01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Rattansi, A. (2020). Racism: A Very Short Introduction (2nd ed.). Oxford University Press.
章の要約
この「Very Short Introductions」の第2版は、約180ページに7つの章と、参考文献、推薦文献一覧が続く。出版社によれば、本書は「権力+偏見=人種主義」のような短い定義に抗し、人種主義を複雑で多次元的な現象として扱う。人種観念の歴史と、生物学的・文化的・カラーブラインド(色盲的)・構造的な人種主義を探り、イスラモフォビアは人種主義の一形態か、新しい反ユダヤ主義はあるのか、なぜ白人性が重要な論点になったのか、交差性や無意識・暗黙のバイアスとは何か、といった最近の論争にも取り組む。
第1章:Some conundrums(いくつかの難問)
「some conundrums」で終わる題名を持つ最初の章は、人種主義をめぐる難問を提示する。出版社が短い定義の限界を強調していることから、人種主義を定義することの難しさが提起される章だと考えられる。
第2章:Imperialism, genocide, and the science of race(帝国主義、ジェノサイド、人種の科学)
出版社が本書で探ると述べる人種観念の歴史を扱う章で、人種という観念の登場を帝国主義やジェノサイド、そして人種の科学という主張と結びつける。
第3章:The demise of scientific racism(科学的人種主義の終焉)
第3章は科学的人種主義の衰退をたどる。出版社が検討する人種主義の一つとして生物学的人種主義を挙げていることから、その崩壊の議論はここに置かれる。
第4章:Racialization, cultural racism, and religion(人種化、文化的人種主義、宗教)
生物学から文化と宗教へ移る章である。文化的人種主義と人種化の過程を扱い、題名は、出版社が挙げるイスラモフォビアや反ユダヤ主義についての問いの背後にある種類の人種主義を示している。40ページを超え、目次の中で最も長い章である。
第5章:Structural racism and colourblind whiteness(構造的人種主義とカラーブラインドな白人性)
ここで本書は、出版社が挙げる構造的人種主義とカラーブラインドな人種主義を、白人性をめぐる論争とあわせて取り上げる。個人の偏見ではなく、人種化された不平等を長期にわたって固定化する仕組みに重点が置かれる。
第6章:Intersectionality and implicit or unconscious bias(交差性と暗黙の・無意識のバイアス)
この章は、出版社が最近の論争の主題として挙げる二つの考え、交差性と暗黙の・無意識のバイアスを紹介し、後者が人種主義の理解にとってどんな意味を持つかを問う。
第7章:The rise of rightwing national populism and the future of racism(右派ナショナル・ポピュリズムの台頭と人種主義の未来)
最終章は、人種主義を現代の右派ナショナル・ポピュリズムと関連づけ、今後を展望する。
主要概念
第1〜3章:定義と歴史
- 人種主義は複数である:出版社は、単一の現象ではなく、今日の世界にさまざまな人種主義があることを強調している。
- 個人の偏見と体系的な人種主義:個人的な態度と、人種化された不平等を長期にわたって固定化する構造との区別。
- 科学的人種主義:人種の科学という主張と、その終焉。
第4〜5章:文化、宗教、構造
- 人種化と文化的人種主義:集団が人種として扱われるようになる過程と、文化や宗教が生物学の代わりを務めうること。
- 構造的人種主義:制度や仕組みに組み込まれた人種主義。
- カラーブラインド人種主義と白人性:人種に明示的に言及せずに働く人種主義と、白人性をめぐる論争。
第6〜7章:バイアスと政治
- 交差性:人種が階級やジェンダーなど他の軸とどう組み合わさるか。
- 暗黙の・無意識のバイアス:意識の水準より下で働く態度と、その重要性。
- ナショナル・ポピュリズム:人種主義の未来が考えられる現代の政治的文脈。
批判的分析
長所
- 定義についての明確な立場。 出版社は、本書を人種主義の一行定義に反対し、個人の偏見と体系的な人種主義を区別する議論として示している。これが短い本に背骨を与える。
- 短い中での広い射程。 7章で、帝国主義と人種の科学から、カラーブラインドな人種主義、交差性、ポピュリズムまで進み、多くの短い入門書より長い時間軸を扱う。
- 現在の論争への対応。 第2版は出版社が挙げる問い、すなわちイスラモフォビア、反ユダヤ主義、白人性、交差性、暗黙のバイアスを取り上げている。
- 社会学者の視点。 Rattansi はケンブリッジ、レスター、オープン・ユニバーシティ、ロンドン市立大学で教え、Racism, Modernity and Identity と、同じシリーズの Multiculturalism を著している。
短所
- 非常に簡潔。 7章で本文約160ページなので、主題は概観されるのであって深く研究されるのではなく、詳細に至る道は参考文献と推薦文献である。
- 論争的な主題。 イスラモフォビアが人種主義の一形態かといった問いは、出版社が最近の論争の主題として示している。確定した答えではなく論証を期待し、ほかの見解も参照すべきである。
コースにおける位置づけ
Rattansi は、人種とエスニシティのコースにおける、議論主導の短い入門書である。Kivisto と Croll の Race and Ethnicity: The Basics も短い入門で、偏見、不平等、紛争、包摂を含む人種的・民族的関係についてより広い社会学的概観を与える。両者を併読すれば、民族関係の社会学と人種主義そのものへの焦点の両方が得られる。
Garner の Racisms: An Introduction は、人種主義を複数で歴史的に変化するものとして扱い、多くの国の事例を載せる学部向け教科書で、自然なより長い次の一冊である。Omi と Winant の Racial Formation in the United States は、人種を社会的・政治的構築として捉える理論的な説明であり、Elliott-Cooper の Black Resistance to British Policing と Bhattacharyya らの Empire's Endgame の二つの英国研究は、批判的視点を英国に適用している。
本書の使い方
社会学の予備知識は不要。1年生、一般読者、コースの長い本や理論的な本を読む準備をしている人に向く。
実践的な進め方は次のとおり。
- 順に読む。 章は人種観念の歴史から現代の政治へ進み、人種主義は複数だという議論が最初から積み上がる。
- 中核: 歴史的背景と人種主義の主な形態を示す第2〜5章。
- 現在の論争のために: 交差性、暗黙のバイアス、ナショナル・ポピュリズムを扱う第6〜7章。
- その後: 推薦文献に従うか、次に教科書がほしいか理論がほしいかに応じて Garner か Omi と Winant に進む。
