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Foundations of Neuroscience(神経科学の基礎) cover

生物学

生物学

Foundations of Neuroscience(神経科学の基礎)

Casey Henley

英語原題: Foundations of Neuroscience

この分野に初めて触れる学部生のために書かれた、無料でオープンライセンスの神経科学入門教科書。ニューロンの構造と電気的性質からシナプス伝達、神経系の構成、感覚系と運動系、行動へと積み上げていき、わかりやすい図、短い節、多くの章末に置かれた確認問題を用いる。

前提知識: 入門生物学。膜電位の理解には基礎的な化学と物理の知識が役立つ。

難易度レベル
初級
学術レベル
学部
neuroscienceneurophysiologysensory systemsmotor systemsopen textbook

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Henley, C. (2021). Foundations of Neuroscience. Michigan State University Libraries. Free official edition: https://openbooks.lib.msu.edu/neuroscience/

章の要約

本書は、それぞれ1つの概念に焦点を当てた40の短い章からなり、7つの部に分かれている。ここでは密接に関連する章を部ごとにまとめ、本書の章題(訳)をそのまま示す。

第1部 ニューロンの構造と機能:ニューロン/イオンの移動/膜電位/静止状態の膜/シナプス後電位/活動電位/電位固定法

最初の部は、電気的なニューロンを一歩ずつ組み立てる。ニューロンの各部(樹状突起、細胞体、軸索小丘、髄鞘化した軸索、シナプス前終末)と、構造が機能に応じてどう変わるかから始め、イオンがチャネルなしには脂質二重層を通れない理由と、濃度勾配と電気的勾配が合わさって電気化学的駆動力になる仕組みを説明する。ネルンストの式はナトリウムの平衡電位(約+60 mV)の計算例とともに導入され、ゴールドマンの式は、静止電位がカリウムの平衡電位に近い約−65 mVになる理由を説明し、ナトリウム・カリウムポンプが勾配を維持することを示す。後の章では、興奮性・抑制性シナプス後電位とその時間的・空間的加重、電位依存性ナトリウムチャネルとカリウムチャネルによる活動電位の各相、伝導速度、不応期と発火頻度による符号化を扱い、最後にこれらの電流を明らかにした電位固定実験を取り上げる。

第2部 ニューロン間の情報伝達:シナプスの構造/神経伝達物質の合成と貯蔵/神経伝達物質の放出/神経伝達物質の作用:イオンチャネル型受容体/神経伝達物質の作用:Gタンパク質共役型受容体/神経伝達物質の除去/薬物と毒素の作用/エピジェネティクス

この部は、化学的な信号がシナプスを渡っていく過程をたどる。電気シナプス(ギャップ結合)と化学シナプスを対比し、ある分子を神経伝達物質と呼ぶための基準を示し、アセチルコリン、グルタミン酸、GABA、グリシン、モノアミン類、神経ペプチドの合成と貯蔵を追う。放出はカルシウムの流入、アクティブゾーン、SNAREタンパク質、シナプトタグミンによって説明される。2つの受容体の章は、速いイオンチャネル型受容体(AMPA、NMDA、ニコチン性、GABA・グリシン受容体と、逆転電位の概念)と、cAMPやホスホリパーゼCのカスケード、信号増幅を伴う遅いGタンパク質共役型受容体を対比する。この部は、伝達物質の作用がどう終わるか(再取り込み、グリアによる取り込み、酵素分解)、薬物や毒素が各段階にどう作用するか、そして遺伝子転写とDNAメチル化やヒストンのアセチル化といったエピジェネティックな変化への短い導入で締めくくられる。

第3部 神経系の構成:解剖学用語/脳の外部解剖/脳の内部解剖/脳幹と脊髄

解剖の部は、後で使う用語を準備する。方向を表す用語と断面、中枢神経系と末梢神経系の区分、求心性と遠心性の信号である。続いて大脳皮質の各葉とその主な機能、脳回と脳溝、小脳と脳幹、矢状断と冠状断で見える内部構造(視床と視床下部、脳梁、扁桃体、海馬、大脳基底核、脳室)を概観する。最後の章は中脳、橋、延髄、脳神経、脊髄の灰白質と白質の構成を説明する。

第4部 感覚系:感覚系の一般原理/視覚:網膜/視覚:中枢での処理/体性感覚系/触覚:皮膚/触覚:中枢での処理/痛覚・温度覚・かゆみ/味覚

共通の原理(変換、受容器電位、受容野、側抑制、標識線符号化と集団符号化、中継点としての視床)に関する短い章の後、序論が述べるとおり、この部は3つの感覚を詳しく扱う。視覚は、網膜の解剖と光変換から、ONとOFFの双極細胞、中心・周辺型の受容野を経て、視交叉、外側膝状体、一次視覚野、背側(「どこ」)経路と腹側(「何」)経路へと進む。体性感覚の章は、後根神経節のニューロン、求心性線維の種類と皮膚分節、機械受容器と受容野の大きさ・順応、後索・内側毛帯路と三叉神経路、体部位局在地図と皮質の可塑性、そして侵害受容、一次痛と二次痛、感作、痛みの調節、温度覚とかゆみを扱う。味覚では5つの基本味、その変換機構、符号化、中枢経路が扱われる。

第5部 運動系:運動の脊髄制御/運動の計画/大脳基底核/運動の実行

運動の部は下から上へと進む。α運動ニューロンと神経筋接合部、伸張反射・屈曲(逃避)反射・交叉性伸展反射、歩行の中枢パターン発生器から始まり、後頭頂皮質・前頭前皮質・運動前野での計画、大脳基底核の直接路と間接路、脱抑制の考え方(パーキンソン病やハンチントン病との関連を含む)、そして集団符号化を用いる一次運動野による実行と、外側および腹内側の下行路へと進む。

第6部 神経内分泌系:HPA軸/ストレスの神経制御/HPG軸/性分化/エストロゲンの雄性化作用/社会的絆

これらの短い章は、視床下部がホルモン放出をどう制御するかを説明する。HPA軸の章は、CRH、ACTH、コルチゾールを負のフィードバックや慢性ストレスとともにたどり、関連する章では扁桃体、海馬、前頭前皮質がストレス反応をどう調節するかを示す。HPG軸、染色体の性と性腺の性、ホルモンの形成作用と活性化作用、アロマターゼによるテストステロンからエストラジオールへの変換、そしてつがいの絆や親子の絆における下垂体後葉ホルモンの役割で、この部は完結する。性分化の章は、教育のために男女の二分法を用いるが、性とジェンダーは連続体として存在することを認めると述べている。

第7部 行動神経科学:動機づけと報酬/恐怖の研究/心的外傷後ストレス障害

最後の部は短い。腹側被蓋野から側坐核と前頭前皮質に至るドーパミンの報酬回路、自己刺激実験、報酬予測と乱用薬物、学習された恐怖の実験モデル(恐怖条件づけと条件性敗北)、そして心的外傷後ストレス障害の原因、症状、神経系の機能障害を説明する。

主要概念

第1部 ニューロンの構造と機能

  • 電気化学的勾配:濃度勾配と電気的勾配を合わせた駆動力で、開いたチャネルを通ってイオンがどちらへ流れるかを決める。
  • 平衡電位とネルンストの式:あるイオンの2つの勾配がつり合う膜電位で、細胞内外の濃度から計算される。
  • 静止膜電位:約−65 mVで、主にカリウムの透過性によって決まり、ゴールドマンの式で記述される。
  • 活動電位:電位依存性ナトリウムチャネルとカリウムチャネルによって生じる膜電位の短い逆転で、髄鞘と太い軸索径によって速く伝わる。

第2部 ニューロン間の情報伝達

  • 化学シナプスと電気シナプス:間隙に放出された神経伝達物質による伝達と、ギャップ結合を通る直接のイオンの流れ。
  • イオンチャネル型受容体:速いシナプス後電位を生じるリガンド依存性チャネルで、逆転電位によって特徴づけられる。
  • Gタンパク質共役型受容体:セカンドメッセンジャーのカスケードを起動し、より遅く、増幅され、長く続く効果をもたらす代謝型受容体。
  • エピジェネティックな修飾:メチル化やアセチル化など、DNAやヒストンに対する化学的変化で、遺伝子の転写されやすさを変える。

第3部 神経系の構成

  • 方向用語と断面:脳の構造の位置を示すのに使われる背側/腹側、吻側/尾側と、矢状面・冠状面・水平面。
  • 中枢神経系と末梢神経系:脳と脊髄、それに対する脳神経と脊髄神経。
  • 脳神経:脳に出入りする神経で、その多くは脳幹を通る。

第4部 感覚系

  • 感覚変換:物理的・化学的刺激を、特殊化した受容器が電気信号に変換すること。
  • 受容野と側抑制:刺激がニューロンに影響を及ぼす領域と、境界やコントラストを際立たせる隣接ニューロン間の抑制。
  • 背側・腹側の視覚経路:空間的位置と対象の同定を担う並列の皮質経路。
  • 体部位局在地図:一次体性感覚野における体表面の秩序立った表現。

第5部 運動系

  • 脊髄反射と中枢パターン発生器:脳からの入力なしに脊髄内で制御される運動。
  • 直接路と間接路:視床の脱抑制を通じて運動を促進または抑制する大脳基底核の回路。
  • 集団符号化:多数の運動野ニューロンの活動の組み合わせによって運動の方向が符号化されること。

第6部 神経内分泌系

  • HPA軸:負のフィードバックを伴う視床下部・下垂体・副腎のホルモンカスケード(CRH、ACTH、コルチゾール)。
  • 形成作用と活性化作用:発達の臨界期における長期的なホルモン作用と、成体における短期的な作用。
  • 芳香化:テストステロンからエストラジオールへの変換で、一部の種では脳を雄性化する。

第7部 行動神経科学

  • 報酬回路:腹側被蓋野から側坐核と前頭前皮質へのドーパミン放出。
  • 恐怖条件づけ:中性刺激を嫌悪刺激と対にして、学習された恐怖を研究する方法。

批判的分析

長所

  • 1章に1つの概念。 序論は、学びのユニバーサルデザインの原則に従い、それぞれ1つの考えに焦点を当てた短い章にすると約束している。大半の章はおよそ1,000〜3,000語で、同じ構成をとる。短い概観、本文、結論、要点(Key Takeaways)、ポップアップの定義付きの重要用語、「Test Yourself!」の対話型クイズ、動画講義である。
  • 視覚資料とマルチメディアの充実。 オリジナルの図やアニメーション(ナトリウム勾配や活動電位の伝播など)が本文に添えられ、画像とアニメーションには詳しい代替テキストが用意されており、アクセシビリティが際立って高い。
  • 膜生理学の定量的な扱いが丁寧。 ネルンストの式とゴールドマンの式は具体的なイオン濃度を使って計算され、後の章でも同じ値が再利用される(逆転電位や電位固定法など)ため、学生は暗記ではなく予測を練習できる。クイズでは仮想の「Thinking Cell」について平衡電位を計算させる。
  • 明快な順序。 各部は前の部の上に積み上がる。膜生理学がシナプス伝達の準備となり、受容体のシグナル伝達が薬物の作用とエピジェネティクスの準備に、解剖が感覚・運動経路の準備になる。

短所

  • 意図的に限定された範囲。 序論は、初版がミシガン州立大学の神経生物学の授業に沿っており、感覚系は3つしか扱わないと述べている。聴覚、平衡覚、嗅覚、さらに学習と記憶、睡眠、言語、発達は独立した主題として扱われていない。
  • 後半の深さのむら。 神経内分泌と行動の部ははるかに短く(1,000語未満の章がいくつもある)、「社会的絆」や「心的外傷後ストレス障害」のように、他の章にある要点やクイズを欠く章もある。
  • 研究方法や臨床の詳細は少ない。 電位固定法を除けば、実験技法(イメージング、電気生理学的記録法、損傷法や遺伝学的手法)や神経疾患は簡単に触れられるだけである。
  • 更新され続けるウェブテキスト。 サイトは随時更新されるため、章番号や内容が他の読者や引用が参照しているものと異なることがある。クイズやアニメーションが機能するオンラインで使うのが最もよい。

コースにおける位置づけ

神経科学のコースにおいて、本書は入門向けのテキストである。ベア、コナーズ、パラディーソの『Neuroscience: Exploring the Brain』は、より幅広い系を扱う包括的な入門教科書とされる。パーヴスらの『Neuroscience』とリーチュン・ルオの『Principles of Neurobiology』(ともにより本格的な学部向け教科書)はメカニズムと実験的証拠にさらに踏み込み、ニコルズらの『From Neuron to Brain』(大学院向け)は細胞神経生理学を詳しく扱い、ダヤンとアボットの『Theoretical Neuroscience』は数理モデリングの教科書である。

ヘンリーの本は、最初に読む本として、あるいは大部の教科書の無料の副読本として適している。ネルンストとゴールドマンの計算例を含む膜電位と活動電位の第1部は、パーヴスやニコルズらの定量的な細胞レベルの章への準備となり、短い感覚・運動の章は、ベアらやパーヴスのより詳しい扱いの前に読める。ダヤンとアボットに進む学生には、本書が与えるよりはるかに多くの数学が必要になる。

本書の使い方

本書は神経科学を初めて学ぶ学部生を対象としている。大部分は入門生物学の知識で足り、第1部には少しの化学(イオン、濃度、ネルンストの式のための対数)があると役立つ。

他のすべてがこれに依存するので、第1部と第2部は順に読み、ネルンストとゴールドマンの例は手で計算してみるとよい。第4部と第5部を読む間は、第3部を解剖用語の参照先として使う。第6部と第7部は短いので、神経内分泌学と行動神経科学への導入として読み、より詳しい教科書で補うとよい。各章では、動画講義を見るか本文を読み、「Test Yourself!」のクイズを複数回解き(毎回異なる問題が出る)、重要用語のポップアップを確認し、要点で復習する。活動電位の伝播、伝達物質の放出、セカンドメッセンジャーのカスケードといった動的な話題では、アニメーションを繰り返し見る価値がある。

版と出典

本ガイドは、ミシガン州立大学図書館が https://openbooks.lib.msu.edu/neuroscience/ で公開しているケイシー・ヘンリー著『Foundations of Neuroscience』(2021年、CC BY-NC-SA 4.0)の無料の公式オンライン版に基づいており、2026年10月時点のPressbooksサイトの内容を読んだ。序論と本書の紹介文、目次全体、全40章(すべての節見出し、各章冒頭の概観、すべての要点)を参照し、「膜電位」の章はネルンストの式の計算例、重要用語、クイズ項目を含めて全文を読んだ。