01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Young, R. J., & Lovell, P. A. (2011). Introduction to Polymers (3rd ed.). CRC Press.
章の要約
本書は四つの部と25の章からなり、688ページある。第I部は Concepts, Nomenclature and Synthesis of Polymers(高分子の概念、命名、合成;第1〜9章)、第II部は Characterization of Polymers(高分子の特性評価;第10〜15章)、第III部は Phase Structure and Morphology of Bulk Polymers(バルク高分子の相構造とモルフォロジー;第16〜18章)、第IV部は Properties of Bulk Polymers(バルク高分子の物性;第19〜25章)である。出版社の目次は章題と各節の見出しを示しているが、章番号はない(ここでの番号は目次の順序に従う)。各章の終わりには問題と参考文献があり、巻末に問題の解答がある。
第1〜2章:Concepts and Nomenclature(概念と命名);Principles of Polymerization(重合の原理)
最初の章は、高分子科学と高分子産業の起源、基本的な定義と命名、モル質量と重合度を扱う。第2章は重合反応を分類し、モノマーの官能基数と高分子の骨格構造との関係を述べ、官能基の等反応性の原理を導入する。
第3〜5章:Step Polymerization(逐次重合);Radical Polymerization(ラジカル重合);Ionic Polymerization(イオン重合)
逐次重合は線状と非線状の形で扱われる。ラジカル重合は、通常のラジカル重合の化学と速度論、重合のプロセス、可逆的失活(「リビング」)ラジカル重合、非線状ラジカル重合を含む。イオン重合は、カチオン重合、アニオン重合、基移動重合を含む。
第6〜9章:Stereochemistry and Coordination Polymerization(立体化学と配位重合);Ring-Opening Polymerization(開環重合);Specialized Methods of Polymer Synthesis(高分子合成の特殊な方法);Copolymerization(共重合)
第6章は、タクティシティ、共役ジエンから得られる高分子の幾何異性、Ziegler–Natta触媒とメタロセン触媒を扱う。第7章は、カチオン、アニオン、ラジカル、メタセシスによる開環の経路を扱う。第8章は、固相トポケミカル重合、酸化カップリング、不溶性高分子の前駆体経路、超分子重合をまとめる。第9章は、逐次共重合と連鎖共重合、およびブロック共重合体とグラフト共重合体の合成を扱う。
第10〜13章:Theoretical Description of Polymers in Solution(溶液中の高分子の理論的記述);Number-Average Molar Mass(数平均モル質量);Scattering Methods(散乱法);Frictional Properties of Polymers in Solution(溶液中の高分子の摩擦的性質)
まず高分子の溶液の熱力学と鎖の大きさを扱い、続いてモル質量を測定する方法を取り上げる。膜浸透圧法と蒸気圧浸透圧法、沸点上昇法と凝固点降下法、末端基分析、静的・動的光散乱、小角X線・中性子散乱、粘度測定、超遠心である。
第14〜15章:Molar Mass Distribution(モル質量分布);Chemical Composition and Molecular Microstructure(化学組成と分子の微細構造)
第14章は、分別、ゲル浸透クロマトグラフィー、フィールドフローフラクショネーション、質量分析を扱う。第15章は、分光法の導入に続いて、組成と微細構造に応用される紫外・可視、赤外、ラマン、核磁気共鳴、質量分析を述べる。
第16〜18章:The Amorphous State(非晶状態);The Crystalline State(結晶状態);Multicomponent Polymer Systems(多成分高分子系)
非晶状態の章は、ガラス転移、それを支配する因子、高分子鎖のダイナミクスを扱う。結晶状態の章は、結晶構造の決定、単結晶、半結晶性高分子と液晶高分子、欠陥、結晶化、融解を扱う。多成分系は、ポリマーブレンドとブロック共重合体を扱う。
第19〜21章:Elastic Deformation(弾性変形);Viscoelasticity(粘弾性);Elastomers(エラストマー)
弾性変形から粘弾性(力学モデル、ボルツマンの重ね合わせの原理、動的機械試験、時間–温度換算則、絡み合い、非線形挙動)とエラストマー(ゴム弾性の熱力学的理論と統計理論、応力–ひずみ挙動)へ進む。
第22〜25章:Yield and Crazing(降伏とクレーズ);Fracture and Toughening(破壊と強靱化);Polymer Composites(高分子複合材料);Electrical Properties(電気的性質)
最後の章は、降伏基準とクレーズ、破壊力学と強靱化された高分子、複合材料(マトリックス、強化材、ナノコンポジット)、電気的性質(誘電特性、伝導、高分子エレクトロニクス)を扱う。
主要概念
第I部:合成(第1〜9章)
- モル質量と重合度:高分子の大きさを表す量(第1章)。
- 等反応性の原理:官能基の反応性が分子の大きさに依存しないという仮定(第2章)。
- 逐次・ラジカル・イオン・配位重合:主要な重合機構(第3〜6章)。
- 共重合:ブロック型やグラフト型を含む、逐次と連鎖の共重合の経路(第9章)。
第II部:特性評価(第10〜15章)
- 数平均モル質量:浸透圧法、末端基分析などで測定される(第11章)。
- モル質量分布:分別とゲル浸透クロマトグラフィー(第14章)。
- 光散乱とX線・中性子散乱:散乱による分子の性質の決定(第12章)。
- 分光法:紫外・可視、赤外、ラマン、NMR、質量分析による組成と微細構造(第15章)。
第III〜IV部:構造と物性(第16〜25章)
- ガラス転移と結晶性:非晶状態と結晶状態の主な特徴(第16〜17章)。
- 粘弾性:時間と温度に依存する力学挙動(第20章)。
- エラストマーの変形:ゴム弾性の熱力学的理論と統計理論(第21章)。
- 降伏、クレーズ、破壊:高分子の破壊(第22〜23章)。
批判的分析
長所
- 分子から材料までの一貫した流れ。 四つの部は、高分子を合成、特性評価、相構造、バルクの物性の順にたどる。出版社は、第3版が現代の高分子科学の教育と学習のための一貫した土台を提供するよう再編されたと述べている。
- 目次に現代的な話題がある。 出版社は、第3版の追加内容として、可逆的失活ラジカル重合、デンドリマー、ハイパーブランチ高分子とブロック共重合体、拡散とフィールドフローフラクショネーション、多成分系、ナノコンポジット、電気的性質を特に挙げている。
- 自己完結的で導出が丁寧。 出版社によれば、本書はほぼ自己完結的で、ほとんどの式を完全に導き、章どうしの相互参照を行っている。各章に参考文献のリストと、特に数値計算を中心とした問題がある。
- 学部生向けと大学院の入門書の両方として評価されている。 出版社が引用する書評(Chemistry World、2012年)は、第2版を大学2年次の授業の推奨教科書とし、書評者は第3版を、その授業と、高度な高分子合成に関する4年次の修士向け授業に推奨すると述べ、高分子の経験が乏しい大学院生向けの入門書として推薦している。
短所
- 長く、定量的。 688ページ・25章で、ほとんどの式が本文中で導かれ、ボルツマンの重ね合わせの原理やエラストマー変形の統計理論のような内容も含むため、一つの授業の範囲を超えており、物理化学と数学に慣れていることが求められる。
- 加工、劣化、リサイクルの章がない。 章・節の見出しのいずれも高分子の加工、劣化、リサイクルを扱っておらず、天然高分子を専門に扱う章もないため、これらに関心のある読者は他の資料が必要になる。
- 版の古さ。 第3版は2011年に刊行されており、その後の高分子の合成、特性評価、材料の進展は目次に含まれていない。
コースにおける位置づけ
Young と Lovell の本は、高分子を物理的かつ定量的に扱うもので、25章のうち第III部と第IV部の10章がバルク高分子の構造と物性を扱う。Carraher の Introduction to Polymer Chemistry は、高分子がどのように作られるか、構造と大きさがどう測られるか、化学がプラスチック・繊維・ゴム・天然高分子の性質にどう結びつくかを、応用、事例研究、演習とともに扱う入門書と説明されており、より穏やかな最初の授業として、Young と Lovell の前の良い準備になる。Allcock の Introduction to Materials Chemistry は、高分子をセラミックス、金属、半導体のなかに位置づけ、そうした幅広い材料の文脈を先に知りたい読者に向いている。
より専門的な読書としては、West の Solid State Chemistry and its Applications が無機固体の構造と性質を扱い、Young と Lovell の高分子固体に対する無機の対応物にあたる。Müller の Crystal Structure Refinement は、回折データから分子結晶構造を精密化するための実践的な指南書で、第17章の結晶構造決定の節よりも専門的な主題である。
本書の使い方
2年次以上の化学・材料系の学生と、高分子に初めて取り組む大学院生を対象とする。有機反応機構と基礎的な熱力学に慣れていることが望ましい。出版社は、重合機構が電子の移動を示して書かれていると述べており、式も本文中で導かれる。
実践的な進め方は次のとおり。
- 中核: 第I部の第1〜5章と第9章(概念、逐次重合、ラジカル重合、イオン重合、共重合体)、次にモル質量と分光法の第11、14、15章、さらにガラス転移、結晶性、弾性、粘弾性の第16、17、19、20章。
- 発展または任意: 残りの合成の章(6〜8)、溶液論と散乱(10、12、13)、多成分系(18)、そしてエラストマー、降伏と破壊、複合材料、電気的性質(21〜25)。
- 高度な合成の授業向け: 出版社が第I部について挙げる新しい内容、たとえば可逆的失活ラジカル重合(第4章)とラジカル開環重合(第7章)。
各章末の数値問題に取り組み、巻末の解答と照合する。参考文献のリストを使って、さらに先へ進むとよい。
