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読書ガイド
引用
Tidd, J., & Bessant, J. R. (2024). Managing Innovation: Integrating Technological, Market and Organizational Change (8th ed.). Wiley.
章の要約
第8版は全15章からなる。Wiley は本書を、イノベーション、技術、新製品開発の管理を扱う、証拠に基づく実践的な教科書とし、イノベーション・システムに関する ISO 規格を反映した統合的なプロセスモデルを軸に、営利・公共・社会の各分野のイノベーションを対象にすると説明している。第1章の最終節が全体の構成を示している。イノベーションとは何か、どう組織するかを述べたのち、探索、選択、実行、価値の獲得という問いを順にたどり、学習と能力構築で終わる。
第1章:イノベーション――それは何か、なぜ重要か
イノベーションをハイテクや新製品にとどまらないものと定義し、起業や戦略的優位と結びつけ、4つの次元で「イノベーション空間」を描く。漸進的イノベーション、コンポーネント/アーキテクチャ・イノベーション、プラットフォーム・イノベーション、不連続なイノベーションを区別し、ライフサイクルに沿って重点が変わることを示し、管理すべきプロセスとしてのイノベーションを導入する。
第2章:デジタルは違うのか
デジタル・イノベーションは新しいのか、革命的なのか、それがイノベーションとその管理に何を意味するかを問い、「デジタル・ツールキット」と管理の新しい考え方を紹介する。
第3章:中核的な事業プロセスとしてのイノベーション
イノベーションの旅路とプロセスのコンティンジェンシー・モデルを導入し、サービス、拡張企業、非営利を含む非商業の場、社会的起業、組織規模、エコシステム、地理、規制、産業ライフサイクルによる違いを扱う。さらに、成功したイノベーション・マネジメントについて分かっていることと、それに特徴的な「ルーティン」を検討する。
第4章:イノベーション戦略の策定
合理主義的戦略と漸進主義的戦略、イノベーションのリーダーシップとフォロワーシップ、ダイナミック・ケイパビリティ、イノベーションの成果の専有、技術軌道、コア・コンピタンス、イノベーションのグローバル化を対比し、ポートフォリオ手法など戦略づくりの方法を紹介する。
第5章:イノベーティブな組織をつくる
共有されたビジョンとリーダーシップ、組織構造、キーパーソン、高い関与、チームワーク、創造的な風土、境界連結を扱い、道のりのロードマップを添える。
第6–8章:イノベーションの源泉/イノベーションのための探索戦略/イノベーション・ネットワーク
「探索」の段階。第6章はイノベーションの出所(知識プッシュ、ニーズプル、危機、取り残された市場と新興市場、ユーザー、クラウド、デザイン、規制など)を挙げ、第7章は探索空間の地図や吸収能力を含む探索の方法を、第8章はネットワークを扱う。
第9章:不確実性への対処
「選択」の段階。不確実性のファネル、不確実性下の計画と予測、需要の推定、リスク、機会の評価、そして端境での意思決定を扱う。
第10–12章:新製品・サービスの創出/オープン・イノベーションと協働の活用/起業と新規事業の推進
「実行」の段階。第10章は新製品開発、成功と失敗の要因、商業化、サービス・イノベーション、普及を扱う。第11章は提携、サプライヤー、ユーザー主導のイノベーション、クラウドソーシング、オープン・イノベーションの限界を扱う。第12章はベンチャー・チャンピオン、資金調達、社内ベンチャー、スピンアウト、大学のインキュベーター、小企業の成長を扱う。
第13–14章:イノベーションの事業価値の獲得/社会的価値の創造
第13章は企業業績、知識と知的財産、ビジネスモデルと価値獲得を扱う。第14章は社会的イノベーション、包摂的イノベーション、人道的イノベーション、持続可能性主導のイノベーション、責任あるイノベーションへ進む。
第15章:イノベーションからの学習の獲得
ダイナミック・ケイパビリティ、失敗の重要性、学習を獲得するための道具(プロジェクト後レビュー、ベンチマーキング、能力成熟度モデル)、イノベーション監査と測定を扱う。
主要概念
第1–5章:基礎
- イノベーション空間:変えうるものの範囲を4つの次元で描いたもの。
- 漸進的イノベーションと不連続イノベーション:既存のものの改良と、競争のルールを変える変化。
- 中核プロセス:単発の出来事ではなく、管理される一連の流れとしてのイノベーション。
- ダイナミック・ケイパビリティ:企業が学び、刷新する能力。
第6–9章:探索と選択
- 知識プッシュとニーズプル:イノベーションの二つの源泉。
- 吸収能力:企業が外部の知識を認識し活用する能力。
- 不確実性のファネル:プロジェクトの進行につれて不確実性が狭まる様子。
第10–15章:実行・価値・学習
- オープン・イノベーションとユーザー主導のイノベーション。
- 社内ベンチャー。
- 専有可能性と知的財産。
- 社会的イノベーションと持続可能性主導のイノベーション。
- イノベーション監査。
批判的分析
長所
- 一貫した組織原理。 第1章が探索・選択・実行・価値獲得という構造を定め、以降の章がそれに従う。各章の終わりには要約、参考文献、その他の資料がある。
- 広い守備範囲。 目次は、製造される製品だけでなく、サービス、デジタル・イノベーション、社会的・持続可能性主導のイノベーション、非商業の場も扱う。
- 研究の裏付けと実務家の声。 第8版では、実証的知見を載せた「Research Notes」と、現場の管理者による「Views from the Front Line」が加わった。
- ツールとオンライン資料。 Wiley によれば、Innovation Portal、ケーススタディ、対話型の演習が教科書に付く。
短所
- 分量。 600ページを超える15章の大著で、一つの講義で全体を扱うことはできない。
- 一貫して経営管理の視点。 組織内部のイノベーション管理者の立場で書かれており、機会がなぜ存在するかを経済学や起業理論から論じたい読者には、その面の展開は薄い。
- 幅広さ。 普及、知的財産、ベンチャー設立などは各1〜2節で、深めるには専門文献に当たるのがよい。
コースにおける位置づけ
Tidd と Bessant は、起業とイノベーションの書目における、研究に基づくイノベーション・マネジメントの教科書である。起業の教科書(Barringer と Ireland の本および OpenStax の教科書)は事業を始めることを扱う。本書はあらゆる規模の組織の中のイノベーション・プロセスを扱い、第12章で起業と接する。『The Lean Startup』は短い実践者の記録で、第10章のリーン・スタートアップの節とつながる。Christensen の『The Innovator's Dilemma』は破壊的技術について詳しく論じており、第1章の不連続なイノベーションと第4章の戦略を補う。Shane の『A General Theory of Entrepreneurship』は機会とそれを開発する個人に関する学術的な研究書で、第6章や第12章に触発された読者の次の一冊となる。
本書の使い方
経営学・工学系の MBA、修士課程、学部最終学年の講義や研修プログラムに向く。Wiley はこれらの読者層を挙げている。
- 中核: 第1章と第3章(プロセスモデル)、続いて第4–5章(戦略と組織)。
- 段階別: 第6–8章(探索)、第9章(選択)、第10–12章(実行)、第13–14章(価値獲得)。具体的な課題をもつ読者は該当する段階へ進める。
- 締めくくり: 第15章(学習と監査)が総括として役立つ。
- 任意: 第2章(デジタル・イノベーション)は単独で読める。
- Research Notes と Innovation Portal のツールを使い、実在の組織で演習を行う。
