01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
West, A. R. (2014). Solid State Chemistry and its Applications: Student Edition (2nd ed.). Wiley.
章の要約
学生版は592ページ、10章からなり、その後に参考文献案内、3つの短い付録、索引が続く。Wileyは、著者の以前のBasic Solid State Chemistryを全面的に書き直し拡充したものとし、フルカラーで、各節が基本原理のやさしい導入から始まって次第に高度な内容へ進むと説明している。
第1章:Crystal Structures and Crystal Chemistry
最初のもっとも長い章(約80ページ)。単位格子、結晶系、対称性、ブラベ格子、ミラー指数、面間隔の式から始め、結晶構造の記述に進む。立方・六方最密充填、単位格子の投影と原子座標、最密充填で記述できる物質(金属、合金、イオン構造)、空間充填多面体からなる構造、重要な構造型の概観である。
第2章:Crystal Defects, Non-Stoichiometry and Solid Solutions
完全結晶と不完全結晶、点欠陥、固溶体、拡張欠陥、そして固体の力学的性質と関係する転位を扱う。
第3章:Bonding in Solids
イオン結合、共有結合、金属結合、ファンデルワールス結合、水素結合の概観から始め、イオン結合、共有結合、バンド理論を含む金属結合を扱い、「バンドか結合か」という所見で終わる。Wileyは、共有結合の新しい節と金属結合の拡充を本版の特徴として挙げている。
第4章:Synthesis, Processing and Fabrication Methods
調製を経路別に整理する。固相反応、低温(「シミ・ドゥース」)法、気相法、高圧法、結晶成長である。Wileyは、マイクロ波合成、コンビナトリアル合成、メカノ合成、原子層堆積、スプレー熱分解を新しい話題として挙げている。
第5章:Crystallography and Diffraction Techniques
固体のキャラクタリゼーションの章で、X線回折を中心に、電子線回折と中性子回折の節がある。
第6章:Other Techniques: Microscopy, Spectroscopy, Thermal Analysis
回折以外のキャラクタリゼーションに広げる。光学顕微鏡・電子顕微鏡、分光法、熱分析を扱い、未知の固体を同定・分析・特性評価する戦略で終わる。
第7章:Phase Diagrams and their Interpretation
相律と凝縮系の相律を導入し、1成分系と2成分凝縮系を扱い、二元系状態図を作図するための助言を添える。
第8章:Electrical Properties
性質を扱う章の中で最大。電気材料を概観し、金属伝導、超伝導、半導体、イオン伝導(長い節)を扱い、続いて誘電体、強誘電体、焦電体、圧電体とその応用を論じる。
第9章:Magnetic Properties
磁性の物理的性質、磁性材料とその構造・性質、構造と性質の関係に基づく応用、最近の展開を扱う。
第10章:Optical Properties: Luminescence and Lasers
可視光と光源から始め、発光と蛍光体(配位座標モデルや反ストークス蛍光体を含む)、誘導放出とレーザーを扱い、光検出器、光ファイバー、太陽電池で終わる。
付録
参考文献案内に続き、面間隔と単位格子体積、結晶化学における幾何学的考察、最密充填的(eutactic)構造の見分け方の付録がある。
主要概念
第1~3章:構造、欠陥、結合
- 単位格子と対称性:あらゆる結晶構造を記述する繰り返し単位と対称操作。
- 最密充填:立方・六方最密充填の配列で、多くの金属、合金、イオン性固体を記述する枠組みとして用いられる。
- 点欠陥と固溶体:完全な秩序からのずれと、固溶体の組成の変わり方。
- バンド理論:金属結合の電子構造的な描像と、局在した結合との比較。
第4~7章:固体をつくり、調べる
- 固相反応と低温経路:無機材料を調製する対照的な方法。
- X線・電子線・中性子回折:結晶構造を決める主要な手段。
- 相律と二元系状態図:組成と温度が存在する相をどう決めるか。
第8~10章:性質
- 超伝導、半導体、イオン伝導:電気的性質の章で扱う3種類の異なる電気的挙動。
- 強誘電体、焦電体、圧電体:電場、熱、応力に応答する誘電材料。
- 発光とレーザー:蛍光体からの発光と誘導放出の原理。
批判的分析
長所
- 構造から機能へ。 10章は構造から欠陥、結合、合成、キャラクタリゼーションを経て電気的・磁気的・光学的性質へ進み、最初に提示された構造の語彙から性質を説明する。
- 合成とキャラクタリゼーションの扱いが本格的。 第4章は調製経路別に整理され、第5・6章は回折、顕微鏡、分光、熱分析を扱い、未知の固体を特性評価する戦略で終わる。
- 視覚的・デジタルな支援。 フルカラーで、Wileyによれば、CrystalMakerソフトウェアにより100以上の結晶構造を3次元で表示・回転できる。演習の解答と補足講義資料はオンラインで入手できる。
- 新しい話題。 出版社は、半導体、巨大・超巨大磁気抵抗、マルチフェロイック、LED、光ファイバー、太陽電池、レーザー、グラフェン、準結晶を拡充または新規の内容として挙げている。
短所
- 出だしが重い。 第1章は約80ページで、機能の化学が現れる前に、対称性、格子、長い構造型の概観が詰め込まれている。結晶学の経験がない読者は進め方に注意したい。
- 結合は構造の後に来る。 第3章は欠陥の章の後にあるため、最初の2章は本書自身の結合の扱いではなく、以前の講義で学んだ結合の考えに頼る。
- 高分子やソフトマテリアルの本ではない。 目次は無機結晶性固体に集中しており、高分子や有機材料には別の本が必要である。
コースにおける位置づけ
材料・高分子化学のコースでは、Westは無機固体の本であり、構造、欠陥、合成、キャラクタリゼーション、そこから導かれる電気的・磁気的・光学的性質を扱う。AllcockのIntroduction to Materials Chemistryは、高分子、セラミックス、金属、半導体にわたって化学者の視点から材料にアプローチし、Westの前または並行して読むより広い入門になる。
CarraherのIntroduction to Polymer ChemistryとYoungとLovellのIntroduction to Polymersは、Westが扱わない高分子側を受け持つ。YoungとLovellは合成、キャラクタリゼーション、形態、性質を軸に構成されている。Crystal Structure Refinementは、回折データから結晶構造を決定し精密化する実践的な手引きで、構造精密化を行う読者にはWestの回折の章よりも踏み込んだ内容である。
本書の使い方
固体化学を学ぶ学部生と、これから研究を始める人に向けて書かれている。冒頭からすぐ結晶構造に入るため、一般化学と最初の無機化学の講義が適した準備になる。
実践的な進め方は次のとおり。
- 中核: 第1~3章を順に読む。第1章はCrystalMakerのモデルや実物の模型を使って時間をかける。
- 手法: 第4~6章は、合成やキャラクタリゼーションの実験と並行して読める。
- 状態図: 第7章は、状態図を別の講義で扱う場合、独立した単元として読める。
- 性質: 第8~10章は、講義に合わせて電気的・磁気的・光学的な内容を選んで読めばよい。第8章がもっとも長い。
各章を終えたら、オンラインの演習解答で理解を確認する。
