を補っている。
序論(1~38ページ)
法理に先立つ短い導入部である。公表されている目次には、その内訳は示されていない。
契約の成立(39~154ページ)
契約がどのように成立するかを扱う、二番目に長いまとまりである。新版で加わった二つの議論がここに属する。デジタル化による契約成立への影響(第2章)と、スマート・リーガル・コントラクトに関する法律委員会の政府向け助言(2021年)(第3章)である。
契約関係の相対性(155~188ページ)
誰が契約に基づいて訴えることができ、誰が契約の影響を受けるかを扱う、コンパクトなまとまりである。出版社によれば、第4章には多くの新しい判例が加わっている。1999年法1条1項(b)に基づく第三者による執行を優先する推定に関する、併合された三件の最高裁判決(Secretary of State for DEFRA v PCSU(2024年))、不法行為者に課される契約責任に関する Armstead v RSA(2024年)、そして物品売買法および2015年消費者権利法によって黙示される条項から第三者が利益を受けられるかという新たな議論である。
契約を無効にする要因(189~370ページ)
約180ページに及ぶ最大のまとまりで、一見有効な合意が争われうる根拠を扱う。出版社は、第6章における自動化された契約締結、錯誤、および訂正(rectification)に関する新しい内容を特に挙げている。
契約の内容(371~460ページ)
章題が示すとおり、契約の条項を扱う約90ページである。出版社は、解釈、黙示条項、契約上の権限を、分析が更新された項目として挙げている。
違反と違反に対する救済(461~574ページ)
違反とその帰結を扱う。出版社は、第11章から第15章にかけての構成上および法理上の変更を報告している。再構成された第11章、違法性についての新たな要約、契約解除が正当とされる根拠についての新しい節、そして軽減義務、原状回復、損害賠償の不十分性、差止命令、信義誠実についての更新された議論である。
信義誠実(575~600ページ)
最後のまとまりは20ページあまりで、信義誠実にあてられている。
出版社が挙げるその他の更新点
第7章では履行不能(frustration)の法理がさらに展開され、2020年の中国民法典への言及がある。2024年のデジタル市場・競争・消費者法の扱いが拡充されており、その法律の「サブスクリプション・トラップ」への対処も含まれる。不当威圧、保証、解釈、黙示条項、契約上の権限の分析が更新され、Waller Edwards v One Savings Bank(2025年)、Parker Grennan v Camelot(2024年)、Tesco v USDAW(2024年)などの判決が取り上げられている。
主要概念
成立と第三者
- デジタル化とスマート・リーガル・コントラクト:自動化・技術媒介の取引が契約成立の規則にどう影響するか。第2章と第3章で扱われる。
- 第三者による執行:1999年法1条1項(b)に基づき、第三者による条項の執行を認める方向に働く推定。
合意の争い方と終了
- 錯誤と訂正:契約の締結または記録における誤り。自動化された契約締結に関する新しい内容を含む。
- 不当威圧と保証:同意が不当に得られた当事者に対する保護。保証に関する判例が更新されている。
- 履行不能(frustration):後発の事由によって契約が終了しうるとする法理。第7章でさらに展開される。
- 違法性:第11章から第15章で新たに要約が加えられた。
条項と救済
- 解釈、黙示条項、契約上の権限:契約の内容がどのように確定され、統制されるか。
- 契約解除、損害軽減、原状回復、差止命令:出版社が改訂したとする救済関係の項目。
- 信義誠実:最後のまとまりの主題。
批判的分析
長所
- 視覚的な提示。 出版社は図表の多用を強調しており、電子書籍版にはアニメーション付きの図もあるため、法理どうしのつながりを見せることを意図して作られている。
- 法理と並ぶ価値の検討。 各分野は、それに関わる利益・価値・関心事の整理から始まり、「カウンターポイント」と「リフレクション」のコラムが読者に法改正の問題への関与を促す。論述問題にも事例問題にも向いている。
- 新しい権威。 新版の紹介には2023年から2025年の判決と2024年の制定法が挙げられており、試験で最新の内容が求められる場面で参考になる。
- 比較の視点。 著者は Chitty on Contracts とアジアの契約法のシリーズの編者であり、新版は履行不能について中国民法典に触れているため、イングランド法に比較の足場が与えられている。
短所
- 分量。 約650ページで、契約法の複雑な点と論争点を網羅することを掲げているため、初めてシラバスを通読する学生には必要以上の内容が含まれ、何を飛ばすかを読者が選ばなければならない。
- 電子書籍版にある学習支援。 アニメーション付きの図、章末問題への解答の手引き、「要点まとめ」は電子書籍版の機能とされており、紙の版の読者が使える支援は少ない。
- 公開されているのは大まかな目次だけ。 七つのまとまりの内側の章立ては、本稿で参照できた情報では示されていない。特定のシラバスに合わせて使う前に、完全な目次を確認するのがよい。
コースにおける位置づけ
このコースの契約法の書籍のうち、本書は説明と正当化に最も明確に重心を置く教科書である。Poole's Textbook on Contract Law は、判例を軸にして契約を商業的文脈に位置づけ、四部構成で書かれたものとして紹介されており、両者は自然な組み合わせになる。一方が規則とその商業上の背景を、他方がその理由を扱う。R. Taylor と D. Taylor の Contract Law(Oxford の Directions シリーズ)は、平易な文章、ハイライトされた判例抜粋、自己点検の仕掛けを備えたものとされており、長い本を重く感じる学生にはより取り組みやすい入口になる。
Anson's Law of Contract は定評ある概説書(treatise)であり、通読するよりも、ある論点の背後にある権威を辿るために使うのが適している。Burrows の A Casebook on Contract は申込みと承諾から始まる一次資料を提供しており、議論の中で原判決に当たる必要が生じたときに本書と併せて使える。Stephen Smith の強迫に関する論文は理論的な研究であり、契約を無効にする要因のまとまりに添えて読める。
本書の使い方
出版社は、本書をイングランド契約法における概念的知識と分析技能の双方を育てる授業用テキストとして紹介している。規則が何であるかだけでなく、なぜ存在するのかを読みたい学生、そして本文と並行して判例を読む学生に向いている。
実践的な進め方は次のとおりである。
- 中核: 契約の成立、契約を無効にする要因、契約の内容、違反と救済のまとまりを、授業で教えられる順に読む。契約関係の相対性のまとまりは短いので、1999年法を手元に置いて読むとよい。
- 初読では任意: スマート・リーガル・コントラクトと自動化された契約締結の議論、中国民法典への比較への言及、そして信義誠実の最終部分は、小論文に取り組む段階まで後回しにできる。
- 演習: 章末問題を使い、電子書籍版ではその解答の手引きも使って、理解を確認する。リフレクションとカウンターポイントのコラムは小論文の題材として扱い、新版の紹介にある判例は事例問題で使える最近の権威の一覧として活用する。
