01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Bergstrom, C. T., & Dugatkin, L. A. (2023). Evolution (3rd ed.). W. W. Norton & Company.
章の要約
本書は4部20章、約780ページからなる。出版社は第3版を、データ・リテラシー、現代の研究、人間活動が進化に及ぼす影響を重視する最新の入門書と説明し、とくに系統学と集団遺伝学に重点を置くとしている。以下の部と章の題名は出版社のものである。
第I部:進化生物学の基礎(第1〜5章)
冒頭の各章は、進化生物学の概観、初期の進化思想とダーウィンの洞察、自然選択、系統と進化史、系統の推定である。全体の概観と進化思想の歴史から、中心的な機構である自然選択へ進み、続く2章で進化の系統樹(系統が何を記録し、どう推定されるか)を扱う。
第II部:進化遺伝学(第6〜10章)
この部は本書の遺伝学の中核で、5章からなる。伝達遺伝学と遺伝的変異の源、集団の遺伝学、有限集団における進化、複数の遺伝子座での進化、ゲノム進化である。個体内の遺伝と変異から、集団における対立遺伝子頻度の変化と集団サイズの役割、複数遺伝子の同時作用、そしてゲノム全体へと進む。
第III部:生命の歴史(第11〜15章)
各章は、初期生命の起源と進化、大きな移行、進化と発生、種と種分化、絶滅と進化的傾向である。機構からパターンへと視点が移り、初期生命、生物の組織化における大きな移行、発生と進化の関係、種の形成、絶滅が扱われる。
第IV部:進化的相互作用(第16〜20章)
最後の部は、性と性選択、社会性の進化、共進化、ヒトの進化、進化と医学を扱う。前半の3章は個体間・種間の相互作用に関わり、後半の2章は前の内容をヒトと健康に応用する。
主要概念
第I部:第1〜5章
- 自然選択:第3章の主題で、後の各部が依拠する機構。
- 系統:系統群の進化史。第4・5章の主題。
- 系統の推定:データから系統樹を再構築する方法。第5章の主題。
第II部:第6〜10章
- 遺伝的変異の源:第6章で伝達遺伝学とともに出発点となる。
- 集団遺伝学:第7章の集団の遺伝学。
- 有限集団:集団サイズが進化的変化に影響する理由(第8章)。
- 複数の遺伝子座とゲノム進化:第9・10章。
第III・IV部:第11〜20章
- 大きな移行:生命の組織化の大きな変化。第12章の主題。
- 種分化:種の形成(第14章)。
- 性選択と共進化:第16・18章。
- 進化と医学:第20章に置かれた締めくくりの応用。
批判的分析
長所
- データ・リテラシーを本文に組み込んでいる。 出版社によれば、第3版は各章に「実験とデータ」の問いを加え、生物学者が用いた解決法を本文で説明し、さらにデータの解釈や実験計画に関する章末問題も備える。証拠から推論する練習を必要とする読者に役立つ。
- 教育のために設計された図。 著者は一つ一つの図の明快さを検討したと述べており、図版には系統樹、研究論文風のデータグラフ、実験計画の図が含まれる。
- 構成上の役割分担が明確。 4つの部が基礎、遺伝学、歴史、相互作用に分かれているため、集団遺伝学(第6〜10章)と系統学(第4〜5章)を、それぞれ一か所でまとめて探せる。
- 著者の研究分野が内容と関連している。 Bergstromは新興感染症の流行を含む生物的・社会的過程を数理モデルで研究し、Dugatkinは社会行動と協力の進化を研究している。これは第II部と第IV部の内容に対応する。
短所
- 分量。 20章・約780ページは1コースでは扱いきれず、多くの読者は部分的に選ぶことになる。
- 遺伝学が歴史より先に来る。 集団遺伝学の章(第II部)が生命の歴史(第III部)より前にあるため、種分化・絶滅・ヒトの進化に主な関心がある読者も、第II部にどれだけ時間をかけるかを先に決める必要がある。
- デジタル機能は本の外にある。 適応型のInQuizitiveの演習と9本のアニメーションはNortonのデジタル製品であり、印刷版の本文には含まれない。
コースにおける位置づけ
BergstromとDugatkinの本書は本格的な学部向け教科書であり、生物学入門の後に履修する最初または2番目の進化学コースの主教材に適する。ZimmerのThe Tangled Bankは、進化に初めて触れる読者向けの図版豊富な入門書で、簡単なグラフ以上の数学を必要としないと説明されており、より穏やかな出発点としても、同じ主題の併読書としても使える。CharlesworthらのEvolution: A Very Short Introductionは、共通祖先の証拠と変化の過程を簡潔にまとめており、手早い全体把握に向く。
FutuymaとKirkpatrickのEvolutionは、入門コースを深めるための主題中心の叙述で、ゲノムから生態群集までのパターンを扱うと説明されており、主教材として最も近い代替であり、本書と並べて参照できる。CharlesworthらのElements of Evolutionary Geneticsは、突然変異・選択・浮動・組換えの理論を大学院レベルで展開しており、第II部の次に進む自然な一冊である。ダーウィンのOn the Origin of Speciesは、第2章の背後にある一次資料である。
本書の使い方
本書は、基本的なメンデル遺伝学を含む生物学入門を修了した学部生を対象とする。実践的な進め方は次のとおり。
- 中核: 第1・3章(概観と自然選択)、第4・5章(系統)、第6〜8章(遺伝学と集団)。これらの章が、残りの部分で使われる語彙を与える。
- その次: より充実したコースなら、第9・10章(複数の遺伝子座とゲノム)と第14章(種と種分化)を加える。
- 関心に応じて選ぶ: 生命の歴史は第11〜13章と第15章、性・社会性・共進化は第16〜18章、ヒトの進化と医学は第19〜20章。進化思想の歴史を別の場で学んでいれば、第2章は速読でよい。
「実験とデータ」の問いは、復習のために取っておかず、各章を読み進める中で解く。本文に出てくる系統樹は、記憶を頼りに描き直してみる。第6〜8章では、対立遺伝子頻度の変化を小さな数値例で練習するとよい。
