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結晶構造精密化 cover

化学

化学

結晶構造精密化

Peter Müller; Regine Herbst-Irmer; Anthony L. Spek; Thomas R. Schneider; Michael R. Sawaya

英語原題: Crystal Structure Refinement

結晶構造をプログラムSHELXLで精密化するためのガイドで、例題を再現するためのファイルを収めたCD-ROMが付く。拘束条件、水素原子、原子種の割り当て、ディスオーダー、擬対称、双晶、アーティファクト、検証を扱い、タンパク質の精密化と検証の章も含む。

難易度レベル
上級
学術レベル
大学院
結晶学X線回折精密化SHELXL構造検証実験手法

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Müller, P., Herbst-Irmer, R., Spek, A. L., Schneider, T. R., & Sawaya, M. R. (2006). Crystal Structure Refinement: A Crystallographer's Guide to SHELXL. Oxford University Press (International Union of Crystallography Texts on Crystallography).

章の要約

本書は教科書とチュートリアルを兼ねている。副題が重点を示しており、それは精密化プログラム SHELXL である。裏表紙の説明によれば、実用的な結晶構造精密化の高度な側面を扱い、それらはこれまでの教科書があまり取り上げてこなかったものだという。大半の章は SHELXL に基づく精密化の例を示して各問題を詳しく説明し、付属の CD-ROM には精密化を再現するのに必要なファイルが収められている。大部分の章は Peter Müller が執筆し、Regine Herbst-Irmer、Anthony Spek、Thomas Schneider、Michael Sawaya が以下に記す章を寄せている。巻頭には序文がある。

第1章:SHELXL

プログラムの紹介。SHELX スイート、SHELXL の構成、入力ファイルを扱う。

第2章:結晶構造精密化

精密化全体の簡潔な概観。最小二乗精密化、弱いデータと分解能の打ち切り、残差因子、モデルのパラメータ、拘束条件(constraints)と制約条件(restraints)の使用を扱う。

第3章:水素原子

水素原子は X 線構造では位置を特定しにくい。この章は、炭素に結合した水素原子は通常計算で位置を決められるのに対し、酸性の N–H や O–H の水素は実験の電子密度から見つけるべきだと説明する。

第4章:原子種の割り当て

変位パラメータ、結合距離、配位構造といった結晶学的・化学的知識を用いて、各電子密度ピークがどの元素を表すかを決める方法。

第5章:ディスオーダー

静的・動的な位置のディスオーダー、置換型ディスオーダー、バルク溶媒を扱い、それらを SHELXL で拘束条件、制約条件、自由変数を用いて記述する方法を述べる。

第6章:擬対称

擬対称を扱う。本書の難しい精密化問題の並びでは、ディスオーダーの次、双晶の前に置かれている。

第7章:双晶

Regine Herbst-Irmer による章。結晶学的双晶の4つのタイプを定義し、双晶則の導き方を示し、SHELXL による6つの精密化の実例を含む。

第8章:アーティファクト

例として、リブレーションによる結合距離の短縮や、水素の位置の不正確な決定が挙げられ、「アーティファクト」をずさんな仕事の言い訳にしてはならないと戒めている。

第9章:構造の検証

Anthony L. Spek による章。小分子構造の検証についての短い章である。

第10–11章:タンパク質の精密化/タンパク質構造の(交差)検証

Thomas R. Schneider が高分子構造の精密化を扱う唯一の章を、Michael R. Sawaya がタンパク質を対象とする2つ目の短い検証の章を書いている。

一般的な注意

巻末は Müller による一般的な注意の節で終わる。

主要概念

第1–4章:精密化の基礎

  • 最小二乗精密化:回折データに合うようにモデルのパラメータを調整する。
  • 拘束条件と制約条件:幾何学的な制約条件のように、化学的知識をモデルに課す手段。
  • 水素原子の扱い:計算による位置と実験で特定した位置。
  • 原子種の割り当て:電子密度ピークがどの元素かを決めること。

第5–8章:難しいケース

  • ディスオーダー:静的・動的・置換型のディスオーダーとバルク溶媒。
  • 擬対称と双晶:双晶則とその精密化での利用。
  • アーティファクト:分子ではなくデータやモデルから生じる見かけの特徴。

第9–11章:検証とタンパク質

  • 構造の検証:精密化したモデルの誤りや不整合を調べること。
  • タンパク質の精密化と交差検証:高分子における対応物。

批判的分析

長所

  • 再現できる実例。 本書は SHELXL での精密化を軸に組み立てられ、各問題を詳しく説明し、付属の CD-ROM に再現に必要なファイルがすべて入っている。
  • 難しいケースの扱い。 裏表紙に引用されているノッティンガム大学の Alexander J. Blake は、双晶とディスオーダーの扱いの深さは非常に価値があり、現時点で他では得られないものだと述べ、オックスフォード大学の David J. Watkin は質の高いテキストだと評している。
  • 専門的な章は専門家が執筆。 双晶、検証、タンパク質の精密化は、Herbst-Irmer、Spek、Schneider、Sawaya が担当している。
  • うまくいかない点への注意。 アーティファクトと検証の独立した章が、精密化の方法だけでなく、完成した構造の信頼性を扱っている。

短所

  • 1つのプログラムに結びついている。 副題と例は2006年当時の SHELXL に関するものなので、コマンドの詳細はプログラムの最新ドキュメントで確認する必要がある。
  • 難度が高い。 本書は実用的な精密化の高度な側面を扱っており、結晶学の入門書ではない。
  • 範囲が狭い。 主題は精密化と検証であり、高分子を扱うのは1つの章と検証の章だけである。

コースにおける位置づけ

材料・高分子化学のコースでは、本書は実践的な結晶学の1冊である。Anthony West の『Solid State Chemistry and its Applications』は無機固体の結合と結晶構造を展開してから欠陥と評価を扱い、Allcock の『Introduction to Materials Chemistry』は化学者の視点から材料にアプローチし、Carraher の『Introduction to Polymer Chemistry』と Young と Lovell の『Introduction to Polymers』は高分子の合成、構造、性質を扱う。これらの説明を見る限り、単結晶構造を精密化する日々の作業を扱う本はない。

したがって Müller らの本は、West の本で結晶構造について学び、次に回折データから構造を導き、あるいは批判的に評価する必要が生じた読者の併読書であり、他のどの本の代わりにもならない。

本書の使い方

本書は小分子の結晶構造を精密化する大学院生、ポスドク、施設のスタッフ、そして発表された構造を批判的に評価したい上級の読者に向く。

実践的な進め方は次のとおり。

  • 出発点: 第1・2章でプログラムと精密化の論理を学ぶ。
  • 日常の作業: 水素原子と原子種を扱う第3・4章、続いて検証の第9章。
  • 問題が起きたとき: ディスオーダー、擬対称、双晶、アーティファクトを扱う第5〜8章。
  • 任意: 高分子結晶学には第10・11章。

CD-ROM のファイルを使って SHELXL で一緒に操作し、自分のデータに取り組む前にそれぞれの精密化を再現する。また、後の章の議論は SHELXL の最新ドキュメントと照らし合わせて確認する。