01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Ries, E. (2011). The Lean Startup: How Today's Entrepreneurs Use Continuous Innovation to Create Radically Successful Businesses. Crown (now published under the Crown Currency imprint).
章の要約
本書(336ページ、2011年9月初版)は、新規事業を一連の実験として経営すべきだと論じる実務家の書である。ソフトウェア起業家の Ries は、スタートアップを「極度の不確実性のもとで新しい製品やサービスを生み出すために設計された人間の組織」と定義し、これはガレージの創業者だけでなく大企業の中のチームにも同じように当てはまると強調する。出版社の紹介は、この方法をリーン生産方式に着想を得たものとし、検証による学び(validated learning)、迅速な実験、そして開発サイクルを短縮し「虚栄の指標(vanity metrics)」に頼らずに実際の進捗を測る実践に基づくものとして示している。序章の後、本書は三つの部(ビジョン、舵取り、加速)に分かれた12の章(多くは一語のタイトル)、エピローグ、そして結びの呼びかけからなる。
第1部:ビジョン(第1–4章:始める/定義する/学ぶ/実験する)
第1部は、起業家精神はマネジメントの一形態であり独自の規律を必要とすると論じ、スタートアップとは何かを定義する。著者自身の方法論のページでも示されている中心的な考え方は、検証による学びである。スタートアップは持続可能な事業の築き方を学ぶために存在し、その学びは実証的に示されるべきだとされる。各スタートアップは、製品を作れるかどうかだけでなく、その製品を作るべきか、その周りに持続可能な事業を築けるかに答えるための実験として扱われる。
第2部:舵取り(第5–8章:跳ぶ/試す/測る/ピボット(あるいは継続))
第2部はビジョンをプロセス、すなわち構築-計測-学習のフィードバック・ループへと変える。章のタイトルがその段階をたどっている。新しい事業が行う信念の跳躍、実際の顧客が試せるように早い段階でリリースされる実用最小限の製品(MVP)による検証、そして Ries がイノベーション会計と呼ぶものによる計測である。イノベーション会計はマイルストーンを設定し、因果関係を示す実用的な指標に依拠する。この部は、本書で最もよく知られた用語をもたらした決断で終わる。現在の戦略を継続するか、それとも製品、戦略、成長について新しい基本的な仮説を検証するために構造化された方向転換、すなわちピボットを行うかである。
第3部:加速(第9–12章:バッチ/成長する/適応する/革新する)
第3部は、会社が成長してもループをより速く回し続けるにはどうすればよいかを問う。リーン生産方式に倣って小さなバッチで仕事をすることを主張し、持続可能な事業を動かす成長のエンジンを説明し、問題の原因をたどる方法として「5回のなぜ(Five Whys)」を紹介し、「革新する」と題された章で終わる。本書は全体を通じて既存企業を念頭に置いており、Miller は、Ries が大組織が官僚主義に流れていくことに何度も警告を発していると指摘している。
エピローグ:無駄にするな/ムーブメントに参加しよう
エピローグは、失敗した事業の無駄のうちどれだけが防げるのかを問う。Ries は自らの理論を検証にかけ、その理論が提案された変更の結果を予測できるかを問うことで締めくくり、最後の節は読者をより広いリーン・スタートアップのムーブメントへと誘う。
主要概念
第1部:ビジョン
- スタートアップ:極度の不確実性のもとで新しい製品やサービスを生み出すために設計された人間の組織。独立した企業か既存企業の内部かを問わない。
- マネジメントとしての起業:スタートアップに必要なのはマネジメントの不在ではなく、その文脈に合ったマネジメントの規律だという主張。
- 検証による学び:持続可能な事業の築き方について、実験を通じて実証されたことによって測られる進捗。
第2部:舵取り
- 構築-計測-学習ループ:アイデアを製品にし、顧客の反応を測り、ピボットするか継続するかを学ぶこと。
- 実用最小限の製品(MVP):学習ループを始めることを可能にする、製品の最も単純な形。
- イノベーション会計:スタートアップにとっての進捗の測り方、マイルストーンの設定、仕事の優先順位づけの方法。
- 実用的な指標と虚栄の指標:因果関係を示す指標と、見栄えはよいが意思決定の指針にならない数字との対比。
- ピボット:製品、戦略、成長についての新しい基本的な仮説を検証するための、構造化された方向修正。
第3部:加速
- 小さなバッチ:問題をより早く発見し学ぶために、小さな単位で生産しリリースすること。
- 成長のエンジン:持続可能な事業が成長する仕組み。
- 5回のなぜ:「なぜ」を繰り返し問うことで、問題をその根本原因までたどること。
批判的分析
長所
- 明快で教えやすいプロセス。 本書は曖昧に定義されていた活動を、学生が自分のアイデアに応用できる一連の手順(仮説を定める、MVP を作る、実用的な指標で測る、ピボットするかを決める)に変えている。Gemba Academy のために本書を評したリーンの実務家 Jon Miller(2012年3月)は、既存の学習ループを構築-計測-学習サイクルへと応用したことを巧みな革新と呼び、本書を読みやすく、専門用語が少なく、継続的改善の精神において一貫していると評価した。
- 不確実性のもとでの進捗の計測。 イノベーション会計と、実用的な指標と虚栄の指標の区別は、従来の事業指標がまだほとんど何も語らない段階で、事業が進捗しているかどうかをどう見分けるかという現実の課題に応えている。
- 独立したスタートアップに限られない。 Ries の定義は意図的に大組織の中のチームを含めており、出版社もこの方法をあらゆる規模の企業の起業家に向けたものとして示している。そのため本書は企業内イノベーションの授業にも関係がある。
- 読みやすい物語。 出版社と評者は、実際の事業についての多くの物語を強調しており、それが考え方を記憶に残るものにしている。
短所
- エビデンスが逸話的。 Miller は、成功例の標本が小さく、この方法を支える議論は体系的な証拠よりも帰納に依拠していると指摘し、一般に有効かどうかは時間とデータが示すことになるとしている。Ries 自身も、理論の検証を呼びかけて本書を締めくくっている。
- リーンの概念の単純化。 Miller は、小さなバッチの扱いがバッチの大きさを決める際の変動や待ち行列の役割を無視していること、そして「5回のなぜ」の説明がリーンの問題解決における本来の目的(各段階に投資するのではなく一つの根本原因を見つけること、そして「人間」の原因で止まらないこと)から外れていることを論じている。
- 組織よりも道具。 Miller はまた、本書が持続的な変化に必要なリーダーシップ、インセンティブ、構造よりも、道具や技法に関心を向けすぎていると考えている。
- テクノロジー系の事業に根ざしている。 Ries 自身の経験はソフトウェアのスタートアップにあり、本書は何よりもウェブやテクノロジーの起業家への助言として受け止められた(Wired の賛辞はテック界の大物志望者に向けられている)。製造業、ライフサイエンス、その他の資本集約的な分野の読者は、迅速で反復的なリリースといった実践を自分の分野に合わせて調整する必要がある。
コースにおける位置づけ
この起業とイノベーションのコースで、The Lean Startup は実務家による方法論の本である。Barringer と Ireland の Entrepreneurship: Successfully Launching New Ventures と OpenStax の Entrepreneurship は、機会の認識や実現可能性から資金調達、法的形態、成長まで、事業のプロセス全体を扱う教科書であり、Ries が試みていない幅を補う。Ries は、どちらかの教科書の実現可能性やビジネスモデルの章と並行して読むとよい。そこでは彼の実験が、アイデアを検証する具体的な方法を与えてくれる。
他の本は学術的な視点をとる。Shane の A General Theory of Entrepreneurship は、機会がどこから生まれ、誰がそれを追求するのかについての研究を総合しており、Ries の主張をエビデンスに照らして検証するのに役立つ。Tidd と Bessant の Managing Innovation は、組織において管理されるプロセスとしてのイノベーションを研究に基づいて扱っており、Ries の本の最後の部分を広げてくれる。Christensen の The Innovator's Dilemma は、既存企業がなぜ破壊的技術に敗れるのかを説明しており、既存企業の内部でのイノベーションという Ries の関心に近い問題を扱っている。
本書の使い方
本書は一般のビジネス読者に向けて書かれており、予備知識は必要ない。起業とイノベーションの授業を履修する学生、とくに事業計画のプロジェクトに取り組む学生と、既存の組織の中で新製品に携わる人に適している。
実際的な読み方は次のとおりである。
- 第1部と第2部は順番にすべて読む。 スタートアップの定義、検証による学び、構築-計測-学習ループ、MVP、イノベーション会計、ピボットの決断という、方法の中核がここにある。
- 第3部は選んで読む。 小さなバッチと成長の章は事業を運営する人にとって最も重要であり、最後の「革新する」の章は企業経営やマネジメントを学ぶ学生にとって自然な焦点となる。
- エピローグは批判的に読む。 批判的な書評とあわせて読み、この方法自体が一つの仮説であることを思い出すとよい。
読みながら方法を応用する。あるプロジェクトのアイデアが依拠している前提を書き出し、そのうち一つを検証できる最小の実験を設計し、どの指標が出れば継続を、どの指標が出ればピボットを正当化するかを事前に決めておく。このアプローチを教科書の事業計画の章と比べ、その主張をコースの他の部分で扱う研究と照らし合わせて検証する。
