01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Simmonds, N. E., & Neoh, J. (2022). Central Issues in Jurisprudence: Justice, Law and Rights (6th ed.). Sweet & Maxwell.
章の要約
本書の初版は1986年に刊行され、40年近くにわたって改訂が重ねられてきた。第6版(2022年)は約360ページである。これまでの版は、ケンブリッジ大学法理学教授でコーパス・クリスティ・カレッジのフェローであるNigel Simmondsの単著だったが、出版社の書誌データは第6版の共著者としてJoshua Neohを挙げている。出版社は本書を、現代の法理学を主導する主要な理論と議論への明快な入門書と紹介する。解説に論評を組み合わせることで、学生が諸理論の相互関係と、それらがいくつかの根本問題のまわりにどう集まっているかを本当に理解したうえで原典を読めるようにする、というのである。全8章は、その根本問題の名を冠した3つの部、すなわち正義、法、権利にまとめられている。
第1部 第1章:功利主義
最初に検討される正義の理論は功利主義、すなわち全体として最善の帰結を生む行為や制度が正しいとする見解である。この章が正義の部を開き、続く3つの理論はそれぞれ異なる仕方で功利主義から離れていく。
第2章:ロールズ
政治哲学において功利主義に代わる、現代で最も影響力のある選択肢であるジョン・ロールズの正義論を扱う章。
第3章:ノージック
ロバート・ノージックの理論。個人の権原に基づく正義の説明を、ロールズのように財の分配全体を評価する理論に対置する。
第4章:フィニスと客観的善
ジョン・フィニスの自然法論を、彼の客観的善の説明を通じて扱う。この章で第1部が締めくくられる。
第2部 第5章:ハート
H・L・A・ハートの法理論。法の部の最初の章として、続く2章がそれとの関係で論じられる法の説明を導入する。
第6章:ドゥオーキン
ハートの説明に異を唱えたロナルド・ドゥオーキンの法理論。
第7章:フラー
第2部で検討される3つの理論の最後にあたる、ロン・フラーの法理論。
第3部 第8章:権利の分析
1章のみからなる最後の部は、3つ目の中心問題、すなわち権利をもつとはどういうことか、権利の主張をどう分析できるかに向かう。
主要概念
第1部:正義(第1〜4章)
- 功利主義:正義と正しい行為は全体の福利の最大化の問題であるとする理論。
- ロールズの正義論:功利主義に代わる現代の主要な選択肢。
- ノージックの正義論:全体的な分配のパターンではなく、個人の権原に基づく説明。
- 客観的善:フィニスが自然法論の基礎に据えるもの。
第2部:法(第5〜7章)
- ハートの法理論:最初に検討される法の説明で、続く2章が向き合う相手。
- ドゥオーキンの挑戦:ハートに対抗して展開された、法とは何かについての対抗的な説明。
- フラーの法理論:第2部で検討される3つ目の法の説明。
第3部:権利(第8章)
- 権利の分析:誰かが権利をもつと言うとき、何が主張されているのか。
批判的分析
長所
- 学派ではなく問いによる構成。 正義・法・権利という3部構成は、理論家を彼らが取り組む問題ごとにまとめている。出版社はこれを、諸理論が互いにどう関係するかを学生に見せるという本書の主目的として示している。
- 解説と議論。 出版社は、本書が明快な解説に各理論の論評と分析を組み合わせ、過度に単純化することなく主題をわかりやすくすることを目指していると強調する。Kortextから引用された紹介文も、目的は単に知識を与えることではなく、学生が批判的かつ自立的に考えられるようにすることだと述べている。
- 原典への橋渡し。 本書が掲げる目的は、ロールズ、ノージック、フィニス、ハート、ドゥオーキン、フラーの著作そのものを学生が読めるよう準備させることであり、それらに取って代わることではない。
- 長く使われてきたテキスト。 1986年以来6つの版を重ね、初版は The Cambridge Law Journal と Anglo-American Law Review(1986年)で、後の版は The Law Teacher(2014年)で書評されており、教育の場で継続的に使われてきたことがわかる。
短所
- 扱う範囲が限られる。 8章構成のため、本書は少数の理論家に集中している。目次には、リーガル・リアリズム、批判法学、フェミニズム法学やマルクス主義法学、社会学的アプローチ、法思想史の章がなく、ジョセフ・ラズら後の実証主義者にも独立した章はない。これらを扱う科目では別の文献が必要である。
- 初学者には手ごわい。 出版社自身が法理学を手ごわい分野と呼んでおり、本書は議論を深く掘り下げる。哲学の素養がない学生は、先にごく短い概説を読むと助けになるだろう。
- 第3部が短い。 正義に4章、法に3章をあてるのに対し、権利の分析は1章だけである。
コースにおける位置づけ
このリストの法理学の本のなかで、本書は最初の科目のための主教科書である。Raymond Wacksの Philosophy of Law: A Very Short Introduction は法哲学の主要な問いと学派を平易な言葉で概観する本で、予備的な読書に適している。より多くの学派をより浅く扱うので、SimmondsとNeohが取り上げないアプローチを補うのに役立つ。Lon Fullerの The Case of the Speluncean Explorers は、対立する司法哲学を代表する裁判官たちが判決を下す短い架空の事件で、第5〜7章の自然な副読本であり、ゼミの教材としてもよく機能する。Nicola LaceyのH・L・A・ハートの伝記 A Life of H.L.A. Hart は、ハートの理論を知的・個人的な文脈に置くもので、さらに知りたい読者は第5章の後に読むとよい。
この科目に挙げられているほかの本は、一般法理学ではなく特定のテーマを扱っている。Tom Reganの The Case for Animal Rights と Defending Animal Rights、そしてPeter SingerとTom Reganが編んだアンソロジー Animal Rights and Human Obligations は、権利に基づく議論と功利主義的な議論を動物の道徳的地位に適用するもので、第1章と第8章と自然に組み合わせられる。Abdullahi Ahmed An-Na'imの The Compatibility Dialectic は、イスラム法と国家法がいかに共存しうるかを論じる上級の研究書で、科目で法の本質を学んだ後に読むのがよい。
本書の使い方
本書は、通常2年次か最終学年で法理学や法理論を履修する法学生、そして主要な論争への本格的な入門を求めるすべての人のために書かれている。哲学の予備知識は前提とされないが、読者は持続的な議論を覚悟する必要がある。
実践的な計画:
- シラバスの順序に沿って部ごとに読む。 科目が法の本質から始まるなら第2部(第5〜7章)から始め、後の章がハートに応答しているので、ドゥオーキンとフラーの前にハートを読む。正義から始まるなら第1部を順に読む。まず功利主義、次にそれへの応答としてのロールズとノージック、最後にフィニスである。
- 各章を原典と並べて読む。 本書の目的は学生が原著者を読めるよう準備させることにある。各章の後に、該当する抜粋や著作を読むこと。ハートの The Concept of Law、ドゥオーキンの Law's Empire または Taking Rights Seriously、フラーの The Morality of Law、ロールズの A Theory of Justice、ノージックの Anarchy, State, and Utopia、フィニスの Natural Law and Natural Rights などである。
- つながりをノートに取る。 本書の価値は、諸理論が互いにどう応答し合うかを示す点にある。各章について、どの先行理論に応答しているのか、どんな問いを残しているのかを書き留めること。こうしたつながりこそが優れた試験答案の材料になる。
- 第8章を飛ばさない。 権利は正義と法の両方に繰り返し現れ、権利の分析はそれ単独で出題されることも多い。
リーガル・リアリズム、批判法学やフェミニズム法学など本書が扱わない学派については、Wacksのような幅広い概説で補うこと。
