01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
de Blij, H. (2012). Why Geography Matters: More Than Ever (2nd ed.). Oxford University Press.
章の要約
本書は、2005年に Why Geography Matters: Three Challenges Facing America として刊行された本の第2版である。初版の副題は気候変動、中国の台頭、世界的なテロリズムを挙げていた。2012年版はこの三つの課題を中心に据えたまま、視野を広げている。本文は12章約330ページで、引用文献一覧と索引が付く。著者のハーム・デ・ブレイは地理学者で、ABC の Good Morning America で長年地理担当の編集者を務めた人物であり、一般読者に向けて書いている。出版社は本書を、著者自身の職業上の旅から得た逸話をちりばめ、地理学を気軽に学ぶ人にも政策立案者にも向けた本だと説明している。出版社の言葉によれば、本書の主張は、米国が影響力のある社会の中で世界で最も地理的教養を欠いた社会になってしまったこと、そして世界の出来事を理解するには地理的な視点が必要だということである。
第1〜2章:地理がかつてなく重要な理由/地図を読み、脅威に向き合う
最初の章は、激動する世界を理解する方法としての地理学の意義を論じる。最も長い章の一つである第2章は地図を扱う。地図がどのように作られ読まれるか、地図製作者が投影法の間で行う選択、そして地図が脅威の受け止め方をどう形づくるかである。
第3章:地理と人口
人口の分布、増加、構成と、人口のパターンが本書の他の課題にとってなぜ重要かを扱う。
第4〜5章:地理と気候変動/気候、場所、運命
気候の章は長い時間軸をとる。本文に繰り返し現れる語には、地球温暖化と並んで、パンゲア、更新世と完新世、氷期と間氷期、ヤンガードリアス、小氷期がある。デ・ブレイは現在の気候変動を地球の気候史の中に位置づけ、第5章では気候を場所と人間社会の命運に結びつける。
第6〜7章:戦争とテロの背後にある地理/テロリズムの地理的な現れを解釈する
紛争とテロリズムについての二つの章で、初版の三つの課題の二つ目にあたる。本書で最も長い第6章は戦争とテロの地理的背景を検討し、第7章はテロリズムがどこにどのように現れるかを解釈する。アフガニスタン、パキスタン、イラク、アルカイダ、タリバン、スンニ派とシーア派の分断は、本文に繰り返し現れる語である。
第8章:中国の地政学的な試練
三つ目の課題である中国の台頭と、それを取り巻く地政学的な圧力を扱う。台湾、日本、ベトナム、北朝鮮は、本文に繰り返し登場する近隣国である。
第9〜10章:生まれつつある超大国か、未来の張り子の虎か/東部戦線の混乱
第9章は、台頭しつつある勢力が超大国となるのか、張り子の虎に終わるのかを問う。出版社の紹介文は、欧州連合の「憂慮すべき混乱」を本書の主題の一つに挙げている。第10章は東へ目を向け、モスクワ、プーチン、チェチェンが本文に繰り返し現れる語である。
第11〜12章:グローバル化する世界の中のアフリカ/かつてなく
第11章は、出版社の紹介文が触れる赤道アフリカの見過ごされた紛争を含め、サハラ以南アフリカのグローバル化の中での位置を見る。短い最終章は、地理がかつてなく重要だという本書の主張に立ち返る。
主要概念
第1〜3章:地図と人々
- 地理的教養:世界の場所、人々、環境についての知識で、デ・ブレイはアメリカ人にそれが際立って欠けていると論じる。
- 地図投影法:丸い地球を平らな地図にするときに避けられないゆがみと、それが世界の見え方に及ぼす結果。
- 人口のパターン:人口の増加と分布の地理。
第4〜7章:気候と紛争
- 長い時間軸の中の気候変動:現在の温暖化を、地球の過去の氷期、間氷期、急激な変化と照らし合わせて見ること。
- 気候と場所:気候条件が地域や社会の将来をどう左右するか。
- テロリズムの地理:テロ運動とテロ攻撃の空間的な分布と背景。
第8〜12章:世界の地域
- 地理的領域と地域:デ・ブレイが中国、ヨーロッパ、ロシア、アフリカを読み解く枠となる世界の大きな地域区分。
- 地政学:位置、隣国、領域が国家の戦略的な立場をどう形づくるか。
- グローバル化:とくにアフリカにおける、世界経済への地域の不均等な統合。
批判的分析
長所
- 地理学の意義の明快な主張。 本書は概説ではなく議論である。気候の極端現象からテロリズムや大国間の対立に至る出来事は、地理的にしか理解できないと主張する。そのため、この学問を学ぶ前に、なぜそれが重要なのかを知る必要がある学生に役立つ。
- 短い本の中の広い範囲。 約330ページで、地図投影法や氷期の気候からテロリズム、中国、欧州連合、ロシア、アフリカまでを扱い、自然地理学と人文地理学を一つの議論の中で結びつけている。
- 経験豊かな伝え手による執筆。 デ・ブレイは30冊以上の本を書き、長年ネットワークテレビで地理を解説してきた。出版社は旅の逸話に触れており、本書は予備知識のない読者に合わせて書かれている。
短所
- 古くなっている。 第2版は2012年時点の世界、すなわちアラブの春、北朝鮮の核開発の野心、当時の欧州連合の危機を反映している。ロシアのウクライナに対する戦争や、より新しい気候科学などその後の展開は含まれないので、ロシア、中国、気候の章は歴史的な記述として読むべきである。
- アメリカの枠組み。 本書は主にアメリカの読者とその地理的無知に向けて語られており、扱われる脅威はしばしば合衆国の立場から見られている。
- 学術的な政治地理学ではない。 本書は短い引用文献一覧を備えた公共的な議論の書であり、政治地理学の理論的な論争には踏み込まない。領域、主権、スケールといった概念については、学生には教科書が必要になる。
コースにおける位置づけ
政治地理学のリストの中で、本書は中核の教科書ではなく背景的な読み物である。位置、境界、資源、環境が世界情勢でなぜ重要かを生き生きと論じる本として、コースの初めに向いている。Dodds の Geopolitics: A Very Short Introduction も同じく短い入口だが、地政学的な思想とその批判に焦点を当てている。二冊を並べて読むと、デ・ブレイによる地域ごとの脅威の記述と、地政学的思考の批判的な歴史とを並べて見ることができる。
そこから先は中核のテキストが引き継ぐ。Flint と Taylor の Political Geography: World-Economy, Nation-State and Locality は体系的な世界システムの枠組みを示し、Sara Smith の Political Geography: A Critical Introduction はフェミニストや反植民地主義のアプローチを通じて空間の中の権力を扱う。どちらも、デ・ブレイの本が与えない理論を補う。Painter と Jeffrey の Political Geography と Elden の The Birth of Territory は、理論や概念史にさらに進む学生のための本である。
本書の使い方
本書は一般読者向けに書かれており、地理学の予備知識を必要としない。1年生、他分野の学生、そして時事問題にとって地理がなぜ重要かに関心のある人に向いている。
読む順序の例:
- 中核: 主張と地図の扱いについて第1章と第2章、続いて本書を組み立てる三つの課題、すなわち気候(第4〜5章)、テロリズム(第6〜7章)、中国(第8章)。
- 地域の章: ヨーロッパ、ロシア、アフリカを扱う第9〜11章は、コースの地域的な重点に応じて選んで読めばよい。
- 結論: 第12章は短く、主張を改めて述べる。
本書は2012年に書かれた議論として読むこと。地域の章ごとに著者の主な主張を書き留め、その後に何が起きたかを確かめれば、本書の古さそのものが地理的推論の演習になる。気候の章は最新の科学的な要約と、政治の章は政治地理学の教科書の対応する概念と組み合わせて読むとよい。
