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流体力学の物理的入門 cover

物理学

物理学

流体力学の物理的入門

Alexander J. Smits

英語原題: A Physical Introduction to Fluid Mechanics

数式よりも物理的概念に重きを置いた流体力学の入門書。流体静力学、積分形と微分形の運動方程式、次元解析、粘性流れを扱い、開水路流れ、圧縮性流れ、ターボ機械などの応用にも及ぶ、工学寄りの構成になっている。

前提知識: 力学入門と多変数積分までの微積分。ベクトル解析の基礎があると読みやすい。

難易度レベル
上級
学術レベル
学部
流体力学連続体力学保存則次元解析粘性流れ

01 / 読書ガイド

読書ガイド

引用

Smits, A. J. (2000). A Physical Introduction to Fluid Mechanics. Wiley.

章の要約

本書は約530ページである。目次には、「流体静力学」から「歴史ノート」まで14の項目が並び、そのあとに付録、一部の問題の解答、索引が続く。出版社は本書を、理論と解析を工学の実践から取った具体例に結びつける入門書と説明しており、基本原理を示す単純な例と、工学応用を代表するより複雑な例が用いられている。章の順序は、静止した流体から、運動学と運動の法則を経て、個別の流れの領域と応用へと進む。

流体静力学

目次は静止した流体の扱いから始まる。本書の冒頭には、3ページから始まる「流体の性質(The Nature of Fluids)」という部分もある。

流体運動入門 I/流体運動入門 II

連続する2つの章が流体の運動を導入する。支配方程式は、続く章で書き下される。

積分形の運動方程式/運動の微分方程式

運動方程式は2度展開される。最初は積分形、次に微分方程式としてである。積分形は流体の有限の領域に関係し、微分形は流れのすべての点に関係する。

非圧縮・非回転の流れ

密度が一定で流体が非回転である流れについての章で、運動の微分方程式の直後に置かれている。

次元解析

次元解析に充てられた章である。出版社は、次元的な推論と結果の解釈を、本書の主要な特色の1つとして挙げている。

粘性内部流れ/粘性外部流れ

粘性が重要になる流れを扱う2つの章である。最初にダクトや管の内部の流れ、次に物体のまわりの流れである。

開水路流れ/圧縮性流れ/ターボ機械

応用に向けた3つの章が続く。水路の自由表面流れ、密度変化が重要な流れ、流体にエネルギーを加えたり取り出したりする機械である。

環境流体力学

出版社は、読者の関心を引くために、環境における工学への導入が含まれていると述べている。

歴史ノート

出版社は、歴史的な言及が各章を通じて登場すると述べており、最後の章はこの主題についての歴史ノートをまとめている。

付録と解答

巻末には、付録、一部の問題の解答、索引がある。

主要概念

基本法則

  • 流体静力学:静止した流体における力のつり合い。
  • 保存則の積分形と微分形:同じ物理を書く2つの補完的な方法で、一方は有限の領域、他方は各点についてのもの。

特別な流れの領域

  • 非回転流れ:局所的な回転のない流れで、本書は非圧縮流体の場合を別に扱う。
  • 次元解析と無次元数:レイノルズ数、フルード数、マッハ数は、本文に繰り返し現れる無次元数に含まれる。
  • 粘性内部流れと外部流れ:管やダクトの中の摩擦と、物体にかかる抗力。

応用

  • 開水路流れと圧縮性流れ:自由表面を持つ流れと、密度変化が大きい流れ。
  • ターボ機械:ポンプなど類似の装置。
  • 環境流体力学:自然環境や人工環境の流れへ応用された流体力学。

批判的分析

長所

  • 物理概念が先。 出版社は、数式よりも基礎にある物理的概念が強調されていることを、主要な特色として挙げている。
  • 推論の重視。 次元的な推論と結果の解釈が重視されており、出版社は、例題が近似をいつ使い、その近似がいつ破綻するかを教えると述べている。
  • 例題の幅。 原理を示す単純な例と、工学の実践から取ったより複雑な例が組み合わされており、考え方がどう使われるかがわかる。
  • 明快な進行。 目次は、静力学と運動学から、運動方程式の積分形、次に微分形、特別な流れ、そして最後に応用へと進んでいる。

短所

  • 工学志向。 出版社は本書を、工学に関連し実世界の応用に焦点を当てたものとして示している。連続体力学の純粋に理論的あるいは数学的な扱いを求める読者は、重点が別のところにあると感じるだろう。
  • 乱流や数値計算法の独立した章がない。 章の一覧には乱流の章も計算流体力学の章もないので、どちらかが必要な読者は別の資料が必要である。
  • 本書にあるのは一部の問題の解答のみ。 目次は一部の問題の解答だけを挙げており、本書には別冊の解答集もある。
  • 刊行時期。 本書は1999–2000年に刊行された。

コースにおける位置づけ

スミッツは、この力学コースの書籍リストのなかで、質点や剛体の力学ではなく連続体力学を扱う唯一の本である。Taylor の Classical Mechanics は連続体力学を紹介する1章で終わっており、さらに流体へ進むために読むのがスミッツである。運動量原理に基づく1年次の教科書 Matter and Interactions と、ラグランジュ形式とハミルトン形式への簡潔な道である Susskind と Hrabovsky の The Theoretical Minimum は、それより前か並行して読むものである。Morin の Introduction to Classical Mechanics は、質点と剛体の力学についての、問題の豊富な学部向けの教科書であり、Goldstein、Poole、Safko の Classical Mechanics はラグランジュ形式とハミルトン形式の大学院レベルの扱いである。スミッツはその系統を継ぐのではなく、ニュートン力学の保存則を別の種類の系に適用する。

本書の使い方

力学と微積分の最初の講義のあとに取り組むとよい。ベクトル解析があると、積分形と微分形による運動の扱いが理解しやすい。流体に初めて触れる物理と工学の学生が、自然な読者層である。

実践的な進め方は次のとおりである。

  • 中核: 「流体静力学」から「粘性外部流れ」までを順に。積分形と微分形の運動方程式の組と、出版社が強調する「次元解析」にじっくり取り組む。
  • 選択: 「開水路流れ」「圧縮性流れ」「ターボ機械」は、関心や講義の重点(土木、航空宇宙、機械)に応じて選べる。
  • 拾い読み: 「環境流体力学」と「歴史ノート」は、主題を文脈の中に位置づけるために、どの時点で読んでもよい。

各章末の問題を解き、一部の解答と照合すること。出版社が物理的な洞察を強調していることに倣い、式を書く前に流れを図に描き、桁の見積もりをするとよい。