01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Gordon, J. E. (2018). The New Science of Strong Materials: Or Why You Don't Fall through the Floor. Princeton University Press. (Princeton Science Library edition, with an introduction by Philip Ball; first published 1968.)
章の要約
本書は全11章からなる。序章にあたる第1章の後、10章が3部に分けて配置され、その後に2つの付録、単位換算についての注、さらに学ぶための文献案内が続く。プリンストン版には、科学ライターのフィリップ・ボールによる2005年付の序文が加えられており、ゴードンの経歴と、本書が書かれた1960年代末以降に材料科学がどう変わったかを述べている。どの章の題も二段構えで、主題をそのまま示す部分と、冗談や問いかけの部分からなる。
第1章:強い材料の新しい科学――あるいは、厄介な問いの立て方
序章は本書の問いを示す。ボールの序文によれば、ゴードンは冒頭で、なぜものは壊れるのか、なぜ鋼はねばり強くガラスはもろいのか、なぜ木は割れるのかといった問いが本書のテーマだと述べている。本書はマイケル・ファラデーが凝集力の謎について述べた言葉の引用で始まり、ゴードンは数学をほぼすべて省き、ごく初歩的な代数だけを残したと読者に告げている。
第2〜4章:応力とひずみ――あるいは、なぜ床を踏み抜かないのか、凝集力――あるいは、材料はどれほど強くあるべきか、き裂と転位――あるいは、なぜものは弱いのか
第1部「弾性と強度の理論」は基本的な考え方を組み立てる。第2章は応力とひずみを導入し、ここから本書の副題がとられている。第3章は、原子どうしを結びつける力から考えて固体はどれほど強いはずかを問う。第4章は、実際の材料がそれよりはるかに弱い理由として、き裂と転位を説明する。ボールは、本書がヤング率の表、応力ひずみ曲線、いくつかの式を避けていないことを指摘している。
第5〜8章:き裂の阻止――あるいは、ねばり強くなる方法、木材とセルロース――あるいは、木の船と鉄の男たち、接着剤と合板――あるいは、グライダーの中のネズミ、複合材料――あるいは、わらでれんがを作る方法
第2部「非金属の伝統」は、ねばり強さ(靭性)と、金属を使わずにそれを実現する材料についての部である。ボールはその中心的な主張を、靭性がなければ強度はほとんど役に立たず、鍵となる問題はき裂の発生や進展を止めることだとまとめている。そして、もろい固体の中をき裂が高速で走る理由、積層材やその他の複合材料がそれを食い止める仕組み、ガラス繊維が意外にも強い理由をゴードンがどう説明しているかを紹介している。木材、接着剤、合板の章は、積層木材による航空機についてのゴードンの戦時中の仕事に基づいており、複合材料の章には、繊維強化材料についての彼の後年の仕事が反映されている。
第9〜10章:金属の延性――あるいは、転位の内なる生活、鉄と鋼――悪魔の工場の中のヘパイストス
第3部「金属の伝統」は、金属がき裂を生じる代わりに曲がったり伸びたりする理由を転位のふるまいによって説明し、続いて鉄と鋼を取り上げる。
第11章:未来の材料――あるいは、考え直す方法
ゴードンは、この章を「どちらかといえば自分の判断に反して」加えたと書いている。ボールは、この章が後にこの分野を形づくる傾向をとらえていたと指摘する。すなわち、特定の必要に合わせて材料を設計すること、そして強度だけでなく複数の特性のバランスのとれた組合せを求めることである。
付録
付録1「さまざまな種類の固体について――そして糖蜜はどうなのか」と付録2「単純なはりの公式――あるいは、自分で応力計算をする」が技術的な背景を補い、その後に単位についての注と文献案内が続く。
主要概念
第1〜4章:序章と第1部「弾性と強度の理論」
- 応力とひずみ:単位面積あたりの力と、それによって生じる変形の割合。この分野の基本量である。
- 凝集力と理論強度:原子間の結合が一斉に切れるとした場合に固体がもつはずの強さ。
- き裂と転位:実際の材料を理論強度よりはるかに弱くする欠陥。
第2部:非金属の伝統(第5〜8章)
- 靭性とき裂の阻止:き裂の進展に対する材料の抵抗。強度とは別のものである。
- 積層材と弱い界面:合板のような層状の構造で、き裂をそらしたり鈍らせたりする。
- 複合材料:強い繊維をより弱い母材の中に保持し、強度と靭性を兼ね備えさせた材料。
第3部:金属の伝統(第9〜11章)
- 延性:金属がき裂を生じるのではなく、転位の運動によって塑性変形する能力。
- 特性のバランスのとれた組合せ:新しい材料は、ときに相反するいくつもの要求を同時に満たさなければならないという、最終章でのゴードンの見方。
批判的分析
長所
- まず物理的な理解を。 本書は材料を使ってどう計算するかではなく、材料がなぜそのようにふるまうのかを説明する。なぜき裂が重要なのか、なぜ理論強度と実際の強度は違うのか、なぜ金属は曲がり伸びるのにガラスは砕けるのか。
- 経験に基づいて語られる現実の工学。 ボールの序文は、造船技師として出発し、その後王立航空研究所で木材、プラスチック、繊維複合材料に取り組み、さらに後にはウィスカー強化材料に取り組んだゴードンの経歴を描いている。したがって木材、合板、複合材料の章は、直接の経験に基づいて書かれている。
- 読みやすく楽しい。 ボールは、明快さとものの仕組みへの喜びを兼ね備えたゴードンをリチャード・ファインマンになぞらえ、彼の本が20以上の言語に翻訳され、英国の学校で教材に指定されたことを記している。
- 軽いが誠実な数学。 ゴードンは初歩的な代数にとどめながらも数値、表、曲線は残しているので、読者は定性的な話だけでなく、実際の材料特性の桁を学ぶことができる。
短所
- 1960年代末に書かれた本。 ボールは、その時代の一般向け科学書はある意味で古風であるとはっきり述べている。最終章はゴードン自身の言うとおり推測的であり、その後に開発された材料は扱われていない。
- 機能ではなく強度。 ボールによれば、この分野はその後、構造から機能へと移った。ボールが本書に欠けている最も重要な材料と呼ぶシリコンのような半導体や、応答性のある「スマート」材料は本書の範囲外である。
- 授業用の教科書ではない。 一般向けの読み物であり、目次には演習問題が見当たらない。単純なはりの公式の付録を除けば、応力解析は計算法としては展開されていない。材料力学の授業を支えることはできても、その代わりにはならない。
コースにおける位置づけ
本書は、このコースの材料力学の教科書に添える、技術的でない手引きである。Hibbelerと、Beer、Johnston、DeWolf、Mazurekのそれぞれの Mechanics of Materials は、例題と宿題の問題を通じて応力、ひずみ、ねじり、曲げ、座屈の計算を教える。ゴードンは、それらの量が物理的に何を意味するのか、そして材料がなぜそのように、とりわけき裂によって破壊するのかを説明する。どちらかの教科書の最初の数週間の前に、またはそれと並行して読むとよい。
David Blockleyの Structural Engineering: A Very Short Introduction は、このコースのもう一冊の技術的でない本である。Blockleyは構造物を全体として見るのに対し、ゴードンは材料の内部を見る。UguralとFensterの Advanced Mechanics of Materials and Applied Elasticity とSaddの Elasticity は、弾性理論へのずっと後の段階である。理論強度とき裂についてのゴードンの章は、それらのより形式的な扱いへの有益な動機づけとなる。ボールが本書の続編として挙げるゴードン自身の Structures: Or Why Things Don't Fall Down は、構造工学のコースに含まれている。
本書の使い方
本書は、工学、材料、物理学の1年生や、ものがなぜ壊れるのかに興味をもつ一般読者に向いている。技術的な予備知識は不要で、ゴードンの数学はごく初歩的な代数にとどまる。
実践的な計画:
- 第1部を通して読む(第1〜4章)。これらの章は、応力、ひずみ、理論強度、き裂と転位という、本書の残りの部分が依拠する考え方を担っている。
- 工学を学ぶ人にとっての中核: き裂の阻止を扱う第5章と、金属を扱う第9〜10章は、材料力学の授業や、後の破壊の学習に最も直接つながる。
- 視野を広げるために読む: 木材、合板、複合材料を扱う第6〜8章。木材と複合材料についてのゴードン自身の仕事に基づいており、複合材料や軽量設計に関心のある学生にとって特に役立つ。
- 批判的に読む: 第11章を、ゴードンの未来像を更新するボールの序文と合わせて読む。
教科書による授業と並行して、ヤング率や強度と靭性の違いなど、ゴードンが導入する量を短いリストにしておき、それぞれを教科書での定義と単位に対応させるとよい。単純なはりの公式を扱う付録2は、標準的な授業のはりの章への良い橋渡しとなる。
