01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Burbank, J., & Cooper, F. (2011). Empires in World History: Power and the Politics of Difference. Princeton University Press.
章の要約
本書は紀元前三世紀から現在までの帝国を概観し、帝国史をイギリスやヨーロッパを中心とする物語ではなく世界史として扱おうとする。出版社の言葉によれば、導きの問いは、帝国がどのように多様性に依拠したか、つまり支配下の人びとのあいだの差異をどう受け入れ、つくり出し、操作したかである。十四の章はおおむね時代順に並び、本文は約460ページで、その後に「推薦文献と出典」が置かれる。
第1章:帝国の軌跡
冒頭の章は、本書の取り組み方と、帝国が多様な人びとをどう統治したかという中心的な問いを示し、二千年を超えて帝国がたどった軌跡を紹介する。
第2章:ローマと中国における帝国支配
最初の事例は紀元前三世紀以降のローマと中国である。出版社は、この二つの帝国が数世紀にわたって国家権力を保ったと述べている。本章は、両者が大きく多様な人口をどう統治したかを比べる。
第3章:ローマのあと:帝国、キリスト教、イスラーム
本章はローマの後継者と競争相手に目を向ける。出版社の紹介はビザンツ、イスラームのカリフ国、短命に終わったカロリング朝を挙げ、宗教が帝国支配のなかに位置を占めるようになる「戦闘的一神教」と結びつけている。
第4–5章:ユーラシアのつながり:モンゴル帝国/地中海を越えて:オスマン帝国とスペイン帝国
この二つの章は、紹介では実利的で寛容と描かれるモンゴル人と、オスマン帝国およびスペイン帝国を扱う。モンゴルの章はユーラシア全体にわたる結びつきを論じ、オスマンとスペインの章は視野を地中海世界の外へ広げる。
第6–7章:海洋経済と植民地社会:ヨーロッパ、アジア、アメリカ/草原を越えて:ロシアと中国の帝国建設
第6章は海洋経済と、ヨーロッパ、アジア、アメリカの植民地社会に向かい、第7章は陸の帝国に戻って、草原の先に帝国を築いたロシアと中国を扱う。
第8–10章:革命の時代における帝国・国民・市民権/大陸をまたぐ帝国:アメリカ合衆国とロシア/帝国の手立てと近代植民地主義の神話
この中間の群は、帝国・国民・市民権が結びついた革命の時代と、大陸規模の帝国であるアメリカ合衆国(出版社の紹介でいう「自由の帝国」)とロシアを論じる。第10章は、近代植民地主義をめぐる権力の手立てと神話を検討する。
第11–12章:主権と帝国:十九世紀のヨーロッパとその近隣/帝国の世界における戦争と革命:1914年から1945年
第11章は十九世紀のヨーロッパとその近隣地域における主権と帝国を考察し、第12章は、なお帝国によって編成されていた世界での二度の世界大戦と革命を追う。
第13–14章:帝国の終わり?/帝国、国家、政治的想像力
最後の二章は、帝国は終わったのか、どのように終わったのかを問い、帝国・国家・政治的想像力の関係を考察して閉じる。
主要概念
第1–5章
- 差異の政治:帝国が臣民のあいだの区別を認め、つくり出し、利用したやり方。本書の組織原理となる主題である。
- 帝国の手立て(レパートリー):帝国が用いることのできた多様な統治戦略。単一の帝国統治モデルではない。
- 重層的な主権:『オーストラリアン』紙の書評が本書から引く一文によれば、主権は共有され、重ねられ、変容しうる。
第6–14章
- 帝国と国民:プリンストン大学出版局のページに引かれたケネス・ポメランツの評は、帝国と国民の関係を論じた本として自分の知る最良のものだと述べている。
- 市民権と帝国:第8章の題は、革命の時代における帝国・国民・市民権を結びつけている。
- 自由の帝国:出版社の紹介が、アメリカの革命家が構想し、大陸全体に広げられた帝国を指して用いる語。
批判的分析
長所
- 世界史の枠組み。 評者たちは、本書が帝国史をイギリスから引き離していると指摘した。スティーヴン・マチェットは『オーストラリアン』紙で、帝国史は主にイギリスの話だと思っている読者にとって、本書は「ちょっとした衝撃」になると書いた。
- 大きな主題を明快に書いている。 マイケル・J・セスは『ヨーロピアン・レガシー』誌で、利用できる帝国概説のなかでも最も明快に書かれたものの一つと呼び、大学の入門テキストにも研究者の参考書にも向くとした。『チョイス』誌は、構成が明瞭で文章が流れるようだと評した。
- 評価を受けている。 プリンストン大学出版局のページは、世界史学会の2011年図書賞、トインビー賞、そして『チョイス』誌の2010年優秀学術書への選出を挙げている。
- 教育に役立つ。 クリフ・ストラットンは『ワールド・ヒストリー・ブレティン』で、大学院の授業や、帝国を次々に飛び移ることなく教えたい教員に有用だと見た。
短所
- 深さより広さ。 各帝国に割かれるのは多くて一章である。ローマと中国で約40ページの一章を共有し、オスマン帝国とスペイン帝国も一章を分け合う。一つの帝国を深く知りたい読者には専門書が必要になる。
- 分量。 本文は約460ページ、全体は500ページを超え、概説書としては長い。マチェットは読み通すのに数週間かかるとも述べている。
- 典拠は巻末。 学術的な注は20ページの「推薦文献と出典」にまとまっており、特定の主張をたどるには、頁内の脚注より手間がかかる。
コースにおける位置づけ
帝国・植民地史のコースでは、本書は比較と長期の視野をもつ一冊である。スティーヴン・ハウの『帝国:ごく短い入門』(Empire: A Very Short Introduction)はより短い入口で、定義と論争を知るために先に読める。ジョン・ダーウィンの『帝国の計画』(The Empire Project)は、1830年から1970年までの英国世界システムという一つの体系を詳しく追う点で補い合う。バーバンクとクーパーを先に読めば、より広い背景が得られ、イギリスの事例の特徴が見えてくる。
ヤンセンとオスターハンメルの『脱植民地化小史』(Decolonization: A Short History)は第12–14章と自然に組み合わさり、著者の一人によるフレデリック・クーパーの『1940年以降のアフリカ』(Africa since 1940)は、帝国の終わりの地域研究として読める。メトカーフ夫妻の『現代インド簡史』(A Concise History of Modern India)は、近代を扱う章に、主要な被植民地社会の一つの地域的叙述を添える。
本書の使い方
帝国史の分野の全体像を得たい学生に向く。マイケル・セスの書評は大学の入門テキストに適すると評するが、帝国、植民地主義、世界史について多少の予備知識があるほうが読み進めやすい。章は順に読めば一つの議論になる。帝国や時代ごとに編成されているので、授業では第1、2、4、13–14章を枠組みとして指定し、ほかの章を目的に応じて加えることもできる。
実際的な読み方としては、まず第1章で基本的な語彙をつかみ、授業に合う帝国を選んで読み、最後に第13–14章で帝国と国民国家についての結論を確かめる。レポートでは、巻末の推薦文献から、扱う帝国の専門書を一冊選ぶとよい。叙述は数ページのうちに大陸をまたぐので、地図と年表を横に置いて読むことを勧める。
