01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Agrawal, C. M., Ong, J. L., Appleford, M. R., & Mani, G. (2025). Introduction to Biomaterials: Basic Theory with Engineering Applications (2nd ed.). Cambridge University Press.
章の要約
第2版は17章、約500ページで、巻末に索引が付く。最初の8章は材料とその作り方・測り方、続く5章はタンパク質・細胞・宿主反応の生物学、最後の4章は両者をつなぐ応用と工程を扱う。
第1–2章:序論/材料の基本的性質
第1章は生体材料の簡潔な歴史と、インプラントを想定した期間にわたって機能させることが長年重視されてきたことを述べる。化学結合の種類(イオン結合、金属結合、共有結合)と、それが金属、ポリマー、セラミックス、複合材料の性質にどうつながるかを説明し、生体材料の影響と将来で締めくくる。第2章は、目次上、力学的性質、電気化学的性質、表面の性質が主題として挙げられている。
第3章:金属:構造と性質
医療機器に用いられる金属を扱う。工業用純チタン、チタン合金、ステンレス鋼、コバルトクロム合金、マグネシウム合金、ニチノール、タンタルである。相図が載せられており、温度が相と構造をどのように決めるかを学生が理解できるようになっている。
第4章:ポリマー
ポリマー化学(付加重合と縮合重合、分子量の各種平均、直鎖・分岐・架橋構造、非晶質と結晶質の状態)から始め、医療で使われるポリマーを概観する。ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン、ヒドロゲル、ポリウレタン、ナノポリマーなどがあり、分解性のものも非分解性のものも含まれる。
第5–6章:セラミックス/天然生体材料
第5章はセラミックスの定義と分類を示し、アルミナ、ケイ酸塩ガラスと生体活性ガラス、ジルコニア、リン酸カルシウム、炭素、ナノサイズのセラミックスを扱う。生分解性や表面反応性のものも含まれる。第6章は天然ポリマーを扱い、タンパク質系(コラーゲン、エラスチン、絹)と多糖系(キトサン、セルロース、アルギン酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸)に分け、さらにサンゴも取り上げる。
第7–8章:表面改質/生体材料のキャラクタリゼーション
第7章はデバイス表面を改質する技術(ブラスト処理、プラズマグロー放電処理、溶射、物理・化学蒸着、グラフト、自己組織化単分子膜、層状自己組織化)を紹介し、それぞれの原理、利点、限界を示す。第8章は表面とバルクの性質を調べる手法として、接触角、赤外分光、XPS、オージェ電子分光、SIMS、プロフィロメトリー、原子間力顕微鏡、走査型・透過型電子顕微鏡、X線回折、クロマトグラフィーを、それぞれの原理と限界とともに説明する。
第9–11章:生物学的システム/タンパク質の化学と相互作用/細胞-生体材料相互作用
第9章は細胞の環境を紹介する。形質膜、細胞骨格、細胞間結合、シグナル伝達経路に加え、よく使われる生物学的試験法を扱う。第10章は出版社が新章として挙げているものの1つで、タンパク質の構造と性質、タンパク質の単分子層、タンパク質間相互作用に関わる力、生体材料表面への吸着、吸着タンパク質の解析方法を扱う。第11章は細胞外空間、細胞が非細胞性の基質と相互作用するために用いるタンパク質と経路、接着の機構、材料環境の役割へと進む。
第12–13章:生体材料に対する宿主の反応/生体適合性試験
第12章は、材料表面での血栓形成(血小板、接触活性化、凝固経路)、補体系とその活性化経路、急性・慢性炎症、異物反応、線維性被包を扱う。第13章は生体適合性試験を列挙する。細胞毒性、感作性、刺激性、急性から慢性までの全身毒性、発熱性物質、遺伝毒性、埋植、血液適合性、発がん性、生殖・発生毒性である。
第14–15章:組織工学/薬物送達システム
第14章は組織工学の基礎と関連する細胞の種類、足場の性質、ポリマー、天然ポリマー、セラミックスの足場の作製、そして足場の構造、細胞、新生組織を評価する方法を扱う。第15章は、拡散制御型、水の浸透制御型、化学制御型、応答型、粒子型の薬物送達システムを扱う。
第16–17章:生体医療用インプラントの滅菌/臨床応用
第16章は滅菌がなぜ重要かを説明し、蒸気、エチレンオキシド、ガンマ線、乾熱から、紫外線、電子線、ガスプラズマ、二酸化塩素までの方法と、その中から選ぶための原則を概観する。第17章は、心血管補助デバイスとステント、歯科修復物とインプラント、子宮内避妊具、神経補綴、眼科、整形外科用インプラント、腎透析膜、皮膚製品、声帯注入における生体材料を示し、市販製品の例と各材料を選ぶ根拠を挙げる。
主要概念
第1–8章:材料とその調製
- 結合と材料の種類:イオン結合、金属結合、共有結合が、金属、ポリマー、セラミックス、複合材料の性質の基礎となる。
- 医療用金属の相図:温度を相と構造に結びつけるために用いられる。
- 天然ポリマーと合成ポリマー:タンパク質系と多糖系の材料が、合成ポリマーと並べて扱われる。
- 表面改質とキャラクタリゼーション:表面を変える方法と、表面を測る機器。
第9–13章:生物学と宿主反応
- タンパク質の吸着:タンパク質が材料表面にどのように結合し、どのように解析されるか。
- 細胞接着:細胞外環境と、細胞が材料に付着する機構。
- 凝固・補体・炎症:埋植後に起こる宿主反応。
- 生体適合性試験:第13章に挙げられた試験の種類。
第14–17章:応用と工程
- 組織工学の足場:作製方法と評価。
- 薬物放出の機構:拡散制御、水の浸透制御、化学制御のシステム、および応答型・粒子型システム。
- 滅菌方法:インプラントに適した方法の選択。
批判的分析
長所
- コンパクトな設計。 17章、約500ページで、この分野の大型の多数著者による参考書よりもはるかに短い。出版社は「簡潔な」教科書と呼んでおり、各章は数十人の寄稿者ではなく、4人の著者チームによって書かれている。
- 材料から生物学、実践への明確な道筋。 章の順序は、結合と材料の種類から始まり、表面とキャラクタリゼーション、タンパク質・細胞・宿主反応を経て、組織工学、薬物送達、滅菌、臨床デバイスへと進む。
- 第2版で加わった生物学の章。 出版社は、タンパク質の化学と相互作用、免疫学と組織反応、生体適合性に関する新章を強調している。多くの生体材料の講義が手薄になりがちな境界領域を補うものである。
- 学習の補助。 出版社は、学習目標、章末のまとめ、実例、参考文献、演習問題に加え、コラム形式の歴史的な余談を挙げており、無料の資料と教員限定のオンライン資料もあるとしている。
短所
- 応用部分は圧縮されている。 すべての臨床応用が第17章を共有しており、挙げられた11の分野に約25ページしかないため、各デバイスの扱いは短い。
- 規制やデバイス設計の章がない。 目次には、規制当局の承認、品質システム、デバイスの設計プロセスを扱う章がない。巻末に近い部分の工程の章は滅菌だけである。
- 非常に新しい版。 2025年末の刊行であり、実績がほとんどなく、本書についての独立した書評も見つからなかった。初版は2013年に出ている。
コースにおける位置づけ
生体材料の図書リストの中で、本書は簡潔でコースの形に近い教科書である。Wagner らの Biomaterials Science は約1,600ページの多数著者による参考書で、より多くのデバイスと話題、そして規制のライフサイクルまで扱い、調べ物や大学院レベルの深い学習に向いている。Chen と Thouas の Biomaterials: A Basic Introduction は、材料科学にも生物学にも十分な素養のない学生向けであり、Temenoff と Mikos の Biomaterials: The Intersection of Biology and Materials Science は、材料と生物学を並行して組み立てる学部向けの教科書である。
Agrawal らの本はその中間に位置する。やさしい入門書よりも工学寄りだが、大型の参考書よりはずっと短い。Black の Biological Performance of Materials は主題を絞った専門書で、生体適合性と宿主反応が主な関心事であるとき、本書のあとに読むのに適している。
本書の使い方
入門的な化学・生物学・材料科学を修了した学生、または基本的な材料の性質を扱う最初の工学の授業を受けた学生に、最も適している。1学期のコースでは、第1〜8章が材料の背景を与え、順に読める。第9〜13章は生物学の核で、後の章が前の章の上に築かれているため、順番に読むのがよい。第14〜17章は、コースの重点に応じて選べる。
生物学の背景をもつ学生は、第1章の結合に関する議論と金属・セラミックスの章を軽く読み、第7・8章と第12〜17章に集中してよい。工学の背景をもつ学生は、第9〜13章により時間をかけるべきである。各章冒頭の学習目標、末尾のまとめ、演習問題で理解を確かめ、追加の資料は出版社のリソースページで探すとよい。
