01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Elahi, B. (2022). Safety Risk Management for Medical Devices (2nd ed.). Academic Press (Elsevier).
章の要約
第2版は41の番号付きの章と4つの付録から成る。出版社は、ISO 14971:2019に適合する医療機器の安全リスクマネジメントの方法論を教える本であり、メドテック分野で求められる安全リスクアセスメントの実践に専念していると述べている。この版では、ISO 14971:2019とISO/TR 24971、リスクマネジメントの歴史、医療機器の寿命、リスクマネジメントのレビュー、製造および製造後の活動、市販後のリスクマネジメントが加わった。以下では、章を機能ごとにまとめる。
第1–4章:Introduction(序論)、What Is A Medical Device?(医療機器とは何か)、Why Do Risk-Management?(なぜリスクマネジメントを行うのか)、The Basics(基礎)
冒頭の章は背景を述べる。リスクマネジメントの歴史、医療機器の定義、リスクマネジメントを行う法規制上・事業上・道徳倫理上の理由である。第4章はリスクマネジメントの用語(合理的に予見可能な誤使用を含む)、ハザード理論、システムとシステムの種類を示す。
第5–8章:Understanding Risk(リスクを理解する)、Risk Management Standards(リスクマネジメント規格)、Requirements of the Risk Management Process(リスクマネジメントプロセスの要求事項)、Quality Management System(品質マネジメントシステム)
第5章はリスクの定義、リスクの種類、リスクの要因、リスクの知覚、リスクの計算を扱う。第6〜8章は、この主題を規格の文脈に位置づける。ISO 14971の由来、整合規格、リスクマネジメントプロセス、品質マネジメントシステムである。
第9–11章:Usability Engineering and Risk Analysis(ユーザビリティエンジニアリングとリスク分析)、Biocompatibility and Risk Management(生体適合性とリスクマネジメント)、Influence of Security on Safety(セキュリティが安全に及ぼす影響)
リスクマネジメントと交わる3つの主題。ユーザビリティの章は、主要用語、ユーザーと機器の相互作用モデル、使用エラー、環境要因、ユーザビリティリスクを制御する設計手段、タスク分析を扱う。
第12–13章:The BXM Method(BXM法)、Risk Management Process(リスクマネジメントプロセス)
第12章はBXM法(システムの分解、統合、定量的なリスク推定)を示す。第13章はプロセスそのものを示す。マネジメントの責任、リスクマネジメントファイルと計画、ハザードの特定、臨床ハザードリストと危害評価リストである。
第14章:Risk Analysis Techniques(リスク分析手法)
節の数では最も長い章。故障の木解析、マインドマップ分析、予備的ハザード解析、そして故障モード影響解析(FMEA)を詳しく扱う。進行の仕方、階層的多段階FMEA、故障の理論、基本ルール、致命度のランク付け、利点と弱点、責任の所在である。続いて設計FMEA、プロセスFMEA、使用/誤使用FMEA、Pダイアグラム、FTAとFMEAの比較を扱う。
第15–16章:Software Risk Management(ソフトウェアのリスクマネジメント)、Integration of Risk Analysis(リスク分析の統合)
第15章はソフトウェアを扱う。ソフトウェアの種類、ソフトウェアリスク分析とSFMEA、安全クラス分類、リスクコントロール、レガシーソフトウェア、出自不明のソフトウェア、保守、信頼性と安全の違い、安全が重要なソフトウェア開発のヒントである。第16章は、多段階FMEAとサプライヤーからの入力にわたってリスク分析を統合する。
第17–21章:Risk Estimation(リスク推定)、Risk Controls(リスクコントロール)、Verification of Risk Controls(リスクコントロールの検証)、On Testing(試験について)、Risk Evaluation(リスク評価)
中核となる分析の流れ。推定は定性的、半定量的、定量的のいずれかで、残留リスクや推定できないリスクにも触れる。リスクコントロールには、単一故障安全設計、リスクコントロール手段の分析、安全に関する情報が含まれる。検証は実施の検証と有効性の検証を扱い、試験の章はリスクに基づくサンプルサイズと計数値・計量値試験を扱う。評価では、それぞれの推定方法のもとでリスク受容基準を適用する。
第22–24章:Risk Assessment and Control Table (RACT)(リスクアセスメント・コントロール表)、Benefit-Risk Analysis(ベネフィット・リスク分析)、Risk Management Review(リスクマネジメントレビュー)
RACTのワークフロー、ベネフィット・リスク分析(臨床試験におけるものを含む)、そして市販前のプロセスを締めくくるリスクマネジメントレビュー。
第25–28章:Production and Post-Production Activities(製造および製造後の活動)、Traceability(トレーサビリティ)、Lifetime of a Medical Device(医療機器の寿命)、Safety versus Reliability(安全と信頼性)
第25章は市販後のリスクマネジメントの規制上の根拠と要素を扱う。監視、市販後臨床フォローアップ、苦情処理、PSUR、PMSR、MIR、MDRなどの報告である。第26〜28章は、トレーサビリティ、機器の寿命、安全と信頼性の関係を扱う。
第29–37章:特別な場合、規格、プロセス
システム・オブ・システムズ、臨床試験、レガシー機器、複合機器のリスクマネジメント(第29–32章)、基本安全と基本性能(第33章)、ISO 14971とIEC 60601-1、ISO 10993-1、IEC 62366、ISO 14155との関係(第34章)、プロセスの指標(第35章)、製品開発プロセス(第36章)、サプライヤー(第37章)。
第38–41章:Axioms(公理)、Special Topics(特別なトピック)、Critical Thinking and Risk Management(批判的思考とリスクマネジメント)、Advice and Wisdom(助言と知恵)
最後の章は、方法から一歩引く。公理、特別なトピック(難問、カサンドラ、個人の責任、安全文化の醸成、未来の予測)、批判的思考、助言である。
付録A–D
用語集。DFMEA、SFMEA、PFMEA、UMFMEA、RACTのテンプレート。製品記述と要求事項、アーキテクチャ、リスクマネジメント計画、ハザードリスト、予備的ハザード解析、DFMEA、PFMEA、UMFMEA、RACT、リスクマネジメント報告書までを備えた事例機器Vivio。そして有用な参考文献。
主要概念
第1–13章:基礎とプロセス
- ハザード、危害、リスク:第4章と第5章の用語とハザード理論。
- ISO 14971のリスクマネジメントプロセス:第7章の要求事項と、第13章の計画、ファイル、ハザードの特定。
- BXM法:本書がリスクを分解し推定するために用いる方法。
第14–24章:分析、コントロール、評価
- FMEAと故障の木解析:第14章の主要なリスク分析手法。
- リスクコントロールとその検証:リスクをどう下げ、下がったことをどう示すか。
- RACTとベネフィット・リスク分析:残留リスクの要約と判断。
第25–41章:ライフサイクルと文脈
- 市販後のリスクマネジメント:出荷後の監視と報告。
- 他の規格との相互作用:IEC 60601-1、ISO 10993-1、IEC 62366、ISO 14155。
- 安全文化:特別なトピックの一つ。
批判的分析
長所
- 規格を軸にした構成。 出版社はISO 14971:2019とISO/TR 24971への適合を強調しており、各章は、ハザードの特定からコントロール、評価、市販後の活動へと、規格のプロセスに沿っている。
- 実用的な道具と事例。 付録にFMEAの各種類とRACTのテンプレートがあり、事例機器Vivioがリスクマネジメント計画をリスクマネジメント報告書まで通して示す。
- 分野をまたぐ広がり。 ユーザビリティ、生体適合性、セキュリティ、ソフトウェア、サプライヤーの章は、リスクマネジメントが工学の各専門にまたがることを示している。
- 著者の実務経験。 Elahiはメドトロニックのテクニカルフェローで、ISO 14971への貢献者であり、アイントホーフェン工科大学、ドレクセル大学、デルフト工科大学で講義している。
短所
- 刊行時点の規格に依存。 本書はISO 14971:2019に基づき2021年11月に刊行されたため、その後の規格や規制の改訂は別途確認が必要。
- 業界志向。 出版社は主にメドテック分野の専門家を読者とし、大学院生を副次的な読者としているため、設計の最初のコースというより、実務の参考書に近い。
- 章の数が多い。 41章あり、長い節の一覧を持つ章もあるため、以下に示すような読み進め方の道筋が必要になる。
コースにおける位置づけ
このコースの書目の中で、本書は安全リスクの専門書である。Biodesign の教科書は、医療技術を発明し患者に届けるまでのプロセス中心の手引きであり、Tranquillo、Goldberg、Allen の Biomedical Engineering Design は、学生チームによる機器設計を順に案内する。Ogrodnik の Medical Device Design はニーズから市場投入までの実践的な入門、King、Fries、Johnson の Design of Biomedical Devices and Systems は機器開発の総合的な手引き、Teixeira の Design Controls for the Medical Device Industry はFDAの品質システム規則とISO 13485:2016に基づく設計管理の要求事項の参考書である。
設計の教科書を読んだ後、機器が安全であることをどう示すかが問いになったときにElahiを読み、リスクマネジメントが設計管理に直結するため、Teixeiraとあわせて使うとよい。
本書の使い方
本書は、メドテック分野の設計、製品、ソフトウェア、品質、薬事の技術者と、医療機器に関心のある大学院レベルの学生に向く。機器設計または工学設計の履修と、確率と信頼性の基礎が適切な準備となる。
実践的な計画:
- 中核: 背景として第1〜8章、続いてハザードの特定から評価までのプロセスとして第13章、第17〜22章、第24章。
- 手法: FTA、FMEA、PHAのどれを選ぶかを決めるときは第14章、ソフトウェア製品には第15章。
- 事例を追う: 各章とあわせて付録C(Vivio)を読み、自分の機器について付録Bのテンプレートを埋める。
- その後: 第25〜28章(市販後の活動)、第29〜41章は必要に応じて。
