01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Burrows, A. (2020). A Casebook on Contract (7th ed.). Hart Publishing.
章の要約
構成と方法
本書は5部15章からなる。各章は著者によるテーマの導入に始まり、主要な判例と関連する制定法の抜粋を載せ、読者を導く短い注と設問を付している。各章には主要な学術論文の要約と、主な教科書の該当箇所への相互参照もある。出版社によれば、2020年の第7版は全面的に更新され、長くなりすぎずに学部の契約法の授業を網羅している。
第1部:契約の成立
第1章 申込みと承諾は、導入から、申込みと申込みの誘引、承諾、申込みの終了、問題のある申込みと承諾へと進む。Harvey v Faceyや、Butler Machine Tool v Ex-Cell-Oの「書式の戦い」が通常取り上げられる分野である。
第2章 確実性と法的関係を創設する意思は、条件が執行できるほど確実か、社交的・家庭的・商業的な取り決めがいつ法的拘束力を持つ意図であるかを扱う(例:Hillas v Arcos、Balfour v Balfour)。
第3章 約因とプロミッソリー・エストッペルは、約因を扱ったうえで、プロミッソリー・エストッペルを独立した主題として論じ、既存の義務に関するWilliams v Roffey BrosやCentral London Property Trust v High Trees Houseが舞台となる。
第2部:契約の条項
第4章 条項の確定は、条項と単なる表示を区別し、一方当事者の書面条項の組入れ(署名と通知、L'Estrange v Graucobなど)と黙示条項を扱う。
第5章 条項の解釈は、現代の解釈方法と免責条項の特別な扱いを述べる。
第6章 免責条項と不公正条項の制定法による規制は、1977年不公正契約条項法と2015年消費者権利法第2部を順に取り上げる。
第3部:契約違反の救済
第7章 解除は、違反による解除の意味、条件・保証・中間的条項(Hong Kong Fir)、解除条項、履行期前の違反、解除後の返還、物品またはデジタル・コンテンツの消費者契約を扱う。
第8章 損害賠償は、填補的損害賠償、利益の吐き出し、交渉的損害賠償、約定損害賠償と違約罰を扱う(Attorney General v Blakeや、Hadley v Baxendaleに由来する予見可能性の規則を含む)。
第9章 直接の履行強制は、約定金額の請求、specific performance(特定履行)、差止命令を扱う。
第4部:契約の相対性と第三者の権利
第10章は、契約の相対性の原則とその利益側・負担側の例外、契約が第三者に利益を与える場合の約束受領者自身の救済、1999年契約(第三者の権利)法を検討し、Tweddle v AtkinsonやBeswick v Beswickなどを扱う。
第5部:契約から逃れうる事由
第11章 不実表示は、その要件、取消し、損害賠償、1967年不実表示法3条による責任排除の規制を扱う。
第12章 錯誤は、一方的錯誤と共通錯誤を扱う。
第13章 フラストレーションは、初期の絶対責任の考え方、フラストレーションとなる事象の種類、それを排除する要因、法理上の根拠、効果、共通錯誤との関係を扱う。
第14章 強迫は、身体に対する強迫と経済的強迫を区別する。
第15章 不当威圧と弱みの利用で本書は終わる。
主要概念
第1部:成立
- 申込みと申込みの誘引:承諾されれば契約が成立する表示と、単に申込みを誘う表示との線引き。
- 約因:執行可能な約束のために各当事者が与えるべき対価で、既存の義務に照らして検討される。
- プロミッソリー・エストッペル:権利を放棄するという約束を約束者が撤回することを妨げる法理で、約因とは別に論じられる。
第2・3部:条項と救済
- 組入れと解釈:条項がどのように契約の一部となり、裁判所がそれをどう読むか。
- 不公正条項規制:1977年法と2015年消費者権利法による免責条項への制定法上の制限。
- 解除と損害賠償:当事者が違反を理由にいつ契約を終了でき、損失がどう填補されるか。
第4・5部:第三者と契約からの離脱
- 契約の相対性:契約当事者のみが契約に基づいて訴えられるという規則と、1999年法によるその改革。
- 契約の効力を損なう事由:不実表示、錯誤、強迫、不当威圧、そして事後的事象としてのフラストレーション。
批判的分析
長所
- 判例を原文で読める。 本書の目的は、学生が主要判例の要所を読めるようにすることで、専門家による導入と短い注・設問が付く。
- 判例と並んで制定法と学説。 出版社によれば関連する制定法が分析とともに掲載され、各章で主要な学術論文が要約される。
- 抑えられた分量。 出版社の説明は、本書が学生を圧倒しないよう設計されつつ学部の課程を網羅していると強調している。出版社のページに引用された『Student Law Journal』の評は、解説と選ばれた資料の組み合わせを称賛している。
- 明快な順序。 成立、条項、救済、相対性、離脱という順序は、一般的な授業構成に沿っている。
短所
- 完全な教科書ではなく補助的な書。 単独でも教科書の補足としても使えるが、抜粋が中心なので、初めて学ぶ際には説明的な教科書より向かない。
- 学部課程に即した範囲。 詳細な商事法的・比較法的分析など、基本課程を超える主題は目的外である。
- 法には時点がある。 第7版は2020年のもので、その後の判例や制定法の変更は新しい資料で補う必要がある。
コースにおける位置づけ
本書は契約法コースの判例・資料集である。PooleのTextbook on Contract Law、Chen-WishartのContract Law、Taylor&TaylorのContract Law Directionsは規則を文章で説明し、Anson's Law of Contractは詳細な概説書、Stephen SmithのContracting Under Pressureは強迫についての専門的な理論書である。判例集は教科書と並べて使い、教科書が要約する一次資料を提供する。
説明的な教科書を1冊組み合わせるのが最良で、判決は判例集で、枠組みは教科書で学ぶ。第14章はSmithの研究書と併読すれば、強迫をより深く理解できる。
本書の使い方
イングランド・ウェールズの契約法の入門講義を受け、判例を自分で読みたい法学生向けである。著者の導入が各テーマの枠組みを示すので、教科書か講義の概要以外に特別な準備は要らない。
まず第1部を読む。申込み、承諾、約因は他のすべての基礎だからである。次に条項・解除・損害賠償という試験の中心を含む第2・3部、最後に第4・5部へ進む。各判例の抜粋では、著者の注と設問を読む前に、事実、争点、理由づけを自分で述べてみる。論文要約はさらなる読書の手がかりとし、注は論述問題の着想として使うとよい。
