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Good Strategy Bad Strategy: The Difference and Why It Matters(良い戦略、悪い戦略) cover

ビジネス

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Good Strategy Bad Strategy: The Difference and Why It Matters(良い戦略、悪い戦略)

Richard Rumelt

英語原題: Good Strategy Bad Strategy: The Difference and Why It Matters

組織が戦略と呼ぶものの多くは実際には目標設定やスローガンにすぎないと論じる戦略研究者が、一般読者と学生に向けて書いた本である。一貫した戦略が何を含むのか、悪い戦略をどう見分けるのか、戦略上の優位がどこから生まれるのかを、企業、軍事、公共部門の事例を用いて示す。

前提知識: 経営学や経済学の予備知識は必要ない。

難易度レベル
初級
学術レベル
学部
business strategystrategic managementcompetitive advantageleadership入門

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Rumelt, R. P. (2011). Good Strategy Bad Strategy: The Difference and Why It Matters. Crown Business.

章の要約

本書は約320ページの一般書で、序章と3部構成の18章、注と索引からなる。第1部は良い戦略と悪い戦略を定義し、第2部は戦略が拠りどころにできる力の源泉を一つずつ取り上げ(出版社はこれを九つと数える)、第3部は戦略家の思考習慣を扱う。演習問題や章末ケース、数理モデルはなく、議論はビジネス、行政、軍事史からの事例によって進められる。

序章:Overwhelming Obstacles(圧倒的な障害)

序章は本書全体の枠組みを示す。戦略とは、状況の中で決定的な要因を見いだし、それに向けて行動を調整する方法を設計する仕事である。著者はこれを目標設定と区別し、戦略には具体的な行動が含まれていなければならないと強調する。

第1部:Good and Bad Strategy(良い戦略と悪い戦略)(第1–5章)

第1章:Good Strategy Is Unexpected(良い戦略は予想されない)、第2章:Discovering Power(力を見いだす)。 冒頭の2章は、一貫した戦略を持つこと自体が強みになると論じる。それを持つ組織が少ないためでもある。また、戦略は何をするかと同じくらい、何をしないかの問題だとする。第2章は、成功した組織が競争の前提を変えた状況に力の源を探り、ウォルマートや米国国防総省などを取り上げる。

第3章:Bad Strategy(悪い戦略)。 本書で最もよく知られた章で、悪い戦略の四つの特徴を挙げる。中身のない美辞麗句(fluff)、課題に向き合わないこと、目標を戦略と取り違えること、そして悪い戦略目標(決定的な問題を外している、あるいは達成不可能な目標)である。

第4章:Why So Much Bad Strategy?(なぜ悪い戦略がこれほど多いのか)。 著者は悪い戦略の原因を、選択の回避、ひな型どおりの計画立案とカリスマ的なビジョン型リーダーシップ、そして前向きな思考と共有ビジョンさえあれば十分だという信念に求める。

第5章:The Kernel of Good Strategy(良い戦略の核)。 本書の概念的な中心。核(カーネル)は三つの要素からなる。状況を単純化して何が決定的かを特定する診断、障害に対する全体的な方針を定める基本方針、そしてその方針を実行するために調整された一貫した行動である。

第2部:Sources of Power(力の源泉)(第6–15章)

第6章:Using Leverage(てこを使う)、第7章:Proximate Objectives(近い目標)。 てこの力は、先読み、小さな努力が大きな効果を生む転換点、少数の対象への資源集中から生まれる。近い目標とは実現可能なほど手の届く目標であり、将来が不確実であるほど目標は近くなければならない。

第8章:Chain-Link Systems(鎖状のシステム)、第9章:Using Design(設計を使う)。 第8章は、最も弱い環によって性能が制約されるシステムを扱い、一部分だけを改善しても何も得られない場合があることを示す。第9章は戦略を設計として捉える。資源と行動を緊密に統合した構成であり、その代わりにこうした設計は作るのが難しく、柔軟性に欠けるというトレードオフがある。

第10章:Focus(集中)、第11章:Growth(成長)、第12章:Using Advantage(優位を使う)。 これらの章は、調整された方針を適切な市場セグメントに向ける方法、それ自体を目的とした成長(とくに買収による成長)に対する著者の懐疑、そして競争優位を単なる利益の源とみなすのではなく理解し深める方法を扱う。

第13章:Using Dynamics(変化の力を使う)、第14章:Inertia and Entropy(慣性とエントロピー)。 第13章は、外部からの変化の波をその二次的な効果まで読み解いて活用することを論じる。第14章は組織内部の力、すなわちルーティンや文化における慣性と、管理の弱い企業が無秩序へと流れていく傾向を取り上げ、リーダーがそれをどう克服するかを扱う。

第15章:Putting It Together(すべてを組み合わせる)。 グラフィックスチップ企業エヌビディアという一つの事例を通じて、複数の力の源泉が同時に働く様子を示す。

第3部:Thinking Like a Strategist(戦略家のように考える)(第16–18章)

第16章:The Science of Strategy(戦略の科学)、第17章:Using Your Head(頭を使う)、第18章:Keeping Your Head(冷静さを保つ)。 最後の部は、戦略を仮説、その実行を実験とみなし、自分の考えを問い直し判断力を働かせるための実践的な技法を示し、独立した判断の重要性と、成功が続いた後の過信のような判断の誤りを論じて終わる。

主要概念

第1部:良い戦略と悪い戦略

  • 核(カーネル):戦略の最小限の構造。診断、基本方針、一貫した行動からなる。
  • 診断:複雑な状況を単純化し、「ここで何が起きているのか」に答え、どの側面が決定的かを特定するもの。
  • 悪い戦略:単に戦略がないことではなく、美辞麗句、向き合われない課題、戦略を装った目標、非現実的な目標という見分けのつくパターン。
  • 目標と戦略の違い:望ましい成果の一覧は、障害をどう乗り越えるかについて何も語らない。

第2部:力の源泉

  • てこ:先読み、転換点、集中。限られた資源に不釣り合いなほど大きな効果をもたらす。
  • 近い目標:達成可能なほど近い目標。あいまいな状況を解ける問題に変える。
  • 鎖状のシステム:最も弱い構成要素によって性能が決まるシステム。
  • 慣性とエントロピー:組織の変化への抵抗と、管理の行き届かない組織が焦点を失っていく傾向。

第3部:戦略家のように考える

  • 仮説としての戦略:戦略とは何がうまくいくかについての根拠ある判断であり、行動の中で検証され修正される。
  • 判断力:自分の最初の考えを問い直し、予測可能な誤りを避ける、鍛えることのできる能力。

批判的分析

長所

  • どんな戦略にも使える検査法。 核と悪い戦略の四つの特徴は、ミッションステートメント、企業計画、ケースの解答をすばやく点検する手段を学生に与える。デイブ・ケロッグは自身のブログ Kellblog に掲載した2020年の書評で、核を簡潔な枠組みと評し、悪い戦略への批判を本書で最も鋭い部分としている。
  • 事例の幅広さ。 出版社が引用する推薦文は、現代のビジネス界と世界史からの事例を強調しており、各章は企業、行政、軍事の状況を行き来する。このことは、核の考え方が商業上の競争に限られないことを示している。
  • 読みやすく短い。 一般読者向けに書かれ、代数も数理モデルも使わず、数回に分けて読み通せる。strategy+business 誌の「Best Business Books 2011」で戦略部門の選書となった。
  • 分析的な枠組みを補う。 てこ、近い目標、鎖状のシステムについての章は、実行と調整を語るための語彙を与える。これは業界分析の枠組みが手薄にしがちな話題である。

短所

  • 失敗の診断には強いが、プロセスには弱い。 ケロッグは、本書は良い戦略を経営陣がどう協力して作るかを示すよりも、弱い戦略を暴くことに力を注いでいるため、「悪い戦略、良い戦略」という題のほうがふさわしかったかもしれないと述べている。
  • 単一の課題を前提とする枠組み。 核は中心的な課題について一つの診断を求める。ケロッグは、その診断が誤っていれば上に築いたものすべてが崩れること、そして目前の課題と長期的な課題の釣り合いをとるのがこの枠組みでは難しいことを指摘している。
  • 教科書ではない。 演習問題も章末のまとめもなく、業界分析、ポートフォリオ戦略、競争の経済学といった道具の体系的な解説もない。事例の多くは2011年以前のものである。

コースにおける位置づけ

本書は戦略コースの最初の一冊にふさわしい。学生が分析の道具に出会う前に、戦略とは何かを説明してくれるからである。同じ段階で最もよい組み合わせとなるのは、ジョアン・マグレッタの Understanding Michael Porter で、ポーターの五つの力、競争優位、価値連鎖を平易な言葉で簡潔に解説した手引きである。二冊を合わせて読めば、ルメルトは戦略の論理(診断、方針、行動)を、マグレッタは診断にしばしば必要となる業界とポジションの経済分析を補ってくれる。

この二冊の後には、ポーター自身の Competitive Strategy が業界分析と競合分析の原典となる。ウィッティントン、ジョンソンらの Exploring Strategy は、戦略的ポジション、戦略的選択、実行される戦略という構成をとるケース付きの本格的な戦略経営の教科書である。ロバート・グラントの Contemporary Strategy Analysis とベサンコらの Economics of Strategy は、経済学、資源ベース論、ゲーム理論の上に戦略を築いており、分析的な深さを求める学生に向く。ルメルトの優位、設計、変化の力についての章は、それらの本が形式化するテーマへの非形式的な予習として読める。

本書の使い方

予備知識は必要ない。1年生、他分野から戦略の科目を一つだけ履修する学生、ケース分析の準備をする人に向いている。

  • 中核: 序章と第1部。第3章と第5章はじっくり読むべきである。第5章の核は、コースの残りに持ち込む価値が最も高い考え方である。
  • 選択: 第2部はどの順番で読んでもよい。第6–8章(てこ、近い目標、鎖状のシステム)は実行の問題に最も役立ち、第12章と第13章はコース後半の教科書で扱われる優位と業界変化の経済学的な説明と最もよくつながる。第15章は、要素が一つの企業の中でどう組み合わさるかを示す。
  • 任意: 第3部は内省的な内容なので後回しにしてもよいが、第17章には自分の判断を検証するための実践的な助言がある。

本書と並行して行うと有益な作業として、公表されている企業戦略や大学の戦略計画を一つ取り上げて悪い戦略の四つの特徴に照らして点検すること、それを一段落の診断、基本方針、三つから五つの一貫した行動からなる核として書き直すこと、そしてコースの教科書のケースについて近い目標と最も弱い環を特定することが挙げられる。本書は診断そのもののための分析道具を提供しないので、こうした作業にはマグレッタやポーターによる業界分析を組み合わせるとよい。