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生体材料科学:医学材料入門 cover

生体医工学

生体医工学

生体材料科学:医学材料入門

William R. Wagner (editor); Shelly E. Sakiyama-Elbert (editor); Guigen Zhang (editor); Michael J. Yaszemski (editor)

英語原題: Biomaterials Science: An Introduction to Materials in Medicine

材料特性、生体適合性、医療機器・組織工学における応用を網羅する生体材料科学の包括的取り扱い。

難易度レベル
上級
学術レベル
学部
生体材料生体適合性医療インプラント組織工学材料特性表面科学生体高分子医療機器

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Wagner, W. R., Sakiyama-Elbert, S. E., Zhang, G., & Yaszemski, M. J. (Eds.). (2020). Biomaterials Science: An Introduction to Materials in Medicine (4th ed.). Elsevier.

章の要約

本書は印刷版で約1,600ページに及ぶ大型の編集型参考書で、3つの部と複数の付録からなる。出版社の目次は少数の長い章ではなく、100近い短い番号付きの単元の連なりであり(たとえばヒドロゲルを扱う1.3.2Eや補体系を扱う2.2.4)、各単元は専門家が執筆している。

第I部:材料科学と工学

第1.1節「生体材料の概観」は「生体材料科学:進化する学際的な営み」と「生体材料の歴史」で始まる。第1.2節「材料の性質」は、物質と材料の本質、バルクの性質、表面の性質と表面キャラクタリゼーション、そして生体材料における水の役割を扱う。

第1.3節「医療に用いられる材料の種類」は、この部で最も長い節である。基本原理を述べたうえで、ポリマー(ポリウレタン、シリコーン、フッ素系材料、修復用コンポジットと接着剤、ヒドロゲル、分解性ポリマー、「スマートポリマー」)、金属(ニチノールを含むチタン合金、ステンレス鋼、CoCr合金、生分解性金属)、セラミックス・ガラス・結晶化ガラス(ヒドロキシアパタイト、構造用酸化物セラミックス)、炭素系生体材料、天然材料(加工組織、細胞外マトリックスタンパク質)、複合材料、そして微粒子とナノ粒子といった個別の材料群を紹介する。

第1.4節「材料の加工」は、材料がどのように器具や表面になるかを扱う。物理化学的な表面改質、ノンファウリング表面と抗血栓性表面、表面に固定された生体分子、表面パターニング、医療用繊維とバイオテキスタイル、凹凸のある多孔質材料、そして積層造形である。

第II部:生物学と医学

第2.1節「背景となるいくつかの概念」は、材料を専門とする読者に必要な生物学を紹介する。吸着タンパク質、in vitroでの細胞と表面、組織の構造と損傷への応答、細胞外マトリックスと細胞-生体材料相互作用、そして力学的な力が細胞や組織に及ぼす影響である。

第2.2節「生体材料に対する宿主の反応とその評価」は、炎症、創傷治癒、異物反応、自然免疫と獲得免疫、補体系、全身毒性と免疫毒性、血液凝固と血液-材料相互作用、腫瘍形成、そしてバイオフィルムとデバイス関連感染を扱う。

第2.3節「生体材料のキャラクタリゼーション」は試験に移る。生体適合性の概念と評価、組織適合性のin vitroおよびin vivo試験、血液-材料相互作用の評価、動物手術と動物の管理である。第2.4節「生体環境における材料の劣化」は、ポリマーの化学的・生化学的分解、金属の腐食、セラミックスの劣化、病的石灰化を扱う。

第2.5節「生体材料の応用」は臨床分野を順にたどる。心血管デバイス(心臓弁、ペースメーカー、循環補助、ステントとグラフト)、体外式人工臓器、整形外科・歯科・眼科への応用、生体電子工学的な神経インプラント、熱傷被覆材と皮膚代替物、接着剤、免疫工学、腫瘍微小環境のモデル系、薬物送達システム、酵素ベースのバイオセンサーである。第2.6節「機能的組織工学における生体材料の応用」は、組織工学の概念、足場とその微視的な力学設計基準、そして腱・骨・心血管・軟組織の工学を扱う。

第III部:医療製品のライフサイクル

最後の部は、生体材料を用いたデバイスを構想から臨床、さらにその後までたどる。製品の総合的なライフサイクル、安全性とリスク、滅菌と消毒、検証とバリデーション、商業的な考慮事項、規制上の制約、標準の役割、インプラントの回収と故障解析、法的概念、道徳的・倫理的問題である。付録には、生体液と軟質材料の性質、インプラント用金属とセラミックスの化学組成、生体材料の文献がまとめられている。組織中の細胞とマトリックス成分の評価に関する付録はオンライン版のみである。

主要概念

第I部:材料科学と工学

  • 生体材料の種類:ポリマー、金属、セラミックスとガラス、炭素、天然材料、複合材料。それぞれ基本原理を述べてから具体的な材料に進む。
  • 表面の性質と表面改質:体が最初に出会うのは材料のバルクではなく表面であるため、本書はキャラクタリゼーション、パターニング、固定化生体分子、ノンファウリングコーティングを詳しく扱う。
  • 分解性・生分解性材料:長持ちさせるのではなく、吸収されるように設計されたポリマーと金属。

第II部:生物学と医学

  • タンパク質の吸着:材料は接触してすぐにタンパク質で覆われ、それが細胞のその後の挙動を左右する。
  • 異物反応と免疫:インプラントが引き起こす炎症、創傷治癒、免疫活性化の経過。
  • 生体適合性の評価:概念そのものと、それを判断するためのin vitroおよびin vivo試験。
  • 体内での劣化:腐食、加水分解、石灰化が、インプラントの機能する期間を制限する。
  • 組織工学の足場:新しい組織が形成される間、細胞を支える多孔質材料。

第III部:医療製品のライフサイクル

  • 総合的な製品ライフサイクル:設計から検証、規制、回収まで、デバイスを計画すること。
  • 滅菌・リスク・規制:材料が市販のデバイスになるまでに通る、安全性、標準、法律上の段階。

批判的分析

長所

  • 1冊での幅広さ。 目次は原子レベルの性質と主要な材料群から出発し、免疫学や血液との相互作用を経て、具体的な臨床デバイスと規制のライフサイクルまで続く。1冊の中で、材料の化学から、故障後に回収されたインプラントの解析までを追うことができる。
  • 生物学も材料と並べて扱う。 第II部は、吸着タンパク質、細胞、組織構造、力学的な力についての背景の節から始まり、そのあとで宿主反応と試験に進む。そのため、材料を専門とする読者が生物学を自分で補う必要は少ない。
  • 製品開発の部がある。 出版社は、医療機器開発、トランスレーションにおける国際的な課題、品質保証、償還に関する新しい内容を強調しており、実験室の材料が規制を受ける製品になる過程まで扱っている。
  • 第4版の新しさ。 出版社は、ナノテクノロジー、積層造形、再生工学、個別化医療、オルガンオンチップの追加を挙げ、重複する内容を統合したと述べている。また、本書は Society for Biomaterials の支持を受けているとされ、ほとんどの章にオンライン演習が用意されている。

短所

  • 規模と構成。 約1,600ページで、寄稿による短い単元が多く、コース教科書というより参考書である。範囲や深さは執筆者ごとに異なり、1つのコースで順に通読することはできない。
  • 対象レベル。 出版社は読者として、学部生・大学院生、ポストドク研究者、実務家を挙げている。材料科学や生物学の予備知識がない学生には、より平易な入門書なしでは個々の単元が難しいかもしれない。
  • 演習はオンライン。 出版社の説明にはほとんどの章にオンライン演習があるとあるため、問題演習は印刷された本体には含まれない。

コースにおける位置づけ

このコースの図書リストでは、本書は最初の1冊ではなく総合的な参考書にあたる。Chen と Thouas の Biomaterials: A Basic Introduction は、材料科学にも生物学にも十分な素養のない学生を対象としており、Temenoff と Mikos の Biomaterials: The Intersection of Biology and Materials Science は、両方の側面を並行して組み立てる学部向けの教科書である。どちらもより自然な出発点となる。Agrawal らの Introduction to Biomaterials は、1つの学期で通読できるよう、単独の語り口で書かれた短めのコース教科書である。

Black の Biological Performance of Materials は生体適合性に焦点を当てた単著の専門書で、生体適合性が主な関心事であればより絞り込まれた選択肢となる。本書は、分野全体にわたって調べ物をするときや、第III部のデバイス開発の内容を読むときに適している。なお本サイトには、同名書の旧版(2004年、Ratner、Hoffman、Schoen、Lemons編)も掲載されている。

本書の使い方

コースの伴走用の資料として使うのがよく、最初から最後まで読む教科書としては向かない。入門的なコースをすでに修了した読者は、第1.1〜1.3節(材料の種類)、第2.1・2.2節(体がどう反応するか)、第2.3節(生体適合性試験)、第2.4節(劣化)をたどる核となる道筋を作れる。表面改質や加工は第1.4節で調べるとよく、第2.5節か第2.6節は、コースやプロジェクトが重視する応用に合わせて選べる。

コースやプロジェクトがデバイスの市販化に関わる場合は、第III部を読むとよい。ライフサイクル、滅菌、検証とバリデーション、規制、標準、故障解析が扱われている。生体液や軟質材料の性質に関する付録は、データを引くのに便利である。予備知識が十分でない読者は、まず短めの入門書から始め、特定の話題を深めたいときに本書に戻るのがよい。章末演習については、出版社のオンライン資料を確認すること。