01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Blockley, D. (2014). Structural Engineering: A Very Short Introduction. Oxford University Press.
章の要約
本書はオックスフォード大学出版局の「Very Short Introductions」シリーズの一冊で、The Structural Engineer 誌(2015年12月)に載ったTianjian Jiの書評の言葉を借りれば、構造工学を約110ページで描き出そうとする本である。全6章からなる。Jiは、Blockleyが技術的な論点を「思考実験」と図によって説明し、最初の5章それぞれの終わりに3〜4の要点をまとめていると指摘している。
第1章:すべてのものには構造がある
構造の本質と役割、そして構造工学が他の工学分野や建築とどう関わるかから始まる。設計上の判断は構造物の目的、すなわち「目的への適合性」によって決まる。構造物を強く安全なものにするには、力が構造物の中をどう流れるかを理解する必要があり、同時に費用、外観、規制、環境といった他の要求も満たさなければならない。この章は、最良の構造物は建築と工学を一体化し、力の流れが論理的なものだと論じる。
第2章:形は機能に従うか
ウィトルウィウスが良い建築に求めた3つの要件のうち、有用性と美しさの2つを取り上げる。物理的な中心となる考えは、構造物は「生まれつき怠け者」で、位置エネルギーが最小となる状態に落ち着くというものである。構造物の隣り合う部分が互いの動きを妨げ合うとき内力が生じ、構造物はこうした力の経路に沿って十分に強くなければならない。章の最後には、工学と建築が融合した例として形態探索による構造物が紹介される。
第3章:ストーンヘンジから超高層ビルまで
ストーンヘンジとエジプトのピラミッドから、ルネサンスと18世紀を経て現代に至る構造の歴史である。親方石工の台頭をたどり、続いて新しい科学、材料、需要が専門分化を生むなかで建築家と技術者の役割が分かれていった経緯をたどる。そのうえで、両者の職能は今なお協働しなければならないと強調する。
第4章:構造を理解する
最も技術的な章で、構造物が部材の中に力を流すことによって自重、利用者、風にどう抵抗するかを扱う。つり合いだけで内力が求まる静定構造と、構成関係と変位の適合条件も必要とし、全ポテンシャルエネルギーが最小となる点で解かれる不静定構造とを区別する。Jiは、本書の理論が自由体図とつり合いから仮想仕事と有限要素法にまで及ぶと述べている。
第5章:動くもの、揺れるもの
ジャンボジェット機、クルーズ船、長大橋、高層ビルという4つの大きな構造物を、はりとして働く巨大な管や箱として比較する。動く構造物は動的なつり合いを持ち込み、慣性力と減衰力が追加の内力として加わり、座屈、共振、フラッターといった不安定の形態が現れる。
第6章:レジリエンス
どこまで安全なら十分に安全なのかを問う。構造物は安全上きわめて重要だが、リスクのない活動は存在しない。将来についての評価はシステムと人間の両方の不確かさを含むため、科学的知識は必要だが十分ではない。この章は、「ハード」なシステムと「ソフト」なシステムに共通する言語としてシステム思考を提案する。Jiは、この章が主に著者自身のレジリエンス観に基づいていること、そしてハードとソフトのシステムを示すために乗組員と乗客を乗せた船を例に用いていることを指摘している。
主要概念
第1〜2章:すべてのものには構造がある、形は機能に従うか
- 目的への適合性:構造物の目的がその設計における判断を決めるという原則。
- 力の流れ:荷重が構造物の中を通って支点へ伝わる経路。
- 最小ポテンシャルエネルギー:構造物は位置エネルギーを最小にする状態に落ち着くという考え。Blockleyはこれを「生まれつき怠け者」と表現する。
- 形態探索:形が力の流れに従うように構造物を形づくること。
第3〜4章:ストーンヘンジから超高層ビルまで、構造を理解する
- 建築家と技術者:歴史的に分かれたが、今なお協働しなければならない2つの役割。
- 静定構造と不静定構造:内力がつり合いだけで求められるかどうか。
- つり合い、構成関係、適合条件:不静定構造を解くのに使う3つの条件。
第5〜6章:動くもの、揺れるもの、レジリエンス
- 動的なつり合い:慣性力と減衰力を含む、動く構造物における力のつり合い。
- 動的不安定:座屈、共振、フラッター。
- リスクとレジリエンス:不確かさのもとで、どこまで安全なら十分かを判断すること。
- ハードシステムとソフトシステム:物理的なシステムと人間的・組織的なシステム。システム思考によって結びつけられる。
批判的分析
長所
- 公式ではなく考え方。 構造動力学を専門とする講師であるJiは、物理的に示すのが難しい理論を図を伴う思考実験で説明するBlockleyのやり方を高く評価し、自分の授業にもこの手法を取り入れたいと書いている。
- 分野を広く見渡す視点。 短い6章のなかで、設計の考え方、歴史、理論、主な構造形式、建築家と技術者の関係を扱っている。Jiは、一般読者向けに書かれた数少ない工学書への貢献として本書を歓迎した。
- 動くものも構造物として扱う。 第5章は航空機や船を橋や高層ビルと並べて扱い、同じはりとしてのふるまいと動的な効果がそのすべてに当てはまることを示す。
- リスクとシステム。 第6章は構造の安全性を計算の外へ、不確かさ、人的要因、システム思考へと広げ、Jiが引用するとおり、良い構造工学はコストを桁違いに節約し、人命を守ることができるという主張で結ばれる。
短所
- 難易度のばらつき。 Jiは、仮想仕事や有限要素法の定式化などの内容は、多くの一般読者にとってやや難しいかもしれないと評している。
- レジリエンスの個人的な扱い。 Jiによれば最終章は主に著者自身のこのテーマについての理解に基づいており、概観というより一つの議論である。
- 非常に短い。 約110ページでは計算方法を展開することはできない。本書は構造物の解析方法ではなく、技術者の考え方を説明する本である。
コースにおける位置づけ
本書は、材料力学の教科書の傍らに置く見取り図の役割を果たす。Hibbelerと、Beer、Johnston、DeWolf、Mazurekのそれぞれの Mechanics of Materials は部材の応力、ひずみ、たわみの解析を教える。Blockleyは、それらの部材が構造物全体の中でどこに位置し、なぜその安全性が重要なのかを示す。このコースのもう一冊の技術的でない本であるJ. E. Gordonの The New Science of Strong Materials は、材料の内部のき裂、靭性、転位に目を向けるのに対し、Blockleyは構造物全体、歴史、リスクに目を向ける。両者は予備的な読書として互いによく補い合う。
UguralとFensterの Advanced Mechanics of Materials and Applied Elasticity とSaddの Elasticity は、後に学ぶ数学的な授業である。つり合い、適合条件、構成関係、最小ポテンシャルエネルギーを説明するBlockleyの第4章は、それらが定式化する考え方を定性的に先取りして示してくれる。
本書の使い方
本書は、工学部や建築学部の1年生、構造技術者が何をするのかを知りたい進学希望者、そして一般読者に向いている。数学の予備知識はほとんど必要ないが、第4章は仮想仕事や有限要素といった考えにすばやく進む。
実践的な計画:
- 第1〜3章は1〜2回で読み通す。 目的、力の流れ、歴史を示す章である。
- 工学部の学生にとっての中核: 第4章。ゆっくり読み、力学の授業でつり合いと不静定構造を学んだ後にもう一度読み返すとよい。そうすれば、定性的な説明と授業の計算とのつながりがより明確になる。
- 第5章は、後の動力学や振動の授業への良い橋渡しとなる。
- 第6章は議論のための章で、リスク、職業上の責任、技術者倫理についてのゼミに向いている。
最初の5章の終わりにある要点をチェックリストとして使い、思考実験は読み飛ばさずに実際に考えてみること。方法については材料力学の教科書で、材料と構造についてのより詳しい技術的でない説明についてはGordonの本で補うとよい。
