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From Neuron to Brain(ニューロンから脳へ) cover

生物学

生物学

From Neuron to Brain(ニューロンから脳へ)

A. Robert Martin; Peter Brown; Mark Diamond; Antonino Cattaneo; Francisco De-Miguel

英語原題: From Neuron to Brain

神経細胞がどのように信号を伝え、その信号がどのように知覚や行動へと組織されるかを説明する、細胞・システム神経科学の定評ある教科書。鍵となる実験や記録から説明を組み立てる点に特色があり、読者はニューロン、シナプス、回路についての現在の考え方に至った推論の筋道をたどることができる。

前提知識: 入門的な神経科学または生理学の講義と、基礎的な細胞生物学・化学・物理学。

難易度レベル
上級
学術レベル
大学院
cellular neuroscienceneurophysiologysynaptic transmissionsensory systemsneural development教科書

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Martin, A. R., Brown, D. A., Diamond, M. E., Cattaneo, A., & De-Miguel, F. F. (2021). From Neuron to Brain (6th ed.). Oxford University Press.

章の要約

本書は全30章を7部に分け、4つの付録を添えています。出版社は、実験(電気記録、分子・細胞生物学的手法、行動研究)に重点を置き、最初の着想から今日の研究室や臨床での成果まで研究の流れをたどる点を説明しています。

第I部(第1〜3章):シグナル伝達と組織化の原理/視覚系におけるシグナル伝達/視覚野の機能的構造

冒頭では、神経系がどのようにシグナルを伝え、どのように組織されているかを、視覚系を通して紹介します。初期視覚経路でのシグナル伝達から視覚野の構造までを扱います。

第II部(第4〜10章):イオンチャネルとシグナル伝達/イオンチャネルの構造/静止電位のイオン的基礎/活動電位のイオン的基礎/ニューロンにおける電気的シグナル伝達/細胞膜を介したイオン輸送/グリア細胞の性質と機能

生物物理学の中核です。チャネル、静止電位と活動電位のイオン的由来、ニューロン内の電気的シグナル伝達、膜輸送、グリア細胞の性質をこの順に扱います。

第III部(第11〜18章):直接的シナプス伝達の機構/間接的シナプス伝達の機構/シナプスにおける伝達物質の放出/中枢神経系の伝達物質/伝達物質の合成・貯蔵・輸送・不活性化/シナプス可塑性/シナプス可塑性の分子・細胞生物学/シナプス外伝達の機構

細胞間の情報伝達です。まず直接的(チャネル介在)伝達と間接的(二次メッセンジャー)伝達、次に伝達物質の放出、中枢神経系の伝達物質とその代謝、最後にシナプス可塑性(第16章、その分子・細胞生物学は第17章)と、シナプスを越えて働く伝達(第18章)を扱います。

第IV部(第19〜20章):自律神経系/歩行・飛行・遊泳:無脊椎動物における感覚運動行動の細胞機構

統合的な仕組みとして、自律神経系と、無脊椎動物のリズミカルな行動および感覚運動行動の細胞的基盤を扱います。

第V部(第21〜26章):感覚変換/網膜における変換と伝達/触覚・痛覚・質感/聴覚と前庭感覚/知覚の構築/協調的な筋運動の開始と制御

感覚と運動です。受容器が刺激をどう変換するか、網膜・体性感覚系・聴覚系と前庭系がそれをどう処理するか、知覚がどう構築されるか、協調運動がどう開始され制御されるかを扱います。

第VI部(第27〜29章):神経系の発生/感覚系の臨界期/損傷後のシナプス結合の再生と修復

発生、経験が感覚系を形づくる臨界期、そして損傷後の再生を扱います。

第VII部(第30章)と付録:未解決の問い

最終章は未解決の問いを扱います。付録は、電気回路における電流、低分子伝達物質の代謝経路、脳の構造と経路、神経生物学の分子ツールです。

主要概念

第1〜10章:シグナル伝達と電気的性質

  • イオンチャネル:第4〜5章は、チャネルを電気信号を生み出す分子として、機能と構造の両面から扱います。
  • 静止電位と活動電位:第6〜7章がそれぞれのイオン的基礎に充てられています。
  • グリア:第10章は、グリア細胞の性質と機能をニューロンと並べて扱います。

第11〜18章:シナプス

  • 直接的・間接的シナプス伝達:第11章と第12章で扱われる2つの異なる機構です。
  • シナプス可塑性:シナプスでの変化。第16章で扱い、第17章でその分子・細胞生物学として再び取り上げます。
  • シナプス外伝達:シナプス間隙にとどまらない情報伝達(第18章)。

第19〜30章:システムと発生

  • 感覚変換:刺激を神経信号に変換すること(第21章)。
  • 知覚の構築:感覚信号がどのように知覚にまとめられるか(第25章)。
  • 臨界期:感覚系の正常な発達が経験に依存する時期(第28章)。

批判的分析

長所

  • 実験を重視した構成。 出版社は電気記録、分子・細胞生物学的手法、行動研究を強調しています。チャネルの構造とイオン機構、可塑性とその分子生物学を対にした目次は、この狙いと整合します。
  • 細胞からシステムまでを一冊で。 チャネルと電位からシナプス、感覚、運動、発生、再生へと進み、細胞神経科学とシステム神経科学が一つの流れでつながります。
  • 意図された単一の語り口。 序文を書き現在の著者陣を選んだジョン・ニコルズ(John Nicholls)は、SISSAの記事の中で、本書は常に読みやすさを目指し、一人の著者が書いたように読めるよう、全著者があらゆる章に関わってきたと述べています。
  • 役に立つ付録。 付録A(電気回路の電流)と付録D(分子ツール)は、生物物理や実験手法に初めて触れる読者を助けます。

短所

  • 網羅性を目指していない。 ニコルズは、本書は「必要なことをすべて載せた」教科書を意図したものではないと述べています。取捨選択があるため、臨床や認知の話題を幅広く扱う課程では別の本が必要です。
  • 細胞レベルに比重。 30章のうち第II部の7章と第III部の8章が膜とシナプスを扱います。視覚系などのシステムの話題は第I部と第V部に現れますが、目次には言語や情動を題とする章はありません。
  • 書誌情報の不一致。 小売や目録によって本版のページ数の記載が異なるため、章の案内を使う際は手元の刷を確認してください。

コースにおける位置づけ

本サイトの神経科学の書目の中で、本書は細胞を出発点とし実験を軸にした教科書です。『Foundations of Neuroscience』(無料の入門書)と『Neuroscience: Exploring the Brain』(行動を軸にし臨床例を交えた入門書)は最初の一冊に向いています。Purvesの『Neuroscience』は、単一ニューロンから感覚・運動系を経て認知へ進む総合的な教科書です。『Principles of Neurobiology』も各原理の背後にある実験をたどり、さらに発生・回路・疾患・進化を加えているため、方針の点で最も近い代替です。DayanとAbbottの『Theoretical Neuroscience』は数理モデルを扱う大学院向けの本で、性格が異なります。

入門書を先に読み、本書で生物物理とシナプス生理を深く学び、より広いシステムや認知の内容はPurvesまたは『Principles of Neurobiology』で補う、という道筋が妥当です。

本書の使い方

神経科学または生理学の入門と、基礎的な細胞生物学・化学・物理を学んだうえで、主要な発見がどのように確立されたかを知りたい学生に向いています。出版社は学部、大学院、医学部の課程を対象として挙げています。

  • 中核: 第II部とIII部(第4〜18章)が本書の中心です。後のシナプスの章はチャネルと電位に依存するため、まず第4〜8章を読みます。電気回路に不慣れなら付録Aを使います。
  • システム部分の選択: 第V部から課程で扱う感覚(第21〜25章)を選び、運動は第26章を読みます。第I部は視覚系を通した早期の見取り図として、第II部の後に戻って読むこともできます。
  • 選択または後回し: 無脊椎動物の行動の章(第20章)、自律神経系(第19章)、発生と再生を扱う第VI部、未解決の問いを扱う最終章。
  • 進め方: 実験を述べる箇所では、解釈を読む前に記録や操作の方法と結果を自分で図に描いてみます。本書はそのように読まれることを想定して作られています。