01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Waugh, A., & Grant, A. (2022). Ross & Wilson Anatomy and Physiology in Health and Illness (14th ed.). Elsevier.
章の要約
第14版は約600ページで、4つのセクションに分かれた18章と、自己評価問題とケーススタディ問題の解答、用語集、正常値の表、よく使われる接頭辞・接尾辞・語根の一覧、参考文献、索引からなる。序文は各器官系の章に一定の型を定めている。まず健康な身体の解剖と生理、次によく見られる加齢による変化、最後にいくつかの重要な疾患の病理と病態生理である。主な節はすべて学習目標で始まり、短い「スポットチェック」問題で終わる。各章の末尾には「復習と見直し(review and revise)」の問題がある。出版社によれば、この版で新たに加わったのは体表解剖学の入門、病態生理と診断に関する図の追加、そして新型コロナウイルスを含む内容の更新である。
セクション1:身体とその構成要素(第1~3章)
第1章:身体の解剖と構成。 身体がどのように構成され、生きるために何を必要とするかを概観する。解剖学用語、身体の目印を示す新しい体表解剖学のページ、加齢についての短い導入、そして疾病研究への導入(病因と病態発生)を含む。
第2章:生理化学とその過程。 本書の残りの部分で必要となる化学を扱う。炭水化物、タンパク質、脂質などの重要な生体分子、酵素、体液と体液区画、そして内部環境である。ホメオスタシスは、センサー、制御中枢、効果器からなる制御系として説明され、ホメオスタシスの破綻も取り上げられる。
第3章:細胞と組織。 細胞とその小器官の構造、細胞膜を通る物質輸送、有糸分裂、主な組織の種類、上皮膜と漿膜、そして腫瘍とその広がり、その影響への導入を扱う。
セクション2:情報伝達(第4~9章)
約200ページにわたる最も長いセクションである。第4章:血液は血球と止血を扱い、続いて血液の疾患を述べる。第5章:心臓血管系は約60ページで最も長い章であり、心臓、血管、血圧の調節(圧受容器反射を含む)、加齢の影響、そしてアテローム、血栓症、動脈瘤、狭心症などの疾患を扱う。第6章:リンパ系はリンパ管、リンパ節、脾臓、胸腺を述べたうえで、リンパ管の閉塞、リンパ節炎、リンパ腫を取り上げる。第7章:神経系はニューロン、中枢神経系と末梢神経系、脳神経、自律神経系、加齢の影響、そして頭蓋内出血を含む疾患を扱う。第8章:特殊感覚は聴覚、平衡感覚、視覚、嗅覚、味覚を、加齢による変化や眼の疾患とともに扱う。第9章:内分泌系は下垂体、甲状腺、副腎などの腺、局所ホルモン、ストレスに対する内分泌反応、そして糖尿病などの疾患を述べる。
セクション3:原料の取り込みと老廃物の排出(第10~13章)
第10章:呼吸器系は気道、肺、胸膜、ガス交換と呼吸器疾患を扱い、COVID-19についての新しい記述を含む。第11章:栄養学入門はバランスのとれた食事(Eatwell Guideを用いる)、栄養素の分類、加齢と栄養、栄養の障害を説明する。第12章:消化器系は最も長い章の1つで、口から大腸までの消化管と付属器官、消化と吸収をたどり、そのうえで口腔、食道、胃、腸、肝臓の疾患を扱う。第13章:泌尿器系は腎臓、尿管、膀胱、尿道、加齢の影響、泌尿器の疾患を扱う。
セクション4:身体の防御と種の存続(第14~18章)
第14章:皮膚は表皮と真皮、体温調節、加齢、皮膚の感染症と炎症性疾患を扱う。第15章:防御と免疫は、上皮のバリア、食細胞、炎症などの非特異的(自然)防御と、能動・受動の獲得免疫を区別し、最後に加齢と、過敏症や AIDS を含む免疫不全などの免疫の障害を扱う。第16章:筋骨格系は50ページを超え、骨、骨格、関節、骨格筋を扱ったうえで、関節リウマチなど骨・関節・筋の疾患を述べる。第17章:遺伝学と遺伝は DNA、染色体、遺伝子、突然変異、タンパク質合成、有糸分裂と減数分裂による細胞分裂、常染色体遺伝と伴性遺伝、加齢と遺伝、そして染色体異常を含む疾患の遺伝的基盤を導入する。第18章:生殖器系は女性と男性の生殖器系、思春期、性周期、乳房、加齢、両方の系の疾患を扱う。
主要概念
セクション1:基礎
- 構成の階層:化学物質と細胞から組織、器官、器官系へと身体を記述する。
- ホメオスタシス:内部環境の変化を感知して修正する制御系と、それが対応しきれなくなったときに起こること。
- 病因と病態発生:疾患の原因とその進行の仕方で、各章の疾患の節すべての枠組みとなる。
セクション2:情報伝達
- 止血:出血を止める過程で、血栓症や出血性疾患を理解する基礎となる。
- 神経性と内分泌性の制御:2つの情報伝達系を、神経系、感覚、内分泌系の各章を通じて対比する。
- 血圧の調節:圧受容器と自律神経系を介した反射による制御。
セクション3:取り込みと排出
- バランスのとれた食事と栄養素:食品群と、栄養素の各分類の役割。
- 消化と吸収:消化酵素の作用部位と、栄養素が吸収される場所。
- 腎機能:腎臓が尿をつくり、体液の調節を助けるしくみ。
セクション4:防御と存続
- 自然免疫と獲得免疫:一般的なバリアや食細胞と、特異的な免疫応答との対比。
- 遺伝の様式:形質と疾患の常染色体性および伴性の伝わり方。
- 加齢の影響:各器官系について記述される、機能の正常な低下。
批判的分析
長所
- 健康と疾患を並べて扱う。 各器官系の章は、正常な構造と機能から加齢による変化へ、さらに疾患へと進む。看護や医療系の学生は、正常な生理がなぜ重要かをすぐに理解でき、本書は解剖生理学だけでなく病態生理学への最初の入門としても役立つ。
- 読みやすさを意識した設計。 出版社は、本書がこの分野に初めて触れる学生や英語を母語としない読者にもわかりやすく書かれていると述べ、用語集、接頭辞・接尾辞・語根の一覧、正常値の表、約520点のカラー図版でそれを支えている。
- 組み込まれた自己テスト。 学習目標、各節のあとのスポットチェック問題、章末の復習問題とケーススタディがあり、解答が巻末に載っているため、独習に向いている。Evolve のウェブサイトはアニメーション、音声付き用語集、塗り絵と自己テストのソフトウェア、そしてこの版で新しく加わったナレーション付きの3D動画を提供する。
- 長い実績と最新の更新。 序文によれば、本書は刊行60年目を迎えようとしている。この版では体表解剖学と COVID-19 が加えられた。
短所
- 入門レベルの深さ。 本書は看護と医療専門職の学生のために書かれている。メカニズムは分析されるより記述されるにとどまり、細胞・分子生理学、定量的な扱い、実験的根拠は、理系専攻や医学生向けの生理学教科書に比べて限られている。
- 器官系ごとの分割。 序文自身が、生理学は統合された学問であると読者に注意を促す一方、本書は器官系ごとに説明する。学生は相互参照を使って、章どうしのつながりを自分でつける必要がある。
- 病理は選択的。 疾患の節は、よく見られる重要な病態の概要を扱う。病理学や薬理学の教科書の代わりにはならず、治療は中心的な話題ではない。
- イギリス英語の用法。 綴りと用語はイギリス式(haemostasis、oesophagus)で、栄養の章はイギリスの Eatwell Guide を用いる。他の地域の学生は、自国の指針に合わせて読み替える必要があるかもしれない。
コースにおける位置づけ
このコースの人体解剖生理学の本の中で、Ross & Wilson はコンパクトで臨床的な枠組みを持つ最初の一冊である。OpenStax の Anatomy and Physiology 2e は2学期制の授業向けに同じ器官系をより詳しく扱い、無料で利用できる。特定の器官系をもっと深く学びたい学生は、対応する OpenStax の章を並行して読むとよい。Silverthorn の Human Physiology: An Integrated Approach は、繰り返し現れるテーマと章を通じて追う問題を軸に構成された生理学の教科書で、最初の授業から本格的な生理学へ進む学生にとって自然な次の一歩である。
Boron と Boulpaep の Medical Physiology は、各器官系を分子・細胞レベルのメカニズムから定量的に詳しく扱う医学部レベルの本であり、後の段階で学ぶためのものである。Hill、Cavanaugh、Anderson の Animal Physiology と、Taiz らの Plant Physiology and Development は他の生物を扱っており、比較生理学や植物の授業を取る学生にのみ関係する。
本書の使い方
本書は、看護、助産、救急救命、医療専門職の学生、そして基礎的な病理を含む人体解剖生理学の最初の授業を必要とするすべての人に向いている。第2章が化学を、第3章が細胞生物学を補うため、学校で学ぶ理科以上の予備知識は必要ない。
実践的な進め方:
- セクション1から始める。 第1~3章は、以後のすべての章が前提とする用語、ホメオスタシスの考え方、細胞と組織の生物学を提供する。第1章の解剖学用語は早めに覚えること。
- 器官系は授業の順序に合わせる。 各章は独立して読める。どの章でも、まず健康な状態の解剖と生理を読み、スポットチェックに答え、そのあとで加齢と疾患の節を読む。
- 章どうしを結びつける。 第4~6章(血液、心臓血管系、リンパ系)はまとめて、第7~9章(神経系、感覚、内分泌系)は制御系として、第11~12章(栄養と消化)も一緒に読むとよい。本文中の相互参照を活用すること。
- 疾患の節を橋渡しとして扱う。 看護学生にとっては病態生理学への導入となり、理系の学生はより選択的に読んでよい。
各章末の復習問題とケーススタディに取り組み、巻末の解答で確認すること。心臓や関節など図から思い描きにくい話題には Evolve のアニメーションと3D動画を、用語の発音には音声付き用語集を使うとよい。
