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Geographic Information Science and Systems(地理情報科学とシステム) cover

地理学

地理学

Geographic Information Science and Systems(地理情報科学とシステム)

Paul A. Longley; Michael F. Goodchild; David J. Maguire; David W. Rhind

英語原題: Geographic Information Science and Systems

地理情報システムを応用科学として示し、技術の使い方だけでなく GIS の背後にある原理を説明する教科書である。世界をデジタルにどう表現するかから始め、データ、ソフトウェア、データベースを経て、空間分析、地図作成、さらに地理情報が提起する管理と政策の問題へと進む。

前提知識: GIS の経験は不要だが、基礎的な計算力と地図やコンピュータへの慣れがあると役立つ。

難易度レベル
中級
学術レベル
学部
gisgeographic information sciencespatial analysiscartography教科書

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Longley, P. A., Goodchild, M. F., Maguire, D. J., & Rhind, D. W. (2015). Geographic Information Science and Systems (4th ed.). Wiley.

章の要約

第4版は496ページ、19章からなる。冒頭の1章が分野を紹介し、残りの章は4つの部に分かれる。原理(第2〜5章)、技術(第6〜10章)、分析(第11〜15章)、政策・管理・行動(第16〜19章)である。Wiley によれば、本書は GIS 利用を支える科学的原理と、手順・技術・公共政策への応用に関する最新の内容を組み合わせており、今版のタイトルのわずかな変更は、地理情報技術を使った問題解決の科学の進化を反映しているという。各章の末尾には「さらなる学習のための問い」と「参考文献」が付く。

第1章:地理情報:科学、システム、社会

導入の章で、位置がなぜ重要か、なぜ「空間は特別」なのかを説明し、データ・情報・証拠・知識・知恵を区別したうえで、歴史、ビジネス、政府、コンピュータ科学、地理学、社会の各視点から分野を見渡す。

第1部、第2〜5章:地理データの性質;地理の表現;ジオリファレンス;不確実性

原理の部は、地理データを特徴づける性質から始まる。空間的自己相関、スケール、標本抽出、距離減衰である。続いて、デジタルな表現(離散的対象と連続場、ラスタとベクタ、一般化)、ジオリファレンス(地名、住所、緯度経度、投影法、GPS)、そして概念・表現・分析における不確実性を扱う丸1章がある。

第2部、第6〜10章:GIS ソフトウェア;地理データのモデリング;データ収集;地理データベースの作成と維持;ジオウェブ

技術の部は技術面を扱う。ソフトウェアのアーキテクチャとシステムの種類(デスクトップ、ウェブ、サーバ、モバイル)、ラスタ・ベクタ・オブジェクトの各データモデル、データの取得と変換、SQL とトポロジーによるデータベース設計、そしてジオポータル、モバイルサービス、ウェブサービスによる配信である。

第3部、第11〜15章:地図学と地図制作;ジオビジュアライゼーション;空間データ解析;空間解析と推論;GIS による空間モデリング

分析の部は、結果の作成と解析に向かう。地図のデザインと記号化。カルトグラム、ダシメトリック図、参加型や3次元の可視化。位置に基づく解析(オーバーレイ、空間結合)と距離に基づく解析(バッファ、補間)。面積、中心性、表面、経路と仮説検定。セルラーモデルやマップ代数を含む空間モデルである。

第4部、第16〜19章:GIS の管理;情報と意思決定;リスクへの対処;エピローグ:人類に奉仕する GISS

最後の部は組織と社会を扱う。リスクと投資収益、インフラとしての情報とオープンデータ、法的・プライバシー・倫理上の制約と空間データ基盤、そして市民科学と、人口・健康・災害・持続可能性といった地球規模の課題を論じる終章である。

主要概念

第1〜5章:原理

  • 空間的自己相関とスケール:近い場所は似る傾向があり、分析のスケールによって結果が変わる。
  • 離散的対象と連続場:地理的現象を捉える2つの方法で、ラスタとベクタのデータの基礎になる。
  • ジオリファレンスと投影法:場所に座標を与え、地球の表面を平面に展開する方法。
  • 不確実性:概念、表現、分析の3つの段階で扱われる。

第6〜15章:技術と分析

  • データモデル:ラスタ、ベクタ、オブジェクトの表現と、そのデータベースでの利用。
  • ジオビジュアライゼーション:空間データの対話的・参加型の表示。
  • 空間解析:オーバーレイ、バッファ、補間、地理データからの推論。
  • マップ代数とセルラーモデル:第15章での空間モデリングの手法。

第16〜19章:政策・管理・行動

  • オープンデータと空間データ基盤:組織や国家のあいだで地理情報を共有すること。
  • 市民科学と能動的な市民:エピローグが描く、専門家でない人々が GI の取り組みに貢献する姿。

批判的分析

長所

  • 科学・技術・社会を一体で扱う。 4部構成は、原理をソフトウェアより先に、分析を管理より先に扱うため、技術はそれを根拠づける考え方のあとに導入される。
  • 不確実性だけの章がある。 第5章は、原理の部の丸1章を、地理的現象の概念・表現・分析における不確実性にあてている。
  • 最近の動向。 Wiley が挙げる今版の変更点には、ビッグデータとオープンデータ、データサイエンス、モバイルコンピューティングと市民中心の科学、オープンソフトウェア、計算集約的な手法、地球規模の課題への取り組みにおける地理情報の役割が含まれる。
  • 学習の支援。 Wiley は各章に学習目標と復習ボックスがあると述べており、目次からは各章の末尾に「さらなる学習のための問い」と「参考文献」があることがわかる。教員向け資料にはスライドとマニュアルが含まれる。

短所

  • ソフトウェアの操作書ではない。 本書は特定のソフトウェアではなく概念を軸に構成されている。第6章はソフトウェアの種類とベンダーを概観するため、実際に手を動かす練習は別に GIS ソフトウェアで行う必要がある。
  • 一部は古くなっている。 2015年刊行のため、ベンダーの概観(Autodesk、Bentley、Esri、Intergraph)やウェブ・モバイル技術の扱いは当時のものである。
  • 分量と範囲。 19章・496ページで原理、技術、分析、管理を扱うので、1学期の授業では部ごとに取捨選択することになり、第4部は組織や政策に関わる読者向けである。
  • 統計の紙幅が限られる。 空間解析と推論は第13章と第14章にあたり、目次では約50ページである。統計の深さを求める学生には専門の教科書が必要になる。

コースにおける位置づけ

Longley らの本は、このコースにおける、原理を先にした総合的な教科書である。Bolstad の Geographic Information Systems Fundamentals は、空間データの作成・管理・解析・地図による可視化を扱う GIS の理論と実践の包括的な入門書とされ、リストにあるもう1冊の一般的な GIS 教科書である。どちらも主教材になりうる。Longley らは管理・政策・社会に丸1つの部をあてているが、Bolstad の紹介文はそれを強調していない。

特定分野を深めるには、O'Sullivan と Unwin の Geographic Information Analysis が GIS の背後にある統計的手法を扱う教科書で、第13〜14章の話題をさらに深く扱う。Krygier と Wood の Making Maps は、GIS ソフトウェアで地図を作る人のための図版の豊富なデザインの手引きで、第11章の実践的な対応物である。Monmonier の How to Lie with Maps は、地図がどのように単純化し歪めるかを述べた短い入門書であり、Harley の The New Nature of Maps は地図を文化的な文書として論じる論文集で、いずれも表現に関する章の有益な伴読書である。

本書の使い方

Wiley は本書を、幅広い分野でベストセラーになっていると述べている。第1章は分野を最初から紹介しているので、GIS の事前経験は想定されていないようである。地図とコンピュータに関する基本的な知識があると役に立つ。

実際的な進め方は次のとおり。まず第1章と原理の部全体(第2〜5章)を読む。後の技術的な章は、表現、ジオリファレンス、不確実性の考え方を前提にしているからである。第7章(データモデリング)、第9章(データベース)、第13〜14章(解析)を技術系の授業の中核とし、第6、8、10章でソフトウェア、データ収集、ウェブでの配信を理解する。第11〜12章は地図作成に重点を置く場合に向く。第16〜19章は、管理、政策、応用系の授業にとって自然な読み物である。

各章の「さらなる学習のための問い」、学習目標、復習ボックスに取り組み、GIS ソフトウェアと実際のデータセットを使った作業を組み合わせて、第1部の概念を実践の中で確かめるとよい。