01 / 読書ガイド
読書ガイド
引用
Liddle, A. (2015). An Introduction to Modern Cosmology (3rd ed.). Wiley.
章の要約
本書は本文約180ページと短く、その構成は序文に明記されている。15の主要章からなる中心の「骨格(spine)」がそれだけで完結した入門を成し、さらに6つの「発展的話題(Advanced Topic)」の章が、それぞれ前提知識を示したうえで、必要に応じて追加できる。著者は、発展的話題を前提知識が身についた直後に取り上げるよう勧めている。序文は方法上の重要な選択についても説明している。膨張する宇宙の方程式はニュートン重力から得られるので、授業では一般相対性理論をまったく使わずに済ませられる。
第1–2章:宇宙論的観念のごく簡単な歴史/観測の概観
第1章は、私たちの宇宙での位置は決して特別ではないという考え方である宇宙原理から始まり、地球中心の描像が長く続いた歴史と対比する。第2章は、可視光とそれ以外の波長域で見た宇宙、一様性と等方性、膨張、そして熱分布と黒体放射スペクトルを含む宇宙の粒子を概観する。
第3–5章:ニュートン重力/宇宙の幾何学/単純な宇宙論モデル
理論の中核である。第3章はフリードマン方程式、流体方程式、加速方程式をニュートン的に導き、膨張が何を意味するかを論じる。第4章は平坦、球面、双曲の幾何学、無限の宇宙と観測可能な宇宙、曲率パラメータ k の3つの値を述べる。第5章はハッブルの法則、赤方偏移、物質・放射・混合の場合の解、数密度、曲率を含む進化を扱う。
第6–9章:観測パラメータ/宇宙定数/宇宙の年齢/宇宙の密度と暗黒物質
第6章はハッブル定数、密度パラメータ、減速パラメータを導入する。第7章はΛとその流体的な記述、それを含むモデルを扱い、第8章は宇宙の年齢を扱う。第9章はいくつもの方法で宇宙の重さを量り、暗黒物質が何でありうるか、どのように探索されるかを論じる。
第10–12章:宇宙マイクロ波背景放射/初期宇宙/元素合成:軽元素の起源
第10章はマイクロ波背景放射の性質、光子とバリオンの比、その起源を扱い、起源については2つ目の発展的な扱いもある。第11章は初期宇宙についての短い章である。第12章は水素とヘリウム、観測との比較、そして脱結合と元素合成の対比を扱う。
第13–15章:インフレーション宇宙/初期特異点/概観:標準宇宙論モデル
第13章は熱いビッグバンの問題(平坦性、地平線、残存粒子)を述べ、インフレーション膨張とそれがどのように問題を解決するかを説明し、どれだけのインフレーションが必要かを問い、インフレーションと素粒子物理学を結びつける。第14章は初期特異点についての短い議論で、第15章は全体像を標準宇宙論モデルにまとめる。
発展的話題1–6
6つの拡張の章は、一般相対論的宇宙論(時空の計量とアインシュタイン方程式)、古典的宇宙論:距離と光度、ニュートリノ宇宙論、バリオン生成、宇宙の構造、宇宙論モデルの制約(「標準宇宙論モデル:2014年版」を含む)である。参考文献と、問題の数値解答およびヒントで本書は終わる。
主要概念
第1–5章:観測、ニュートン重力、幾何学、単純なモデル
- 宇宙原理:私たちの位置は特別ではなく、宇宙は大きなスケールでどこから見ても同じに見えるという仮定。
- フリードマン方程式:膨張を支配する方程式で、第3章でニュートン重力から得られる。
- 曲率パラメータ k:平坦、球面、双曲の幾何学を区別する量。
- 赤方偏移とハッブルの法則:膨張と、観測される光のずれを結ぶ関係。
第6–9章:パラメータ、Λ、年齢、暗黒物質
- 密度パラメータ:3つの幾何学を分ける臨界値を基準にした密度。
- 宇宙定数:第7章がその流体的記述とモデルへの影響を展開する追加の項。
- 暗黒物質:第9章で複数の証拠、たとえば銀河の回転曲線や銀河団の組成から推定される物質。
第10–15章:マイクロ波背景放射、元素合成、インフレーション
- 宇宙マイクロ波背景放射:宇宙がより高密度で高温だった時代の名残の放射。
- 元素合成:軽元素の生成で、観測される存在比と比較される。
- インフレーション:平坦性、地平線、残存粒子の存在比の問題に答える急速な膨張の時期。
批判的分析
長所
- 前提知識を意図的に軽くしている。 序文は、前提知識がすべて標準的な物理であり、重点は数学的な厳密さではなく物理的な直観に置かれていると述べている。ニュートン重力から出発することで、一般相対性理論の事前の履修が要らなくなる。
- モジュール式の構成。 15章の骨格はそれだけで完結しており、それぞれ前提知識が示された6つの発展的話題によって、授業は望む箇所で深さを加えられる。第10章の中にも「発展的」な節があり、同じパターンが章の内部にも見られる。
- 独習への配慮。 出版社は、ヒントと数値解答つきの学生向け問題が各章に組み込まれていると説明しており、目次にも巻末の数値解答とヒントの節が示されている。著者は正誤表、更新情報、カラー画像を載せたウェブサイトを運営している。
- 短く、定期的に更新される本。 約180ページなので1学期で読める。出版社によれば第3版はプランクミッションの成果を取り入れており、序文も版ごとに新しい発見を取り込んできたと述べている。
短所
- ニュートン的な近道。 序文自身が、この導出を「ちょっとしたごまかし(a subtle bit of cheating)」と呼んでいる。一般相対論が入ってくるのは数ページの発展的話題1だけなので、計量に基づく扱いが必要な読者は他の資料に当たらなければならない。
- 厳密さより直観、摂動の扱いは少ない。 マイクロ波背景放射の異方性と構造の起源の詳しい扱いは発展的話題5に限られ、その分量は十数ページ程度である。構造の成長を扱う授業には、より高度な資料が必要になる。
- 観測値はすぐに古くなる。 発展的話題6は2014年時点の標準モデルを示しており、著者も宇宙論には長年確立された基礎がないと述べている。したがって具体的な数値は最新のデータで更新する必要がある。
コースにおける位置づけ
Liddle の本は、このコースの書目の中で、物理から入るコンパクトな学部向け宇宙論の教科書である。Fraknoi、Morrison、Wolff の Astronomy 2e と Binney の Astrophysics: A Very Short Introduction は、微積分を使わない、あるいは数学を最小限にした概説としてその前に位置し、Maoz の Astrophysics in a Nutshell は宇宙論が最後の話題となる1学期の上級コースである。Carroll と Ostlie の An Introduction to Modern Astrophysics は、はるかに長い本の最後に宇宙論を置く総合的な概説であり、Liddle はこの主題をずっと少ないページで専門的に扱っている。
Dodelson と Schmidt の Modern Cosmology は大学院レベルの次の一歩で、摂動に対するボルツマン方程式とアインシュタイン方程式を導き、マイクロ波背景放射や銀河の集積に用いる。Liddle が発展的話題5で概略を示すにとどめている内容である。
本書の使い方
序文によれば、本書は学士課程の最終学年または修士課程の1年目の学生向けのおよそ20回の講義から生まれたもので、出版社は対象を宇宙論の研究を始める人にまで広げている。初年次の物理と微積分があれば十分で、一般相対性理論は必要ない。
短い授業では、15の主要章を順に読み、第3–5章を技術的な核とする。膨張方程式のニュートン的導出、幾何学、単純なモデルで、以降のすべてがこれを使う。第6–9章はモデルを測定に結びつけ、第10–13章はマイクロ波背景放射、初期宇宙、元素合成、インフレーションを扱う。相対論的な扱いと距離の尺度が必要なら発展的話題1と2を第5章のあとに、構造形成については発展的話題5を第10章のあとに取り上げる。埋め込まれた問題と巻末のヒントを使いながら進め、正誤表と更新された観測結果は著者のウェブサイトで確認するとよい。
